パナソニックとJTB、ヤマトがタッグ--手ぶら観光支援で

パナソニックとJTB、ヤマトがタッグ--手ぶら観光支援で"おもてなし"

2017.09.22

パナソニックとジェイティービー(JTB)、ヤマトホールディングスの3社は9月21日、訪日外国人旅行者を対象に、国内における手ぶら観光を支援するサービス「LUGGAGE-FREE TRAVEL(ラゲージ・フリー・トラベル)」の取次店の募集を開始した。2018年1月からサービス提供を開始する予定だ。

(左から) ジェイティービー グループ本社 執行役員 古野 浩樹氏、パナソニック 執行役員 井戸 正弘氏、ヤマトホールディングス 常務執行役員 丹澤 秀夫氏

訪日外国人旅行者は、宿泊施設への移動や公共交通機関の利用、滞在先における保管など、大型の手荷物の取り扱いが課題となっている。また、宅配便サービスを利用するケースでは日本語で送り状を手書きする必要に迫られ、多言語対応可能なスタッフのサポートが必要だったり、受付が可能な場所が限定されていたりという課題もある。

昨年の9月、10月にサービスの実証実験とアンケート調査を実施しており、その成果をもとに、今回のサービスの販売開始に至ったという。

訪日外国人が日本を楽しめるように

LUGGAGE-FREE TRAVELサービスは、JTBの海外支店や提携代理店が提供するツアーに組み込まれる。ツアーをPCやスマホで購入すると、サービス開始時に受付用番号として、QRコードが付与される。日本の取次店である空港カウンターや宿泊施設で、QRコードをスタッフに提示し、日本語、英語、韓国語、中国語(繁字体、簡字体)の5カ国語に対応したLUGGAGE-FREE TRAVEL受付システムでQRコードを読み込ませる。

ここで事前に登録した配送情報や荷物サイズと個数、規約などを確認し、その上で荷物を預けることができる。荷物は、指定した宿泊施設や空港カウンターで受け取ることが可能だ。

ヤマトホールディングス 常務執行役員の丹澤 秀夫氏によると、午前中に成田空港に到着した訪日外国人は、都内のホテルにチェックインしてから"手ぶら観光"する場合、夜までに約3時間しか観光時間を取ることができないという。一方でLUGGAGE-FREE TRAVELを利用すれば、これを5時間に拡充できる。

「荷物から解放されたら、より多くの観光地に立ち寄りたいという回答が約70%、観光地の滞在時間を伸ばしたいが約50%、買い物時間を伸ばしたいという回答が約60%に達している。空港からホテルへ、ホテルからホテルへ、さらにホテルから空港へとサービスを拡充することで、日本滞在中に、荷物を気にすることなく観光を楽しんでもらいたい。ホテルや空港などは不在がない配達先であり、その点でも効率性が高いビジネスになる」(丹澤氏)

旅行前からその最中まで、サービスのすべてをスマホで完結でき、クレジットカード決済によってキャッシュレスも実現している。さらに荷物配送も日本語記入が不要となるため、「実証実験の実績では、10分以上かかっている配送手続きが、平均1分30秒で終了した」(ジェイティービーグループ本社 執行役員 古野 浩樹氏)という。今後はフランス語、スペイン語にも対応言語を拡充していく。

利用料金は、縦、横、高さの合計が120cm以内、15kg以内の荷物が2000円から。同じく160cm以内、25kg以内が2500円から。北海道や沖縄などには別途追加料金が発生する。

目指す"観光インフラ"

使用するデバイス、バックエンドのソフトウェアはパナソニックが提供する。

「観光事業者にとっては、専用端末設置に伴う初期導入費用が不要になり、荷物の削減や業務の効率化を実現できる。また、日本語しかできないスタッフでも受付業務が可能になる」(パナソニック 執行役員 井戸正弘氏)

すでにJTBが8月8日から、訪日外国人旅行者向けパッケージツアー「サンライズツアー」で同サービスを組み込んだ周遊コースの販売を開始済み。東京や高山、京都の人気コースから販売を開始しており、随時対象コースを広げていくという。2018年1月5日からサービスの本提供を開始する。

2020年までに全国2500施設の取次店ネットワークを構築し、訪日外国人旅行客の2.5%にあたる100万人が利用するサービスを目指す。また、レジャーショッピングなどの領域でも利用できるように、サービス内容も拡大予定で、「2020年には、200万個の荷物が利用されれば、50数億円の売上げ規模が見込める」(古野氏)という。

ジェイティービーグループの古野氏は、「観光物流インフラネットワークを3社で構築し、観光ICT分野における新たなプラットフォームとして、日本におけるデファクトスタンダードサービスにしたい」と位置づけている。

今回、3社が提供するサービスは、荷物を持たずに手ぶらで自由に日本を楽しんでもらう「おもてなし型サービス」に位置づけられるものだ。

「訪日外国人旅行客にとっては、大型荷物を持ち運ぶことで、おみやげ購入をあきらめたり、施設への入場をやめたりといった機会損失につながっているほか、荷物が無くなったり、破損したりといった安全性の課題がある。また、宿泊施設では、外国人の大型荷物を預かるために宴会場を使用し、機会損失につながるという課題もある。さらに、大型荷物の持ち運びが日本人にとっても迷惑になるという報道もある」(古野氏)

これに加えて、日本での旅行中の荷物配送サービスを知っている外国人は28%にとどまり、利用者にいたってはわずか3.5%に過ぎないという。宅配大手のヤマトグループでも、旅行者の荷物一時預かり、スーツケースの配送サービスなどを全国50数カ所の受付拠点で日本人旅行者を中心に提供しているものの、「外国人には、自分の荷物を他人に任せるという習慣がない。そのために、外国人にはあまり使われていないのが実態」という課題があると丹澤氏は話す。

こうした課題を、おもてなし型サービスとして打ち出すことで、「今回のサービス開始に伴い、大切な荷物を、きちっと、正確に届けるサービスとして認知を高めることで、日本のファンを海外に増やしていきたい」(丹澤氏)という狙いがあるようだ。

また、インフラを担うパナソニックにとっては「ICT×観光」という切り口から、訪日外国人旅行者に対して、情報、言語、移動などの課題を解決するソリューションの展開をさらに拡大していく契機となりそうだ。

「地方への周遊拡大、個人旅行者の増加、体験・ニーズの多様化といった動きがあるなかで、入国から出国まで訪日外国人旅行者とつながり続けるICTを活用した観光サービスプラットフォームとして、TRM(Traveler Relationship Management)を構築している。これはJTBと共同開発した外国人旅行者を対象にしたクラウド基盤であり、LUGGAGE-FREE TRAVELは最初に活用するサービスになる」(パナソニック 執行役員 井戸 正弘氏)

サービス提供に必要な旅行者の情報を統合管理することで、TRM上でサイクルシェアや免税手続き、保険サービスなども組み合わせ、観光サービスを提供できるようにしていく予定だ。これはJTBにとって旅行事業者の枠を超えた展開を容易にする大きな武器となる可能性がある。

一方でパナソニックにっては、今回の協業は一つの分水嶺となりそうだ。デバイスも用意するものの、どちらかと言えばソフトウェアやサービス中心となる点で新たな挑戦といえる。こうしたビジネスモデルをどれだけ増やすことができるかが、今後のパナソニックにとっては重要な取り組みになる。今回の事業も、東京オリンピック関連事業で新たに創出する1500億円の売上のなかに含まれる。

2020年に向けてカウントダウンが近づいてきたが、異業種の企業がタッグを組んで新たなサービスを創出するといった動きは、これからもさらに増えていくだろう。今回の取り組みは、そうした動きの第一陣ともいえるものだ。企業連携によって今後、どんなおもてなしサービスが創出されていくのか、しばらくは発表ラッシュになる可能性もあるだろう。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる