初代の衝撃、再び…乗って感じたホンダ「N-BOX」の進化と洗練

初代の衝撃、再び…乗って感じたホンダ「N-BOX」の進化と洗練

2017.09.26

8月31日のモデルチェンジで2代目に進化したホンダの“売れ筋”軽自動車「N-BOX」。見た目は旧型とあまり変わらない。だからこそ「中身はどうなんだろう?」という気持ちでいる人は多いはず。実際に試乗した印象をお届けすることで、気になる疑問にお答えしよう。

外見からは、そこまで進化した印象を受けない新型「N-BOX」だが…

モデル末期まで売れ続けた初代「N-BOX」

2011年に発売されるや、軽自動車ベストセラーの座に何度も就き、今年に入っても勢いが衰えなかったホンダN-BOXが、8月31日にモデルチェンジを実施した。その内容はすでに紹介しているが、今までも売れていたのになぜモデルチェンジするのか、疑問に思った人もいるだろう。

しかも新型のスタイリングは、旧型とほとんど変わらない。軽自動車の規格は全長3,400mm、全幅1,480mm、全高2,000mm以内と変わっていないので、この枠内で最大限の室内空間を確保しようと思ったら、おのずと形は決まってくるとも言えるのだが。

軽自動車の規格内でスペースを確保

筆者にも似たような気持ちは少しあった。しかし、今月行われた報道関係者向け試乗会で実車に触れ、運転してみると、逆に進化のレベルの大きさに驚くことになってしまった。

トレンドに沿ったカスタムの顔変更

まず、旧型と似ているという声が多いスタイリングだが、たしかに標準車についてはそっくりであるものの、カスタムについては以前と違う印象を抱いた。

旧型「N-BOXカスタム」は、クロームメッキをふんだんに使ったフロントマスクが特徴だった。ギラギラという言葉が似合う顔つきで、それが人気を後押しした要因の1つだったようだが、筆者には馴染めなかった。

それが新型では、クロームメッキは太めのバーを1本入れただけ。細い吊り目のヘッドランプはややキツめだが、全体はむしろブラックフェイスと呼びたくなるほど黒い部分が多く、精悍な雰囲気に変わっている。

左がカスタム。精悍な雰囲気にイメージチェンジした

試乗後に開発担当者に聞いたところ、世の中のトレンドに沿ったものだという答えが返ってきて、なるほどと思った。例えばトヨタの大型ミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」は、昔はヴェルファイアのほうがギラギラしていたのに、現行型はむしろ逆になっている。

カスタムを求めるユーザーの好みが、豪華路線から精悍路線にシフトしており、N-BOXもこれに合わせたということなのだろう。

スーパースライドシートで多彩なシートアレンジが可能に

インテリアでは、運転席の前にあるメーターが遠くに移動し、ステアリングの上から見るタイプになったことにまず気づく。N-BOXは着座位置が高いので、低い位置にメーターがあるとドライバーの視線移動が大きくなりがちだ。その点、新型のメーターは視線移動が少なく、見やすくなった。しかも、手前に収納スペースを用意することができた。これが実に使いやすかった。

メーターの配置変更で運転しやすくなった

シートでは、助手席が前後に長くスライドするスーパースライドシートが特徴だ。実車で試してみると、身長170cmの筆者がドライビングポジションを取った運転席の腰の位置まで助手席前端を下げることが可能だった。後席もスライド可能なので、上から見てチェック模様のようなシート配置にすることもできる。

シートアレンジの自由度が高い

感心するのは、スーパースライドシートの導入に合わせて、助手席シートベルトをシート内蔵としていることだ。センターピラーに内蔵した従来の方式では、後に下げたときベルトとしての機能が果たせなくなるためだが、ベルト内蔵とするとシート自体に高い剛性を持たせなければならず、重量も増える。よくぞ投入したものだと感心した。

ホンダではこのスーパースライドシートの利点について、3人家族で父親が運転席、母親が助手席、子供が後席右側に座ったような場合に、母親が父親と子供の両者との会話がしやすくなることを挙げている。

スーパースライドシートの導入で車内の会話も盛り上がるかもしれない

ただし、自動車に限らず、2人以上が同じ場所に座る場合の椅子は、横並びとなるのが一般的だ。わざわざオフセットするという配置はめったに見ない。ここは販売現場でも、オフセット配置によって会話がむしろ弾むことを展示車で体験してもらい、理解を深めていく必要があるだろう。

軽量化+新型エンジンで走りも進化

走りについてはまず、ターボがつかない自然吸気エンジンでも十分な加速が得られることに驚いた。最初に乗ったのがこの自然吸気車だったのだが、よく走るので途中までターボ車と勘違いしていたほどだ。

新型のアピールポイントの1つである80kgもの軽量化が効いているのはもちろん、パワーユニットの一新も効果を発揮しているようだ。6年前に登場した旧型でも新開発エンジンを投入していた。2世代続いて新型に切り替えるのは異例だ。

2世代続けて新開発のエンジンを投入

これについて開発担当者は、販売成績が良かったので開発費用をかけることが可能だったという事情も明かしながら、シリンダーの内径(ボア)を小さくして行程(ストローク)を伸ばすことで、混合気の流れを活発にして燃焼効率を上げつつ、ボア縮小によるバルブの小径化は「VTEC」の名でおなじみの可変バルブ機構を投入して、全域での力強さを獲得したという。

さらに無段変速機(CVT)は、回転をなるべく上げずに走るセッティングとしたことに加え、エンジンマウントを見直すことでノイズの周波数をコントロールし、静かに感じさせる配慮もしたとのことだ。

確かにエンジン音は3気筒とは思えない上質なサウンドで、ボリュームも抑えられており、長距離でも快適に過ごせそうだった。あとで乗ったターボに比べるとエンジンを回すことにはなるが、回している実感が薄いのでターボとの差をあまり感じない。

80kgもの軽量化というとボディ剛性を心配する人がいるかもしれないが、ドアの開け閉めはしっかりしており、乗り心地はいかにもサスペンションがよく動いている様子で、良好だった旧型をさらに上回っていた。

ボディ剛性も申し分ない

運転支援システムを全車標準装備に

この快適性をさらに引き上げていたのが、「ホンダセンシング(Honda SENSING)」と呼ばれる運転支援システムを全車に標準装備したことだ。

クルーズコントロールは前車追従のアダプティブタイプに進化し、コーナーでは操舵をアシストする機能まで盛り込まれた。「フィット」や「フリード」と同じ内容であり、作動感も2台同様、自然で完成度の高いものだった。高速道路での安定性は旧型同様ハイレベルなので、ホンダセンシングの投入は鬼に金棒という感じがした。

6年前に旧型がデビューしたとき、多くの面で軽自動車のレベルを超越した走りに驚いた記憶があるが、今回もまた、同じレベルの驚きをもたらしてくれた。これでは上のクラスのクルマが売れなくなってしまうのではないかと心配してしまうぐらい、新型N-BOXの走りは「軽離れ」していた。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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