ITと家電、その裏にある

ITと家電、その裏にある"インフラ"で次の柱を--エスキュービズム 薮崎社長

2017.08.26

安価ながらもデザイン、色へのこだわりなどで家電事業が伸びを見せているエスキュービズム。同社はITと自動車(中古車販売)、家電を三本柱として、いずれも売上規模が20億円程度を誇る。

そして家電事業はわずか3年前に立ち上げたばかりにもかかわらず急成長を遂げた。創業者で代表取締役社長の薮崎 敬祐氏に、家電事業における戦略、エスキュービズムの将来像について話を聞いた。

エスキュービズム 代表取締役社長 薮崎 敬祐氏

4年目でようやく黒字化

エスキュービズムはECサイト構築パッケージ「EC-Orange」やモバイルPOS「Orange Operation」などのIT事業を起点に、ECソリューションの強みを活かした中古車販売、ドロップシッピングサイトなどを手がけてきた。ドロップシッピングサイトで家電販売を行っていた流れから家電事業へと進出したが、当初は「LED水耕栽培キット」や「"肉じゃが"が作れるミキサー」といった独自色の強い家電製品を作っていた。しかし、「売るのに苦戦していました(笑)」(薮崎氏)。

そこで、現在も販売しているテレビなどのメインストリームの家電を取り扱うようになった。「価格を抑えつつ、単身世帯が伸びていることを背景に『ルーム家電』を徹底的に検証し、ニーズがあるのに商品数が少ない市場を狙うようにしました」(薮崎氏)

オリジナルの価値を作り出すことは多大な労力を必要とするが、既存の製品セグメントであれば消費者は"棚"から商品を選ぶ。誰かの目に止まれば、必ず商機は生まれるということを試して、改めて認識したと薮崎氏は話す。

「イノベーションという言葉が盛んに叫ばれていますが、研究所や大学の論文は既存の研究理論の引用が9割、99%。1%を付加するのが"イノベーション"なんです。近年ネットベンチャーが盛り上がりを見せていて、みんな"ゼロイチ"を追い求めますが、それは難しい。例えばAirbnbやUberが話題になっていますけど、彼らももうすぐ10年選手。一歩一歩の積み重ねが今に繋がっている。だから、既存のカテゴリであっても少しの試行錯誤を重ねることが大切だと思っています」(薮崎氏)

家電事業は4年目に入り、ようやく利益が出る体質になってきたという。「私の考えは4年目で利益が出るものであれば3年間の赤字をどう抑えるかで事業の成長にかけます。3年かからずに黒字化できるものは誰もが真似するし、最終的に利益を生み出せない。家電はハードウェアの産みの苦しみがあるし、誰もやりたがらない。だからこそ、リソースを投下したんです」(薮崎氏)

薮崎氏は、ネットがなければ家電はやっていないと話す。Web時代に昔の"電気屋さん"で有限だった棚が無限になったことで、寡占化していた家電市場に商機を見いだせるようになったという。棚が無限にあり、ユーザーがそれらを俯瞰できるようになったことで「消費者の細かいニーズを埋めることが、販売につながるようになった」(薮崎氏)。

実際、いわゆる総合家電メーカー以外に高級志向やおもしろ家電などのメーカー製品がここのところ多く見られるようになってきた。ただ、その中でも人気を集める競合他社とは明確にビジネスモデルが違うと薮崎氏は話す。

「販売価格を抑えつつ、高品質を謳うメーカーが人気ですが、彼らは耐久財を消費財に変えたイメージがあります。扇風機が1980円だったとして、それで数十万個のロットを用意して値段の"臨界点"を超えるイメージですよね。私たちはあくまでユーザーニーズのくみ取りがメイン。"なければならない"機能にフォーカスして、そこに私たちが考える価値をプラスするんです」(薮崎氏)

家電の開発現場でも、エスキュービズムならではの考え方を取り入れている。薮崎氏が例え話として持ち出したのはアパレル業界だ。

「商品開発において、売上は商品個数×単価でしか売上は上がらない。商品の数やカテゴリごとにマーケットサイズはおおよそ決まっているので、そこにリソースを投下する時、開発期間はおおよそ固定化され3年程度かかってしまう。でも、ZARAやH&Mは、いわゆるファストファッションでその商慣習を変えましたよね? 私たちは、ITでいわゆる"リーン開発"をやって、開発サイクルを早めてきました。家電メーカーはその考えがまだまだ浸透していないので、そこでトレンドの取り入れや、開発コストの低廉化を進めています」(薮崎氏)

ただしリーン開発では、ある意味「ベータ版」のような形でソフトウェアを公開し、バグフィクスや機能改善を行うケースがある。しかし、家電製品では最終消費者の手元に届けば、基本的に替えが効かない。それでも薮崎氏は、消費者に製品を届けることが大切だと話す。

それは、大手家電メーカーが1万個に1個という不良品発生率を目指すのに対し、エスキュービズムは1万個に10個といった「桁は変わるかもしれないけど、不良品に遭う確率は低い状態」を目指すことが、最終的に消費者にメリットをもたらすという理由だ。

「1万個作って0個の不良品を目指すと、コストが倍かかります。その倍が価格に跳ね返り、結果として価格競争力を失ってしまったのが家電メーカーの姿なんです。もちろん、私たちも不良品を出すことが良しとは考えていない。製造段階で不良品が出てしまうのであれば、ほかのプロセスでカバーする。それが私の考え方。検品作業や輸送など、最適化を進めれば、そうした不良品がお客さまのところに行き着く可能性は低いし、それで価格が抑えられるのであればお客さまのメリットでもあると思います」(薮崎氏)

VRでEコマース?

現在、IT事業ではVRを活用したECパッケージ「EC-Orange VR」を発表し、実店舗の環境をVRで再現しつつ、そのまま商品の購入へと繋げる未来を描いている。

「実店舗での"お買い物"は半日がかりの大変なこと。でもみんな、ネットの"棚"が増えたのに、実際に商品を触りに行くわけです。その買い物の不便さを出来るだけ低減したい。お店での価値を再定義する必要があると思いますが、VRでそれを実現できるんじゃないか、そんな期待があるんです」(薮崎氏)

スマートフォン、そしてタブレットでもWebは簡単に見られるが、人間の目にとっては「情報処理能力がとても高いから、ディスプレイサイズが小さすぎてもったいない」(薮崎氏)。だからこそ、今でも新聞の価値はその紙面いっぱいの一覧性にあると言われている。それを有効活用できるのが、スマホ画面を最大限に使い切れるVRであり、その処理能力を店舗の再現で活かそうというものだ。

「必ずしも今始めたVRショッピングの形が正解ではないと思いますし、形は変わっていくと思います。でも確実に言えるのは"今より便利になる"ということ。もちろん、VRは未知数という声もあります。しかし、イノベーションの話ではないですが、"少し先"を意識して手を打てば、確実に顧客はついてくると思います。7月の発表から、実際に小売店さんからの引き合いもいただいています」(薮崎氏)

最後に薮崎氏は、ITと家電の事業を通して抱えたさまざまなリソースが「次のエスキュービズムに繋がる」と話す。例えば物流や利益を生み出す事業構造が、AppleやAmazonといった企業と同様に"次の事業"を形作ると言うのだ。

「Amazonが好調な理由は、P/LやB/Sから見えてこないノウハウや人材、物流だと思うんです。物流拠点はもちろん、AWSに代表されるネットインフラ、一見して非効率な固定資産を多分に抱えている。でも、それらの資産、見えないものに対する投資がこの数年で大きな影響を与えています」(薮崎氏)

この話を引き合いに、現在のベンチャーブームが悪しき影響を与えているのではとも薮崎氏は話す。可能な限り固定資産を減らし、短期利益を追求してIPOでの利益確保を狙う。単なる批判ではなく、VCの投資構造が「IoT」というこれからの家電に繋がっていく分野に合わないのではないかという危惧だ。

「Amazonの規模になれるかという話はともかく、彼らは10年単位でこの取り組みを進めてきたわけです。私たちの家電も4年目で利益が出た。家電は、VCが入りにくいおかげでプレイヤーが少ないし、だから私たちがポジションを広げられる土壌があったと考えます。小売から流通、POSまで抱えていますから、自前でショッピングセンターまで作れる自負はあります」(薮崎氏)

最終的には、今すぐに事業をさまざまに勃興するというよりも、ITと家電、自動車という基幹事業をスケールし、その中で生まれた知見を"ごちゃ混ぜしたい"と話す薮崎氏。それは、日本版Amazonであり、IoT時代の先駆者になるための先鞭をつける施策でもあるようだ。

「今、家電メーカーにいる若手は本当に優秀だと思います。でも彼らは向こう3年の目標に捕らわれている。でも私たちは10年、20年というスパンで事業を考えたい。だからこそ、持っているリソースを柔軟に組み合わせて次に繋げるということが必要なんです。そういう人がいれば、面白いことができると思っているんですけどね(笑)」(薮崎氏)

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。