ソフトバンク孫社長の「スプリントのV字回復」宣言は本物か

ソフトバンク孫社長の「スプリントのV字回復」宣言は本物か

2016.05.23

5月10日に行われたソフトバンクグループの2015年度3月期決算において、代表取締役社長の孫正義氏は同傘下の米携帯キャリア「スプリント」の「V字回復」など、反転攻勢に入ったことを宣言した。2013年7月の買収完了以降、重くのしかかる設備投資や販促費用からくる赤字体質と顧客流出に悩まされ続けてきたスプリントは、長らくソフトバンクにとってお荷物的存在だと考えられてきた。孫氏の宣言は本物なのかを検証しながら、米国の携帯電話業界とスプリントに起きつつある変化をみていく。

2015年度3月期決算発表会で、その時間の多くを割いてスプリントの業績改善とV字回復をアピールするソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏

「V字回復宣言」にまつわる根拠を探る

スプリントの業績の詳細は同社の四半期決算のプレスリリース(PDF形式)またはソフトバンクの決算説明会でのプレゼンテーション資料(PDF形式)を参照してもらうとして、現在のスプリントと米携帯キャリアをとりまく状況を簡単に説明する。

まずスプリントで特に問題だった点として、営業赤字が長年にわたって続いたことで流動資産としてのキャッシュが枯渇していたことが挙げられる。

例えば、同社会計年度で2014年度(FY2014)には345億ドルの売上があったにもかかわらず、営業経費が364億ドルもかかっているため、トータルとしては19億ドルの営業赤字となっている。345億ドルという売上高は、日本の大企業の多くと比較しても高い水準であり、これだけの事業規模があるにもかかわらず利益をまったく生み出せていなかったということだ。

ソフトバンクが買収後にまず着手したのは徹底したコスト削減であり、FY2015は売上が322億ドルに減少しているにもかかわらず、営業経費は319億ドルと大幅に削減できており、結果として3億1000万ドルの営業黒字を達成している。スライドで孫氏が「過去9年で初の(通期)黒字」と表現したのはこの部分だ。コスト削減は買収完了から過去2年ほど継続しているが、ようやく結果として返ってきたといえる。

過去9年で初の通期黒字を達成したと強調する孫氏

コスト削減はもちろん「ムダ」という部分もあるものの、本来顧客獲得を行うためのマーケティング費用や店舗運営コスト、さらには将来への投資である設備投資の削減も招く可能性があるため、短期的には競合を優位にしてマイナス効果を生み出すこともある。こうした状況でもコスト削減を優先する理由は、まずは黒字化して「止血」を行うことを目指したからだと考えられる。

スプリントは昨年2015年夏にT-Mobileで契約者数で抜かれ、第3位から第4位へと転落している。勢いづくライバルの躍進を横目に、まずは自らの営業体質改善を優先したというわけだ。孫氏も強調していたが、キャッシュが枯渇することで短期的な資金繰りに目が行きがちになり、結果として高い買い物となるケースが少なくない。債務面での負担をソフトバンク側が保証することで、前述の黒字化と合わせて将来的な体力作りを目指し、それが一定の効果を得つつある。

完全とはいえないものの、基礎体力が整いつつあるのはおそらく間違いないだろう。問題は、これが本当にV字回復の反転攻勢につながるものかという点だ。目安の1つは契約者数とそこから得られる売上で、これを解約トレンドから純増トレンドへと転換させる必要がある。スプリントの契約者数全体でいえば昨年度比でプラスにはなっているものの、サービス販売による売上は減少となっている。原因は不明だが、ポストペイドのARPUがFY2014の59.63ドルからFY2015には53.39ドルへと減少しており、これがおそらく売上全体にマイナスに作用した可能性が高い。

契約者の"質"が重要に

次に決算報告のプレスリリースを参照してほしいが、スプリントの契約者数の推移を見るうえで「ポストペイド(Postpaid)」「プリペイド(Prepaid)」「ホールセールアンドアフィリエイト(Wholesale and Affiliate)」「チャーン(Churn)」の4つを重要なキーワードとして挙げておく。

ポストペイドは毎月利用料金を後払いするタイプの契約で、これが携帯キャリアのビジネスの基本となる。次がプリペイドで、ポストペイドと違って月額契約方式ではないため一定収入を得にくく、あらにARPUが低めに出やすいという傾向があるが、全体に料金が安めでユーザー数を獲得しやすいメリットがある。「ホールセールアンドアフィリエイト」というのはスプリントの特徴的なビジネスで、これは「M2M」や「MVNO」などスプリント回線の又貸しビジネスだ。伝統的に、この比率が他のキャリアに比べても高いのがスプリントの特徴で、仮にプリペイドの契約数と合算すれば全契約数の4割近くに達し、トータルとしてのポストペイド契約を圧迫してARPUを引き下げる要因にもなり得る。

5月10日のソフトバンクの決算会見でのスライドでも、ポストペイド契約が増加したことを孫氏は強調していたが、FY2015通年でポストペイド契約数が124万5000伸びる一方で、プリペイド契約数は130万9000減少している。つまりポストペイド+プリペイドの合算では逆にマイナスとなっているわけだ。

5月初旬に行われたスプリントの2015年度第4四半期(2016年1~3月期)決算決算で発表された最新のユーザー動向。ポストペイド契約数が大きく伸びている
米4大携帯キャリアでのポストペイド契約の純増数の推移を比較したところ。純増数でAT&TとVerizon Wirelessを同時に抜くのは初だという
米Nielsenが出している全米主要都市での4大携帯キャリアでのLTEダウンロード速度比較。具体的な計測方法や縦軸の数値は不明だが、「スプリントが最もネットワーク品質が高い」と説明する孫氏の根拠になっている

それでも先ほど契約者数全体が伸びているのは「ホールセールアンドアフィリエイト」の増加分に由来する。つまりプリペイドの顧客を捨ててでも、収益が安定しやすいポストペイド獲得を優先している状態だ。

また米国では携帯キャリア同士が互いの顧客を引き抜くためのキャンペーンが熾烈化していることでも知られているが、こうしたキャンペーンにつられる形での顧客流出が同時に問題となっている。この解約率を「移り気な顧客」と意味を込めて「チャーン」と呼ぶが、このチャーンをいかに引き下げるかが各キャリアにとって悩みの種だ。そしてスプリントは、近年の同社としては初の低水準となる1.61%をFY2015に達成している。黒字化の話と合わせ、このあたりが孫氏のいう「V字回復」の根拠となっているのだろうと推察する。

1~2年の経過観察は必要

2000年以降を振り返って、2桁成長も珍しくなかった米国の携帯電話契約者数だが、ここにきて踊り場に到達しつつあるという認識が広がっている。実際、すでに全米のキャリアを合計した契約者数は同国の全人口を突破しており、普及率は100%を超えているとみられる。そのため、特にポストペイド契約で新規顧客を獲得するのは難しいとの考えから、キャリア同士の引き抜き合戦のほか、2台目需要やM2Mなど、携帯回線をさらに活用してもらうためのサービスメニューを拡充する方向へとマーケティングが変化してきている。「Uncarrier」戦略を打ち出して急激に契約者数を伸ばしているT-Mobile USAを除き、各キャリアのポストペイド契約者数は微増または微減を繰り返しているのが現状だ。

今回、Verizon Wireless、AT&T、T-Mobile、スプリントの4大キャリアの決算が出揃う直前に、あるアナリストが出した予想では、ポストペイド契約ではT-Mobileを除き、残り3つのキャリアはすべて純減になるといった意見もあった。結果的にこの予想を大きく裏切る形となったわけだが、予想を上回る結果が評価される一方で、スプリントのこのトレンドが続くかは不透明な部分も大きく、その成果が確実なものかを検証するにはまだもう少し時間がかかるだろう。好調なT-Mobileも、増加する顧客と設備投資のバランスが維持できるかの分岐点に差し掛かりつつあり、場合によっては低下したネットワーク品質で顧客流出を招く危険性もある。いずれにせよ1~2年の経過観察は必要だ。

ポストペイドからプリペイド強化へ向かう米国市場のなぜ

そしてポストペイドでの増加が停滞しつつあるいま、各社の動きにも注目したい。先ほど「スプリントはプリペイド契約を犠牲にしている」と表現したが、まずはポストペイド契約で足下を固めつつ、プリペイドでも水面下での反転策を探っているようだ。

同社は現在、MVNOのVirgin Mobile USAと、買収で獲得したBoost Mobileの2つのプリペイド専業ブランドを抱えている。Boost Mobileは中間以下の比較的低所得層をターゲットとしたブランドとなっているが、一方のVirginはもともと若者や学生などを中心にサービス展開を行っていた。

だが、FierceWirelessのレポートによれば、現在VirginはTargetやBest Buyといった量販店から次々と姿を消しており、スプリントのキャリアショップまたはRadioShack、Kmartといった限られた場所でしか見られない状態だという。これは、今年後半にVirgin Mobileのブランドとしての再ローンチを計画しており、Boost Mobile買収で方向性を見失いつつあったスプリントのプリペイド戦略を改めて明確にする意図があるようだ。

米ワシントンDCにあるRadioShack店舗を2015年5月に撮影したもの。ちょうど店舗内でのスプリント商品の取り扱いがスタートしたところだが、完全に1店舗での営業というわけではなく、スプリントのサービスカウンターがRadioShack店舗内に間借りして存在するという同居体制になっていることが営業時間の違いからわかる。RadioShackとの提携の狙いは、固定費のかかるスプリント専門のキャリアショップの維持費を削減しつつ、より広いエリアに浸透を図るのが目的だ

ポストペイド契約では冴えないAT&Tだが、傘下のプリペイドブランドであるCricket Wirelessのほか、AT&Tが独自に立ち上げた「Aio」を合わせ、契約者数を大幅に伸ばしつつある。好調なT-Mobileも、プリペイドの専業ブランドとしてはMetroPCSを傘下に抱えており、こちらも契約者数を大幅に伸ばしている。Verizon Wirelessを除く各社が最近になりプリペイドに力を入れ始めた理由として、スマートフォン販売の停滞とポストペイドARPUの減少が背景にある。

先ほどスプリントでの例を出したが、他のキャリアでも過去2~3年ほどでポストペイドARPUが1~1.5割ほど減少する傾向が見られており、やや上昇傾向にあるプリペイドARPUとは対照的となっている。ポストペイドARPUとプリペイドARPUが接近しつつあるなか、AT&TとT-Mobileは積極的にプリペイド市場開拓に乗り出しているというレポートも出ている

米携帯キャリアはバンドル販売や契約縛りを強化

もう1つ興味深いのは、携帯キャリアがバンドル販売や契約縛りを強化しているトレンドだ。かつては米国で始まり、日本でもソフトバンクを通じて一般的となった「2年契約縛り」という商習慣だが、携帯キャリアが「販売奨励金(Subsidy)」を名目に、ユーザーの携帯端末購入に2年契約を条件に補助金を出すことで、安価に端末をバラ撒いて新規顧客を獲得しつつ、既存顧客をつなぎ止めるという一石二鳥の方式だ。

だが、年々上昇する端末価格と顧客の増加により、携帯キャリアにとって、販売奨励金の負担はばかにならず、AT&Tが2015年前半に撤退したのを最後に、米国では基本的に2年契約縛りの契約スタイルは消滅した。代わりに登場したのは「AT&T Next」のように、端末を割賦販売するだけでなく、1年継続利用など一定条件を満たせば分割支払いを完了しなくても新端末購入が可能になる「永続縛り」プランで、似たような仕組みは現在AppleもiPhoneで適用しつつある。2年縛り亡き後、他キャリアや他端末への流出を防止するのが狙いの仕組みだ。

バンドル販売とは、他の付随サービスを携帯のポストペイド契約とともに割引販売で提供する仕組みで、付随させるサービス内容によっては解約が難しく、かつサービスのセット販売で売上上昇も見込めるという両得の方法となっている。日本では光回線とのバンドルが比較的昔から一般的だったが、最近では保険や各種ローン、電気とのバンドルも登場し、キャリビジネスの横展開の好例となっている。

米国では、例えばAT&Tが買収した衛星放送の「DirecTV」とのバンドルが話題になっている。DirecTV契約時にはサービス割り引きがあるだけでなく、AT&Tの携帯回線でデータ通信の無制限プラン加入が可能になるというオマケ付きだ。最近ではAT&T回線を持っている筆者のメールボックスにも毎月のようにプロモーションのDMが届いており、いかに販売強化を行っているかがうかがえる。

新規契約ユーザーの伸びの鈍化や解約率増加に悩まされる米携帯キャリアは、あの手この手で引き留め策を模索。米AT&Tは、2014年に傘下に収めた衛星TV会社のDirecTVとの共同キャンペーンで、DirecTV契約のAT&Tモバイルユーザーには無制限データプランを提供。1月あたり上限22GBの条件がつくサービスを「無制限」と表現するのはいささか疑問だが、家族契約でのシェアプランを併用すれば月々の利用料を安く抑え込める
こうした背景もあり、現在筆者が契約しているAT&Tアカウントのメールボックスには、毎月のようにDirecTV契約のキャンペーンDMが送信されてくる。日本でも光回線などとのバンドル強化を携帯キャリア各社は進めているが、これは米国でも変わらない

変わるトレンドにどう対応するか

ようやく止血が終わり、徐々にテコ入れ効果が見えつつあるスプリントの業績だが、反転といくまでにはまだもう少し時間がかかりそうだというのが筆者の予測だ。特に、同社が目指すことになるとみられるT-MobileやAT&Tは、トレンドの先を進んでおり、今後2020年までの5Gへの投資を考えれば、かなり長い道のりであることがわかる。

スプリントの問題は治療されつつあるが、V字回復といくにはまだ時間がかかるか。孫氏の1~2年後の発言や動向に注目

孫氏は設備や端末の調達面での優位を強調するが、おそらくソフトバンクによるスプリントの買収効果は経営見直し以外の部分で、まだあまり効果を上げていないのではないだろうか。各社のサービスが横並びになりつつあるなかで、日本を地盤にしてアジア方面に強いソフトバンクと一緒になったというプラスαの部分をきちんと打ち出しつつ、スプリントならではのサービス面での特徴を出してほしいところだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。