ファーストキッチンは未開拓の「熟成肉市場」で先駆者となれるか

ファーストキッチンは未開拓の「熟成肉市場」で先駆者となれるか

2017.09.29

ウェンディーズとのコラボレーションにより、競争が激化するハンバーガー業界で存在感を高めようと奮闘するファーストキッチン。同社が新たに手に入れた武器は「熟成肉」だ。高価なイメージの熟成肉だが、それをバーガーに取り入れたのはなぜか。そして、この新たな武器でファーストキッチンは何を仕掛けようというのか。

ファーストキッチンが熟成肉を使ったハンバーガーを商品化

「エイジングシート」登場で熟成肉製造に革命

熟成肉といえば、各店舗や料理人が試行錯誤を繰り返しながら、独自の熟成方法を開発し、顧客に提供していたもの。おいしい肉の代名詞として近年、「エイジング」や「熟成」というワードが踊る熱い“肉戦争”が繰り広げられている。

おいしさをめぐる戦いは消費者にとって嬉しいことだが、一方で熟成肉といえば「価格が高い」こともあって、庶民には敷居の高い食べ物であったことも事実である。巷のステーキ店で「熟成肉」を頼もうと思えば、1人あたり1万円近い価格が相場ではないだろうか。おいしいと知っていても、なかなか身近な食べ物と感じる価格帯では商品展開がなされていなかった食べ物が「熟成肉」だと言えるだろう。

その熟成肉を、ファストフードチェーンであるファーストキッチンが採用できたのには理由がある。肉を熟成させる新たな手法が登場したのだ。

その方法とは、日本初の発酵熟成肉製造技術「エイジングシート」を用いて、短期間で肉の熟成を進行させて腐敗を防止し、安定的に「発酵熟成肉」を供給するもの。熟成肉専門店「旬熟成」などを手掛けるフードイズムと明治大学が共同で開発した。

「エイジングシート」とは、熟成肉に必要なカビの胞子を人為的に付着させたシートのこと。これを肉に巻いて熟成肉を製造する

「エイジングシート」を用いた熟成方法においては、製造時間が大幅に縮小されるだけでなく、歩留まりも大幅に改善される。つまり、製造工程において大幅なコストダウンを図ることが可能になり、安定して短期間で「発酵熟成肉」を製造することが可能になったわけだ。

この「エイジングシート」を使用して商品展開する企業にファーストキッチンが選ばれた。

高価なイメージを変えられるか

新たに手に入れた武器を用いて、ファーストキッチンが仕掛けるのが「発酵熟成肉 黒毛和牛バーガー」「発酵熟成肉 黒毛和牛チーズバーガー」「発酵熟成肉 黒毛和牛ワイルド☆ロック」の3つの商品だ。ポスターには、グリルで焼かれているハンバーグの画像に「熟成、此処に極まれり」という文言が添えられる。国内ファストフード業界で初の発酵熟成肉バーガーである。

熟成肉バーガーのラインアップ。真ん中が肉で野菜などを挟む「ワイルド☆ロック」の熟成肉バージョンだ

価格は黒毛和牛バーガーが1,000円、ワイルド☆ロックが1,800円という設定。ファーストキッチンとファーストキッチン・ウェンディーズで10月26日に発売する。販売目標は4万個。今回は数量限定だが、将来の展開についてファーストキッチンの紫関修社長は前向きに検討する意向を示している。「熟成肉がおいしいことは分かっていた。高いお店でそれなりの料金を払うのではなく、手軽な価格帯の商品で楽しんでもらいたい」。ファストフード業界初の取り組みを実現させた紫関社長は語る。

ファーストキッチンの紫関修社長

潜在的な熟成肉市場をファーストキッチンが開拓

ハンバーガーとして考えると、ファーストキッチンの新商品は高いと感じるかもしれない。しかし、熟成肉の商品という切り口で見直すと、意外と身近に感じられるし、あるいは“超お得”な価格設定と考えることも可能なのではないだろうか。

そもそも熟成肉の市場は、高級ステーキ店などを利用するのが一部の消費者に限られていたこともあって、規模としては限定的なものだったと考えられる。これまでの熟成肉市場が海面から顔を出している“氷山の一角”であって、水面下にはアクティブになっていない大きな市場が存在すると仮定した場合、全国にチェーン展開しているゆえタッチポイントが豊富なファーストキッチンが、手頃な価格で熟成肉商品を提供する取り組みには大きな可能性を感じる。同社が潜在的な熟成肉市場の開拓者になるかもしれないからだ。

「現代人の語彙に関する調査」についてベネッセが結果を速報

「現代人の語彙に関する調査」についてベネッセが結果を速報

2017.09.29

画像はイメージ

プレゼンテーションや打ち合わせで、「何の意味だっけ?」という言葉を聞く機会は多いだろう。だいぶ定着してきたが「PDCAサイクル」「LGBT」「CSV」「サステナブル」などだ。まれに「OODA」など、まったくピンとこない語が使われることもある。

だが、それは高校生や大学生のあいだでも同じだ。特にSNSが普及し、それらによって多くのコミュニケーションを図っている学生のあいだでは、新語・造語が日々生み出されている。それらの意味を理解していないと、友人とまともにコミュニケーションできない場合もある。

「語彙・読解力検定」を主催するベネッセコーポレーションは、ベネッセ教育総合研究所の協力を得て、全国の高校生から社会人3,130名を対象に「第2回 現代人の語彙に関する調査」を実施。おもに国語辞典に掲載されている文章や会話を理解し、的確に表現するために必要な「辞書語彙」、新聞に掲載されることの多い、社会生活で必要な基礎知識や時事知識に関する「新聞語彙」に分けて調査した。なお、辞書語彙には、SNSやインターネット掲示板で使われる「新語」も収集・選定されている。

その結果、高校生・大学生の親世代は「漢熟語」「和語」「外来語」「新聞語彙」といったジャンルで偏りなく熟知度が高かったものの、新語といわれるジャンルでは学生世代が親世代を上回る結果となった。

以下は、高校生・大学生が親世代よりも「知っている」割合が高い語のリストだ。

高校生が親世代よりも「知っている」割合が高い語(差が大きい順に10語)

辞書語彙 新聞語彙
高校生 親世代 高校生 親世代
りょ 70.7% 19.8% ラノベ 47.1% 24.5%
わず 49.0% 11.3% タイムライン 85.2% 64.2%
イミフ 70.7% 33.0% 3R 32.2% 23.6%
グルチャ 39.9% 7.5% ビッグス粒子 28.4% 20.8%
とりま 60.1% 28.3% コミケ 79.8% 72.6%
リムる 42.8% 11.3% ファストファッション 71.2% 64.2%
SNS映え 82.7% 52.8% グランピング 26.0% 20.8%
ワンチャン 72.1% 42.5% ステルスマーケティング 29.8% 25.5%
オールする 81.3% 51.9% テリーザ・メイ 11.1% 8.5%
なる早 62.5% 34.9% メディアリテラシー 34.3% 31.9%

大学生が親世代よりも「知っている」割合が高い語(差が大きい順に10語)

辞書語彙 新聞語彙
大学生 親世代 大学生 親世代
わず 81.7% 11.3% ラノベ 67.3% 24.5%
りょ 88.9% 19.8% メディアリテラシー 74.0% 31.9%
イミフ 94.7% 33.0% 3R 58.2% 23.6%
とりま 88.0% 28.3% 合計特殊出生率 54.3% 28.3%
リプ 86.1% 28.3% タイムライン 89.9% 64.2%
ヒトカラ 82.7% 25.5% フェアトレード 72.1% 47.2%
ワンチャン 93.3% 42.5% アクティブ・ラーニング 60.6% 38.7%
グルチャ 58.2% 7.5% QOL 54.3% 33.0%
リムる 60.1% 11.3% ユニバーサルデザイン 91.8% 75.5%
エゴサ 57.7% 17.0% フードマイレージ 41.3% 26.4%

SNSやネット掲示板で使われる新語については、圧倒的に高校生・大学生のほうが知っている割合が高かった。一方、ピンポイントだが、大学生の新聞語彙7位に「アクティブ・ラーニング」という言葉が入った。おそらく、大学入試改革を控え、こうした学習方法に触れる機会が多くなるのだろう。

下表は、「新聞・ニュースを賑わせたおもな語」。「ワーママ」「テリーザ・メイ」以外、総じて親世代が知っている割合が高い。

新聞・ニュースを賑わせたおもな語

高校生 大学生 親世代
一億総活躍社会 47.6% 52.4% 74.5%
プレミアムフライデー 74.5% 89.4% 91.5%
テレワーク 40.4% 34.6% 58.5%
裁量労働制 26.0% 38.9% 59.4%
駆けつけ警護 35.6% 38.5% 77.4%
テロ等準備罪 58.7% 66.3% 76.4%
忖度 49.5% 54.8% 74.5%
ワーキングプア 59.6% 65.9% 91.5%
イクメン 90.9% 91.8% 95.3%
ワーママ 36.5% 31.7% 29.2%
マタハラ 69.2% 70.7% 84.9%
ワンオペ育児 20.7% 26.4% 26.4%
待機児童 89.9% 90.4% 95.3%
ドナルド・トランプ 85.1% 94.7% 99.1%
大統領令 61.5% 63.5% 88.7%
ポピュリズム 35.1% 35.6% 51.9%
ラストベルト 13.9% 11.1% 20.8%
ブレグジット 17.8% 18.3% 25.5%
アンゲラ・メルケル 24.5% 25.5% 25.5%
テリーザ・メイ 11.1% 10.6% 8.5%
教育イノベーションを大きく飛躍させる「EdTech」がもたらすもの

教育イノベーションを大きく飛躍させる「EdTech」がもたらすもの

2017.09.28

教育のICT化が急がれている。授業でのタブレット端末・PC活用、プログラミング教育、リモートによる授業など、民間・自治体・政府などが強力に取り組みを推進。そうしたなか、「EdTech」(エドテック)というワードが注目され始めている。

ちなみにEdTechとは、「Education」と「Technology」を組み合わせた造語。すでによく耳にすることが多くなった、金融でのICT活用「FinTech」と同じ論理で生まれた言葉だ。同様のワードは、「AgriTech」(農業)、「HelthTech」(医療・健康)、「FoodTech」(食)、「LegalTech」(法務)といったように、多くの産業で使われ始めている。このようなワードを総称して「X-Tech」と呼ぶ。

海外で先行するEdTechの事例

デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

さて、このEdTechの持つ可能性について、デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏が解説した。

EdTechを簡単に表すと「デジタルテクノロジーを生かした教育イノベーション」ということ。佐藤氏によると、すでに海外ではEdTechによる教育事例が数多くあるそうだ。

たとえばMOOC(ムーク)と呼ばれるオンライン講座。一流大学の動画講義が受けられ、しかも基本的に無料ということもあり世界中に広がりをみせている。なかには、16歳のモンゴルの少年が、一握りしか100点を取れないテストで見事に満点となり、その才能が認められてMITの特待生になったという。

また、スタンフォード大学やハーバード大学よりも狭き門といわれるミネルバ大学では、オンラインで学生のディスカッションが行われている。世界7カ所に寮があり、その学生たちが海を越えて舌戦を繰り広げる。その際に、学生の発言回数を記録し、発言内容の“質”も分析されるという。なお、この分析のアルゴリズムは公開されていない。

「このようにEdTechにより、経済格差や環境的格差、地理的格差を埋めることができます」と、佐藤氏はそのメリットを語る。

また、ビットコインで注目された「ブロックチェーン」を教育に活用する動きがあるという。ブロックチェーンは、分散型ネットワークに公開鍵暗号などを組み合わせることで、記録改ざんや不正取引を防ぐ技術で、おもにFinTech領域で注目されている。

そのブロックチェーンを教育に生かすとはどういうことか。佐藤氏によると、これまでの学習履歴をブロックチェーンで記録するのだという。つまり、改ざんできない学習履歴記録が残るということだ。

佐藤氏は「どのような学習を行い、どのような成績なのか改ざんできない記録が残ります。つまり、入学試験などが不要になるということです。これまでの入試では、極端なハナシ、カンニングに成功すれば合格できました。ですが、改ざんできない学習記録があれば、本当の実力が示されますので試験が不要になります。同様に卒業もです」と、教育にブロックチェーンを活用した際の可能性を語る。

教育産業は、全世界で自動車産業よりも規模が大きい約400兆円の市場だという。とはいえ、その市場の大半をまだまだ“アナログ”が担っている。そこにEdTechが急速に普及すれば、“入試・卒業なし”といったような“破壊的ともいえるイノベーション”が巻き起こるかもしれない。

日本のEdTechプレーヤーは?

Studyplus 代表取締役社長 廣瀬高志氏

では、日本のEdTechはどのような状態か。教育にデジタルテクノロジーを生かす取り組みは、ベンチャーを中心にプレーヤーが増えている。その状況について、Studyplus 代表取締役社長 廣瀬高志氏が解説した。

日本のEdTechプレーヤーは、さまざまなカテゴリに分類でき、着実に増え続けているが、それぞれのカテゴリで課題があるという。たとえばStudyplus自体、どのくらい学習したのか、勉強時間の累積時間はどのくらいかといったことをチェックする学習管理アプリ。現在、学習管理の難しさから、学習に対するモチベーションを維持できなくなっている生徒がみられるが、こうしたアプリを活用することである程度サポートできるという。だが、まだまだこうした機能を利用する教育機関は少ないのが現状だ。

そして、冒頭で述べたように、多くの産業にX-Techと呼ばれるようなテクノロジーが浸透してきている。そうした状況のなか、深刻になっているのがエンジニア人材の不足だ。小学校におけるプログラミング教育必修化が義務づけられたが、まだ緒に就いたばかり。プログラミング学習に関わるEdTechをいかに浸透させるか、急がれるところだろう。

ここまで、EdTechに関する先進事例や日本の現状について解説を受けたが、ほんの少しばかり引っかかることがある。それは、“学びの場”は学力向上のためだけにあるのか、ということ。友人と無駄話をしたり部活に打ち込んだり、コミュニケーション能力を高め協働性を磨く場でもある。EdTechに100%傾倒してしまうと、完全個人主義の学習となりかねなく、“人とのつながり”がおろそかにはならないか……。塾や自習ならばよいが、公共教育の場にEdTechをどのくらい活用するのか、バランスが難しいと感じた。

そしてもう一点。これは完全にどうでもよいくだらないことだが、EdTechのワードを聞いたとき「江戸テック」というのを連想した。今はなき東京・多摩地区のテーマパーク「多摩テック」の派生のようで、少し和んだ(笑)。

まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏

さて、しょうもないダジャレはさておき、EdTechによるひとつの可能性を示す事例が紹介された。それは、過疎に悩む地方の教育機関での活用例だ。それについて、まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏が解説した。

石川県・能登町も過疎に悩む自治体のひとつ。教育を必要とする子ども世代が激減し、それにともない学校の統廃合が進んだ。もともと農業系だった能登高校に水産系高校が統合されたが、最初は多様な一次産業を学ぶ高校として期待された。

町営塾の開設で“高校魅力化”

まちなか鳳雛塾の授業風景(提供:Studyplus)

ところが、町内の中学校からは町外の高校に進学する生徒が目立った。これは、一次産業を学ぶよりも確実に大学進学を目指せるほかの高校に人気が傾いたからだ。そこで、能登高校では学校内に公営塾を設置。大学進学を目指せる環境を整えた。さらに公営塾を発展させ、高校の外に町営の「まちなか鳳雛塾」(ほうすうじゅく)を開校。町内中学校からの進学者を増やすことに成功した。

ただ、大きな問題がある。大学進学のための専門知識を持った指導者が不足しており、映像授業に頼らざるをえない。ただ、映像授業では生徒の学習進捗状況や理解度を把握するのが難しく、適切な指導につながらない場合も考えられる。

そこで、前出したような学習管理アプリを導入。映像を使ったリモート学習をサポートする体制を強化した。また、能登町は平成の大合併で生まれた広い自治体のため、通塾に難がある生徒の指導にも効果があるという。

地方の自治体にとって“高校魅力化”は、ひとつのテーマだ。高校に生徒が集まらず廃校となってしまうと、子育て世代がその自治体にとどまらず、さらなる人口減少となり、中学校や小学校の統廃合におよぶという悪循環につながる。EdTechをうまく活用すれば、高校魅力化の一助になるかも知れないが、地方の教育機関には長いこと続いた“保守的な教育”にこだわる指導者も多く、なかなかICT化が進まないところもあると聞く。

冒頭の佐藤氏は、こんな表現をしていた。「100年前の医師と学校の先生が現代にタイムスリップしてきた場合、医師は施術を行えないだろう。だが、先生は授業を行える」。昔の医師は先端の医療機器は使えないが、先生は黒板とチョークがあれば授業できるというたとえだ。やはり、教育現場のイノベーションは早急に進めるべきだろう。