“乙女心”をつかんで離さない「美少女戦士セーラームーン展」の秘密

“乙女心”をつかんで離さない「美少女戦士セーラームーン展」の秘密

2016.05.24

女性の平均賃金は昨年過去最高を記録した。社会的に女性の登用が進んでいる結果のひとつだろう。注目したいのは20代後半から30代前半のいわゆる“アラサー”世代。晩婚化が進み、独身で自由に使えるお金が増えたであろうこの世代に向けた市場が注目を集めている。それを象徴しているのが、1990年代に社会現象を巻き起こした「美少女戦士セーラームーン」。20年以上たった今、当時の原画やグッズなどを集めた展覧会が開催され、会期の半分もたたないうちに目標としていた来場者数10万人を達成した。20年以上の歳月を超えて、初めて開催される「美少女戦士セーラームーン展」の何が“乙女心”を惹きつけるのか。

早くも10万人来場

東京港区にある六本木ヒルズで4月16日から開催されている「美少女戦士セーラームーン展」。26日目となる5月11日に来場者数が10万人を突破した。10万人は展示会で1つの目標となる数字だが、期間を半分以上残しての到達したことになる。担当者も、「ゴールデンウィーク後も客足が落ちなかった印象がある」と人気の高さを実感している。

(C)Naoko Takeuchi

夜にかけて増える女性の来場者

同展の開催時間は午前10時から午後10時。都内の博物館・美術館は午後5時くらいに閉館するところが多いが、それに対し5時間も長い。地上52階から都内を見下ろせる場所にあることもあわせて、セーラームーンを象徴する“月とのコラボ”を実感できる環境だ。この同展の特徴がセーラームーンの世界観だけでなく、ターゲット層にも実にマッチしていること。来場者の傾向について担当者は、「およそ8割が女性で、その中でも20代後半から30代前半が多いという印象」という。そのような人は仕事帰りに来場する傾向が強いのか、平日の午後6時以降に来場者が増えるのがこの展示の特徴だという。

女性の平均賃金は過去最高、最も働いている率が高いのは30歳前世代

ここで“アラサー”世代をめぐる現状を確認したい。内閣府男女共同参画局のHPに掲載されている女性の年齢階級別労働力率いわゆる「M字カーブ」をみると、1975年には、M字の底だった25~29歳の労働力率は次第に上がり、最も新しい2014年では、79.3%と年齢階級別で最も高くなっている。全体的にみても、M字の底は年々浅くなっている。さらに昨年には女性の賃金は過去最高を記録している。

内閣府男女共同参画局HPより

広がるファンの裾野

来場者の傾向について話を戻すと、想定以外のことも起きている。その最たる例が20代男性グループの来場の多さだ。セーラームーン世代よりも若い世代への広がりは、「2年ほど前からアニメ放映が再び始まったことも影響していると思う」(担当者)そうだ。世代性別を超えて支持される普遍的なアイコンになってきているという表れかもしれない。

さらに外国人観光客の存在も忘れてはならない。日本語だけでなく17言語以上に翻訳されているセーラームーン。特にフランスなど欧米からの人気が高いそうだ。そのため普段は中国人観光客が多いところ、この展示に関しては欧米からの観光客が目立つという。さらに同展については海外メディアからの問い合わせが増えているというから、さらに裾野は広がりをみせるだろう。

5月16日午後6時半ごろ「美少女戦士セーラームーン展」会場内

原画展でなく社会現象を展示している

マンガやアニメをテーマとした展覧会というと、多くは原画やセル画を中心とした展示になっている。そんなイメージを持ってこの展示を見に行くと、その期待をいい意味で裏切る内容になっている。マンガの原画やセル画は展示の目玉ではあるものの、「美少女戦士セーラームーン」とは、どのような社会現象だったのか、ということを振り返り、どう今につながっているのかということが分かるようになっている。

社会現象になった美少女戦士セーラームーン

マンガの連載開始とほぼ同じ時期にアニメ化された「美少女戦士セーラームーン」。5年間にわたるマンガの連載で全18巻の総発行部数は1200万部、連載していた当時には、「なかよし」の発行部数を史上最高の205万部に押し上げる人気の高さを誇った。その後ミュージカルにもなり、キャラクターグッズでは1000億円以上も売り上げたという。人気は国内にとどまらず、17言語以上に翻訳され、翻訳版のマンガは700万部以上売り上げた。アニメについては今までに50カ国以上で放映されている。

実写化やミュージカルのロングランを経て、2012年には「美少女戦士セーラームーン20周年プロジェクト」がスタート。原作の完全版刊行を皮切りに、新作ミュージカル、グッズの復刻版、ファッション、コスメなど大人向けの商品が登場し、当時少女だった世代を中心に人気が再燃しているという。

写真撮影という体験とSNSで広がる共感

「公式ツイッターでつぶやいた時、3秒後にリツイートされたことがある」(担当者)というほど、SNSへの反応がいいのがこの展示の来場者層。写真撮影ができる仕掛けを作るなどして、投稿を促し、SNS上で展覧会の話題を盛り上げようというのだ。

ムーンキャッスルをイメージしたエントランス
セーラームーンと一緒に記念撮影
展示の中盤には暗くなると夜景にキャラクターが浮かび上がる仕掛けも。ここも撮影可。

入場口をくぐるととすぐ目の前に広がるのは、地上52階から都内を見わたす大パノラマ。ちょうどセーラームーンの舞台となった麻布十番が見わたせる方角になるよう計算されている。ここはセーラームーンの前世の世界にあるムーンキャッスルをイメージして作られている。このエリアと展示内のもう1ケ所、写真撮影が許可されていて、セーラームーンのパネルなどと一緒に決めポーズをしたり、プロによる撮影もその場で申し込めたりする。

5月16日。麻布十番商店街には「美少女戦士セーラームーン展」の旗も
物語中の「火川神社」のモデルになった氷川神社

また、この展示会は物語の舞台である麻布十番には近い距離にある。会場に置かれているパンフレットやHPには、物語の舞台となった場所が紹介されていて、展示を見た後の聖地めぐりもできるようにしている。行けば記念に写真を撮りたくなるというものだろう。

来場者の原体験の記憶を呼び起こす展示

ただの原画展ではないと先にも述べたが、セーラームーンの時の流れをまとめた年表や、カラー化された連載第1回、華麗なカラー原画、そしてアニメの設定資料やセル画といったところまで展示されている同展。特徴的なのは、物語そのものだけでなく、関連したモノの展示が多いことだろう。その数500点以上。多くは講談社やバンダイで保管されていたものだそうだが、現在では入手困難なものばかりだ。

(左)「なかよし」の付録など。(右)セーラームーンのアイテム。右から92年のムーンスティック、93年、94年とアイテムの変遷が見られる

その効果か、「なかよし」の付録だったノートや手帳、「全員大サービス」でもらえたアクセサリーなどが展示されているところでは、「これ持っていた」とか「交換日記に使っていた」などといったテンション高めの会話が弾んでいた。

同様のことは、グッズ展示でも。先にも述べたようにセーラームーンはキャラクターのグッズビジネスで成功している。来場者の多くは、一度は何かしらのグッズを購入しているのだろう。自分の小遣いで何度も買ったカードや、親にねだって買ってもらったであろう、歴代のステッキやコンパクトの前では、目を輝かせて思い出を話し始める人もいた。セーラームーンとともに成長してきた世代にとっては、物語の世界観に浸れると同時に、当時の自分に対面できる場所になっているのだろう。

人気商品の復刻に力点、グッズの売り上げは同会場で1,2を争う規模

関連グッズの展示に目を輝かせる来場者なのだから、当然グッズ売り場は盛況だ。グッズの売り上げは、過去に東京シティビューで開催された展示の中でも1,2を争う規模になる見通しだという。おなじみのポストカードや、お菓子といった商品もあるが、子どもの頃は簡単に買えなかったものも今なら比較的容易に購入できるようになったためか、一番売れているのは1296円(税込み)のムーンスティックだ。人気商品の復刻は、連載当時からのファンを多く持つ作品であることを意識して企画されているという。セーラームーンのステッィクについては、これとは別にバンダイが発売しているもっと高額なものもあるが、総じて売れ行きは好調だそうだから、ファンの熱量の高さがうかがえる。追加で新しい商品が投入されたり、平日限定で販売しているコインなどがあり、リピートを誘う仕掛けになっている。

一番人気があるムーンスティック。受注販売になっている

乙女心をくすぐる前売り券戦略

さらにリピートを加速させている仕掛けがある。前売り券戦略だ。来場者のおよそ半数が前売り券で入場している。前売り券には2パターンあって、連載当時に「『なかよし』応募者全員大サービス」グッズだったちびうさの「時空のカギ」などがもらえるプレミアムチケット(完売)は1万枚以上売れたという。マンガ発売当時の応募者総数が70万件を超えた大人気アイテムで、当時筆者も所持していた。中心人物の1人であるちびうさの重要アイテムなのはもちろんポイントだが、ゴールドのシンプルなデザインで、子どもっぽくない。当時数百円分の小為替か切手を封筒に入れて応募する手間がかかったが、「なんとしてもほしい」と思った記憶がよみがえってきた。付属のハート型のミラーは、大人がバッグなどにつけても、今でも違和感なくかわいい。グッズがつかない前売り券よりも1000円高い2800円だが「1000円で復刻版が手に入るなら」と財布のヒモを解く女性は多かったようだ。

前売り券についてくる「スモール・レディセット」(C)Naoko Takeuchi

もう1パターンは、ローソンチケット限定で購入できるもので、新装版のコミックス1~5巻の表紙に描かれた主要5戦士のデザインだ。5種類から好きなデザインを選べるようになっている。熱心なファンの間では、複数購入し、たとえば月曜日に来場する際は、セーラームーンデザインのチケットを利用して、火曜日に来場する際にはセーラーマーズのデザインのチケットを利用するといった動きもみられた。ツイッターなどのSNSでこういった情報が拡散している。前売り券の複数買い効果もあってリピーターは増えている。事実、前売り券購入者の3分の1はリピーターだという。

5月19日には、6月2日(木)と9日(木)の2日間、閉館する午後10時スタートのナイトツアーが行われることが追加で発表されるなど、リピーターを誘う仕掛けはまだある。来場者数は今後も継続的に増加していくだろう。

どうやって女性の心をつかむか

同展について一番に感じるのは、企画した者がターゲット層のニーズを理解しているなということだ。なぜか。答えはシンプルなのだと思う。展覧会を運営するチームの中には、当時読者だった20代から30代の女性が多数含まれていて、彼女たちの視点やアイデアが採用されているのだ。今回の取材に対応してくれた人は3人だったが、女性で全員読者だった。女性をターゲットにしたビジネスのチームなのに男性ばかりいるプロジェクトなんて珍しくない。それは働く女性の絶対数が男性より少ないのだから当然のことだ。改めてダイバーシティの重要性を確認できる展示だった。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる