ベイスターズが目指す横浜の

ベイスターズが目指す横浜の"みらい" - 球団社長が語る「今」と「これから」(前編)

2017.09.13

この10年弱、Bクラスが定位置だったプロ野球・横浜DeNAベイスターズ。クライマックスシリーズ(CS)が開始してから初めて、球団としては11年ぶりの3位となった昨年の勢いそのままに、今年もAクラスをキープしてCS進出へとひた走っている。

一方で観客動員数も好調だ。ディー・エヌ・エーに買収された2012年以降、積極的なマーケティング施策によって座席稼働率が上昇。2011年に50.4%、110万2192人だった動員が、2016年には93.3%、193万9146人まで拡大した。今シーズンも前半終了時点で稼働率95.2%、104万8256人と、2011年の年間動員数に匹敵する好調ぶりだ。

観客動員数はこの5年で飛躍的に増加(出典 : YDB)

そうした環境のなか、昨年10月に球団改革を主導した前球団社長の池田 純氏が任期満了に伴って退任した。池田氏は退任後にJリーグ特任理事、日本ラグビー協会特任理事に就任するなど、精力的な活動を続けている。そして、これまでの改革を主導した池田氏の後任として球団社長に就いたのが岡村 信悟氏だ。

岡村氏は総務省出身でありながらディー・エヌ・エーに身を投じたやや異色の経歴で、ディー・エヌ・エー本社のスポーツ事業本部の本部長も兼任している。実はこのスポーツ事業本部も兼任しているところがポイントで、岡村氏は横浜・関内地域をベイスターズを中心としたスポーツで賑わいをつくる「横浜スポーツタウン構想」を抱いている。岡村氏にベイスターズの今、そしてこれからを聞いた。

横浜DeNAベイスターズ 代表取締役社長 岡村 信悟氏

好調だからこそ、次の一手を

――今シーズンも成績、観客動員ともに好調ですね

高田GMと中畑前監督が育ててきた若い力を軸に、昨シーズン初めてCSに出場できました。東京ドームでファンの声援に支えられて勝ち上がり、一方のマツダスタジアムでは圧倒されて横浜に帰ってきた。ファンに支えられて勝つ喜びを味わいつつ、同時に負けた悔しさを高い次元で体験できたわけです。

プロ野球選手は誰もが「勝ちたい」と思っていますが、ベイスターズはより切実に、自分たちの力を示したい、勝ちたいと感じているシーズンです。前半戦はその気持ちが空回りしたのか、当初はあまり良くありませんでしたが、6月の交流戦を乗り切ったあたりから自分たちのペースで試合を進められるようになったように思います。

以前は「常にAクラスを狙いたい」と言える環境ではなかったかもしれません。しかしそれを、胸を張って言えるような環境になりつつありますし、今シーズンは来年以降につなげる意味でも試金石の年だと思っています。

一方で観客動員数も、お陰さまでファンの方々の"熱"に支えられ、これ以上にないと考えていた昨年の数字をさらに超えるペースで来場いただいています。

ただ、稼働率を見てもおわかりいただけるように物理的な制約から、ある程度天井が見えてストレッチが効かない状態です。かつての放映権料に依存したビジネスモデルではなく、今はスタジアムに来ていただいて飲食物、グッズを購入してもらい、そこに価値を見出していただいた広告を展開するモデルです。スタッフも頑張ってくれているのですが、今の枠組みでは(業務量、収益化ともに)キャパシティはギリギリ。

本拠地開幕戦、最終戦を除くすべての試合で冠スポンサーが就くなど広告収益も安定した(C)YDB

特にネックと捉えているのが、ファンが「来たい」と思っていても来ていただけない環境です。もちろん、年間で何試合も来てくださる熱心なファンの方は大切です。ですが、「コミュニティボールパーク」化構想という地元に根ざした球団を志向した時、友人や同僚、恋人、家族と来て「かけがえのない体験」をしてもらう、1年に2、3回寄ってもらうというライト層が来るきっかけを作りづらくなっている現状があります。

過去の経験から、今の好調なチーム状況が永続するとは言えません。事業的に、チーム状況が良い時だからこそ、足元を見直して「横浜DeNAベイスターズ」というチームのブランド力を高める必要があると考えています。

――今年も、さまざまなマーケティング施策を打たれていますが、特に反響のあった企画はありますか?

今年は、「SHOW OUR FORCE」という言葉を社内のキーワードに、「追いかけるのではなく、自分たちの力を主張する時代」に入ったとして、攻撃的な強いイメージを打ち出しています。「OUR」にはファン、ひいては横浜の人も巻き込む形で、横浜をベイスターズカラーに染め上げようとしています。

例えば筒香選手の巨大な全身写真を建物の壁に装飾するなど、横浜にベイスターズがあるということを印象づけていきたいと考えています。

およそ35mにおよぶ筒香嘉智選手の壁面装飾をみなとみらいのビルに装飾した(C)YDB

――横浜のチームということを、改めて認識してもらうということでしょうか

ベイスターズは、大洋ホエールズの時代から、キャラクターの立った選手が多かったと思います。大洋の人は、それこそ職人肌、一匹狼みたいな(笑)。

ですが今は、個性的な選手だけでなく、何よりチーム全体で上に登っていきたいという若く、熱い力がある。その力は、いわゆる「横浜」のイメージに合う、洗練されたものに近づきつつある。横浜という都市は東京近郊でありながら、市民は皆「横浜が一番」という愛着を持っている。その秘めた思いを表わすチームに、ベイスターズがなりつつあると思うんです。

大洋ホエールズの時代、当初は川崎の球団として地元に定着できず、ファンとチームが刺激し合うエネルギーの相互作用が消えていました。しかし、横浜に移って98年の優勝、そしてこの数年間はその相互作用がうまく回るようになってきた。およそ370万人の横浜市民、そして900万人におよぶ神奈川県民の熱量は、これからもうまく循環できるものだと思っています。

――神奈川県は横浜高校や東海大相模高校といった甲子園優勝校を複数排出し、"野球王国"とも言われます

たしかに神奈川県は野球王国です。しかし、王国であるにもかかわらず、野球を楽しむ子どもたちが減っています。野球に接する機会がなくなれば、参加人口が減り、最終的には"プロ野球"という魅力を生み出せなくなる危機意識は持っています。

価値が多様化する中で、サッカーやバスケ、卓球と、ほかのスポーツに目が向けられることは素晴らしいことですし、野球だけが特別という時代ではない。一方で、日本が明治時代から「野球」というスポーツを文化として育てて来た以上、野球文化を後世に継承していく価値があると思います。

そこで、次世代にバトンタッチするという大切な役割を担うものとして、「やきゅうみらいアクション」をスタートしました。幼稚園の頃から「投げること」「打つこと」「捕ること」、何より野球することの楽しさを体験してもらうために、「BTボール」というスポーツを考案しています。また、今年から横浜市内の幼稚園・保育園への訪問活動を60回から100回に増やしています。こうした活動が野球を楽しむきっかけに、さらに将来の野球界の振興に繋がるように、今後も取り組んでいきます。

――ほかのスポーツ、という点では岡村さんはディー・エヌ・エーのスポーツ事業全般を見ていらっしゃいます

企業活動は、新しい価値を提供していくことに意義があります。

ベイスターズが横浜と神奈川に根ざして、住んでいる人が「ベイスターズ体験」を深めていくことは一つの大きな価値です。ですが、新しい価値を考えた時、コンテンツを増やすことを考えていくことは自然な成り行きかと思うんです。アメリカでは、ニューヨーク・ヤンキースがサッカーチームを設立していますよね。

夏の野球シーズンはベイスターズ、それ以外のシーズンはサッカーやバスケなど。横浜DeNAベイスターズという体験を起点にして、みんなが常にスポーツと触れ合える場を、ディー・エヌ・エーが他の方々と協力しながらプラットフォームを作っていきたい。それは、スポーツコンテンツの数を増やすだけでなく、横浜スタジアムを起点としたスポーツ、エンターテインメント、教育ビジネス・サービスの結節点を作り上げたいんです。

後編は、9月16日に掲載します
「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。