VAIO新社長の趣味は自作パソコン、目指す未来は「ブランド価値向上」

VAIO新社長の趣味は自作パソコン、目指す未来は「ブランド価値向上」

2017.08.06

VAIO 代表取締役社長 吉田 秀俊氏

VAIOは8月1日、新社長就任挨拶と経営方針の説明会を開催。営業利益が前年の3.2倍になったことを明らかにした。6月に就任した代表取締役社長 吉田 秀俊氏は「(営業利益の拡大に)嬉しい3周年を迎えられた」と喜びを口にする。昨年の第3期決算公告によれば、2016年5月期の営業利益は1億8000万円であったため、3.2倍でおよそ5億7600万円の利益を確保したとみられる。

新社長の吉田氏は、JVCケンウッド一筋で取締役社長まで勤め上げた後、2011年に車載向け機器のオプトレックス副社長、2012年には電子部品のエルナーの社長を歴任した。前社長の大田 義実氏は商社の双日出身であり、「メーカーとは何か」を知らない人物と評されたこともある。だからこそ、高い技術力を背景としたEMS事業の立ち上げや、海外展開への足がかりを再び築けたと言える。では、吉田氏に求められる役割はどこにあるのか?

新社長の趣味は自作パソコン

吉田氏は、モノづくりの現場を知っているからこそ、「一緒に汗をかき、VAIOを盛り上げていきたい」と現場主義を貫く姿勢を冒頭から強調した。

「長いこと、家電メーカーで海外営業をやってきた強みが(自身には)ある。デジタル変革が進む中で、苦戦した歴史と経験に加え、直近の7年間は電子部品や車載機器メーカーで、品質と信頼性の重要性について学んだ。ハンズオンによる会社経営で、細かいところまで見ていきたい」(吉田氏)

趣味は自作パソコンで、現在稼働しているメンテナンス性を重視した観音開きの扉付きデスクトップPCで12台目。初めてPCメーカーに着任するとあって「VAIOから話をいただいた時は、喜びとともに光栄に感じた」(吉田氏)。その喜びを最大化するための自身に課したミッションは「4年先、5年先を見据えた企業価値の向上。『VAIOの価値』を高めること」と吉田氏は定義する。

そもそもVAIOはソニーのPC部門であり、Appleの故スティーブ・ジョブズ氏がVAIOを気に入っていたように、プレミアムブランドとしての地位を確立していた。しかし、売上規模を求めるあまり、価格競争や規模を取る普及帯のラインナップ拡充に追われ、慢性的な赤字体質が続いていた。その結果、経営資源の「選択と集中」の煽りを受け、2014年にソニーから切り離された過去がある。

このプレミアムブランドの地位を改めて取り戻すのが、VAIOの価値を高めるという目標でもあるだろう。ただし、PC専業メーカーでは製品の成功に収益が左右されるため、いつまでも業績が安定しない。そこで前社長の大田氏が始めたのがEMS事業、IT製品の受託開発だった。

EMS事業は「さまざまな業界から引き合いがあり、売上も好調。成長できる土壌が出来上がった」(吉田氏)。VAIOという単一企業として生き残るために組織のスリム化、製造部門と販売部門の一体化も推し進めた結果、「社員が日々の売上を確認できるようになり、自分たちが会社を守るという意識が高まっている」(吉田氏)。

この好循環を途絶えることなく継続するため、この日公表したのが中国市場への参入とVRソリューションの提供だ。

中国市場へは、リアル店舗の展開ではなく、同市場最大級のECサイト「JD.COM」と提携し、VAIO ZクラムシェルモデルとVAIO S13を販売する。当初は「安曇野製造、フィニッシュにこだわる」(VAIO 執行役員 副社長 赤羽 良介氏)とのことで、日本製の高品質を売りにする予定だ。

一方のVRソリューションでは、VR関連のソフトウェア開発、コンテンツ制作にノウハウを持つABALと提携、出資する。法人向けのハード・システムの導入・保守や、コンテンツ制作、企画などフルパッケージを用意することで「VRといえばVAIOとなれるよう」(赤羽氏)としており、第三のコア事業として成長を目指す構えだ。

ただしVRソリューションは、自社開発のVR機器を「必ずしも提供することは考えていない」(吉田氏)。ソフトウェア開発やコンサルティングといった利ざやの大きい事業だから参入するといった下心も見えるものの、どちらかと言えばEMS事業における「安曇野工場の強み」を活かした事業だとVAIOは説明する。

「VRは単に導入して終わりというものではない。専用のハードウェアをともなう以上、機器のチューニングや、選定フェーズのコンサルティングニーズがある。そこに安曇野の知見を活かせる」(赤羽氏)

安曇野工場の技術力の高さを背景に、EMS事業は業績安定に寄与したという
VAIO 執行役員 副社長 赤羽 良介氏

吉田氏はVAIOのブランド力再興を目指すとともに「筋肉質の体質を強化していく」と話す。それは、数量を絞ったプレミアムブランドとしての製品販売と、南米で行っているライセンス販売やEMS事業における堅実な収益性の向上、そして新たな事業への挑戦がバランス良く成功してこその結果となる。

ソニー時代に弱かった法人向けの体制を強化。営業部門も一体となったことで、顧客ニーズの組み上げに成功。現状の2倍とされる次期の売上目標に対しては、大口顧客の獲得を目指すという

足元では、ガートナーの調査で世界のPC出荷台数が2017年第2四半期も4.3%の減少、11四半期連続での減少というデータがある。PC事業はデジタル変革の波に明らかに押されており、iPhoneが収益の根幹にあるAppleはもちろん、Windows OSを提供するMicrosoftも事業戦略の根幹はクラウドにあると宣言している。

もちろん、タブレット端末として利用できるMicrosoftの「Surface」に代表される「2in1」のフォームファクターが人気を集めており、スマートOSのタブレット端末を押し返しつつある状況にある。しかし、この分野でVAIOはソニー時代に開発した「VAIO Duo 13」以降、製品を出していない。法人顧客からは「2in1のニーズがあると聞いている」(赤羽氏)とのことで、収益性の高いビジネスニーズが中心のVAIOにとっては製品戦略として対応が求められる状況にある。

4年、5年先を見据えた時、第2の柱、第3の柱が大木へと成長することも大切だが、やはりコンシューマが望むVAIOらしさを最終製品でいかに作り出せるかが、「『VAIOの価値』を高めること」に繋がるのではないだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。