女性客が4割! 幅広いユーザーを獲得したバンダイナムコ「VR ZONE」の強み

女性客が4割! 幅広いユーザーを獲得したバンダイナムコ「VR ZONE」の強み

2017.08.23

新宿・歌舞伎町といえば訪日外国人も多く訪れる繁華街。飲みの街として有名だが、新宿ミラノ座の跡地にエンターテインメント施設「VR ZONE SHINJUKU」が7月にオープンした。名称の通り、「VR(仮想現実)」のゲームが楽しめる施設で、ほかにもカフェやクライミング設備も用意されている。

VRに関心を寄せるユーザー層は20代の男性だけ……と思いきや、女性比率がおよそ4割近くまで達しており、40代、50代まで幅広く利用者が増えているという。同施設の運営に携わるバンダイナムコ エンターテインメント AM事業部 VR部 ゼネラルマネージャーの柳下 邦久氏と、同事業部 AMプロデュース1部 プロデュース4課 マネージャーの田宮 幸春氏に話を聞いた。

バンダイナムコ エンターテインメント AM事業部 VR部 ゼネラルマネージャー 柳下 邦久氏と、同事業部 AMプロデュース1部 プロデュース4課 マネージャー 田宮 幸春氏

"ゲーセン"のレベルを超える体験を

「ゲーム体験」はかつて、ゲームセンターにあったアーケードゲーム機がすべてだった。それが家庭用ゲーム機の普及、娯楽の多様化など時代の移り変わりによって、ゲームセンターの存在意義も変わりつつある。

バンダイナムコ エンターテインメントでVR企画「VR ZONE Project i Can」を牽引する"タミヤ室長"こと田宮氏は、「今までは大掛かりな仕掛けで、大きな筐体(アーケード機)を使って『外遊びのエンタメ』を提供していたが、家では遊べない遊びを生み出していくためには"リアリティ"の価値提供を変えていく必要がありました」と話す。

リアリティの密度の高さに加え、もうひとつ必要なのが「友達と一緒に遊べる楽しさ」。その双方を高いレベルで達成できる仕掛けがVRだと田宮氏は話す。

VR ZONE SHINJUKU

「VRは、リアリティの追求とみんなで楽しむ"娯楽"という2つの目標を高いパフォーマンスで達成できるありがたい存在として捉えています。より本物の体験を、映像だけで実現できる。ある意味で、ゲーム、遊びのレベルを超える『本気でゲームの世界にのめり込む』ことが可能なものなんです」(田宮氏)

もちろん、PlayStation VRをはじめ、家庭にもVRが入り込む下地はできつつある。ただしゲームの操作はタッチパネルやコントローラーでどこか味気ない。ゲームセンターに類するVR ZONEならではの体験を、スキーロデオであればスキー板とストック、マリオカートであればハンドルとアクセルといった具合で、提供している。これがリアリティの達成に大きく寄与するわけだ。

「コントローラーよりも、実際のモノを操作する方が、臨場感や没入感の差分になり、アーケードならではの価値を大きく飛躍させられます。昨年、お台場でパイロットを始めた時にお客さんの反応を見ていて、その差を実感できたことが最大の成果だったと考えています」(柳下氏)

バンダイナムコ エンターテインメントはゲームセンターが事業の一つの軸。しかし「ゲームセンターという名前に縛られている部分がある」と田宮氏は現状の課題を語る。

「ゲームセンターと聞いて皆さんが思うのは、ボーリングなどと一緒に遊べる場所で、ワンコインで好きなゲームを簡単に遊べるというもの。人間のカテゴライズの認識力ってとてつもないもので、"ワンコイン体験"しかゲームセンターに求めなくなってしまうんですよね」(田宮氏)

ゲームセンターをワンコインの呪縛から解く。そのために、田宮氏と柳下氏が始めたのが「ゲームセンターの逆張り」だった。色んな効果音が鳴る、ガヤガヤしたゲームセンターではなく静かな場所を。気軽にふらっと立ち寄る場所ではなく予約制。ワンコインではなく1000円かかるゲーム。その代わり、ゲーム機が置かれているだけの無機質な空間ではなく、スタッフが誘導からHMDの装着まで、サポートするホスピタリティを重視した環境づくり。それがVR ZONEで目指したものだという。

「実はVR ZONEって、ゲームという単語を使っていません。スタッフに『ゲーム』『プレイ』といった使ってはいけない単語を指定して、"ゲーセン"と見えないように作り込んだんです。そのお陰で、オープン時に『新しいテーマパーク』というメディアの表現を目にすることが出来たと思っています」(田宮氏)

スキーロデオでは、乗る際にスタッフがさまざまなサポートを行う。機器が置いてあるだけのゲームセンターとは異なる体験価値を提供する

お台場で感じたキャラクターの"強さ"

VR ZONE SHINJUKUの前身、お台場で2016年4月~10月に開催していた「VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ」。ここで得たものは、VRコンテンツの方向性だった。

「お台場の様子を見て、新宿では『IP』、いわゆるキャラクターコラボのコンテンツを増やしました。そしてVRというHMDを着ける環境から、一人用コンテンツがメインだったんですが、多人数で楽しめるものを増やしました。キャラクターについては、最初はゼロでスタートしたんですが、会社に『VRはパワーがある』と言うために、敢えて外したんです(笑)。でも実際、いわゆる"ガジェッター"だけでなく、カップルやグループでいらっしゃるお客さんを多く目にして可能性が広がったなと手応えを感じました」(田宮氏)

その後、ガンダムやボトムズといったキャラクターコンテンツを投入。すると、20代前半の利用者が突出していた年齢分布の山が、30代、40代も来場するようになり「山が平滑化しました。誰もが関心を寄せる、IPの強みを改めて実感しましたね」(田宮氏)。お台場も新宿も"お一人様"に向いている場所とはいえない。だからこそ、カップルやグループといったみんなが理解あるキャラクター、そしてみんなで楽しめるコンテンツを提供することで、さらにVRへの理解を深めてもらえるようにした。

幅広い年代層の取り込みに貢献したボトムズとガンダム

「『さあ、取り乱せ。』というキャッチフレーズがあるんですが、お台場などの経験から研ぎ澄ましたラインナップになっているという自負があります(笑)。例えば、車のドライブや電車の運転なんかはVRと親和性が高いように思えます。しかし、それでは一人で楽しめるだけでみんなで楽しめず、お台場での稼働率があまり良くなかった。VRじゃなくてはダメ、みんなでワイワイできる遊びを提供しなければと感じました」(田宮氏)

「VRは直感的に操作できることが一番大切なポイントです。一般的なアーケードゲームは、習熟度が求められるコアなファンに受け入れられるコンテンツ作りが一つの鍵でした。ですが、VR ZONEでは友だちと遊ぶ体験にフォーカス、それが根底にあります。マリオカートなんかは、想像以上に皆さんが絶叫していますし(笑)、エヴァでは3人1チームの構成なのに、カップルで来られて1つシートが空いてしまうこともありますが(笑)、そういった体験を皆さんがSNSで拡散してくれているのはとても嬉しいですね」(柳下氏)

ドラゴンボールやマリオカートなど、国民的人気を誇るコンテンツは、集客力に大きな影響を与える

田宮氏と柳下氏に、実際にVRを商業化したことで見えた魅力と課題について尋ねた。意外なことに、これまで3Dゲームを作ってきたゲーム開発者が落とし穴にハマっているという。

「これまでゲームや映画を作ってきた開発者、監督が『お作法が通じない』と嘆くんです」(田宮氏)

理由は「主観」と「客観」の違い。従来からのエンターテインメントでは、ストーリーテリングがあくまで第三者のものが多く、大昔の口伝から本、映像、そしてゲームと、客観的な位置から主人公に感情移入させることで人々を楽しませてきた。しかしVRでは、その視点が主観になる。もちろん、映画などで1人称のストーリーテリングを時々見かけるが、あくまで視点は(ほとんどが)客観。ストーリーの大半を主観で過ごす必要があるVRでは、コンテンツ作りの方向性がまるで違うというのが田宮氏らの見解だ。

例えば、ホラーゲームではこれまで、モンスターなどに襲われると体力ゲージが減り、死んでしまうという演出があった。しかし、VRでは主観で「襲われた」という"怖さ"はあるものの、襲われて痛みを感じるわけではなく、死ぬわけでもない。「状況を理解していても、身体が素直に反応して"嘘なんだ"と思うと途端につまらなくなる」(田宮氏)。そこで、凶器が目の前を通過するが当たらない、驚かされるけど身体的に影響がないといったストーリーに変更することで、この課題を乗り越えようとしたそうだ。「ほかにも、映像作りでフレーミングが使えない(場面を切り替えられない)などの制約があります。まだまだ試行錯誤ですね」(同)。

「この客観から主観へのシフトは、もちろんエンターテインメント以外、例えば教育や観光、そして軍事など、習熟度の向上や異次元の体験といったポイントで大きな効果を発揮します。石油コンビナートで万が一の災害が発生した時、マニュアルに沿って対処できるか、それはVRであらかじめサポートできることがあるはずです。まだ何か具体的に動いているわけではありませんが、そうしたコンテンツ作りに私たちの強みを活かせる部分はあるのではと考えています」(柳下氏)

シンボルは"実験の場"

「数ある想定シナリオの中でも割と順調に推移している」(柳下氏)というVR ZONE SHINJUKUだが、まだまだVR自体の認知度は低いという認識があると柳下氏。わかっていない人に「VR ZONEとは」と語っても仕方ない。だからこそ、まずは体験してもらう、「何か楽しそう」という印象を抱いてもらいたいという。

「女性を中心によくInstagramに写真を載せていただくのですが、VRは写真栄えしない(苦笑)。飲食店や砂浜といったわかりやすい写真スポットを用意しておいて良かったです(笑)」(柳下氏)

飲食店や、巨大風船爆発ルームなど、"写真栄え"するVR以外の施設も用意した

新宿の店舗はおよそ2年間の運用を目処に、ミラノ座跡地からの退去が予定されている。ただ、「VR ZONE Portal」という名称で9月に神戸、そしてロンドンと、小規模店を展開する。

「新宿は期間限定ですが、ここのようなシンボリックな施設は今後も必要だと感じています。シンボルがあるからこそ、特別な体験ができる場所という認知が広がり、浸透していく。こうした場で新しいチャレンジを続けて、Portalへと広げていく。それは、"ゲーセン"という従来の枠組みを超えた新しいジャンルの場を探して広げていく実験の場として、大切にしたい価値なんです」(柳下氏)

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

関連記事
スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

関連記事