ベイスターズが目指す横浜の

ベイスターズが目指す横浜の"みらい" - 球団社長が語る「今」と「これから」(後編)

2017.09.16

この10年弱、Bクラスが定位置だったプロ野球・横浜DeNAベイスターズ。クライマックスシリーズ(CS)に初めて進出する、11年ぶりの3位となった昨年の勢いそのままに、今年もCS進出へとひた走っている。前編に引き続き、球団社長の岡村 信悟氏に話を聞いた。

横浜DeNAベイスターズ 代表取締役社長 岡村 信悟氏

ホーム戦70試合で終わらない、365日の"地域貢献"

――(前編の横浜スポーツタウン構想の話を受けて)さまざまな産業とコラボレーションした"街"というのは、これまでの野球界にない考え方かもしれません

読売ジャイアンツさんは東京ドームを本拠地にしていらっしゃいますよね。

ジャイアンツという一大ソフトコンテンツがあり、本拠地である東京ドームは別の会社が遊園地やスパ、レストラン、ホテルといった複合施設を一体開発されて運営されています。

さまざまな形がある中で私達が目指すのは、自分たちですべてを開発するのではなく、街全体が"開かれた"形でエンターテインメント空間を作り上げることです。横浜スタジアムの隣にある横浜市役所が2020年に移転し、関内に空間が生まれる。2020年で言えば、横浜スタジアムは東京オリンピックの野球・ソフトボール競技の開催地でもあります。

そうしたタイミングで、野球以外も含めたスポーツ産業を集積し、スポーツに関連して「健康」や「教育」といった分野まで"文化"を広げられる可能性がある。文化が生まれれば、それは自然と人を惹きつけられる魅力ある土地になるんです。

横浜スタジアム横で行われたヨガイベント(C)YDB

プロ野球は、年間でおよそ70試合しか興業できません。365日、絶え間なくどのように横浜を活性化させるのかと考えた時、市役所跡地や日本大通り、大さん橋、山下町といった周辺地域まで含めて一体化した構想を、地域の方と作りあげていければと考えています。

――欧米のスポーツビジネスの話では耳にする構想です。ただ、日本ではここまで意欲的な話はなかなか聞かれません

プロ野球経営は50年間、そのスタイルが変わらないまま続いています。ですが本来、企業は新しいチャレンジを繰り返して価値を創造するものです。横浜DeNAベイスターズはこの5年間、従来の"プロ野球経営"を打ち破る方向性を示してきました。

もちろん、野球興業という本質は変わりません。ですが、大切なものを守りながらも、"巻き貝"として大きくしていく。それは、ディー・エヌ・エーというネット企業が、Web技術やAIを活用することで、最先端を意識しながらも伝統を飛躍させるという意思を持っているからです。

娯楽の在り方が変わりつつありますが、地元愛というものはまた別の話。その愛をスポーツで醸成していく。ほかの地域でもうまく展開できればと考えています。

――JリーグやBリーグ、そしてプロ野球でもカープやファイターズ、イーグルス、ホークス、そしてベイスターズと、地元愛とスポーツは確かに相性が良いですね

スポーツの基礎哲学のひとつの柱は地元愛だと思っています。さまざまなスポーツ産業で、幾つかの事例がある。例えば自社内で閉じてぐるぐる(経済を)回して売上目標に終始していては、疲弊してしまうんです。それを、よりオープンにやることで、誰もが循環の和に入れる、持ち寄れる場にしていく。

そういう仕組みを作れば、誰かのリーダーシップに依存する形のシステムではなく、長く持続成長できるプラットフォームになる。ベイスターズは公共財であり、ハマスタは公共施設、みんなのものなんです。より多くの人に参加してもらって、アイデアを出してもらって未来を創造する場を作る。そうすれば、「コミュニティボールパーク」というベイスターズの一つの理想が実現できると思っています。

――ハマスタを基幹スポットとして、市民参加型のスペースを創るということですね

そのために、2020年に向けたスタジアムの改修が今年から始まる予定です。先ほど(前編)もお話したように社員はかなり頑張ってくれていますが、収益力を高めるための物理的な制約があり、工事によってさらに制限される部分があります。

ただそれは、さらに知恵を絞ってノウハウを溜めて2020年以降に活かすパワーになると思います。その一例が「&9(アンド・ナイン)」です。

横浜スポーツタウン構想のパイロットプログラムとして始まった「THE BAYS(ザ・ベイス)」という日本大通りの拠点で運営しているカフェですが、アウトソースせずに自分たちで運営しています。

日本大通りにある「THE BAYS」(C)YDB

将来的にエリアマネジメントすることを考えた時、"経験"してノウハウを蓄積しないと、事業者がどういった設備、コンセプトを求めるのか、自分たちとしてもどういう事業者を選定すべきなのかを理解することができません。

球場外の施設は、球場内で勝手に人が飲食してくれる環境とは違うわけですから、来店してもらうための仕掛け、あるいは魅力あるフードメニュー、そして人件費などのコストがどれほどかかるのかということを自分たちで蓄えたい。これはプロ野球の球団が、球団以上の組織になるためのトライアルだと考えています。

――そういった"世界"を作れた後に、横浜はどう進化するのでしょうか?

横浜DeNAベイスターズがソフトインフラになる世界ですよね。何も箱モノが存在するだけではない。

夏はベイスターズ、冬はほかのスポーツ事業で横浜に来てもらって、お父さんはビールを飲みながら野球観戦、お母さんは近所のフィットネス施設でヨガを楽しんでもらってもいい。ランニングのコーチプログラムを用意して、近隣の"ベイスターズホテル"に泊まってもらって、合宿してもらうのも面白いでしょう。

改修後の横浜スタジアムイメージ図(C)YDB

一つ鍵として考えているのが訪日外国人です。例えば10年後にはミャンマーのGDPが非常に拡大すると言われています。実はミャンマーの方には鎌倉が人気なんですよ。そういった方にとっては、東京よりも神奈川県で観光を完結してもらうこともありえます。

羽田から直接横浜に来てもらって、日本で人気の野球というスポーツを堪能してもらう。スポーツ文化に触れて、スポーツバーでお酒を楽しみながら、卓球も遊べる。翌日は鎌倉観光して、あるいは箱根まで足を運んで温泉や富士山の景色を楽しんでもらう。

スポーツだけでなく、スポーツ・健康の産業集積が実現すれば、医療ツーリズムといったものも絡めて"横浜"の価値が非常に高まると思うんです。

――もはやディー・エヌ・エーという枠を超えた構想のようにも思えます

私はスポーツ事業本部の担当として、スポーツがディー・エヌ・エーのメイン事業になるという気持ちでやっています(笑)。

ディー・エヌ・エーに携わる前、プロ野球ファンだったんですが一時期見ることをやめていた時期がありました。その時期に南場さんにお会いして、時を経てこうした立場に就くことになって驚きつつもラッキーだと思いました。

南場さんは、ディー・エヌ・エーにおけるスポーツ事業の価値を純粋に認めていて、「DeNAブランド」を高めるものだと考えています。ただ、まだまだ横浜に根付いた球団になるためには努力しなければならないし、それを大きなビジョンとして地域に貢献しなければならない。

スポーツの力を信じ、そして可能性を広げていければと考えています。

ディー・エヌ・エーが持つ"DNA"を野球界に広げられるか

筆者は28歳、思春期から社会人にかけて「ベイスターズはBクラス」というイメージで見てきた。神奈川県出身ながら他球団のファンであり、横浜、あるいは隣接都市に住む知人も「ベイスターズファン」と公言する人は少なかったように記憶している。

しかし、横浜DeNAベイスターズになって何かが変わった。2014年に池田前社長にインタビューした際、池田氏は「プロ野球は普通の企業と変わらない」と語っていた。今回の岡村氏も同様に「企業は新しいチャレンジを繰り返して価値を創造するもの」と話した。

裏を返せば池田氏、そして岡村氏、さらに多くのプロ野球ファンが「プロ野球の球団経営は特殊なもの」という認識でいるのだろう。普通の企業のように新しいチャレンジをせず、普通の企業のように「お客さまファースト」をしてこなかった。それが、2004年に起きたプロ野球再編問題に繋がったことは誰もが感じている事実だ。

その後、再編の中心にいた楽天、そしてパ・リーグの各球団は経営の在り方を変えることに腐心し、セ・リーグに負けず劣らずの集客力を身につけるまでに至った。NPBのWebサイトで入場者数、1試合平均動員数が公開されているが、1試合平均1万人台のチームはゼロ、全球団が2万人以上を動員している(※9月14日時点)。これは、国内で随一のスポーツ・エンターテイメントであるポジションを譲らない"野球"の魅力を表していると言っていい。

しかし、岡村氏がインタビューで述べていたように、野球界は決して安穏としていていい状況ではない。ベイスターズの観客動員数の好調さは、ライトファンの動員以上に、コアファンの繰り返し観戦が寄与している部分がある。それは他球団も同様の傾向があるだろう。いわゆる「述べ動員数」ではなく実動員数の増加が求められる。

そこで用意されたのが「横浜スポーツタウン構想」というわけだ。これは単に大風呂敷を広げて手当たり次第ライセンス契約を増やそうというものではない。

ふとした瞬間にベイスターズが視線に入る、筒香嘉智選手が(仮に)メジャーに挑戦しても、近所の建物に広告があった山﨑康晃選手がいるからベイスターズを応援し続ける。そういった「常にベイスターズがいる」ことが、ベイスターズにとって、そして野球界にとっての価値につながっていく世界観を目指しているわけだ。

そして「プロ野球」というコンテンツの求心力をほかのスポーツへも活かそうというユニークさは、他球団にはない「ディー・エヌ・エー」ならではのものにも感じる。ベイスターズが確立し始めた「うちに閉じることなく、外の世界と繋がる」というWeb企業ならではの"DNA"が、野球界全体に広がっていくことを期待したい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu