ネスレがサプリ飲料「ブースト」発売、“ワンショット”で未開拓市場を取り込めるか

ネスレがサプリ飲料「ブースト」発売、“ワンショット”で未開拓市場を取り込めるか

2017.08.31

2017年3月、抹茶飲料で栄養補助食品市場に乗り出したネスレ日本だが、このたび、50代以上をメインターゲットとしたサプリメントの新ブランドを立ち上げ、本格参入する。巨大であるがゆえに競争も激しいこの市場において、同社が勝ち抜くために描く戦略はどのようなものだろうか。

ネスレ日本が発売するワンショットサプリメント飲料「ブースト」

数種類の栄養成分を“ワンショット”で

ネスレ日本が一般向けの栄養補助食品ブランドとして初めて売り出すのが、「BOOST(ブースト)」というワンショットサプリメント飲料だ。「毎日腸活」「毎日ひらめき」など、含有成分や味の異なる4種類を9月25日に全国発売する。まずはドラッグストアおよびネスレ日本の通販サイトに販売チャネルを限るが、将来的にはスーパーやコンビニにも拡大していきたいという。

新商品の、これまでの栄養補助食品と一線を画する大きな特徴が、さまざまな栄養成分を63mlのドリンクに包含し、“ワンショット”で取り入れられる点だ。年をとると何種類もの錠剤やカプセルなどを飲むのは辛い、という声に対応した。

例えば「毎日腸活」は“お通じが気になる方”をターゲットとしたもので、4種類のうち、この商品のみ「機能性表示食品」として販売する。グアーガム分解物という食物繊維や、ガラクトオリゴ糖といった腸の健康によいとされている成分がメインの成分だ。加えて、便通に問題がある場合、ふだんから栄養のバランスも悪いことが多いことを考慮し、ビタミンも9種類配合している。

食物繊維「グアーガム分解物」を含む「毎日腸活」

また、「毎日アクティブ」という「栄養バランスが気になる方」向けの商品については含有成分の種類がもっとも多く、ビタミン9種、ミネラル5種のほか、コエンザイムQ10、カフェインを配合している。

2017年3月より販売している「ネスレ ウェルネス抹茶」(ビタミンなどを配合した抹茶飲料)に関しても同社が説明していたように、栄養の高さとおいしさを両立させるのは難しい。今回のブーストに関しても、ひと口で飲めるドリンクという形で成分を高濃度に配合するのは苦労したところのようだ。では、飲料メーカーのイメージが強いネスレ日本で、どのようにして技術的な難しさを克服したのだろうか。

世界30カ国で蓄積したノウハウで商品開発

家庭向けの本格的な栄養補助食品を発売するのは今回が初めてというネスレ日本。だが実は、グローバル規模で見ると、栄養補助食品に関する技術やノウハウは、「メディカルニュートリション」という医薬品などを取り扱う事業において長年蓄積してきている。日本でも2008年に事業を開始し、医療機関、介護施設を中心とした約1万の顧客向けに、流動食や栄養補助食品を提供してきた。そのノウハウを使って一般向けに展開するブランドが「ブースト」である。生涯アクティブに過ごせるよう、ミドルエイジ(50~60代)からの栄養をサポートするための商品だ。

医療機関や介護施設向けのメディカルニュートリション事業で培ったノウハウを一般向け商品「ブースト」で活用する

ネスレ ヘルスサイエンスでアジア、オセアニア、アフリカを統括するポール・ブルーン氏によれば、「ブーストは北米では20年以上の歴史を持つブランドで、一般消費者だけでなく医療・介護事業者からの信頼も高い。カナダやメキシコ、中国、韓国、フィリピンなどで展開しており、ブランド名は違うが同様の商品も含めると世界30カ国で取り扱っている」という。

加齢に対する意識の変化に対応

日本の高齢化率や高齢化のスピードは世界でもトップクラス。社会保障費の増大や介護施設不足は数十年前から社会問題となっている。しかし、「健康寿命を延ばすことの重要性」や予防医療の考え方が、最近になってようやく一般に知られるようになってきた。

その理由の1つには、年齢に対する考え方の変化も挙げられる。「アンチエイジング」という言葉に象徴されるように、外見や体力の衰えを「年だから当たり前」と受け入れたくない人が増えたということだ。

ネスレ日本の中島氏

ネスレが50代以上を対象に行った調査では、「年齢でひとくくりにされるのを好まない」「年齢を理由に生活を変えたくない」「充実した人生を送りたい」というニーズが高いことが明らかになった。しかし、このような理想はあっても、実際にアクティブに過ごせている人は全体の3割という実態も浮かび上がってきた。

だからこそ、「ブースト」の日本市場上陸が今のタイミングになったということになる。「今は、日本の加齢に対する考え方が転換点にある大事な時期。一般消費者向け、ミドルエイジ以降の栄養補助商品を出すには一番いいタイミングだ」というのが、ネスレ日本 ネスレヘルスサイエンスカンパニーでカンパニープレジデントを務める中島昭広氏の考えだ。

ソリューション提案できる強み

今回、日本での発売にあたり、ブランド名は他国ですでに流通している「ブースト」を使用しているが、商品は日本市場向けに独自開発した。発売するのは4商品だが、今後は展開の幅を拡大していく予定だ。

ワンショットサプリのほかにもさまざまな形態の商品群を持つブースト。日本でも種類が増えていくかもしれない

「ブースト」には、前述のように何種類ものサプリメントを飲む必要がなく、ワンショットで複数の栄養素を取り入れられるという特徴がある。ワンショットサプリメントという新たなカテゴリを構築し、先行したいというのがネスレ日本の狙いだ。加えて同社の強みは、商品に「情報」や「個々に合う商品提案」をプラスし、ソリューションとして提供できる点にある。

例えば、通販サイトやドラッグストアなどの販売チャネルや、これまでに培ってきた医療機関や医療関係者とのネットワークなどを通じ、セルフメディケーションの重要性や栄養素、健康についての情報を、ターゲットを絞り込んで伝えられる。また、「ネスレ ウェルネス アンバサダー」のように通販の会員として取り込むことで、ITを利用して個別に商品提案することなども可能となるだろう。

アクティブな高齢者を応援してブランド訴求

「アンチエイジング」という言葉もそうだが、現在の日本では「加齢は好ましくないもの」と捉えられがちだ。これに対し同社では、商品を通じて「加齢をポジティブに捉える消費者」を応援し、加齢への考え方を転換することを目的とする。結果的に、社会保障費の低減、高齢者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上、ボランティアなどの社会貢献、経済効果といった、社会全体にとっての利益につながっていくことを期待しているそうだ。

平均寿命が伸長する中で、アクティブに過ごせる期間を伸ばすにはミドルエイジからの準備が重要とするネスレ日本。50歳になったら、朝食にプラス1本という形でブーストを摂取してもらいたいというのが同社の考えだ

気になるのは、1本270円(税別)という価格。ネスレ日本では毎日1本の飲用を推奨しており、店頭では1本から販売するが、通販では6本パックのほか、1カ月分として30本パック(8731円)で販売する。繰り返しになるが、日本の市場にはさまざまなサプリメント、健康食品があふれている。独自の強みをもつネスレの商品とは言え、どの程度の消費者が効果と必要性を感じてくれるかが鍵になってきそうだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。