なぜGMOはこのタイミングで仮想通貨マイニングに進出したのか

なぜGMOはこのタイミングで仮想通貨マイニングに進出したのか

2017.09.17

GMOインターネットは9月7日、2018年度をめどに、仮想通貨の採掘(ビットコインマイニング)事業に進出することを発表した。9月13日にはメディア向けに事業参入に関する説明会を開催したが、中国勢を中心に多くの事業者が参入している分野に対し、なぜこのタイミングで参入したのだろうか。

なぜ「通貨」なのに「採掘」なのか?

GMOの思惑を説明する前に、まずは仮想通貨について簡単におさらいをしておこう。通常の通貨が国家・政府の信用や金の保有量を背景に価値が決まるのに対し、仮想通貨の価値は中央機関に依存しない。仮想通貨は金の取引に似た部分があり、誰もがそれに価値があると考えているから値段がつく、という、世界共通の価値観の中で成立する。

金は美しさに加えて埋蔵量に限界があるから価値があるとされるわけだが、仮想通貨にも実は上限がある。仮想通貨は通常、ある数理的問題を解決する「miner」(採掘者)と呼ばれるソフトを使って問題を解決することで「採掘」される。

この「miner」を使って「採掘」された問題は、定期的に「誰が最初に採掘したか」を検証し、最初に採掘された人にのみ仮想通貨が発行される。もし採掘に参加している人が少なければ「当たり」を引く可能性は高まり、人が多ければ「当たり」はなかなか引けない。そして純粋に演算能力をたくさん用意することで「採掘」できる問題を増やし、「当たり」を引く確率が上がる、といった仕組みだ。

ちなみに、仮想通貨の嚆矢であり、最大のシェアを持つ「ビットコイン」の場合、約10~15分ごとに検証が行われ、「当たり」を引ければ12.5枚のコインが「発行」される。これは日本円に直しておよそ80万円程度の価値に相当する。

ビットコインの場合、発行量は2100万枚と上限が決まっており、これまでに約1600万枚が採掘済み。しかし21万枚が採掘されるたびに発行量が半減することになっており、2020年ごろにはさらに半減して6.25枚の発行になる。そして最終的には2140年ごろに枯渇する見込みだ。採掘が難しくなっていけば価値も高くなり、そして巨大な演算力を持つマイニング企業に集中していく、というのも、金の採掘の歴史を見ているかのようだ。

GMOがマイニング事業に見出した勝算とは?

現在、世界中でビットコイン以外の仮想通貨(オルトコインという)が続々と誕生しており、一方でマイニングを行う事業者も、これまた続々と増え続けている。

それではなぜGMOはこのマイニング事業に参入したのか、という話になるが、マイニング事業には、極論すれば「莫大な演算能力」と「演算にかかるコストを低減する安い電力」しか必要ではない。そしてGMOはその両方を解決する算段がついたから参入する、というのが、発表会の内容を大雑把にまとめた結論になる。

記者たちの質問に答えるGMOグループの熊谷正寿代表。自信を持って非常に論理的に多くの質疑に対応していたのが印象的だった

もう少し整理してみよう。GMOはマイニング事業について、約2年から検討を続けてきたという。そして北欧のある場所にマイニングセンター用の土地を確保できることになり、さらに国内のある企業と提携して、最新の7nmプロセスのマイニング専用チップの開発に成功する目処が立った、という。

なぜ北欧か、という点については、北欧諸国は再生エネルギーの利用率が高く、電気代が日本の約3分の1程度と、世界でも最も安い水準になるという。そして高緯度地帯に位置するため、基本的に気温が低く、マイニングセンターで発生した莫大な熱を下げるための冷房にかかるコストも抑えられるのだという。

マイニング専用チップについては、これは現在、人工知能(ディープラーニング)用チップと並んで需要の多いものだが、現在主流のGPUベースのチップと比べて電力効率で約2倍近いものが完成する見込みだという。これを北欧のマイニングセンターに大量導入することで、世界全体のマイニング演算力の約5~6%を占めることになる。これは世界のマイニング事業者の中でも1、2位を争う規模となる。この事業にかかる予算は100億円規模だというが、計画通りにいけば十分採算が取れるという計算だ。

GMOによれば、自社マイニングに加えて、ユーザーがマイニングセンターの演算力を購入して採掘する「クラウドマイニング」や、マイニング専用チップを搭載したボードを購入したユーザーがその演算力をマイニングセンターに提供する方法、ボードの外板などが事業として計画されているというが、主力としてはやはり自社マイニングが中心になるだろう。

仮想通貨は「安全」な投資先なのだろうか?

仮想通貨については懐疑的な声も多かったが、国内でも徐々に取引を可能にする企業が増え始めており、マイニング事業については、DMM.comもGMOの発表した翌日にマイニング事業への参入を発表するなど、日本でもマイニング事業に参入する企業が現れ始めてきた。

一方で、最大の仮想通貨利用国家といえる中国が、ICO(仮想通貨の発行による資金調達)を全面禁止して、元建てのビットコインが暴落するなど、不透明な状況もある。また犯罪組織などが資金洗浄や取引用に仮想通貨を利用するなど、健全性の問題を指摘する声もある。

何より実態のないデータ上だけの取引だけに、例えば先日話題になった太陽フレアによる大規模な電磁波障害があってマイニングセンターが故障した場合、採掘したビットコインが失われてしまったりすると、一体どのようなことになるのか、検討もつかない。

一方で、人員も投資も最小限で済むマイニング事業は、実際の鉱山経営などと比べればはるかにコストも安く、安全性の高い事業だと言える。万が一、仮想通貨の採算性が取れなくなった場合でも、マイニングセンターをデータセンターとして転換することは可能だろう。ある程度の演算力を確保してしまえば、収入の計算が立てやすいという点も経営的には魅力的だ。

「なぜ、今」という疑問について、GMOは納得できる合理的な回答を返してくれたと思っている。あとは「採算性はどうか」という問題が残る。今の所マイニングセンターの建設も始まっていない段階であり、本格稼働する来年までに、どんな新技術が登場するかはわからない。GMOが成功すれば追随する企業も登場してきそうだが、速度と演算力がものをいう市場だけに、勇気を持って先端を切ったGMOの判断に敬意を表したい。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる