教育イノベーションを大きく飛躍させる「EdTech」がもたらすもの

教育イノベーションを大きく飛躍させる「EdTech」がもたらすもの

2017.09.28

教育のICT化が急がれている。授業でのタブレット端末・PC活用、プログラミング教育、リモートによる授業など、民間・自治体・政府などが強力に取り組みを推進。そうしたなか、「EdTech」(エドテック)というワードが注目され始めている。

ちなみにEdTechとは、「Education」と「Technology」を組み合わせた造語。すでによく耳にすることが多くなった、金融でのICT活用「FinTech」と同じ論理で生まれた言葉だ。同様のワードは、「AgriTech」(農業)、「HelthTech」(医療・健康)、「FoodTech」(食)、「LegalTech」(法務)といったように、多くの産業で使われ始めている。このようなワードを総称して「X-Tech」と呼ぶ。

海外で先行するEdTechの事例

デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

さて、このEdTechの持つ可能性について、デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏が解説した。

EdTechを簡単に表すと「デジタルテクノロジーを生かした教育イノベーション」ということ。佐藤氏によると、すでに海外ではEdTechによる教育事例が数多くあるそうだ。

たとえばMOOC(ムーク)と呼ばれるオンライン講座。一流大学の動画講義が受けられ、しかも基本的に無料ということもあり世界中に広がりをみせている。なかには、16歳のモンゴルの少年が、一握りしか100点を取れないテストで見事に満点となり、その才能が認められてMITの特待生になったという。

また、スタンフォード大学やハーバード大学よりも狭き門といわれるミネルバ大学では、オンラインで学生のディスカッションが行われている。世界7カ所に寮があり、その学生たちが海を越えて舌戦を繰り広げる。その際に、学生の発言回数を記録し、発言内容の“質”も分析されるという。なお、この分析のアルゴリズムは公開されていない。

「このようにEdTechにより、経済格差や環境的格差、地理的格差を埋めることができます」と、佐藤氏はそのメリットを語る。

また、ビットコインで注目された「ブロックチェーン」を教育に活用する動きがあるという。ブロックチェーンは、分散型ネットワークに公開鍵暗号などを組み合わせることで、記録改ざんや不正取引を防ぐ技術で、おもにFinTech領域で注目されている。

そのブロックチェーンを教育に生かすとはどういうことか。佐藤氏によると、これまでの学習履歴をブロックチェーンで記録するのだという。つまり、改ざんできない学習履歴記録が残るということだ。

佐藤氏は「どのような学習を行い、どのような成績なのか改ざんできない記録が残ります。つまり、入学試験などが不要になるということです。これまでの入試では、極端なハナシ、カンニングに成功すれば合格できました。ですが、改ざんできない学習記録があれば、本当の実力が示されますので試験が不要になります。同様に卒業もです」と、教育にブロックチェーンを活用した際の可能性を語る。

教育産業は、全世界で自動車産業よりも規模が大きい約400兆円の市場だという。とはいえ、その市場の大半をまだまだ“アナログ”が担っている。そこにEdTechが急速に普及すれば、“入試・卒業なし”といったような“破壊的ともいえるイノベーション”が巻き起こるかもしれない。

日本のEdTechプレーヤーは?

Studyplus 代表取締役社長 廣瀬高志氏

では、日本のEdTechはどのような状態か。教育にデジタルテクノロジーを生かす取り組みは、ベンチャーを中心にプレーヤーが増えている。その状況について、Studyplus 代表取締役社長 廣瀬高志氏が解説した。

日本のEdTechプレーヤーは、さまざまなカテゴリに分類でき、着実に増え続けているが、それぞれのカテゴリで課題があるという。たとえばStudyplus自体、どのくらい学習したのか、勉強時間の累積時間はどのくらいかといったことをチェックする学習管理アプリ。現在、学習管理の難しさから、学習に対するモチベーションを維持できなくなっている生徒がみられるが、こうしたアプリを活用することである程度サポートできるという。だが、まだまだこうした機能を利用する教育機関は少ないのが現状だ。

そして、冒頭で述べたように、多くの産業にX-Techと呼ばれるようなテクノロジーが浸透してきている。そうした状況のなか、深刻になっているのがエンジニア人材の不足だ。小学校におけるプログラミング教育必修化が義務づけられたが、まだ緒に就いたばかり。プログラミング学習に関わるEdTechをいかに浸透させるか、急がれるところだろう。

ここまで、EdTechに関する先進事例や日本の現状について解説を受けたが、ほんの少しばかり引っかかることがある。それは、“学びの場”は学力向上のためだけにあるのか、ということ。友人と無駄話をしたり部活に打ち込んだり、コミュニケーション能力を高め協働性を磨く場でもある。EdTechに100%傾倒してしまうと、完全個人主義の学習となりかねなく、“人とのつながり”がおろそかにはならないか……。塾や自習ならばよいが、公共教育の場にEdTechをどのくらい活用するのか、バランスが難しいと感じた。

そしてもう一点。これは完全にどうでもよいくだらないことだが、EdTechのワードを聞いたとき「江戸テック」というのを連想した。今はなき東京・多摩地区のテーマパーク「多摩テック」の派生のようで、少し和んだ(笑)。

まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏

さて、しょうもないダジャレはさておき、EdTechによるひとつの可能性を示す事例が紹介された。それは、過疎に悩む地方の教育機関での活用例だ。それについて、まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏が解説した。

石川県・能登町も過疎に悩む自治体のひとつ。教育を必要とする子ども世代が激減し、それにともない学校の統廃合が進んだ。もともと農業系だった能登高校に水産系高校が統合されたが、最初は多様な一次産業を学ぶ高校として期待された。

町営塾の開設で“高校魅力化”

まちなか鳳雛塾の授業風景(提供:Studyplus)

ところが、町内の中学校からは町外の高校に進学する生徒が目立った。これは、一次産業を学ぶよりも確実に大学進学を目指せるほかの高校に人気が傾いたからだ。そこで、能登高校では学校内に公営塾を設置。大学進学を目指せる環境を整えた。さらに公営塾を発展させ、高校の外に町営の「まちなか鳳雛塾」(ほうすうじゅく)を開校。町内中学校からの進学者を増やすことに成功した。

ただ、大きな問題がある。大学進学のための専門知識を持った指導者が不足しており、映像授業に頼らざるをえない。ただ、映像授業では生徒の学習進捗状況や理解度を把握するのが難しく、適切な指導につながらない場合も考えられる。

そこで、前出したような学習管理アプリを導入。映像を使ったリモート学習をサポートする体制を強化した。また、能登町は平成の大合併で生まれた広い自治体のため、通塾に難がある生徒の指導にも効果があるという。

地方の自治体にとって“高校魅力化”は、ひとつのテーマだ。高校に生徒が集まらず廃校となってしまうと、子育て世代がその自治体にとどまらず、さらなる人口減少となり、中学校や小学校の統廃合におよぶという悪循環につながる。EdTechをうまく活用すれば、高校魅力化の一助になるかも知れないが、地方の教育機関には長いこと続いた“保守的な教育”にこだわる指導者も多く、なかなかICT化が進まないところもあると聞く。

冒頭の佐藤氏は、こんな表現をしていた。「100年前の医師と学校の先生が現代にタイムスリップしてきた場合、医師は施術を行えないだろう。だが、先生は授業を行える」。昔の医師は先端の医療機器は使えないが、先生は黒板とチョークがあれば授業できるというたとえだ。やはり、教育現場のイノベーションは早急に進めるべきだろう。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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