シャープが振り返る「日の丸ディスプレイ」が敗北した理由(前編)

シャープが振り返る「日の丸ディスプレイ」が敗北した理由(前編)

2017.09.19

シャープが、ディスプレイ事業における「大日の丸連合」の結成に意欲をみせている。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は出資を含むグローバルパートナーとの提携によって財務体質、経営体質の強化を図ると発表している。ここに中国企業が名乗りを上げる一方で、シャープも強い関心を示している。

同社でディスプレイ事業を統括するシャープ 上席常務でディスプレイデバイスカンパニー社長の桶谷 大亥氏は、「今こそ日本の各メーカーの強みを生かして『大日の丸連合』を形成し、韓国や中国をはじめとする海外勢に競争優位性を確保しなくてはならない」と訴える。

シャープ 上席常務 桶谷 大亥氏

だがシャープは、2012年のJDI設立時に経済産業省からの参加要請を断って大日の丸連合の結成を破綻させた張本人。なぜシャープは、ここにきて「大日の丸連合」の結成に意欲をみせているのか。それは、自らの失敗の経験がベースにあるようだ。

JDIが模索する提携、有力は中国企業も…

6月にJDI 代表取締役会長 兼 CEOに就任した東入來 信博氏は、「JDIにとって、これが最後のチャンス。利益をしっかりと確保できる会社を目指して、第二の創業に挑む」と語っていた

JDIは2012年4月に、日立製作所と東芝、ソニーの3社の中小型液晶ディスプレイ事業を統合してスタートした会社である。そして東芝のディスプレイ事業にはパナソニックが、ソニーのディスプレイ事業にはセイコーエプソンや三洋電機の事業がそれぞれ統合されてきた経緯がある。そこに、産業革新機構が2000億円を出資して設立したまさに"日の丸連合"の会社であり、2014年には東証一部へ上場も果たした。

しかし2016年度に3期連続の最終赤字を記録し、2017年度業績も最終赤字の見通し。上場後は一度も黒字化していない。そしてフリーキャッシュフローは、2012年の設立以来ずっと赤字だ。産業革新機構はさらに最大750億円とする追加融資を行って下支えに踏み込んだが、その効果は限定的だった。

新たに舵を取る東入來社長は、人員削減や減損会計の適用などによる固定費の削減、生産体制の再編などに取り組む構造改革を発表。さらに今後は、グローバルパートナーとの提携を進める考えを示している。この提携は単なる事業連携だけでなく、出資を含めた多角的なもの。さらに"グローバルパートナー"と呼ぶように、対象となるパートナー企業は、日本の企業には留まらない。実際、中国企業が名乗りを上げているという報道が一部で出ている。

つまり、経済産業省が主導して国内6社のディスプレイ事業を統合し、そこに、産業再生機構が筆頭株主として出資をしてスタートした日の丸連合が、中国企業との連携のもと、再建を図る可能性も出てきたというわけだ。JDIの東入來社長は、「グローバルパートナーとの提携は、実行が先になったとしても、2017年度中には目処をつけたいと考えている」としており、まさに水面下での協議が進められているところだ。

この動きに強い懸念を持っているのが、JDIにとってはライバルとなるシャープである。しかも、シャープは、2012年4月のJDI設立前の経済産業省による参加申し入れに対して、当時の町田勝彦会長がそれを断り、独立した事業推進体制を維持することを決定。中小型液晶ディスプレイ事業の日の丸連合結成の足並みを乱した経緯がある。

当時のシャープの中小型液晶ディスプレイ事業は順調であり、「日本だけでなく、世界の液晶業界をリードしているのはシャープである」という自負もあったのも確かだ。もちろん、その裏には独禁法の関係もあり、シャープがJDIに参加するには時間がかかるという判断も働いただろう。しかし、独自で事業拡大を図れるという自信を持っていたシャープが、「弱者連合」とも言われた3社の統合に、当時、あえて踏み出す理由を探すことはむしろ難しかった。

そのシャープがなぜ、ここにきて「大日の丸連合」として足並みを揃えるべきとの提案を始めたのか。

シャープの桶谷氏の話を聞くと、それはシャープが自ら歩んできた道の反省の裏返しのようだ。

同社が経営不振に陥り、2016年8月に鴻海グループ傘下入りした最大の理由は「液晶事業の不振」であった。もともと「液晶一本足打法」と言われるほどシャープの経営を左右した液晶事業は、2001年の液晶テレビ「AQUOS」の発売以降、一気に事業を拡大させ、成長の大黒柱と位置づけられてきた経緯がある。

1998年に当時の代表取締役社長である町田 勝彦氏が「2005年までに国内で販売するすべてのテレビを液晶化する」と発言し、大きな話題となった。しかし、その言葉通りに液晶テレビの事業は拡大を続け、2004年に稼働した亀山工場、続いて2006年から稼働した亀山第2工場は、最先端生産拠点として高い競争力を誇り、拡大するシャープの液晶テレビ事業を下支えした。

当時、AQUOSに使っていた「世界の亀山」「亀山モデル」という言葉は日本のみならず、世界中の業界関係者の間でも注目を集めるものとなった。

だが、2008年のリーマンショックの影響で市況は大きく変化。さらに液晶技術の海外流出で、競争力を持った韓国・台湾勢が、液晶事業および液晶テレビで勢力を拡大した。さらに日本は1990年代以降の円高ドル安という長期トレンド、それに追い打ちをかける超円高という環境に遭遇。一方で韓国はアジア通貨危機などを背景に"超ウォン安"となり、この為替格差が韓国勢の世界シェア拡大に弾みをつけた。

実際に円とウォンの為替ギャップは、リーマンショック期に最大でマイナス39%にも達していたという。当時、社長を務めていた片山幹雄氏が「為替の差は、性能の違いでは埋めきれないほどの差になってしまった」と残念がっていたことを思い出す。さらに景気後退による需要減の影響で、最も普及していた32型液晶パネルの価格が1年で29%も下落。日系メーカーは円高の進行によって、採算上で36%もの売価ダウンを余儀なくされていた。

大阪府堺のシャープ本社

そうした環境にも関わらず、シャープは2009年に第10世代のガラスパネルを使用した最先端液晶工場「シャープディスプレイプロダクト(現・堺ディスプレイプロダクト)」を稼働。事業成長を前提に稼働した新工場は、目論見どおりの稼働率を実現することができず、これが経営を圧迫することになった。その後、液晶テレビ事業は縮小を続けたのちに、欧米市場における液晶テレビ事業から撤退し、ブランド供与ビジネスへと移行する結末を迎えた。

一方で液晶テレビ事業が苦戦し始めた頃、スマートフォンやPCなどに利用される中小型液晶パネルの事業はまだ順調であった。2007年にアップルが発売したiPhoneをきっかけにスマホの販売が右肩上がりで急成長。これが、シャープの中小型液晶事業を成長事業へと転換させたからだ。

しかし、中小型液晶事業の好況も長くは続かなかった。中小型液晶事業における成長の切り札としていた「IGZO液晶」の量産が遅れたことで、スマホメーカーの商品化時期がずれ込むといった影響が発生。そうした問題もあってか、大口顧客のAppleからの受注減を受けて生産拠点の稼働率が低迷し、負のサイクルに陥っていった。

さらに急成長をはじめた中国スマホメーカーの商談を取り合うといった動きが加速。価格交渉が軸となっていたため、液晶テレビ事業と同様に価格下落が進んだ。実際、JDIの攻勢によってシャープが失注するなど、日本陣営がお互いの首を絞める戦いにまで陥っている。

このように振り返ってみれば、シャープの液晶事業は大規模投資を続けてきたものの、結果として市場変化と需要の飽和、競争激化を見誤った。そこに円高が追い打ちをかけ、世界市場における競争力を失ったといえる。シャープの液晶事業は描いた成長戦略を実行できず、大型液晶事業に続いて中小型液晶事業でも競争力を失うことになってしまったのだ。

シャープだけではない"技術流出"の禍根

だがシャープは鴻海傘下に入って以降、業績を回復している。そして経営不振の元凶となったディスプレイ事業も、2016年度下期から黒字に転換。欧州ではシャープブランドを供与していたSKYTEC UMC LTDを逆に買収して子会社化しており、欧州での液晶テレビ事業を再スタートした。さらに2018年度には、全世界で1000万台のテレビ出荷計画を掲げるなど、まるで液晶テレビ事業最盛期のような動きをみせている。

かつて世界の液晶市場の中心にいたシャープが一連の経験をしたからこそ、「いまこそ、『大日の丸連合』を形成すべきという提案につながる」(桶谷氏)と話す。シャープが液晶事業で競争力を失った理由はいくつかの要素が絡み合っているが、その提案にも繋がる最大の原因が「技術流出だ」と桶谷氏。

「液晶パネル技術が、韓国、台湾、中国へと相次いで流出した。これは、シャープの液晶事業だけに言える話ではなく、日本の液晶ディスプレイ産業全体にいえることだ」(桶谷氏)

振り返れば、日本では、多くの企業が液晶ディスプレイ市場に参入していた。

シャープのほかにも、JDIに至ることになる日立製作所やソニー、東芝、三洋電機、パナソニック、セイコーエプソンの6社、さらにシャープに事業統合した富士通、中国メーカーに事業売却したNECも液晶事業を行っていた。また、三菱電機や京セラが依然として液晶事業を推進しているほか、カシオの液晶事業を凸版印刷に売却して独立事業として推進しているオルタステクノロジーもある。

実際、1998年頃までの日系メーカーの生産能力シェアは全世界の70%を占めていた。だが、2003年にはトップシェアの座を韓国、台湾に一気に奪われて1位から3位に転落すると、その後もシェアは減少。2014年以降は、10%を切る水準にまで落ち込んでいる。

さらに、こうした動きにあわせてテレビメーカーのシェアも大きく減少。薄型テレビでは、2005年に全世界で4割以上を誇っていた日系メーカーのシェアが、現在では10%強にまで縮小。ノートPCも2006年に全世界で約2割のシェアを占めていたが、現在ではその10分の1にまで減少し、日系メーカーの存在感はまったくない。

シャープの桶谷上席常務は、こうした動きを振り返りながら、日系パネルメーカーが減少し、生産能力シェアも減少。最終製品のシェアがここまで大きく落ち込んだきっかけが、液晶パネルの技術流出だというのだ。

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大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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