「気象データ+POS+人工知能」で食品ロス削減に進出する日本気象協会

「気象データ+POS+人工知能」で食品ロス削減に進出する日本気象協会

2017.08.22

近年、社会問題のひとつとして大きく叫ばれるようになった「食品ロス」。これは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、使い切れず廃棄される食品などのことを指す。この食品ロスの削減に意欲をみせているのが日本気象協会だ。

もともと日本気象協会は、経済産業省の「次世代物流システム構築事業費補助金」を活用した、「需要予測の精度向上による食品ロス削減および省エネ物流プロジェクト」に取り組んでいた。2014~2015年に実証実験を繰り返し、2017年に事業化を目指すとしていたが、いよいよそれが実現した格好だ。

人口減少による生産性低下をどうするか

日本気象協会 事業本部 防災ソリューション事業部 専任主任技師 本間基寬氏

まず、日本気象協会 事業本部 防災ソリューション事業部 専任主任技師 本間基寬氏は、「日本の人口が減少傾向になるなかで、いかに生産性を向上させるかが喫緊の課題」だとした。また、単なる人口減少ではなく、生産人口が減ることも大きな問題だと付け加えた。特に“経験と勘”を有した技能者が次々と引退し、国内の生産性に暗い影を落としているという。

そうした生産人口減少を補うものとして「IoT」「ビッグデータ」を挙げたが、「こうしたデータを持つ企業が十分に連携できていないのも問題」(本間氏)。複数の企業間でデータ連携を行っているのは1/4以下なのだそうだ。

では、この課題の多い生産性向上に対し、なぜ気象データなのか。もともと気象データは、電力や鉄道、自治体、海運といったインフラ企業・団体で活用されることが多かった。だが、日本気象協会によると全産業の1/3がなんらかの気象リスクを負っているが、気象データを活用している企業はごくわずからしい。そこで、インフラ企業以外の気象データ活用に向け、食品ロス削減に着目した。

まず、とうふをメインで扱う相模屋食品との連携実証を開始。とうふは賞味期限が短く、生産リードタイムが2日となる。小売業者からは納入の1日前に発注されることが多く、生産に2日間かかるとうふの製造業者は、見込みで生産しなくてはならなくなる。つまり2日前に100丁とうふを用意していても、90丁しかオーダーがなければ10丁のロスが生じる。さらに、天候や気温によって売れ行きが左右されやすい食品でもある。

そこで、日本気象協会の予測情報を小売業者が活用。小売業者が1日前に発注するのは、需要がどのくらいになるのかより正確に見極めたいためだが、日本気象協会の予測情報を使えば精度が上がる。そのぶん、1日前倒しして発注することで、製造業者側のロスを削減できる。2016年には見込み生産だった製造業者の誤差は8%だったが、2017年には0.4%までになった。一方、小売業者側の需要予測誤差も11.6%から9.2%になったという。

そして、この気象情報に人工知能を組み合わせて、さらに需要予測を高度化。天候や気温などから来店客数予測を行い、小売業者の発注精度向上、品出しの強化、適切な人員配置につなげるという。

POSデータと気象データの組み合わせ

また新たなサービス構築にも取り組んでいる。それはPOSデータと気象情報との連係。POSデータは“消費者の購買行動”を可視化できる、企業にとって非常に重要な情報だ。販売実績からの需要予測やマーケティングなどに活用されてきた。そのPOSデータと気象情報を組み合わせることで、より需要予測の精度を上げるというものだ。

「eco✕ロジ」の認定マーク

さらに、「製造」「配送」「販売」分野において、“気象✕データ”により需要予測を行う企業に対し、「eco✕ロジ」導入企業として認定するプロジェクトも開始。ecoはもちろん「ecology」の略、ロジは「ロジスティクス」(流通)のことだ。ねらったのか偶然なのかわからないが、eco✕ロジの「✕」を無視すれば「エコロジ」という発音になる。いかにもエコロジーを連想させるネーミングだ。

さて、日本気象協会といえば、気象衛星による日照量予測を太陽光発電事業者向けに提供するといった、単純な天気情報提供以外の事業を加速させている。今回の商品需要予測事業も、そうしたもののひとつ。前者は再生可能エネルギーの効率化、後者は食品ロスの削減と、メインで扱うのが気象情報だけに、環境問題解決の一助になるものに取り組みやすいのだろう。

最後に、まったくの余談だが、食品ロスを削減するこのサービスが広く普及したら、某テレビ系列の「○腕ダッシュ」の1コーナー、「○円食堂」での食材調達は、ますます苦労するだろうなと、素直に思った。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。