スマホと連携強化! 「未来型自動販売機」でダイドーは巻き返せるか

スマホと連携強化! 「未来型自動販売機」でダイドーは巻き返せるか

2017.08.19

若い世代のユーザー獲得に向け、スマートフォンアプリと連携する「Smile STAND」に力を入れるダイドードリンコ。新たにゲームアプリとの連携や、地域情報を発信する機能などを追加して強化を図るが、最大の狙いとなる若い世代からの支持を得て、自動販売機を取り巻く厳しい状況を巻き返すことはできるのだろうか。

情報配信やゲームアプリにも自動販売機を活用

清涼飲料メーカーのダイドードリンコは現在、未来型自販機「Smile STAND」の展開に力を入れている。これはスマートフォンの専用アプリとBluetoothで連携し、自動販売機で飲料を購入するとポイントが貯まるというものである。

ダイドーの「Smile STAND」は、Bluetoothでスマートフォンと連携し、飲料を買うとポイントが貯まる自動販売機だ

同種の仕組みを採用する自動販売機は、日本コカ・コーラやキリンビバレッジも導入を進めるなどして最近増えつつあるものだ。だがSmile STANDがそれらと大きく異なるのは、自動販売機の中でサービスが完結しておらず、他のサービスとの連携を積極的に展開している点である。

実際Smile STANDで貯めたポイントは、単に自動販売機で飲料をもらうために用いるのではない。貯めたポイントの使い方は大きく2つ用意されており、1つは松坂牛やロボット掃除機など、さまざまな商品がもらえる抽選ができる「Smile SLOT」。そしてもう1つは、LINEのギフトコードや楽天スーパーポイント、あるいはオンラインゲーム用のポイントなどに交換できるというものだ。

Smile STANDは昨年の4月よりサービスを開始しており、今年2年目を迎える。そこでダイドーでは、Smile STANDに対して新たに2つの機能を追加し、利用拡大に向けた取り組みを進めるという。

1つは今年秋にリリースを予定している、「THE KING OF FIGHTERS D~DyDo Smile STAND」である。これはゲームベンダーのSNKと共同で開発したスマートフォン向けの格闘ゲームアプリ。Smile STANDと連動することにより、貯めたポイントを使って、ゲーム内のアイテムやキャラクターを手に入れることができるガチャを回すことができるのが最大の特長になる。

そしてもう1つは、9月4日より開始する「Smile Town Portal」というもの。これはSmile STANDでポイントを獲得した際、自動販売機周辺のさまざまな情報をスマートフォンに配信するもの。その第1弾として、リクルートライフスタイルの「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」に掲載されている、飲食店や美容院などの情報を配信するそうだが、今後は広告やクーポン、さらには地域情報の配信など、提供する情報の幅を広げ、新たな収入源にもつなげていきたいとしている。

9月4日に追加される予定の「Smile Town Portal」。ポイントを獲得すると同時に、レストランや美容院など地域のさまざまな情報が得られる仕組みだ

スマートフォン活用の狙いは若い世代の開拓

そもそもなぜ、ダイドーはSmile STANDを展開するに至ったのだろうか。同社の取締役 執行役員 経営戦略部 部長の笠井勝司氏は、8月17日に実施された新サービス発表会において、同社の主力事業である自動販売機を取り巻く環境の変化が、その背景にあると話す。 ダイドーは飲料メーカーだが、その販路の中心は自動販売機だという。実際同社は、全国に28万台の自動販売機を設置・保有しており、売上の80%が自動販売機によるものであるなど、自動販売機が同社のビジネスに欠かせないものになっているそうだ。

だが一方で、最近はコンビニエンスストアやスーパーの出店数が増加し、さらにドラッグストアでも飲料が購入できるようになるなど、飲料の販売チャネルが増えて消費が分散し、多様化しているとのことだ。自動販売機の市場は、そうした多様化の影響を受けて縮小傾向にあるだけでなく、主要な顧客層も40、50代と比較的高年齢層が中心であり、20、30代の若い世代に利用が広がらないという課題を抱えているのだそうだ。

コンビニエンスストアやドラッグストアなど飲料販売チャネルの多様化の影響を受け、20、30代の若い世代の利用をいかに増やすかが大きな課題になっているという

そこで同社では、20、30代を中心としたワークショップを実施し、さらに2014年12月からは、外部の企業から自動販売機の新しい価値を作り上げるアイデアを募る「アクセラレータープログラム」を実施。さまざまな手を尽くして若い世代を取り込むためのサービスを検討してきたという。

そうした中から生まれたのが、顧客と自動販売機の新しい関わり合いを生み出すため、スマートフォンを活用するというものであったという。それを具体的な形にしたのが、スマートフォンと自動販売機が連携するSmile STANDなのだそうだ。

実力を発揮するには稼働台数が足りない

同社の経営戦略部 事業開発グループの西祐介氏によると、サービス開始から1年が経過した現在、Smile STANDのアプリをダウンロードしたユーザーは30代が中心と、従来より若い世代に利用される傾向が強いとのこと。一定の成果を生み出したことから、よりSmile STANDの利用を増やすべく新たな施策を打ち出したようだ。

確かに自動販売機とスマートフォンの連携にはまだ可能性があると感じるし、単なるポイントの獲得にとどまらない、Smile STANDの取り組みは非常に意欲的ではある。だが一方で、Smile STANDにはまだ課題も多くあるように感じる。1つは、Smile STANDの提供で30代の利用者は増えたものの、20代のアプリダウンロード数は「全体の10%程度」(西氏)であるなど、まだあまり増えていないことだ。より若い世代に向けた訴求は、依然として大きな課題となっているようだ。

そうした課題をクリアするには、既に若い世代に人気のサービスと連携することが近道だろう。実際発表会でも、ポイントを若い世代が多く利用する「iTunes Card」や「Google Play ギフトカード」などに交換できないかという質問が記者から上がっており、こちらは交換レートなどを含め検討中だと西氏は答えている。

またSmile STANDと連携するゲームに関しても、オリジナルのものを用意するのではなく、既に若い世代に人気のゲームとコラボレーションするという手段も考えられる。だが西氏は、ユーザーの利用動向データを得て分析するにはコラボレーションでは難しいため、オリジナルのゲームアプリを用意する必要があったと話している。

自動販売機との連携に独自のゲームアプリ「THE KING OF FIGHTERS D~DyDo Smile STAND」を展開するのは、ユーザーの利用動向分析をする狙いが大きいという

そしてもう1つ、ある意味最も大きな課題となるのが、そもそもSmile STANDに対応した自動販売機の台数が、28万台のうちまだ2.5万台程度と少ないことだ。Smile STANDの利用自体を拡大し、広告収入を得るなど新たなビジネスにつなげる上でも、稼働台数を増やすことは必須だ。笠井氏は今年度内に5万台、将来帝には15万台の自動販売機をSmile STAND対応にしていきたいとしているが、早期に数を増やし、ユーザーへの認知を高めていくことが、同社にはいま最も求められているといえそうだ。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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