トヨタとマツダが資本提携に踏み込んだ事情と両社の思惑

トヨタとマツダが資本提携に踏み込んだ事情と両社の思惑

2017.08.10

トヨタ自動車とマツダは8月4日に資本提携を発表した。これは両社の従来の包括業務提携を発展させて資本提携に踏み込んだもの。10月にトヨタがマツダに500億円で5.05%を出資し、マツダもトヨタに同額で0.25%を出資する。

資本提携を発表したトヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長

激変の自動車業界、生き残りで両社が一致

この資本提携にともない、両社は共同で米国に16億ドル(約1770億円)を投じ、合弁で新工場を建設する。このほか、電気自動車(EV)の共同技術開発、コネクティッド(つながる)技術の共同開発、先進安全分野における技術連携、商品補完の拡充を推進していくことで合意した。

トヨタとマツダは2年前の2015年5月に包括提携しており、この間、両社で資本提携を含めた協業化の検討を進めてきた。すでに両社の間では、トヨタがマツダにハイブリッド技術を供与したり、マツダがメキシコ工場で生産したデミオを米国でトヨタにOEM供給したりするなど、協力関係は深まっていた。

資本提携に踏み込んでの協業化は、自動運転や電動化など、自動車メーカーを取り巻く環境の劇的変化を受けて、生き残りを目指す方向で両社が一致したということだろう。

IT企業の参入に危機感

トヨタは「グーグル、アップル、アマゾンという新しいプレイヤーが現われ、前例なき闘いだ」という豊田社長の発言からも分かる通り、IT企業がモビリティ産業に参入することに強い危機感を持つ。「マツダという同志を得た」(トヨタの寺師茂樹副社長)というように、大きな枠でのトヨタグループ化で対抗していく構えだ。

グーグル、アップル、アマゾンといった企業を名指しし、自動車業界の変化に対する危機感をあらわにした豊田社長

マツダとしても、かつての米フォードとの資本提携関係が終焉した後、独自の開発や「ものづくり革新」を進めてきたが、将来にわたって各種先進技術への対応を図り、「マツダブランドを続けて生き残って行くため」(小飼社長)に、トヨタとの資本提携による協業化を明確にしたのだろう。

いずれにしても、トヨタとマツダの資本提携は、2年前の業務提携からある意味で時間の問題だったと見ているが、トランプ政権誕生による北米貿易協定(NAFTA)問題や、先進技術を巡る環境・安全対応の急激な変化が両社間の検討を急がせる要因となり、今回の合意発表に至ったのであろう。

さながら日本車連合の様相を呈するトヨタ周辺

資本提携発表の記者会見は、2年前の両社包括提携発表会見と同じ東京都内のホテルで行われた。今回は、豊田社長と小飼社長の両社長会見に続き、トヨタから寺師副社長、マツダから丸本明副社長が登壇し、両副社長による会見が行われたのも異例のことだった。

トヨタとマツダの両副社長は参謀役であり、両社の業務提携では具体策検討のまとめ役でもあった。それだけに、今回の資本提携に至る両社の協業化については、この2年間、水面下でじっくりと、かつ取り巻く経営環境の変化を睨んでの検討を進めてきたのであろう。それが今回、両社の第1四半期決算発表を終えたところでの資本提携となった。

トヨタ・マツダの資本提携は、トヨタがマツダに500億円で5.05%を出資する一方、マツダもトヨタに同額で0.25%出資するという、両社が株式を持ち合う形になることが注目された。これまで、トヨタの資本提携はトヨタからの出資がメインだったので、株式の持ち合いは異例だ。

同額を出資し合う形となる両社。トヨタの株式持合いは異例だ

トヨタは昨年夏にダイハツ工業を100%完全子会社化したほか、日野自動車に50.1%、スバルに16.7%、いすゞ自動車に5.8%を出資している。昨年秋には、スズキとの業務提携に関する発表も行った。これによりトヨタグループには、ダイハツ・日野の連結グループ企業と、スバル、いすゞ、マツダ、スズキが加わり、さながら日本連合の様相を呈している。

相互出資に至った背景に米国工場

なぜ、マツダとは相互出資による資本提携としたのか。「自主独立性を尊重し、切磋琢磨しながら持続性のある協調関係にする。だから資本を持つ形をとった」(豊田社長)と会見で答えたが、相互出資が決まった理由として大きいのは、米国における合弁工場の建設だろう。

トヨタとマツダは、米国に両社折半出資で年産30万台規模の合弁会社を設立し、2021年の稼働開始を目指していく。投資総額は16億ドル前後で、雇用は4000人規模を想定する。つまり、相互出資で調達した資金を合弁新工場の投資資金に充てるということだ。

トヨタ、マツダともに、米国市場はグローバル戦略の要であり、特にマツダは北米の生産拠点としてメキシコ工場を持つが、米国生産(フォード合弁工場)からは撤退していた。力を入れるSUVの米国生産は、トヨタとの合弁工場で実現できることになる。新工場でトヨタは米国市場供給車種の集約を図り、将来的なEV生産も視野に入れる。

EVにコモディティ化の懸念、“クルマの味付け”が共通の課題

トヨタはマツダとの合弁新工場により、北米生産の効率化と見直しを図ることになる。「トランプ米大統領の発言は全く関係ない」と豊田社長は発言したが、トランプ氏は早速「米国の製造業への素晴らしい投資だ」と評価した。NAFTAの今後の動向もあり、新工場建設の動きからは政治的な配慮も読み取れる。

米国での合弁工場が、トヨタとマツダが資本提携に踏み込む決め手になったのは間違いないが、電動化への大きなうねりや、自動運転やコネクティッドカー(つながるクルマ)を見越した技術連携の必要性が、両社による協業深化の方向性に拍車をかけた側面も見逃せない。

特にEVについては、「ブランドの味を出す挑戦」(豊田社長)であり、「走る喜びを感じられるEVをどう出すか」(小飼社長)との共通項をもって共同技術開発を進めていくことになる。

EVで個性を出すことの難しさに言及し、クルマをコモディティ化させたくないとの思いを語った豊田社長

マツダは長らくフォードとの資本提携関係にあったが、提携解消後は「ものづくり革新」で設計や開発体制を一新し、独自の内燃機関進化によるスカイアクティブ(SKYACTIV TECHNOLOGY)商品群を拡充している。将来への成長投資として、研究開発費も今期は1400億円と前期の1269億円から増やしているが、トヨタが今期の研究開発費として1兆600億円を計上しているところから見ると、彼我の差は大きい。

多様な先進技術に対応していくには、単独で全てにおいて競争力を持つのは難しい。トヨタとの協業により、「小さくてもマツダブランドを極める」(小飼社長)ことで、マツダは独自性を磨いていけることになる。

マツダはブランドの独自性を極めたいところだ

大枠のグループ拡大で攻めるトヨタ、気になるスズキの動き

トヨタはマツダとの資本提携発表会見に先立つ第1四半期の決算発表にて、今期の通期見通しを上方修正し、トヨタの競争力強化に向けた取組みとして「明日を生き抜く攻め」を強調した。トヨタのいう攻めとは、自動運転、AI、次世代環境車といった重点分野への研究開発シフトとM&Aを含む多様な技術力の確保だ。

マツダとの資本提携もトヨタによる攻めの戦略の一環であり、大きな枠でのトヨタグループ化を一気に進めようとする経営スタンスに変わってきているのだ。

その意味では、業務提携を水面下で検討しているトヨタとスズキの関係も、資本提携による将来的な協業化を通じた、生き残りへの方向に結びつきそうだ。今後はスズキの動向が注目されよう。

公認大会の総賞金は1億円越え! 日本eスポーツ連合の「今年」と「未来」

公認大会の総賞金は1億円越え! 日本eスポーツ連合の「今年」と「未来」

2018.12.14

JeSUが発足初年度の活動総括と来年以降の取り組みについて発表

年間の公認大会は34大会、賞金総額は1億円を超えた

今回ビックカメラが新たなスポンサーに加わることが決定

2019年以降も国際的なeスポーツの取り組みに力を入れるという

12月13日、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)は、今年1年の実績と来年に向けた活動について発表する記者説明会を開催。まずは、今年の実績について、岡村秀樹会長から説明が行われた。

JeSU会長 岡村秀樹氏

設立初年度でJeSU公認大会の賞金総額は1億円オーバー

JeSUは今年1月22日に発足し、2月1日から活動を開始。日本におけるeスポーツの振興を目的に活動を進めており、2月に開催した「闘会議2018」では、JeSU認定タイトルの制定とプロライセンスの発行を行った。

岡村氏は「ライセンスの発行によって、賞金付きeスポーツ大会の開催を実施しやすくなりました。設立初年度に行われた公認大会34大会の賞金総額が1億2977万円を記録し、JeSUの活動として、これは成功したと言えるでしょう」と胸を張った。

今年1月に発足し、2月より活動を開始したJeSU
2月に開催した闘会議では16人にプロライセンスを発行。同イベントでは賞金総額2815万円のeスポーツ大会も実施された
JeSUのライセンス認定タイトルは11タイトルまで増えた。公認大会は合計で34大会。賞金総額は1億円を超えた

6月には「アジア競技大会」の国内予選を行い、ジャカルタ パレンバンに3名の選手を派遣。『ウイニングイレブン』部門では、見事、初の金メダリストが誕生した。

9月の「東京ゲームショウ2018」では「e-Sports X」ブースを設置し、フェイエノールトと浦和レッズの『FIFA 18』国際親善マッチをはじめ、さまざまなeスポーツイベントをサポート。そして、11月に台湾で開催された「第10回 eスポーツ ワールドチャンピオンシップ」では、『鉄拳7』の破壊王選手が銀メダルに輝き、デモンストレーション競技として急遽採用となった『モンスターストライク スタジアム』の日本チームは、金・銀メダルを独占する快挙を成し遂げた。

また、上記のような大会開催や国際大会への選手派遣だけでなく、JeSUは国際eスポーツ連盟(IESF)の正規会員登録という実績も残している。

これらJeSUの貢献もあってか、eスポーツという言葉自体の認知度も格段に上がり、「新語・流行語大賞のトップテン入り」や「ヒット商品番付の小結」にも選ばれた。

台湾で行われた「第10回 eスポーツ ワールドチャンピオンシップ」では、『鉄拳7』で破壊王選手が銀メダルを獲得。『モンスト』もデモンストレーション競技に採用された
IESFの正会員加盟も決定。「準加盟で実績を積んでから正会員へ昇格する」というのが一般的なケースであるが、今回日本は異例のスピード加盟を実現した
話題の言葉として「eスポーツ」が認知されつつある
eスポーツは来年の国体の文化プログラムとしても採用された

なお、今回の説明会では、新たにビックカメラが公式スポンサーの仲間入りを果たしたことも発表された。

これまでのスポンサー6社にビックカメラが加わった

闘会議とJAEPOでは日本代表vsアジア代表の国際戦を実施

次に来年、「闘会議2019」と「ジャパン アミューズメント エキスポ(JAEPO)2019」と同時に開催される「eSPORTS国際チャレンジカップ~日本代表vsアジア選抜」について、JeSU副会長の浜村弘一氏から発表があった。

この選抜大会は、JeSUとアジアeスポーツ連盟(AESF)による共同開催で、2団体が承認する4タイトルで対戦する。競技タイトルに選ばれたのは、『ウイニングイレブン 2019』『Counter-Strike:Global Offensive』『ストリートファイターV アーケードエディション』『鉄拳7』。選抜選手や競技方法などは、近日中に発表する予定だ。

JeSU副会長 浜村弘一氏
闘会議2019、JAEPO2019と同時に開催される「eSPORTS国際チャレンジカップ~日本代表VSアジア選抜」。賞金総額は4タイトル合計で1500万円

最後に、地方のeスポーツプレイヤーの育成や支援、イベントの開催などを後押しするための、JeSU地方支部開設について発表された。

まずは、JeSUの前身である日本eスポーツ協会時代の地方支部として機能していた11団体を、JeSUの地方支部として認定。今後も地方支部の数は増やしていく予定だが、早急に事を進めることはせず、実績を積んだ団体に対してじっくりと審査を行い、認定していくとのことだ。

1月21日より活動が開始されるJeSUの地方支部。地方のeスポーツ活性化を後押しする。開設されるのは、北海道eスポーツ連合(金子淳)、山形県eスポーツ連合(成澤五一)、富山県eスポーツ連合(堺谷陽平)、石川県eスポーツ連合(島倉福男)、東京都eスポーツ連合(筧誠一郎)、静岡県eスポーツ連合(山崎智也)、愛知県eスポーツ連合(片桐正大)、大阪府eスポーツ連合(管野辰彦)、兵庫県eスポーツ連合(五島大亮)、岡山県eスポーツ連合(本村哲治)、大分県eスポーツ連合(西村善治)の11支部(1月21日より)。()内は会長名

課題ややるべきことが山積しているJeSUにとっては、まだまだ通過点ですらない状態ではあるが、それでも1年目として十分な成果を上げたのではないだろうか。浜村氏は説明会で「IPホルダーができないことをやっていく」と述べたが、来年以降も国と国の折衝や国への働きかけ、国際大会への進出などに期待したいところだ。

サブスクリプション導入の日本語入力システム「ATOK」、次の展開は?

サブスクリプション導入の日本語入力システム「ATOK」、次の展開は?

2018.12.14

ジャストシステムが「ATOK」「一太郎2019」を発表

スマイルゼミが成長を牽引し、上場以来の最高益を達成

枚方(ひらかた)を「まいかた」から変換できる新機能も

ジャストシステムが日本語入力システム「ATOK」の最新版や、校正機能などを強化した日本語ワープロソフトの最新版「一太郎2019」を発表した。

クラウド型通信教育「スマイルゼミ」が好調のジャストシステムだが、PCユーザーにとっては長らく看板製品となってきた一太郎やATOKのほうが馴染み深い人も多いはずだ。その最新版からジャストシステムの狙いを読み解いていく。

ジャストシステムが最新の「ATOK」や「一太郎2019」を発表

好調な業績を背景にサブスクリプションに移行

2009年にキーエンス傘下となったジャストシステムは、2010年から業績を安定して伸ばしている。2018年度上期の営業利益と経常利益はともに約47億円強で、株式上場以来の最高益を達成するなど好調が続いている。

その好調を支えるのがタブレット端末を利用したスマイルゼミだ。従来の小学生コース、中学生コースに加え、12月1日には小学校入学までの学習需要をターゲットにした「幼児コース」を追加するなど、対象年齢を拡大している。

その好業績を背景に、2017年12月にはATOKのビジネスモデルを大きく刷新した。それが「パッケージからサブスクリプションへの移行」だ。店頭やダウンロードで販売してきたパッケージ版を廃止し、月額制のサブスクリプション「ATOK Passport」に一本化。「ATOK 2017」を最後に、製品名から「2017」などの発売年によるナンバリングがなくなった。

こうしたパッケージからサブスクリプションへの移行は、米Adobeなど大手ソフトウェア企業が採用したことで世界的なトレンドになっている。以前は毎年のバージョンアップで機能を追加し、乗り換えを促してきたのに対し、月額制ではより細かいサイクルで改善していくことが可能になり、安定した収益を確保できるなどメリットは大きいとされる。

グーグルやマイクロソフトは無料で日本語入力ソフトを提供していることもあり、毎月料金を取られることを不満に思う人もいるだろう。だがATOKはクラウドを利用した学習データの同期や、辞書にない流行語を追加するなど、サービスも充実している。日本語の変換効率の高さを重視する人なら、サブスクリプションは納得感のある内容と言えそうだ。

変換に機械学習を取り入れ 課題はiOS

毎年の大きなバージョンアップはなくなったATOKだが、近年は日本語入力の効率を大きく向上させる可能性のある技術が出てきた。それがディープラーニングなどの人工知能分野の技術だ。

日本語は同音異義語が多く、ひらがなを漢字に変換する場合、入力者が思い浮かべた単語をいかにして予測するかが効率を左右する。ATOKは前後の文脈を考慮したルールに基づいて変換してきたが、ディープラーニングによりルールにない日本語の特徴をとらえることができるという。

その「ディープコアエンジン」をATOKは2017年に搭載。さらに今回はサブスクリプションの上位版で利用できるAndroidアプリ版にも搭載し、モバイルの入力効率を改善してきた。画面の大きさに限りがあるスマホでは、文字入力や変換候補の選択がよりシビアになるだけに、確実な効率アップにつながりそうだ。

Android版にもディープコアエンジンを搭載

Windows版の新機能としては「地名入力支援」機能を搭載。「枚方」(ひらかた)を「まいかた」でも変換できるようになった。こうした誤った読みに対応することで混乱を助長する恐れはあるものの、変換できなければグーグル検索で調べることもできないのが現実だ。そこでジャストシステムは漢字には変換しつつ、本来の読みも表示するという方法で要望に応えた形だ。

「枚方」(ひらかた)を「まいかた」でも変換できる

iOS機器での使い勝手向上に期待

一方、大きな課題として残っているのがiOS対応だ。ATOKは最新のiOSでも利用できるものの機能制限は多く、App Storeの評価は5段階中2.8と低迷している。世界でも類を見ないほどiPhoneのシェアが高い日本で、なぜiOS向けに注力しないのか疑問の声は多い。

背景には、iOSがセキュリティ上の理由からサードパーティの日本語入力ソフトの振る舞いを制限している事情がある。スマホの文字入力は個人情報やパスワードを扱うことから最もセキュリティレベルが高い機能と位置付けられており、ジャストシステムとしても手を出せないという。

特に、仕事用タブレットとして大きく進化したiPad ProにおいてATOKの使い勝手の向上を望む声は大きい。ビジネスの現場における生産性向上に期待したいところだが、その実現はもう少し先になりそうだ。