iPhone 8に答えあり、アップルが中国市場で苦戦するワケ

iPhone 8に答えあり、アップルが中国市場で苦戦するワケ

2017.08.05

アップルが発表した2017年第3四半期(4~6月)は、iPhoneの販売がアナリストの予想を上回り、またiPadの販売台数が長い下落トレンドに終止符を打ったことから、好決算となった。主力製品の不安を払拭したことに加え、サービス部門、Mac部門も販売台数増、売上高増を揃え、全てのカテゴリーで成長を記録することができた。

アップルは決算ごとに、数字をまとめたサマリーを公開する。そのサマリーには、前述のような各ビジネス部門の売上高や販売台数に加え、地域別の売上高の推移についてもまとめられている。そのサマリーの中で唯一のマイナスが就いていたのが、大中華圏での売上高。前年同期比10%減は、ここ最近の大幅なマイナスと比べれば、マシな方、と評価した方が良いのかもしれない。

爆発的な成長の反動が続く

アップルは2014年に発売したiPhone 6を、1つの「外れ値」的なイベントとして認識している。もちろんそうなることを狙って起こしたことではあるが、過去のiPhoneの販売と買い換えサイクルとは異なる、インパクトの大きなモデルと位置づけている。

iPhoneの好調な売上を記録した2017年第3四半期決算のカンファレンスコールでiPhoneの買い換え需要の高まりについて、「アップルがこれまで経験してきた傾向と同じ」と指摘したが、「iPhone 6を除いて」との言葉が付け加えられた。

iPhone 6はこれまで4インチだったスマートフォンを、4.7インチへと拡大させ、さらに大きな5.5インチのディスプレイを備えるiPhone 6 Plusを追加した。これにより、競合となるAndroidスマートフォンの大画面化競争に対して一定の答えを出すことができ、大画面を好むユーザーのiPhone離れを食い止めることにつながった。

iPhone 6シリーズを販売するホリデーシーズンに当たる2015年第1四半期決算では、販売台数を前年同期比46%増、売上高を57%増と、大幅な成長を記録した。

同時に、中国市場のiPhone販売の立ち上がりの時期を重ねることができ、大中華圏での売上高は2015年第1四半期に70%増、その勢いは継続し、中華圏で旧正月を含む2015年第2四半期も71%増となった。この2015年第2四半期のタイミングで、欧州を追い抜き、大中華圏はアップルにとって、米州に続く第2の市場規模へと拡大した。

iPhone 6の販売が反映された2015年1Qから売上が急増。2016年1Qまでは伸びたものの以降は前年同期を下回る状態が続いている(出典:アップル決算資料をもとに編集部作成)

その翌年、2016年の同じ時期の売上高を比較してみると、2015年がいかにすさまじい増加だったかを知ることができる。2016年第1四半期こそ、前年同期比で14%の増加を記録したが、2016年第2四半期には前年同期比26%減と、大幅な下落となった。それでも、iPhone 6投入以前の2014年第2四半期と比べて21.2%増となっている。

中国市場は、新型iPhoneを待っている

急激な成長に対する反動がまだ終わっていない、そんな状況を分析できるが、では中国市場における成長要因は何かを考えれば、答えは非常にシンプルだ。

中国市場は、新型iPhoneを待っているのだ。

iPhone 7は、iPhone 6シリーズのデザインを踏襲したスマートフォンであり、「全く新しい」「最新の」という形容詞を獲得することは難しいデバイスだ。もちろん、プロセッサやカメラ、防水など、スマートフォンの機能面での成熟は進んでおり、スマートフォンとしても非常に競争力のある存在だ。しかし、特に中国市場では、その「新しさ」を感じさせることが重要なようだ。

マイナーチェンジにとどまったiPhone 7では中国市場を魅了できなかったようだ

2017年第2四半期決算発表後にインタビューに応えたティム・クックCEOは、中国市場の低迷について聞かれた際、「次のiPhoneの噂」を1つの要因としてあげたのは印象的だった。

「次のiPhone」とは、ディスプレイの形式が有機ELディスプレイへと変わり、ワイヤレス充電への対応や新しい3Dカメラの搭載、そして全く新しいデザインとして生まれ変わるとの情報が飛び交う、「iPhone 8 Edition」(もしくはiPhone 8 Proなど)のことだ。

このデバイスは2017年9月中旬に発表されるとみられているが、「次のiPhone」の噂は2015年末から流れ始めていた。つまり、2016年発売のスマートフォンが「次のiPhone」ではないとわかると、もう1年待とうという意識を芽生えさせることになった、と考えられる。

また、中国市場ではWeChatが著しい成長を遂げており、直近の月間ユーザー数は9億3800万人に上る。チャットアプリとしてのコミュニケーション機能だけでなく、オンラインショッピングやモバイル決済など、様々な生活連携サービスを取り込んでいる。つまり、「WeChatさえ動けば困らない」環境が構築されているのだ。

アップルは中国でもNFCを活用したモバイル決済Apple Payをいち早く導入したが、より幅広いデバイスで利用できるバーコードによる決済が主流となっていること中国市場に対応するため、秋に配信するiOS 11にはカメラにバーコード読み取り機能を備えた。

ハードウェアの機能が重要ではなりつつある中国市場においては、やはりデザインが刷新される「次のiPhone」が、成長を取り戻すには不可欠である一つの理由とも言える。

周到な「地ならし」で「新しいiPhone」を迎える

アップルは中国市場においては特に気を使っている。

アップルは珍しく、iPhone 7のテコ入れ策として、リリースから半年たった2017年3月に、赤い(PRODUCT)RED Special Editionを投入している。しかし中国向けには、AIDS撲滅キャンペーンをうたわない、単なる「赤」モデルとして発売した。

(PRODUCT)RED Special Edition(出典:アップルプレスリリースより)

その理由は、中国国内におけるAIDS患者の増加と、これに対する政府への批判が存在し、その批判を助長する可能性を排除するため、と考えられる。中国では特に人気が出るであろう赤いiPhoneの販売機会を損なわないためだ。

また、中国のサイバーセキュリティ法への対応にも敏感だ。アップルは同法で定められている中国のユーザー向けのデータを中国国内に保存しなければならない、という規定に沿うため、10億ドルを投じてデータセンターの建設に取り組んでいる。

同法は中国政府における検閲強化につながるとして諸外国から批判の対象になっているが、ユーザーデータやメッセージの強力な暗号化を理由に、サイバーセキュリティ法遵守への理解を得ようとしている。

直近では、中国のApp StoreからVPNアプリを削除している。これも、許可を得ていないVPNアプリが違法となったことに対応したもので、カンファレンスコールでこの件について尋ねられたティム・クックCEOは「中国による強力なインターネットアクセスへの取締りが、一時的なモノであることを願う」と苦言を呈していた。

中国市場が待ち望んでいる「次のiPhone」の波を確実なものとするため、アップルは非常に神経質に周辺の環境や条件を整えていることが分かる。2017年7月18日には、Isabel Ge Mahe氏を、新設するポストである大中華圏担当副社長に指名し、今年夏後半から上海でその任にあたることを発表し、中国市場に対する体制を強化した。

Isabel Ge Mahe氏(出典:アップルプレスリリースより)

iPhone 8の発表は、2017年9月中旬、例年のスケジュールから考えると、発売は9月22日金曜日になると考えられる。発売から1週間が含まれる2017年第4四半期、全期間で販売される2018年第1四半期、そして中国の旧正月を含む2018年第2四半期の、次の3つの決算が、まずはじめのチェックポイントとなる。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。