「IoTの雄」ソラコム、通信大手の中でKDDI傘下の道を選んだ理由

「IoTの雄」ソラコム、通信大手の中でKDDI傘下の道を選んだ理由

2017.08.17

設立3年目のベンチャーながら、独自の技術によりIoT向けネットワークの分野で大きな注目を集め、急成長を遂げてきたソラコム。そのソラコムが8月にKDDIの子会社となることが発表されたのだが、なぜソラコムは独自路線を貫くのではなく、たった3年で大手通信会社、しかもその中からKDDIを選んで子会社になったのだろうか。

事業拡大だけでないソラコムの狙い

去る8月2日、国内通信大手のKDDIが、通信系ベンチャー企業のソラコムを子会社化すると発表し、大きな驚きをもたらした。しかも一部報道によれば、その買収額は200億円規模とも伝えられており、もしこの数字が本当だとするならば、国内ベンチャー企業のM&Aとしてはかなり大規模な買収劇となる。

8月8日のKDDI・ソラコム共同会見より。IoTベンチャーとして注目されていたソラコムが、設立3年でKDDIの子会社になることを選んだのには大きな驚きがあった

2014年の設立と、まだ歴史が浅いソラコムに、KDDIが大規模な資金を費やして傘下に収めたのはなぜかというと、モバイル通信のコアネットワークをクラウド上に構築した「SORACOM vConnect Air」と、それを活用したIoT向け通信サービス「SORACOM Air」の存在にある。SORACOM Airはクラウドを活用したことで低価格かつ柔軟性のあるサービスを実現。それがまだIoTの実績に乏しく、小さい規模で事業をスタートさせたい企業のニーズにうまくマッチし、事業拡大を続けているのだ。

だがソラコムは、既に大企業の顧客を抱えるなど豊富な実績を持ち、単独で海外進出も果たすなど、順風満帆にビジネスを進めていた。それだけに、なぜこのタイミングでKDDIの傘下に入る道を選んだのか、疑問を抱く人も多いようだ。

8月8日に実施されたKDDIとソラコムの共同説明会において、ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏は「ソラコム単独ではチャレンジだと感じた」点として、いくつかの課題を挙げている。その中には資金調達やグローバルでの事業拡大なども含まれているが、これらは急成長する多くのベンチャー企業が抱える課題でもある。

確かにKDDIの子会社となることで、それらの課題を一気に解消し、事業拡大に弾みをつけたい狙いは大きい。だがこの点はKDDIからの小規模出資による提携でもある程度補えたはずだ。あえて子会社化の道を選ぶには、それだけにとどまらない理由があるものと考えられる。

将来を見越すとMVNOの立場では限界も

それは事業の将来を考えた場合、MVNOという立場には限界があるということだ。実際玉川氏は課題の1つとして、「NB-IoT」など携帯電話のネットワークを活用したLPWAや、次世代通信の「5G」を用いたサービスを、素早く展開できないことを挙げていた。

KDDIはNB-IoTなど携帯電話網を用いたLPWAを今年度中に商用化するとしていることから、そのMVNOがこれらの通信方式を利用できるようになるのはさらに先のこととなる

これらのサービスをMVNOが利用するには、まず大手通信会社が対応するネットワークを整備し、さらにMVNOに貸し出す許可を下すまで待たなければならず、時間がかかってしまう。NB-IoTや5GなどはIoTを支えるネットワークの“本命”とも言われるだけに、いち早くそれらを利用するには大手の傘下に入るのが近道と判断したようだ。

そしてもう1つ、MVNOの限界点として挙げられるのが、携帯電話のコアネットワークのうち自社で構築できるのはごく一部にとどまり、大部分は携帯電話会社のネットワークに依存せざるを得ないことだ。ソラコムのクラウド技術をネットワークのより広い範囲で生かすには、MVNOに回線を貸す携帯電話会社の側に入る必要があったわけだ。

実際KDDIは今後、同社の次世代コアネットワークの構築に、ソラコムの技術や知見を生かす考えを示している。ソラコムの技術は、ネットワークの仮想化など最近のネットワーク技術のトレンドに通じる部分があるだけに、KDDIとしてもクラウドの技術に強みを持つソラコムを存分に生かしたい狙いがあるようだ。

KDDIはソラコムが持つクラウドの技術を、自社の次世代ネットワークに活用する方針も示している

KDDIとの接点にトヨタの存在あり

だがそうした狙いを実現するには、KDDIだけでなくNTTドコモやソフトバンクの傘下に入るという選択肢もあったはずだ。なぜソラコムは、数ある通信会社の中からKDDIを選ぶこととなったのだろうか。そこに大きく影響しているのは「未来創生ファンド」の存在であろう。

これは投資会社のスパークス・グループと、三井住友銀行、そしてトヨタ自動車が設立したファンドであり、ソラコムは2016年7月に、このファンドから出資を受けている。そしてソラコムはこの出資を受けた際、トヨタ自動車とKDDIが進めているコネクテッドカー向けのグローバル通信プラットフォームに技術やサービスを提供するとしていた。この出資を起点として、ソラコムとKDDIとの関係が生まれたわけだ。

未来創生ファンドに参加しているトヨタ自動車が、KDDIとコネクテッドカー向けのグローバル通信プラットフォームを開発していたことが、両社の接点を生み出したといえる

その後両社はKDDI IoTコネクト Airでの協業によって一層関係を深めることとなる。この協業で、KDDIの技術部門とソラコムがコミュニケーションを取り合う中、KDDI側がソラコムの実力を高く評価したことが買収へつながっていったと、KDDIは説明している。

KDDIは現在、IoTビジネス拡大のため、自社ネットワークを用いたIoTプラットフォームの拡大に力を入れており、ソラコムの買収によってそのプラットフォームが一層強化されることとなる。では他の2社は、そのKDDIとIoTの分野でどのように戦っていく考えなのだろうか。

自前主義で対抗する姿勢を見せるのがソフトバンクだ。同社は7月20日、独自の法人向けIoTプラットフォームを発表している。これはNB-IoTなどの携帯電話網を活用したLPWAだけでなく、LoRaWANなど幅広いネットワークに対応し、IoTデバイスや、そこから得られたデータを管理し、APIの開放によってほかのアプリケーションからも利用しやすい仕組みを作るとしている。

一方NTTドコモは、外部の企業と組むことでIoTプラットフォームの拡大を進めていく考えのようだ。その一例として、同社はコマツやSAPジャパン、オプティムと合弁会社を設立し、建設業界向けIoTプラットフォーム「LANDLOG」の提供を発表している。

NTTドコモはコマツらと合弁会社を設立し、建設業界向けIoTプラットフォーム「LANDLOG」を展開。“協創”によるIoTビジネス拡大に力を入れるようだ

ソラコムを買収したKDDIが、IoT向けネットワークの分野で優位性を獲得できたのは確かだ。だがその優位性を今後も継続していくためには、KDDIとソラコムの事業をうまくリンクさせ、いかに相乗効果を上げられるかが求められる。KDDIのIoTビジネスにソラコムがどの程度関与し、ビジネス拡大に貢献できるかは、今後の大きな注目ポイントになるといえそうだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。