2020年にパナソニック超え目指すダイキン、鍵は「新ジャンル開拓」

2020年にパナソニック超え目指すダイキン、鍵は「新ジャンル開拓」

2017.09.30

「ルームエアコンの世帯普及率は92.7%に達する成熟市場。だがダイキンは、新たな空調文化を提案して2020年にルームエアコントップシェアを目指す」――。

ダイキン工業はルームエアコンの新製品として、高機能ルームエアコン「うるさら7」と、スタイリッシュエアコン「risora(リソラ)」、非居室向けエアコン「ココタス」の3製品を発表した。主力の「うるさら7」だけではないミッドレンジ製品のラインアップ強化と、新たな市場となる非居室向けエアコンを投入することになる。

ダイキン工業 常務執行役員 空調営業本部 本部長の舩田 聡氏は、「エアコンの設置場所を増やし、ルームエアコン市場全体を拡大する。過去最高となる1000機種のラインアップを揃え、トップシェア獲得に挑む」と、新ラインナップへの意気込みを語る。

1958年に「ウィンドクーラー」を発売したダイキンは、住宅空調事業に参入してから60年目の節目を来年迎える。エアコンは、今回発表した製品が2018年に向けた主力製品。つまり、60周年の節目がすでにスタートしているともいえ、ダイキンは節目において、トップシェアに向けて攻勢をかけることを宣言した格好だ。

ダイキン工業 常務執行役員 空調営業本部 本部長 舩田 聡氏
1958年にダイキンが発売したウィンドクーラー

国内ルームエアコン市場で先を行くパナソニックが、20%強のシェアであるのに対し、ダイキンのシェアは20%弱。数ポイントのシェア拡大で逆転できる射程距離の中にあると言ってもいい。舩田氏は、今回発表した製品に加えて、普及価格帯のルームエアコンや空気清浄機、除湿専用機の新製品も投入予定と語り、「日本の住宅空調をもう一度創造する」と強調する。

うるさらとrisoraは基本性能アップ

今回発表した製品は、トップシェア獲得に向けた戦略的製品だ。ルームエアコンのフラッグシップとなる「うるさら7 Rシリーズ」は、2013年のうるさら7登場以来、今回の製品が6代目となる。

高機能ルームエアコン「うるさら7」

暖房運転開始時に人に風を当てない大風量の温風吹き出しと、圧縮機の性能をさらに引き出す新制御技術によって、従来モデル比較で設定温度への到達時間を20%短縮した「ヒートブースト」制御や、冷房運転時にも同様に圧縮機を制御することで除湿量を増加させ、快適な湿度への到達時間を40%短縮する「クールブースト」制御を実装した。

また、通常の暖房運転より運転開始時の冷媒温度を早く高める「低温ブースト」制御によって、マイナス10℃の低外気温時でも、エアコンの運転を開始してから温風が吹き出すまでの時間を従来比で45%も短縮している。

基本機能を強化した今回の新製品は、まさに、ルームエアコンとしての正常進化を遂げたといえる。

一方で「risora」は、デザイン性と機能性の両立にこだわり、空気と空間で心地よさを提供するミッドレンジのルームエアコンと位置づけている。「理想の空間の一部になり、心地よさを届ける」というコンセプトから、理想、空という言葉を盛り込んで「risora」のブランド名をつけた。

スタイリッシュエアコン「risora(リソラ)」

インテリアに馴染む形状や素材の質感など、デザイン性を追求したほか、室内機は業界最薄となる奥行き185mmを実現し、前面パネルは自動車の内装部品などにも使用されている5層の表面加飾技術を施した。木目やツヤ、織目などの多彩な質感によって、多様化するインテリアのニーズに対応しており、7種類(大手家電量販店では2種類)のバリエーションを用意し、それをベースに100機種をラインアップした。

また、冷房時の「天井気流」と暖房時の「垂直気流」といった独自の気流制御や冷房除湿制御技術、「人・床センサー」による暖房時の室内温度ムラの解消など、最新技術によって空気の心地よさを実現するという。発売は2018年3月30日で、2018年度中に5万台の出荷を目指す。

さらに、既存製品セグメントだけでなく、新セグメントの製品「ココタス」も用意。これは、洗面所やキッチン、廊下といった非居室の小空間にも設置できる業界最小サイズの小空間マルチカセット形エアコンで、冷房能力0.8kW、暖房能力1.0kWで、2畳~3畳の空間に合わせた能力を持つ。

ダイキン独自のインバーター制御と低回転で効率のいいスイング圧縮機を組み合わせたほか、低流量での冷媒コントロールが可能な新規電動弁の採用により、最低能力200Wを実現。設定温度到達後も、きめ細やかな運転で快適な温度にコントロールする。

非居室向けエアコン「ココタス」

キッチンや洗面所、廊下などは暑さや寒さを感じやすい空間で、高齢者が冬場の入浴後に寒い洗面所に出て急激に体温が下がり、ヒートショックで倒れるといった住宅内の温度差による問題が生じている。ダイキンはこの問題を解決できる製品と位置付けており、2018年2月27日に発売、2018年度に1万台の出荷を目指す。

2017年は堅調、60周年で飛躍なるか

ダイキンのトップシェア獲得に向けた取り組みは、飽和した成熟市場で他社のシェアを奪うのではなく、新たな市場を創出して存在感を発揮するのが基本戦略だ。

「うるさら7は安定的な売れ行きが見込める市場に向けた製品。その一方、ミッドレンジの市場が拡大するなかで、risoraは、他社がやっていない領域の製品であり、ここでボリュームを狙っていく。そして、ココタスは、家のなかに快適空間を広げる新たな製品であり、新築でのニーズを中心に工務店などを巻き込んだビジネスになる」(舩田氏)

エアコン市場は気候による変動要因が大きく、2017年は猛暑の影響で好調な出足を見せたもの、首都圏では8月の長期間の降雨により失速した。それでも前年を上回る実績で推移しており、ダイキン自身も業界全体を上回る業績を記録しているという。

今回の新たな製品群は、ミッドレンジ市場における新たな市場創造という点で、シェア拡大にプラスαになる戦略的製品になる。そこにココタスが加わることで、需要変動の影響を大きく受けない、新市場開拓による+αが見込めることになる。

「今や、平均で一家に3.07台のエアコンが設置されているが、あらゆる空間を快適にする提案によって、さらにエアコンの設置台数を増やすことができると考えている」(舩田氏)

ダイキンの成熟市場における新たな提案は、市場拡大とシェア拡大を加速する提案になりそうだ。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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