ホンハイ傘下から1年、シャープ再成長の鍵は「テレビ」か?

ホンハイ傘下から1年、シャープ再成長の鍵は「テレビ」か?

2017.08.03

シャープが発表した2017年度第1四半期(2017年4月~6月)の連結業績は、同社が着実に回復の道を歩み始めていることを裏付けるものになった。

第1四半期の売上高は前年同期比19.6%増の5064億円、営業利益は前年同期の25億円の赤字から171億円の黒字に転換。経常利益は前年同期の223億円の赤字から改善して、171億円の黒字。当期純利益は前年同期の274億円の赤字から144億円の黒字となった。

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員 野村 勝明氏

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村 勝明氏は、「売上高は2桁以上の成長率を達成したのに加えて、営業利益が大幅に改善。そして、当期純利益は第1四半期としては、7年ぶりの黒字となった。また各セグメントでも黒字を継続しており、前年同期から大きく改善している」と、業績の回復ぶりを強調しみせた。

営業利益の改善に関しては売価ダウンで305億円、経費増で14億円のマイナス要素があったものの、「コストダウンおよびモデルミックスで244億円、販売増で220億円のプラス効果があった。競争力強化が改善の要因になっている」(野村氏、以下発言同氏)とした。

2016年8月に鴻海(ホンハイ)傘下で"再生"をスタートしてから約1年。野村氏は鴻海流の経営手法が成果に繋がったと語った上で、「戴正呉社長の強いリーダーシップによって、経営スピードが格段に早くなった。戴社長の経営手法が経営幹部に浸透したことで、3四半期連続の黒字にいたった」と自己評価する。

こうした業績の回復は、シャープの信頼を取り戻す結果に繋がった。「経営危機の時期は、設備投資にあたって着手金(前払い金)が発生していたが、これを要求されなくなった」。

第1四半期の連結業績と利益増減分析

好調なディスプレイ事業、第2四半期以降も「堅調に推移」

セグメント別では、「アドバンスディスプレイシステム」の業績回復が顕著だ。売上高は49.4%増の2496億円、営業利益が前年同期の68億円の赤字から、67億円の黒字に転換した。

「中国市場での販売拡大や、欧州市場におけるSKYTEC UMC LTDの子会社化がプラスに影響した。また、大手顧客向けスマホ用が好調に推移したほか、PC・タブレット向けの中型パネル、車載用パネルも好調。第2四半期以降もスマホ向けの受注で、今後も堅調に推移すると見ている」

今後は、中期経営計画の柱のひとつに位置づける「8Kエコシステム」への取り組みが鍵となるが、野村氏は「東京オリンピックの2020年度には、8Kエコシステムによる売上高を3000億円以上にしたい」と発言。8K関連製品の品揃えを強化し、「まずは社内で8Kエコシステム構築をしっかり進めていく」とする一方で、「その上で、お客様から望まれれば、8K液晶パネルの外販も検討する」とした。

さらに、有機ELパネルについては、「まずは、4.5世代の設備の開発、生産に向けて取り組んでいる。量産化の時期については、市場の流れを見定めながら、慎重に進めていく」と述べた。

苦戦したビジネスソリューションは「一過性」

一方、従来のIoT通信、健康・環境システム、エネルギーソリューションを統合したスマートホームでは、売上高が前年同期比4.2%増の1302億円、営業利益は同4.2倍となる99億円。「携帯電話事業の販路拡大効果や、プラズマクラスターイオン関連商品、洗濯機、掃除機が好調であった」とする。

さらに、カメラモジュール、電子デバイスを統合したIoTエレクトロデバイスの売上高が11.0%増の832億円、営業利益が3.5倍の17億円となり、「スマホ向けカメラモジュールの販売拡大や、レーザーおよび半導体などの独自デバイスの販売拡大が貢献している」という。

唯一、苦戦したのが、複合機などのスマートビジネスソリューション。売上高は6.9%減の721億円、営業利益が48.8%減の30億円。「サイネージを中心としたビジュアルソリューションが好調だったが、複合機の市場低迷がマイナスに影響した」とする。

だが、「第1四半期は、複合機の入れ替えに伴うリプレース需要が落ち込んだためであり、これは一過性のものである」と説明。「今後は、ディーラーの買収などを通じて挽回する計画であり、新規事業としてロボット関連も伸ばす見通しである」と意気込んだ。

セグメント別ではアドバンスディスプレイシステムが好調。スマートビジネスソリューションが営業利益こそ確保したものの、売上高は減少した

欧州市場の懸念は解消、課題は北米

今回の決算発表で注目されたのは、北米市場におけるテレビ事業の行方だ。

鴻海傘下前夜、前経営陣の決断によって欧州のテレビ事業は前述のUMCへ、北米のテレビ事業は中国のハイセンスに、それぞれシャープのライセンスを供与して販売する契約だった。しかし鴻海体制では海外テレビ事業の拡大を目指しており、欧米市場で直接テレビ販売ができない状況を打破する考えを持っていた。

2016年末、欧州市場では鴻海の資本力を背景にライセンス先のUMCをまるごと買収し、テレビ事業の再スタートが叶った。先にも触れたように、第1四半期決算におけるアドバンスディスプレイシステムの大幅な増収増益を果たした理由は、中国市場の拡販と欧州市場におけるリスタートだ。

しかし、残るピースとなる北米市場はハイセンスとの交渉が暗礁に乗り上げており、シャープ自身がシャープブランドでテレビ事業が行えない状況のまま。シャープは譲渡したシャープブランドの使用権について、差し止めなどを求める訴訟を起こし、ハイセンスを牽制しているところだ。

野村氏は「ハイセンスへの商標ライセンスの件に関しては、現在係争中であり、基本的にコメントは差し控える」としたものの、「一部報道で、ハイセンスの国際事業担当子会社副社長であるチュー氏が『シャープブランドによる米国におけるテレビ販売は、現在、前年比5割増と勢いががある』とコメントしていたが、我々が抱いていたハイセンスに対する期待とは、大きなギャップがある」。

訴訟と並行して別ブランドによる再参入も検討

契約上、ハイセンスは北米市場で2020年までシャープブランドを使用したテレビを販売できる。こうした状況から、「ハイセンスからのブランドの取り戻しを進めているが、同時に、別ブランドでの販売を検討している」と、別ブランドによる北米テレビ市場への再参入も目指す。

同社が2018年度に掲げるテレビ出荷台数の計画は、年間1000万台。これを達成するには、成長が鈍化している日本市場よりも、鴻海との協業による中国市場の拡販、UMCの子会社化による欧州市場、そして北米市場における数量の上乗せという面を押さえる戦略が必要になる。

訴訟や別ブランドによる再参入は"鴻海流"ともいえる強攻策だが、ふたたび大きく成長するには必要不可欠なブースターであり、同社の将来を左右すると言っても過言ではないだろう。「AIoTプラットフォーム」という注力領域のビジネスが加速しつつあるシャープだが、話題の中心はやはり「ディスプレイ」。しばらくはハイセンスをめぐる動きから目が離せない。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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