目指すは「au経済圏」の拡大、なぜKDDIは通信以外に注力するか

目指すは「au経済圏」の拡大、なぜKDDIは通信以外に注力するか

2016.05.19

KDDI(au)が次の3年間に向けた中期目標として「au経済圏の最大化」を挙げている。これはauの顧客基盤の上でさまざまなサービスを提供し、1人当たりの売上を最大化する試みだが、なぜ大手携帯電話キャリアの一角を占めるKDDIが、こうした取り組みを実施するに至ったのだろうか。

au経済圏拡大に向けたKDDIの取り組み

KDDIは5月12日、2016年3月期決算を発表した。決算内容自体は、3年連続2桁増益の好調さを示すものとなっているが、携帯電話市場を巡る環境は大きく変化しつつある。そうしたことを受けてか、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、次の3年間、持続的な成長を続けるための向けた中期計画の1つとして、「au経済圏の最大化」を挙げている。

そもそもau経済圏とは何かというと、auの携帯電話を利用している顧客の基盤を活用し、その上でさまざまなサービスを提供することにより、独自の経済圏を構築する取り組みである。端末や通信といった携帯電話に関連するサービスだけでなく、生活に根差した多くのサービスやデバイスを提供することで、auユーザー1人当たりの売上を高めようというのが、au経済圏を構築する大きな狙いとなっている。

KDDIはauの顧客基盤の上で、オンラインからオフラインに至るまでさまざまなサービスを提供する「au経済圏」の拡大によって、ユーザー1人当たりの売上を高めようとしている

KDDIは、au経済圏の構築に向けた取り組みを、以前から段階を踏んで実施してきている。最初の取り組みとなるのは、固定・携帯の同時契約によって通信料が割り引かれる「auスマートバリュー」と、月額372円で有料アプリや割引クーポンの利用など、さまざまなサービスが受けられる定額制サービス「auスマートパス」の2つ。auスマートバリューの提供によって短期間での離脱を防ぎ、顧客基盤を確固なものにするとともに、auスマートパスで多彩なサービスを総合的に提供することで、有料でユーザーの付加価値を高めるサービスの基礎を作り上げたのである。

次の取り組みとなるのは、プリペイド方式の電子マネーサービス「au WALLET」による決済分野への進出だ。au WALLETはマスターカードの基盤を用いた磁気カードを使うことで、オフラインでの決済にも活用できる仕組みを整えたほか、「au WALLETポイント」との連携によって利用する上でのユーザーメリットを打ち出し、利用を加速させている。この取り組みはさらに、auショップを活用した物販サービス「au WALLET Market」へとつながっている。

そして現在auが力を入れているのは、電力や住宅ローン、保険などをまとめて提供する「auライフデザイン」だ。これまでの取り組みで、契約だけでなく決済に至るまで確固なau顧客基盤を構築したことから、次のステップとしてユーザーの生活に関連するサービスを、auの中に取り込みまとめて提供することにより、1人当たりのauサービス利用を増やして顧客単価を高めているのである。

au経済圏の拡大に向けた直近の取り組みとして注目される「auライフデザイン」。auの顧客に電力や保険、住宅ローンなどをまとめて提供する取り組みだ

au経済圏の拡大の背景に「3M戦略」あり

ではなぜ、KDDIは通信事業で獲得した顧客をベースにしながら、ローンや保険、電力など、通信以外のサービスを提供するに至っているのだろうか。その理由の1つは、KDDIが掲げる「3M戦略」にある。

3M戦略とは、KDDIが2011年より掲げている国内市場向けの戦略のこと。具体的には、デバイスの違いを気にすることなくコンテンツやアプリケーションが利用できる「マルチユース」、固定・モバイルのネットワークを組み合わせ、シームレスな通信環境を提供する「マルチネットワーク」、そしてスマートフォンやタブレット、テレビなど複数のデバイスを提供し、マルチユースを促進する「マルチデバイス」の3つが戦略の柱となっている。

KDDIが2011年より掲げる「3M戦略」は、マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイスの3つを柱に据えた戦略だ

このうちマルチネットワークに関しては、auのLTE網や、グループ会社であるUQコミュニケーションズのWiMAX2+網の整備を急速に進めて充実したネットワークを実現したこと、そしてauスマートバリューの浸透が高まったことなどから、最近は比較的取り組みが落ち着いている。

マルチデバイスに関しては、スマートフォンとタブレットをセットで契約することで、パケットをシェアして安価にタブレットを利用できる料金プラン「タブレットプラン ds」を提供するなどして、“2台持ち”需要の開拓に力を入れ、一定の成果を挙げている。今後もIoTの広まりなどデバイス拡大に向けた機運は見られるものの、複数のデバイスの利活用が大きく広まるにはまだ時間がかかるだろう。

それだけに、現在KDDIが最も力が入れているのは、マルチユースということになるだろう。実際、au WALLETやauライフデザインなどここ最近の施策は、デバイスや場面を問わずサービスを利用できる、マルチユースの拡大を強く意識したものだ。基盤となるネットワークの整備が落ち着き、デバイスの急激な広まりが望みにくい状況下で一層の成長を実現するためには、通信以外の付加価値事業を強化する必要があるのだ。

auは今後、3M戦略のうちマルチユースとマルチデバイスの取り組みの推進を図るとしており、au経済圏の拡大はマルチユースが主体となっている

総務省影響による市場の変化も大きく影響

そしてもう1つの理由は、国内の携帯電話市場が頭打ち傾向にあることだ。最近まで携帯電話市場はスマートフォンブームに沸き競争が活性化していたが、既にスマートフォンが多くの人に行きわたったことで、競争は停滞傾向にある。

しかも、最近まで市場競争を加速させる大きな要因となっていた、番号ポータビリティ(MNP)で乗り換える人に対する端末を大幅に値引きする高額キャッシュバックなどの施策も、年々総務省の監視の目が厳しくなってきたことで展開しづらくなってしまった。昨年総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を適用したことがその流れを決定付けており、現在は“実質0円”など端末を大幅に値引きする販売施策をとることが、事実上できなくなっている。

総務省は端末ではなく、通信料金の値下げによる競争の加速を望んでいる。だがキャリアとしては、売上の要となる毎月の通信料金を下げてしまえば大幅な減収へとつながり、サービスの質の低下を余儀なくされてしまうことから、それは最も避けたいことだ。低価格を望む層に対しては、KDDIであればUQコミュニケーションズの「UQ mobile」を活用するなど、MVNOやサブブランド展開によって低価格に見合った仕組みを提供しつつ、auなどのメインブランドでは従来通りのビジネスを続け、高価格帯の顧客を確保することで、高収益体制を続けたいというのがキャリアの本音なのである。

KDDIは最近競争が激しくなりつつある低価格帯に関しては、UQコミュニケーションズがKDDIのMVNOとなって展開する「UQ mobile」を活用する方針を示している

他社から顧客を奪うことが難しくなりつつある状況下で、高収益体制を継続するには、既存のユーザーにいかに多くのサービスを利用してもらい、1人当たりの売上を高めていくかが重要となってくる。実際KDDIは、マルチユースやマルチデバイスの推進によって、2015年度より、売上に用いる指標の1つであるARPU(1回線当たりの売上)を、1ユーザー当たりの売上を示す「ARPA」(Average Revenue Per Account)へと変更している。こうした点からも、いかにKDDIがユーザー1人当たりの売上を重視するようになってきたかを見て取ることができるだろう。

auはマルチデバイス化と付加価値サービスの拡大により、指標をARPUからARPAに変えるなど、1回線当たりではなく1ユーザー当たりの売上を重視するようになった

KDDIはauスマートパスやau WALLETなど、自社の顧客を活用した付加価値サービスの提供にいち早く取り組み、それが現在の好調な業績にも大きく貢献してきた。だが現在は他のキャリアも置かれている状況は同じであることから、KDDIと同じような取り組みを各社とも打ち出すようになってきた。「dマーケット」をはじめとしたNTTドコモの「スマートライフ事業」がその象徴的な事例といえ、最近ではスマートライフ事業が、NTTドコモの通信事業の不振を補い、躍進を支える大きな原動力となりつつある。

通信以外での付加価値を高める競争は今後も加速すると見られることから、KDDIにとってはどこまでユーザーの日常生活に深く入り込むサービスを提供できるかが勝負となってくる。auライフデザインの取り組みで、既に決済や金融、エネルギーをも取り込んでいるKDDIだが、今後どのようなサービスをau経済圏に取り込み、付加価値を高めていくかは大いに注目されるところではないだろうか。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。