“新しい下町”を創れるか!? 異彩を放つランドマークが上野御徒町に竣工

“新しい下町”を創れるか!? 異彩を放つランドマークが上野御徒町に竣工

2017.09.22

昨年、国立西洋美術館が世界文化遺産に登録され、そして2017年にパンダの赤ちゃんが誕生し、9月21日には生後100日を迎えた。そんなニュースにわき上がる東京・上野御徒町地区に新たなランドマークが11月4日に開業する。「上野フロンティアタワー」だ。

上野フロンティアタワー

上野フロンティアタワーの開業は、世界遺産登録やパンダの赤ちゃん誕生に比べれば、そのインパクトは弱いといわざるをえない。だが、この周辺地域には、待ち望まれた新たなランドマークであることは確かだろう。というのも、上野御徒町にはランドマークとなるような目立ったビルディングはなく、どうしても“ローカルな街”というイメージがぬぐえないからだ。

たとえば六本木には「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」が、渋谷には「渋谷ヒカリエ」が、池袋には元祖高層ランドマークともいえる「サンシャインシティ」がある。こうしたランドマークは、単にオフィス利用というだけでなく、映画館や水族館といったレジャー施設、高感度なショッピングができるテナントが入居するなど、東京都内外からの集客に大いに寄与している。

上野御徒町の新名所として期待

ところが、上野御徒町にはそうした目立った高層ビルのランドマークはなかった。確かに上野恩賜公園や隣接する博物館群、動物園などの集客力は高い。アメヤ横町という、独特の商店街も集客の要だろう。ただ、“それらプラス何か”が求められていたことも確かだ。“その何か”のひとつの答えが、上野フロンティアタワーといえよう。

松坂屋上野店と上野フロンティアタワーは、2本の空中ブリッジと地下でつながっている

この上野フロンティアタワーは、少々ユニークな“仕掛け”がある。立地はもともと松坂屋上野店南館があった場所で、その南館を建て替えるカタチで上野フロンティアタワーが誕生した。一般的に考えれば、当然、松坂屋上野店南館がリニューアルしたという認識となる。だが、松坂屋上野店新南館は入居するが、加えてPARCOが同居することになる。

考えてみれば単純な話だ。松坂屋を運営する大丸松坂屋もPARCOを運営するパルコも、ともにJ.フロント リテイリングのグループ企業。同居してもなんら違和感はない。とはいえ、松坂屋が入居するのは地下1階のみで、1~6階はPARCOとなる。松坂屋のメイン売り場は、もとからある松坂屋上野店となり、タワーとは地下通路と2本の空中ブリッジで結ばれる。

J.フロント リテイリング 取締役兼代表執行役員 山本良一氏

事実、J.フロント リテイリング 取締役兼代表執行役員 山本良一氏は、「百貨店である松坂屋と、ファッションビルであるPARCOそれぞれの強みを生かす」と意気込む。それだけではなく、周辺の商店街や施設と協力していくことで、このタワーを起爆剤とし、上野御徒町地域を活性化する「アーバンドミナント戦略」を展開していくとした。

一方、大丸松坂屋 代表取締役 好本達也氏は、「大丸松坂屋とパルコが連携するのは初。両店の得意とする分野でそれぞれを補完できるのではないか。周辺地域とも連携し、新しい下町『シタマチ.フロント』を創り出したい」と話す。また、周辺地域との連携について、具体例のひとつとして、上野の案内所をタワーの地下1階に開設することを明かした。周辺の名所や名店、名品などをガイドする役目を担うという。

パルコ 代表執行役社長 牧山浩三氏も、松坂屋上野店と新南館、そしてPARCOの連携を強調。「松坂屋上野店と新南館・PARCOが入居する上野フロンティアタワーは、地下と空中ブリッジで行き来できる。回遊性を生み出せるので相乗効果が期待できる」とした。さらに「今回、編集した68店舗のうち、この地区に初進出したのは8割。新たな層の集客につなげたい」(牧山氏)とも話す。

大丸松坂屋 代表取締役 好本達也氏(左)、パルコ 代表執行役社長 牧山浩三氏(右)

そして、東京23区で44年ぶりに出店するこの店舗の名称を「PARCO_ya」とした。松坂屋とPARCO_yaという屋号が並ぶのはなんとなくユニークだ。

PARCOといえば、若者のファッションを牽引した渋谷PARCOが建て替え中。2019年に完成予定だが、開業すれば上野と渋谷という、山手線をほぼ北東南西に貫く線上に拠点をかまえることになる。山手線を利用してショッピングやレジャーを楽しみにきた客を、地理的にも取り込みやすくなるのではないか。

映画館やオフィスフロアを備えた複合ビル

そのほかの仕掛けとしては、TOHOシネマズが7~10階に入居する。上野観光連盟 会長 二木忠男氏によれば、「以前は映画館が数館あったが、近年はスクリーンの空白地帯になっていた。地元にとっては待望の映画館」だという。全8スクリーン1,400席の規模となり、国内外の作品はもちろんのこと、秋葉原からの徒歩圏内ということを生かし、アニメファンに支持される作品も上映されるという。

また、12~22階はオフィスゾーンとなる。11,700平方メートルの事務所面積は、ほぼ満室。1,000人以上のオフィスワーカーの取り込みは、松坂屋上野店やPARCO_yaにランチ需要を生み出すだろう。退勤時に、ファッションアイテムや雑貨を購入して帰路につくというニーズにも応えそうだ。

左:TOHOシネマズのイメージ(提供:上野フロンティアタワー)。右:22階カンファレンスルームからの眺め。上野恩賜公園はもちろん、天気次第で富士山もみえる

六本木や渋谷などに比べれば、いまいちパッとしなかった上野御徒町。上野フロンティアタワーの登場により、どう変貌していくか。興味が尽きないところだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。