革新的デバイス「TYPE-R」は自転車市場を切り拓けるか - LEOMOの挑戦

革新的デバイス「TYPE-R」は自転車市場を切り拓けるか - LEOMOの挑戦

2017.09.21

スポーツにおけるパフォーマンスや技術の向上、怪我防止に役立つ、モーションセンサーを使ったデバイス「TYPE-R」。スポーツのあり方を変える革新的デバイスだ。LEOMOはこの先、どうしようと考えているのか。

革新的デバイスTYPE-Rのビジネス展開について説明するLEOMOの加地邦彦代表(撮影:磯崎威志)

小さなマーケット

LEOMOが手がけるTYPE-Rは今までにないデバイスだ。モーションセンサーを使って、スポーツ選手のパフォーマンスや技術の向上、怪我防止に役立てようと考えている。

革新性の高い製品でもあるが、メインターゲットは、シリアスに自転車競技に取り組むアスリートやコーチたち。将来は他の協議に横展開を図っていくが、当面TYPE-Rの市場は限られてくる。

TYPE-Rは自転車専用デバイスではなく、モジュールの取り外しによって自転車用(写真左)としてもランニング用(写真右)としても使える。将来はストレッチなどでも使えるようにしたいという。ビジネス展開において自転車を手始めとしている(撮影:磯崎威志)

たとえば、日本。競技に熱心な人たちは、日本自転車競技連盟に登録していることが多い。しかし、その登録人数は7000人に過ぎない。熱心な未登録者を含めても、1万人程度を対象にした商品となる。海外のほうが人気が高いとしても、TYPE-Rのターゲットは、さほど大きくなさそうだというのが筆者の見立てだった。

そうした疑問を投げると、加地氏は「確かに日本の市場は小さいですが、世界規模でみるとそれほどでもない。僕らのサイズの会社が生き残るには十分です」(以下、発言同氏)と話す。

何を基準にするかの違いはあるが、加地氏はサイクルコンピュータ市場をベースに考える。TYPE-Rのディスプレイは、スピード、ケイデンス、パワーも表示し、類似商品はサイクルコンピュータになるからだ。

米国で先行販売されているTYPE-Rは799ドル。高価格帯のサイクルコンピュータをTYPE-Rに置き換えればいいという考えだ。「400ドルを超えるサイクルコンピューターはグローバルで年間37万6000個販売されているという調査データがあります。数%をとるだけでも、うちはやっていけます」。

米国からスタートのなぜ

そんなTYPE-Rはまだ市場に出たばかりのデバイスだ。とはいえ、日本国内ではまだ発売されておらず(2017年内を予定)、一般発売されているのは米国のみだ。ワールドワイドな展開を考えているからか、LEOMOの本社も米国サンディエゴにあり、日本はあくまでサテライトオフィスとしての位置づけだ。

ビジネスで世界を狙うと言ったとき、米国を基点に展開していくというのは、何となく説得力があるが、自転車競技に興味のある人なら、違和感を覚えるはずだ。自転車競技の本場は欧州。なのに米国先行なのはなぜか。

それについて加地氏は話す。「欧州は魅力的なマーケットですが、ハードルが高いんです。フランス語、スペイン語、ドイツ語といろいろあって言語の問題が大きい。米国のほうがやりやすいですし、熱心に取り組むアスリートも多い。資金調達を考えると、投資文化のある米国のほうがやりやすい」。

そうはいいつつも、加地氏は、欧州での展開についてもすでに手を打っているという。それを端的に表すのは、パワーメーターの開発元、独SRM社との戦略的提携だ。

SRMとの提携が生み出すもの

スポーツにおいて、デバイスの魅力を一気に高めようとする場合、理想的な展開のひとつとして、世界のトッププロへの機材供給がある。トッププロに使われ続けることで、デバイスの認知度も飛躍的に高まり、ブランディングが可能になる。しかし、それは誰もが考えること。機材供給の道を拓くのは難しい。その可能性を一気に高めるのが、SRM社との提携なのだ。

SRMは古くから多数のワールドチームにパワーメーターを供給し、多数の勝者を生み出している。ワールドチームからの信頼は厚い。SRMと手を結ぶことで、流れに乗るチャンスが大きく増やせる。「自転車競技にはムラ社会の側面がある。話を聞いてもらうだけでも苦労する。ただし、SRMが勧めるものなら別。SRMがいれば話を聞いてもらえるハードルがもまったく違う」。

SRMとの提携発表と時を同じくして、加地氏はフランスを訪れていた。7月のフランスは、ツール・ド・フランスの開催月だ。現地を訪れたのはもちろん、ワールドチームへの機材供給の道を拓くためだ。「ありがたいことに、各チームとも、存在は知ってくれていた。TYPE-Rの写真は見たことあると。どこの誰がというのは知らないでしょうけど、手応えも得られました」。

プロへの機材供給の道が拓けるならば、LEOMOにとって、それは認知拡大以外の大きな意味を持つ。実は彼らにとっては、こちらが本命かもしれない。

それは、世界最強クラスの選手の生データが得られることだ。自転車に限れば、平地を走行するとき、上り坂をこなすとき、ダンシング(立ちこぎ)をするとき、スプリントダッシュをするとき、あらゆる面におけるペダリング、フォームなどをセンシングする。

これは今後TYPEーRを使うユーザーにとって大きな価値となり、市場の裾野も広げていくだろう。

月額課金型サービスも

「筆頭株主の泰蔵さんとは旧知の仲であり冗談も言い合える相手」と話す加地代表。よきパートナーとのことだ(撮影:磯崎威志)

SRMとの提携で大きく前進した感じのあるLEOMOだが、ターゲットは相当限られ、販売方式はウェブからの直販方式のみ。ビジネスとしての心許なさが拭えないのが当初の印象だった。

LEOMOは孫泰蔵氏のMistletoe、フォックスコン子会社のFIH Mobileなどから出資を受けており、現時点で売上が少ないと見られる同社が株主から厳しい利益追求を求められれば、プロジェクトが頓挫しかねないとさえ思えたのだ。

そうした考えをぶつけてみたが、加地氏は動じない。「株主には数万台売って小銭を稼ごうというより、新しいカルチャーをつくるために投資していく考えを理解してもらっています。ありがたいことに、株主からのプレッシャーは少ない」。

その上で、加地氏は将来の構想の一端も披露してくれた。実はデバイスの製造・販売だけをビジネスにしようとは毛頭考えていない。

TYPE-Rを継続的に使うなかで、利用者はあらゆるデータを読み解く力が求められる。この支援に月額課金型のサービスを提供する大きな余地が残されているのだ。

たとえば、過去と現在の自分の変化を時系列で比較するなど、データを有意義に活用するには、データの多面的な分析が必要になる。有料でもデータ分析から気づきを得て普段のトレーニングに活かしたい人は確実にいるはずだ。

自転車の次に狙う市場

もうひとつ、加地氏はすでにランニングの開発にも着手していることを話してくれた。自転車に続き、ランニングでも革新性の高いものとなりそうだ。

ランニングでは、足の着き方や接地時間をどう改善するかが重要とされるが、LEOMOが着目しているのは、足が地面に着地するまでの空中の軌道だ。まだテスト段階にあり、「データのリアルタイム表示が難しい」としつつも、「年内にはアルゴリズムを出せそうです」とのことだ。

展開の早さに驚くが、自転車よりランニングのほうが体の動きがダイナミックで、フォームの違いがすぐわかるのだという。

スポーツにおける新たなカルチャーを生み出すためにビジネスの構想を練り、次々と布石を打つLEOMO。まずは手始めとして着手した自転車市場において、SRMとの戦略的提携を活かして成功することに期待したい。本格展開が始まるこれからがLEOMOにとっての正念場となる。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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