100年後に向けた戦い? トヨタがスポーツカーの新ブランド「GR」設立

100年後に向けた戦い? トヨタがスポーツカーの新ブランド「GR」設立

2017.09.20

トヨタ自動車がスポーツカーの新ブランド「GR」を立ち上げた。既存のトヨタ車にスポーツカーの味付けを施して販売するとのことだが、豊田社長は同ブランドの設立を“100年後に向けた戦い”と位置づける。

トヨタは「GR」ブランドで11モデルを投入する

「ヴィッツ」や「86」に新たなモデルが登場

「GR」とは、トヨタでモータースポーツ活動を行っている「GAZOO Racing」の頭文字。トヨタの社内カンパニーであるGAZOO Racing Companyが、ニュルブルクリンク24時間耐久レースや全日本ラリーなどのレース活動で得た知見やノウハウを活用し、既存のトヨタ車に“スポーツカーバージョン”を追加する。

GRシリーズを構成するのは、エンジン内部までチューニングを施した数量限定販売の「GRMN」、GRMNのエッセンスを注ぎ込んだ量販スポーツモデルの「GR」、ミニバンなどにも設定して気軽なスポーツドライブを提案する「GR SPORT」の3つのモデル。具体的には「ヴィッツ」に「GRMN」と「GR」の2モデルを追加し、「86」に「GR」バージョンを新たに投入、「プリウスPHV」や「ヴォクシー」などには「GR SPORT」をラインナップする。「GR」モデルはベースとなっているクルマに比べ、ボディ剛性が高まっていたり、ステアリングの反応が良くなっていたりする。

上段は左から「ハリアーGR SPORT」「ヴィッツGR SPORT」「ヴィッツGR」。下段は左から「ノアGR SPORT」「ヴォクシーGR SPORT」「マークX GR SPORT」「プリウスPHV GR SPORT」。これらのクルマは9月19日に発売となった。「86 GR」「アクアGR SPORT」「プリウスα GR SPORT」は2017年冬、「ヴィッツGRMN」は2018年春に発売予定

気になったのは、「GR」ブランドに連なるクルマが全て既存の車種だということ。「GR」ブランドでブランニューのスポーツカーが登場するかもと期待していたのだが、その見込みは外れた。今後の予定を広報に聞くと、商品計画に関わることなので明かせないと断った上で、新規のスポーツカーが「GR」ブランドで登場するのは現時点で難しそうな情勢と話してくれた。「GR」モデル自体は増えていくらしいが、その方法は新車投入に合わせて用意したり、既存車種に拡げていったりといった具合になるそうだ。

若者とアクティブシニアの双方に訴求、もう1つの狙いは?

では、なぜスポーツカーの新ブランドなのか。「GR」発表会に登壇したGAZOO Racing Companyの友山茂樹プレジデントはプレゼンで、スポーツモデルが比較的若い客層に受けている実態を示すグラフを提示した。既存車種にスポーツモデルを導入する理由の1つは、若い世代の獲得にあるものと見られる。ただし、スポーティーなモデルで取り込みたいのは若い世代だけではなく、「アクティブシニア」世代の顧客にも訴求していきたいとトヨタ広報は話していた。ちなみに広報によると、全車種を合わせた「GR」の事前受注は160台だという。

これまでトヨタが投入してきた、スポーツコンバージョン車シリーズ「G Sports」(通称:G's=ジーズ)やスポーツカー「86」は、トヨタ車全体に比べ購入者に占める30代以下の顧客の割合が高いという

スポーツモデルの導入で、トヨタが自動車販売にプラス効果を期待しているのは間違いなさそうだが、同社が「走り」を前面に打ち出すモデルを追加する理由は他にもありそうだ。それは、最近よく聞く“クルマのコモディティ化”という言葉に関係がある。「GR」発表会に突如として登場した豊田章男社長の言葉からは、クルマを単なる移動手段としてコモディティ化させたくないとの思いが伝わってきた。

実用性と走りの楽しさ、双方を追求するトヨタ

「トヨタは大衆車を作ろうと生まれた企業であり、多く売ることはトヨタの使命だ。しかし、トヨタでも面白いクルマは作れるという事も示したい。(トヨタ車に乗る)大多数のユーザーは(クルマを)便利な移動手段と考えると思うが、そんな中でもクルマ好きをアピールできる味付けがGRだ。(実用性を求める顧客とクルマ好きの)両方のユーザーを満足させることにチャレンジしたい」。豊田社長が「GR」発表会後の囲み取材で語った言葉だ。

左から3人目が友山プレジデント、4人目が豊田社長。発表会にはTOYOTA GAZOO Racingでドライバーを務める小林可夢偉選手(左端)や中嶋一貴選手(左から2人目)らが駆けつけた

クルマの電動化と知能化が進み、クルマが単なる移動手段としてコモディティ化していくのではとの声も聞かれる中、豊田社長は「クルマって楽しい」という部分にこだわりたいと話す。クルマは誕生から100年の歴史を経て大きな変革期にあるが、乗って楽しいクルマ作りを100年後も続けるため、「今、戦っている」と豊田社長は話す。

“モリゾー”こと豊田社長は発表会後、自らハンドルを握りデモ走行を実施。後輪から白煙を上げつつ華麗なドリフト走行を披露していた

友山プレジデントが発表会の最後に語った、「クルマがどんなにIT化しようと、どんなに電動化しようと、我々にとって大切なことは、ユーザーが乗りたくなる、そして自分で操りたくなる、そういう魅力的なクルマを作り続けること」との言葉も、豊田社長の考えに符合する。つまりトヨタは、多く売れる大衆車も作り、クルマの技術革新にも対応しながら、スポーツモデルによりクルマを走らせる楽しさも追求していきたいとの意向のようだ。これは年間1000万台のクルマを売り、あらゆる車種を扱う大企業ならではの全方位戦略と言える。

スポーツモデルで走る楽しさを追求するトヨタ(写真は「86 GR」)

トヨタは先頃、街ではめったに見かけないピックアップトラックの「ハイラックス」を日本市場で復活させると発表したばかり。ハイラックスも「GR」も、好きな人だけが買うクルマという感じがするが、これらを取りそろえる意義が、世界的な自動車メーカーであるトヨタにはあるということなのだろう。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu