マクドナルドのサービス向上の源泉的存在! 「ハンバーガー大学」体験記

マクドナルドのサービス向上の源泉的存在! 「ハンバーガー大学」体験記

2017.08.29

全国展開するチェーン店にとって、商品・サービスの水準を北から南まで均一に保つことはひとつのテーマだ。たとえば飲食店ならば、メニューの味、接客サービス、店舗の雰囲気などを全国で統一するというのが一般的だ。

ただ一方で、チェーン店ながら各店舗で独自メニューを展開する手もある。カレーチェーンのCoCo壱番屋などが、店舗オリジナルメニューで有名だ。このように、メニューならば店舗限定・期間限定といった手法で、ほかのライバルチェーンに対して競争力を生みやすい。だが、接客サービスとなるとどうだろうか。オーダーの取り方、メニューの出し方、クレームの処理の仕方などがバラバラでは、消費者に不信感を与えることも考えられ、場合によってはそのチェーン店を利用してもらえなくなる。

そうした店舗によるサービスのバラつきを抑え、サービス向上に結びつけるユニークな施策を行っているチェーン店がある。ハンバーガーチェーン最大手の日本マクドナルドだ。

座学でマネジメントを学ぶ

ハンバーガー大学のエントランス。「マック軍vsマクド軍」の投票シールもあった

何がユニークなのかというと、「ハンバーガー大学」という教育部門を設けていること。ここで人材育成に取り組んでいる。

仮に、飲食店にアルバイトとして入店したと考えてみてほしい。メニューの調理の仕方、接客、品だし、清掃の仕方などなど、先輩アルバイトや社員、店長につき、実際に行いながら教わるのが一般的だろう。つまり、OJTだ。控え室などでマニュアルを確認することはあっても、ほぼOJTで業務を身につけていく。

もちろんマクドナルドでもOJTが、クルー教育のメインだ。ハンバーガーやポテトの調理の仕方、基本的な接客技術は、現場で学んでいく。ただ、それだけではなく、マネジメントやチームビルディング、コミュニケーションスキルなどについて学ぶ場として、ハンバーガー大学を設けている。

では、この大学ではどのような教育が行われているのだろうか。正直、筆者は、おいしいパティの焼き方、サクッとしたポテトの揚げ方などを学ぶのではないかと、想像していた。だが、実際にハンバーガー大学に体験入学してみたところ、完全な座学だった。

マクドナルドでは一般的なクルーから店長まで、かなり細かく役職がわかれている。クルー、クルートレーナー、スター、SWマネージャー、セカンドアシスタントマネージャー、ファーストアシスタントマネージャー、店長といった具合だ。

転機となるのはSWマネージャーだろう。店長や社員が店舗にいなくとも、時間帯責任者としての職責を負う。アルバイトのまとめ役といってもよい存在だ。この段階で、ハンバーガー大学へのトビラが開く。

では、どのような授業が行われるのか。SWマネージャーはハンバーガー大学で、都合3日間の授業を受ける。筆者はそれとは比ぶべくもない、わずか2時間という時間だが、ハンバーガー大学の模擬授業を受けてきた。テーマは「リーダーとは何かを学ぶ『リーダーの影』」「チーム力を高める『効果的なフィードバック』」の2項目だ。

とにかく、たった2時間だったため、授業は駆け足で進んだ。ただ、印象に残ったシーンについて列記してみよう。

現場を仕切るリーダーの在り方

ハンバーガー大学 マネージャー 茂木由規子氏

まず、「リーダーの影」についてだが、面白い体験をさせていただいた。教壇に立った茂木由規子 ハンバーガー大学 マネージャーは、20人ほど集まった記者などの模擬生徒に、「右手を挙げて」「左手を挙げて」「両腕を降ろして」といった指示を出す。当然、模擬生徒は、そうした指示に従って動作をする。

そして、「手の指で輪を作り、アゴに当ててください」という指示を出しながら、先生自身はホッペに手を当てた。そう、タレントのローラがよくする仕草だ。筆者は「あれ? アゴとホッペを言い間違えたのかな?」「それとも何かのワナか?」と思いながら周囲をみると、みな、ホッペに手を当てている。その状況を確認すると、筆者もホッペに手を当てざるをえなかった。

やはりワナだった。茂木先生は、「これがリーダーの影です」と強調。たとえ指示とは異なる行為だとしても、リーダーが行っていることに、周囲は準じやすくなる一例だという。リーダーが正しい行為をすることがいかに大切か、それを裏付けるテストだった。

また、「効果的なフィードバック」では、目隠しをした記者(筆者ではない)が、バスケットにボールを投げ入れるアクティビティが行われた。

最初のテストでは、なんら指示もなく、ひたすらどこにあるのかわからないバスケットに目隠しした記者が15球ほどのボールを投げ続ける。当然、1球も入らない。ボールを集めて2セット目。今度は、「やはり文化部出身ではだめですね」「運動神経を鍛えないと」といった、ののしりともとれる口調で茂木先生が目隠しをした記者に声をかける。そして3セット目。次は「さすがセンスある」「いいフォーム」といったように、べた褒めの声をかけた。ただ、両セットとも1球もバスケットには入らない。そして、4セット目、今度は「もう少し右」「あと10cm遠くに」といった具体的な指示を先生が出したところ、6球がバスケットに入った。

左はボール投げテストの様子。右はオープンスペースに飾ってあったドナルド。長野五輪の際、選手村の店舗にあった像で、世界のアスリートたちがサインを書き込んだという

つまり、どんなに叱責しようが、どんなに褒めようが結果は同じ。具体的なアドバイスをしないと、クルーの成長はないということ。「的確な指示を与えることで、生産性が高まるということのテストです」と、茂木先生は話した。

学校法人からの要請も増加

正直、「子どもだましではないか」という気持ちもなくはない。だが、社会に出てからリーダーの本質を基本から学ぶ機会はあまりない。その意味で、非常に貴重な体験だったといえよう。加えて、マクドナルドは若いクルーが多く、理屈でリーダー論を教えるよりも、こうした体験型学習のほうが効果的ではないだろうか。

さて、こうしたハンバーガー大学の講義をしてくれと、高等学校といった学校法人からの要請が増えているそうだ。昨今、アクティブ・ラーニングが注目されるなか、こうした授業を採り入れるのは、学校側にもメリットが大きい。一方、マクドナルドにしても、同社の教育を、学生たちに“オモシロイ”と感じてもらうのは重要だ。何せ高校生といえば、アルバイトクルーの大切な戦力なのだから……。

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2019.06.17

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最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu