飲食店のドタキャン問題、ダイナースの新サービスが救うか

飲食店のドタキャン問題、ダイナースの新サービスが救うか

2017.08.28

ダイナースクラブカードを発行する三井住友トラストクラブとLINE、ポケットメニューは共同で、昨今飲食業界で大きな問題となっている直前キャンセルやNo Show(無断キャンセル)を解消する新サービス「ごひいき予約」を開始した。問題解決の一助となることが期待されるが、市場全体への普及にはまだ課題もありそうだ。

キャンセルによる被害額はもはや社会問題

インターネットやスマートフォンの普及により、飲食店の予約が容易に行えるようになった反面、直前キャンセルや、予約しておきながら無断で来店しない「No Show」といった事態も増えている。予約が簡単なだけに、キャンセルもボタン一つで気軽に、という感覚なのかもしれないが、食材を用意したり、ほかの客を受け入れる機会や収入を失う飲食店側としてはたまったものではない。

一説によればこうした直前/無断キャンセルによる被害額は業界全体の売り上げの1~3%に達しているといい、金額にすると750億~2000億円に達するというから、すでに一種の社会問題だ

一部の店舗ではキャンセル料を取る、悪質なキャンセル客のブラックリストを複数店舗で共有する、といった対策も取られているが、三井住友トラストクラブでは、キャンセル席を買い取ってダイナースクラブの会員に転売するサービス「ごひいき予約」を展開する。

その店の常連客(ごひいきさん)のように、何カ月も前から予約しなくても当日にパッと店に訪れられる、そんなイメージからのネーミングだという(ダイナースクラブカード公式サイトより)

システムとしては、「ごひいき予約」の協力店舗で直前キャンセルが出た場合、ダイナースクラブがその席を買い取り、ダイナースクラブのLINE公式アカウントを通じてダイナースクラブカード会員に告知。購入したい会員はポケットメニューが運営する「ポケットコンシェルジュ」を通じて予約と決済(決済はダイナースクラブカードのみ)をする、という流れになる。

もし複数の会員が予約を希望し、希望通りに席を購入できなかった場合でも、ポケットコンシェルジュを通じて同等の候補をリコメンドすることも行われるという。直前/無断キャンセルは「起きてしまうこと」と割り切って、次善策としての買い取りなわけだ。

席の買い取りをするだけに、当然転売が失敗すればダイナース側の損失となってしまう。サービスの成否は利用率がいかに高くなるかにかかっているが、ダイナースクラブカードは著名なクオリティカードの一つであり、「ダイナー」(diner:食事をする人)という名前のとおり、食関連に関心の深い会員を多く抱えたクレジットカードだ。有名レストランに会員向けの予約席をキープしていたり、食に関するイベントやサービスも多い。

さらに、今回「ごひいき予約」の対象となった18店舗は、いずれも予約が困難といわれる超のつく一流店・人気店ばかり。こうした組み合わせから、会員のサービスに対する興味も、需要も十分に高いと予測される。

もっとも、ダイナースクラブとしてはこのサービスを利益目的に行うのではなく、あくまで会員に対するサービスと、社会問題となっている直前/無断キャンセルに対する社会貢献として挑戦したいとのこと。店舗からの席の買い取りは本来の提供価格に近い形であり、「ポケットコンシェルジュ」の利用料など、運営にかかるコストを店にも負担させるという仕組みになっている。対象となる店舗は、スタート時は都内の16店舗のみだが、1年後を目標に100店舗程度、東京以外に大阪・京都、また他の地方都市にも広げたいとしているが、いずれも人気店が中心となるのは間違いない。

メッセージングサービスが可能にした新サービス

左からポケットメニューの戸門 慶代表取締役、三井住友トラストクラブの西村智博常務取締役、LINEの田端信太郎コーポレートビジネス担当上級執行委員。3社の得意分野がうまくコラボレーションしたサービスとなる

今回のサービスを支えるインフラは、メールではなくLINEが担当する。「ごひいき予約」は直前キャンセルが対象となるため、数時間後には店に入らねばならない、そんな即時性が必要とされるサービスだ。数年前であればメールで通知しているところだろうが、メールは約半数が読むまでに6時間以上かかるとも言われており、また個別のユーザーに向けたカスタマイズも難しい。

その点、LINE公式アカウントとLINEビジネスコネクトを使った仕組みであれば、ユーザー個別にリアルタイムにメッセージを送信できる。サービス側がデータを持っていれば、居住地や料理の好みでフィルタリングすることもできそうだ。また、LINEの場合はメッセージを送ってから10~15分程度で90%近いユーザーがチェックするという傾向があり、即時性という意味でも電子メールより有利だ。逆に言えば、メッセージングサービスがここまで普及しており、企業の公式アカウントという仕組みがなければ、「ごひいき予約」のようなサービスは成立し得なかったとも言える。

筆者はダイナースクラブの会員プロファイル的に、LINEのユーザーはさほど多くないのではないかと思っていたのだが、さすがに7000万会員を抱えるだけあって、実際の年齢分布も日本人の年齢分布に近いのだという。高齢者はさすがに少ないが、50代、60代のLINEユーザーは他の年齢層と変わらないという。

また、ダイナースクラブ会員でも、特に富裕層向けのダイナースプレミアムカード会員では、30代、40代の会員比率が比較的高いという。こうした層はそのままスマートフォンの利用層、LINEの利用層と直接重なるため、全体としては30代~60代までの幅広い層をターゲットにできていることになる。きちんと勝算があると計算の上でのサービスインなわけだ。

より広い市場への適用は可能か

庶民にはなかなか縁のないような高級店にターゲットを絞り込んでいる「ごひいき予約」だが、ニッチではあるが顧客のニーズと供給されるサービスのバランスはいいため、筆者としてはサービスは成功するだろうと見ている。

ただし、直前/無断キャンセルは飲食業界全体に関わる問題なため、もっと庶民的な居酒屋などもこうしたサービスを求めているはずだ。特にSNS上では、小さな飲食店が貸切をドタキャンされて経営に大きな影響が出た例なども多く報告されているだけに、死活問題となるキャンセル枠の転売には大きな期待をしているだろう。

それでは同様のサービスが、もっと庶民的な店にも適用できるかというと、これは単純な問題ではない。サービスの規模が大きくなれば、バックボーンとなるシステムも大規模なものが必要になり、開発・維持のコストも大きくなる。ダイナースクラブの場合、会員向けサービスということで採算性をある程度度外視している面も大きいし、バックボーンである「ポケットコンシェルジュ」は全部で500店前後、高級店中心というニッチ市場に絞り込むことで採算性を出している面があるが、これが仮に5万店になれば、店側に求める負担も大きくなる。また決済手段としてクレジットカードを選ぶと、中小の飲食店ではカードの手数料も負担になってしまう。するとキャンセル枠を売っても採算に見合わなくなる、という負のスパイラルも考えうるわけだ。

また、配信システムであるLINEについても、個人向けにカスタマイズしたメッセージを送るにはLINEビジネスコネクトの利用が必要であり、これはLINE公式アカウントでなければ利用できない。LINEビジネスコネクトの利用料は月額250万円~と、大企業向けの設定で、個人経営の飲食店などが気軽に利用できるものではない。

こうして考えると、キャンセル問題を広く一般の飲食店向けにも解決する手段というのはなかなか難しいように思えてくる。既存のグルメサイトなどがそのネットワークを活用して参入してくるというのが一番あり得るシナリオのように思えるが、四方うまく納めてくれるサービスは登場するのだろうか。筆者の予想を覆すような画期的サービスが現れてくれることを期待したい。

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第33回

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

2019.03.19

大画面化の限界を破ろうと登場した「折り畳みスマホ」

2019年にスマホ大手が参入し、本格的なトレンドに

普及する? 価格とコンテンツが最大の課題に

2018年末から2019年初頭にかけ、ディスプレイを折り曲げて畳むことができる「折り畳みスマートフォン」大きな注目を集めている。閉じた状態では普通のスマートフォン、開くとタブレットサイズで利用できるのが特徴だが、新しいスタイルのスマートフォンとして市場に定着し、普及していくには課題も多い。

大画面化の限界から生まれた折り畳みの発想

ここ最近、にわかに注目されるようになった「折り畳みスマートフォン」だが、そもそもどんなものなのか。簡単に言えば、これはディスプレイ素材に、一般的なLEDとは異なる面光源で、かつフレキシブルな特徴を持つ有機ELを採用することで、1枚のディスプレイを2つに折り曲げられるようにしたスマートフォンのこと。いくつかの企業が折り畳みマートフォンを相次いで発表したことから、一気に注目を集めるに至ったようだ。

折り曲げられる7.8インチのディスプレイを備えたRoyoleの「FlexPai」は、世界初の折り畳みスマートフォンとして注目を集めた

最初に折り畳みスマートフォンを発表したのは中国のRoyoleというベンチャー企業で、2018年11月に7.8インチのディスプレイを折り曲げられる「FlexPai」という機種を発表している。だがより本格的に注目されるようになったのは、2019年2月に入ってからであろう。

その理由は、2019年2月20日(米国時間)にサムスン電子が「Galaxy Fold」、ファーウェイ・テクノロジーズが2019年2月24日(スペイン時間)に「HUAWEI Mate X」と、スマートフォン大手が相次いで折り畳みスマートフォンを発表したからだ。いずれの機種もFelxPaiより洗練され、より日常使いに適したスタイルながらディスプレイを曲げられるという機構を実現したことから、がぜん折り畳みスマートフォンに対する注目が高まったのである。

サムスン電子の「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレイを内側に備え、本を開くようにして開くと大画面ディスプレイが現れる仕組みだ

ディスプレイを曲げられるというだけでも十分に大きなインパクトがある折り畳みスマートフォンだが、その誕生にはやはり「スマートフォンの大画面化傾向」が影響している。初代iPhoneが登場した頃には3インチ程度だったスマートフォンのディスプレイも、年を追う毎に大画面化が進み、いまでは6インチを超えるディスプレイも当たり前のものとなってきている。

だが人間が片手で持つことができるスマートフォンのサイズ、特に横幅には限界がある。6インチ超でも、18:9や19:9の縦長比率として片手に持てる横幅に抑えていたのが最近のトレンドだが、従来の方法によるディスプレイの大画面化は限界に達しつつある。しかしながら特に海外では、消費者がスマートフォンに一層の大画面化を求める声が非常に強い。そうした市場ニーズに応えるべく、持ち運ぶ時はコンパクトで、必要な時だけ大画面で利用するという、折り畳みスマートフォンの開発を推し進めるに至った訳だ。

ファーウェイの「HUAWEI Mate X」。さらなる大画面化を求める消費者ニーズに応えるべく、3年もの歳月を費やして開発されたとのこと。同社初の5G対応スマートフォンにもなるという

各社の折り畳みスマートフォンは、開いた状態では7.3~8インチと、小型のタブレット並みのサイズ感を実現している。従来より一層の大画面でコンテンツを楽しめるというメリットが生まれる訳だが、大画面によってもう1つもたらされるメリットは、表示できる情報量が増やせること。実際Galaxy Foldはそのメリットを生かし、画面を3つに分割して3つのアプリを同時に利用できる機能を搭載している。

さらに今後、次世代通信の「5G」が普及していけば、通信速度が一気に高速になりコンテンツのリッチ化が進むことから、大画面を生かせるシーンも現在以上に増えていくことが考えられる。それゆえ折り畳みスマートフォンこそがスマートフォンの将来像と見る向きもあるようだ。

普及にはコンテンツや価格など多くの課題あり

だが実際の所、折り畳みスマートフォンが真に普及して定着に至るかといえば、まだ多くの課題があるように感じる。理由の1つは、折り畳みスマートフォンに適したコンテンツが少ないことだ。その最大の要因はディスプレイのアスペクト比で、折り畳みスマートフォンでは開いた状態のアスペクト比が、アナログテレビで主流だった4:3に近い比率になってしまう。これは折り畳むという構造状どうにもならない課題だ。

折り畳みスマートフォンは、開いた状態では4:3、あるいはそれに近いアスペクト比となることから、オフィス文書や地図、Webサイトなど情報量が求められるコンテンツは見やすい

この比率は、オフィス文書などを利用するのには適しているといわれる一方、映像やゲームなどのコンテンツでは横長の傾向が強いため、あまり適していない。実際、折り畳みスマートフォンで16:9や21:9の映像コンテンツ再生すると、どうしても上下の黒帯が目立ってしまうのだ。

一方で映画などの動画コンテンツ再生時は、上下に黒帯が目立つなど大画面をフルに生かせていない印象だ

そうしたことから折り畳みスマートフォンを普及させるには、それに適したコンテンツの開発も同時に求められているのだ。そのためにはいかに多くのコンテンツホルダーから協力を得られるかが、非常に重要になってくるだろう。

そしてもう1つの課題は価格だ。折り畳みスマートフォンは最新の技術を詰め込んで開発しているため、Galaxy Foldは1980ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xは2299ユーロ(約29万円)と、価格が非常に高い。現在は“初モノ”ゆえにこれだけの価格でもやむなしとの認識がなされているようだが、普及を考える上では少なくともその半額程度、つまり現在のフラッグシップスマートフォンと同程度にまで価格を落とす必要がある。

折り畳みスマートフォンの実用化を実現した今後は、いかにその価値を落とすことなく価格を落とすかという、難しい課題をクリアする必要がある訳だ。そうした課題をクリアできなければ普及にはつながらないだけに、折り畳みスマートフォンが今後の主流になるかどうかは、現状ではまだ見通せないというのが正直な所でもある。

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少し古い調査結果だが、2016年6月の経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT人材は2019年をピークに減少傾向へ転じ、2030年には(高位想定で)約78万人不足すると予測する。IT人材に限らず、日本では少子高齢化が進み、多くの業種で人手不足が発生するといわれている。

その対策の柱となるのが、人材育成だ。これまでの20世紀型のビジネスでの価値創造の要素が「ヒト・モノ・カネ」だったのに対し、今後は「データ・ソフト・サービス」に要素が大きくシフトするといわれている。すなわち、必要となる人材も大きく変わっていくことになる。それは、従来のICT企業に限ったことではなく、ユーザ企業においても然りだ。

そこで今回紹介したいのは、総務省が学生や若手エンジニアを対象にIoT人材育成を目的として実施している「Web×IoT メイカーズチャレンジ」である。2018年度は国内9か所でイベントが開催され、2019年2月から3月にかけては、東京でも開催された。この取り組みが何を変えようとして、どのような一石を投じているのか、イベントで実際に実施された内容を下敷きに紐解いてみたい。

Web×IoT メイカーズチャレンジ 2018-19

Web×IoT メイカーズチャレンジ開催の経緯

総務省の情報通信審議会の技術戦略委員会では、かねてよりIoT・ビッグデータ・AI時代の人材育成方策についての議論が続けられており、去る2016年には、中間答申というかたちで以下のような旨の提言も出されている。

「IoTを総合的に理解し、使いこなせる人材・アイデアを発想できる人材が求められており、若者やスタートアップを対象とした開発キットやオープンソースなどを使ったモノづくりを通じた体験型教育やアイデア・ソリューションを競うハッカソンの取り組みを推進することが重要である」

こうしたことを受け、日本最大規模の産官学のIoT推進組織「IoT推進コンソーシアム」の技術開発ワーキンググループ「スマートIoT推進フォーラム」に、「IoT人材育成分科会」が設置されることとなり、そこでの議論を踏まえてこの人材育成事業、Web×IoT メイカーズチャレンジがスタートすることになった。

IoT推進コンソーシアムとスマートIoT推進フォーラムの体制

では、具体的にはどのような人材が今後必要とされるのか? また、未来に向けて、どういった手法でそのような人材を育成していくのだろうか?

Web×IoT メイカーズチャレンジの基本方針などを策定する実行委員会の主査で、上述のIoT人材育成分科会の構成員でもある株式会社KDDIの高木悟氏と、同実行委員会で副査を務める一般社団法人WebDINO Japanの瀧田佐登子氏の両氏に、その点についての話を伺った。

高木氏は、IoTを活用し社会を変革する創造性豊かなエンジニアリング・イノベータ力を備えた若手人材の育成には、

(1)無線装置やセンサ・アクチュエータなどのハードウェアとコンピューティングロジックを中心としたソフトウェア双方を扱えるスキル
(2)情報システムの共通基盤技術となっているWeb技術に基づくIoTシステム構築スキル
(3)企業の製品開発やサービス企画の現場でも、新技術の迅速な導入にもスピード感を持って対応できるアジャイル開発に対応できるエンジニア力
(4)実際にアイデアを試作し、改良を繰り返して実現するプロトタイプ創出力といったスキル

が求められており、Web×IoT メイカーズチャレンジでは、特にそのあたりを意識したイベント設計を行っていると話す。

KDDI株式会社技術開発戦略部マネージャー:高木悟氏

ポイントになるのは、このイベントに参加する学生や若手エンジニアが、座学の講習だけでなく、ハンズオン形式の講習会で実際にボードコンピュータやセンサーやアクチュエータの扱いを体験し、一定の準備期間を設けたうえで、ハッカソンで実際にプロトタイピングを行うという一連のものづくりプロセスを実体験することにある。

Web×IoT メイカーズチャレンジでは、UIやクラウドを含む情報システム全体をひとつの標準化された中立的な技術体系のもとで「ハードウェアを制御できるスキル」を獲得する機会を提供しているが、Webを介することによって、OS、デバイスといったレイヤーごとの違いを吸収し、普遍性の高い共通な技術を学ぶことができる。さまざまなデータをやりとりするには、「Webがもっともやりやすい」と副査の瀧田氏も指摘する。そういった観点からイベント名にもWeb×IoTの文字が冠された。

WebDINO Japan代表理事:瀧田佐登子氏

東京大会の概要をレポート

では、東京大会の様子を交えつつ、本取り組みの具体的な流れを少しレポートしたい。2月9、10日の2日間にわたりハンズオンを含む講習会が開催された。IoTの基礎知識やWiFiやLTEなど、IoT開発には欠かせない通信技術やその根源となる電波の特性について講義を受けたうえで、実際に「Raspberry Pi 3」と各種センサーやデバイスなどの接続・動作を行うハンズオンを約1日半じっくりと行う。受講者は個人単位で参加申し込みを行うが、講習会の2日目にはチーム単位に分けられ、準備期間を置いた後日に開催するハッカソンに向けた準備をスタートする。

東京会場にて。チームでのアイデアソンの風景

チーム分け後は、まずはアイデアソンを実施し、「身近な人をハッピーにするIoTデバイスを作ろう」などといったテーマをもとに議論を進める。初めて会ったメンバー同士で、いかに議論を深めていくか、これが最初の試練といえるだろう。また、各チームには上限額25,000円の予算が与えられ、その中でハッカソンに提出する作品で使うセンサーなどの部品を用意する。ここでは準備期間中の材料調達を含むマネージメント力が求められる。

そして、ハッカソンに向けて作成する作品では、以下の要件が求められる。

・ネットワークサービスの連携、もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと
・Raspberry Pi 3を使って、Web GPIO APIあるいはWebI2C APIのいずれかを利用すること

ちなみにハッカソンの審査基準は、以下の通り。

・ソフトウェア・ハードウェアの実装力
・アイデアの独創性・ユースケースの有用性
・無線の活用度

そして、今回の東京大会のハッカソンには、計35名8チームが参加した。

ハッカソンの各チームの様子。今回は計35名8チームが参加した

ハッカソンというと、賞金目当てのツワモノが集まるというイメージがある。しかし、メイカーズチャレンジは、そもそもが「学びの場」として開催しているため、ハッカソン初心者やスキルレベルが不安な学生であっても参加しやすい枠組みを用意している。とにかく、わからないことがあれば積極的にチューターやメンターに聞き、解決していく。終始なごやかな雰囲気で進んでいくことも印象的だ。

こちらはハッカソン2日目の様子。初日のなごやかさからは打って変わり、開発完了に向け緊張感も漂う

それでもハッカソンが2日目にもなると緊張感が漂う。決められた開発締め切りに向かって、時間との戦いである。その日のうちに審査が始まり、今回は、最優秀賞が1チーム、優秀賞が3チーム選出された。

最優秀賞受賞チームの皆さん。後ろに立つ3人は審査員

順序が逆になってしまったが、審査員は以下の通りである。

・村井純氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授 大学院政策・メディア研究科委員長)
・小林茂氏(情報科学芸術大院(IAMAS) 産業文化研究センター教授)
・瀧田佐登子氏(一般社団法人WebDINO Japan代表理事、実行委員会副査)

各チームの作品やその他の情報については、Web×IoT メイカーズチャレンジの公式サイトで情報が提供されるので、参照してほしい。

Web×IoT メイカーズチャレンジの成果と今後

今回、2年目を迎えたメイカーズチャレンジの取り組みであるが、その成果はどうだろうか。高木氏は、ほぼ目的は達成されていると判断しているという。実践的な講習会とハッカソンの組み合わせに参加者の多くが満足しており、チューターのサポートやチームでの開発体験を貴重な機会だと感じてもらえたと、手ごたえを語る。

人材育成というと、とかく受講者が受け身の講習が行われがちだが、この施策は講習会からハッカソンまで、参加者が自ら試行錯誤しながら様々なスキルを身につけるアクティブ・ラーニングの機会となっている。瀧田氏は、プログラミングやハードウェアのスキルに限らず、少ないとはいえ制作予算の配分管理や、材料の調達、さらに時間配分やチーム内のコミュニケーションなど、プロジェクトのマネジメントを体験する貴重な機会にもなっていると説明する。

学生から社会人まで、参加者は様々

企業が社員に向けて行う人材育成は、成果の前に、そのコスト・手間暇が大きなハードルとなる。Web×IoT メイカーズチャレンジは、その課題を補完する答えの1つともいえるだろう。今回の東京開催の会場を見ると、30才未満の若手社会人も多く参加しており、大学生や高専生、高校生と混じってチームを組み、真剣にものづくりに向き合う姿が見られた。

Web×IoT メイカーズチャレンジは2019年度も各地で開催される予定だ。立場を問わず関心を持った読者の方がおられれば、将来に立ち向かう可能性のひとつとして、参加や見学を検討してみていただきたい。

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