「働き方改革」でにわかに耳目を集める“リモートワーク”の現場

「働き方改革」でにわかに耳目を集める“リモートワーク”の現場

2017.08.31

近年、「働き方改革」という“号令”がビジネスシーンで飛び交っている。「ノー残業デー」を筆頭に、各企業がこのテーマに取り組んでいる。なかでも注目されているキーワードがリモートワーク。この働き方に取り組む2社を取材した。

2017年7月24日、政府のかけ声によって「テレワーク・デイ」が実施された(本稿では以下、リモートワークと表記)。これは、3年後の東京五輪開催による交通混雑を避けるため、リモートワークを演習しておこう、というのが主旨だ。900以上もの企業・団体が参加し、当日は「NECから社員が消えた!?」というような報道が話題になった。

潮目が変わり始めた海外のリモートワーク

一方で、リモートワーカーがスタッフの約40%というIBMが遠隔勤務を廃止し、オフィス勤務か退社かという二択を突きつけた。チームワーク不足、コラボレーション不足が原因といわれているが、なかには「静かなるレイオフなのでは?」という声もある。

政府を挙げてリモートワークを推奨している日本とは、異なる“潮目”となっている海外の動きは気になるが、「リモートワークとは何ぞや?」を知るため、すでに取り組み始めている企業におじゃました。

UZUZ 経営企画室 室長 羽原佳希氏

1社目は、第二新卒・既卒・フリーターの就活サポートを行うUZUZ(ウズウズ)。同社には3人のリモートワーカーがおり、そのうちの一人、UZUZ 経営企画室 室長 羽原佳希氏に話をうかがえた。

まず、経営企画室という所属に首をかしげた。一般的に経営企画といえば管理部門、いわばバックオフィスだ。筆者のリモートワークのイメージは、デザイナーやコピーライター、プログラマーといった、“クリエイティブな領域で行われるもの”だった。しかも室長という責任のある立場の方が、なぜリモートワーカーなのか。

羽原氏は「リモートワークを始めたそもそものきっかけは、家族の体調不良により、地元である神戸に戻ろうと思ったためです。悩んだ末に退職を決意したところ、副代表から『この会社が好きならリモートワークで続けないか』との提案を受けました」と話す。そしてこの提案を受け、出身地である兵庫県・神戸市の実家に移り、リモートワークで日々の業務をこなしている。

リモートワークのメリットについて聞いてみると、真っ先に返ってきた答えが「雇用的立場が低下しないことです」(羽原氏)だった。退職してフリーランスとなり、そのうえで同社の業務を受託する道もあったが、それでは雇用的立場が弱まってしまう。だが、社員のままでのリモートワークなら、それはない。

また「職場環境とはいっても自宅ですが……、静かなので業務に集中できます。オフィスでは誰かが歩いていたり電話が鳴ったりで、フッと集中力が途切れることがありますが、それがないですね」と、リモートワークのメリットを付け加えた。

「それに、親孝行できる時間が増えたのもうれしいですね」と、羽原氏は笑みをみせる。 一方、デメリットについて。「チャットのやり取りで、相手の表情がわからないことがあり、雑な会話が飛んできたりすると、少しイラッとします(笑)」と話した。以前、SNSを使った生徒同士のコミュニケーションを採り入れている学校法人の先生が、「SNSだと些細なことから言い争いになることがある」と苦笑いしていたのを思い出した。

羽原氏の話に戻ろう。「そのほかのデメリットとしては自分との戦いになること。私はすでに克服していますが、人によってはサボってしまうかもしれません。あと、住宅手当が出ません。まあ、私は実家なので当然といえば当然なのですが……(笑)」。

同社のリモートワークの様子。「appear.in」でライブチャットを行う

コミュニケーション不足をいかに補うか

一番気になるのは、コミュニケーション不足にならないかだが、そうならないための工夫がいくつかある。まず、完全なリモートワーカーではないこと。1カ月に1週間ぐらい、東京に出てきてオフィスで業務するので、リアルなコミュニケーションが生じる。ライブチャットは常時接続され、会社の何気ない情報も共有できる。

ユニークだなと感じたのは、ライブチャットを通じて一緒にランチしていること。「昼ごはん行く?」という会社での日常を、400km以上離れた新宿~神戸間というディスタンスでサラッとやっているようなものだ。

同社では、リモートワークのノウハウが蓄積されたことで、今後も取り組みを強化していくという。広報担当者は、「社員のライフステージが変化した際、退職というカタチで戦力喪失してしまうのを回避できるのがメリットだと考えています。実は単純に“さみしい”というのもありますが……(笑)」。

そうそう。羽原氏は「いろいろとメリットを挙げましたが、私にとっての最大のメリットがあります。それは東京を離れられること。実は東京の水が肌に合わなくて……」と笑みをこぼした。

一方、所属するスタッフがほぼ全員、リモートワーカーという企業もある。オンラインアシスタントをメイン業務にするキャスターも、そうした企業のうちのひとつだ。

UZUZの場合、会社の上層部からリモートワークの指示あるいは許可を得て、社内で必要な業務をこなすというスタイルだったが、キャスターではほかの企業からオファーされた業務を請け負い 、それをリモートワーカーが処理する。イメージとしては派遣業に近いが、一般的な派遣スタッフのようにオフィスへの出社はない。オンライン上で業務を完結させる。

キャスター 代表取締役 中川祥太氏

なぜ、このような業態になったのか。キャスターを創業した代表取締役 中川祥太氏はそのいきさつを語る。

「以前、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に関わる業務に就いていましたが、スタッフを募集してもなかなか集まらないし、一人を雇い入れるのにコストもかかります。人数が増えればセンターも増設しなくてはならないでしょう。一方で、クリエイターなどと企業の仕事を結ぶマッチング掲示板には、毎日のように書き込みがあります。ならば、オンラインで完結する就業スタイルを確立してみようと起業しました」(中川氏)。

最近では、社員の経費処理や出勤簿チェックといった管理業務をアウトソーシングしている企業が増えている。キャスターでは、そうした業務をオンラインで請け負うというわけだ。事実、同社への依頼は、秘書系、経理系、人事系、ウェブオペレーションなどが多いという。

「オンラインで完結させれば」という、中川氏のねらいも当たった。それまで中川氏が過去に勤務していたBPO企業では、一人雇うのに数万円のコストを掛けていたのに、 キャスターには毎月5~600人、多い月で1,000人の応募がある。とはいえ、そのすべてを雇うわけではなく、人材を厳選する。

選考・採用もオンラインで実行

まず、応募はウェブのみ。そして、PDFで履歴書や職務経歴書を送ってもらう。その後、同社から掲示された業務に則した課題に対し、適切なアクションが得られた人材のみ面談に進む。つまり、ウェブが扱え、書類のPDF化をこなし、ビジネスの素養があるかがチェックされているのだ。この段階で残っているのは2~3割。その後、面談になり、ビデオチャットを活用するが、もちろんこうしたITソリューションを使えるかが試され、最終的に雇用にいたるのは1%ほどだという。裏返せば、同社の採用試験を突破する人材は、リモートワーカーとしてのスキルを満たしていることになる。

雇用形態はフルタイムで働く社員と、提示されたタスクを選択してこなす業務委託の2種類。前者はオフィスに勤める一般的な社員と変わりなく、異なるのはリモートワークだということのみ。後者は業務を選択して、こなしたぶんの報酬を受け取る形態なので、子育て期間中といった場合でも時間に融通が利く。

どういう人材が多いのか問いかけると、「99%が女性で、男性はリモートワークに向かないのではないかと疑ってしまうほどです(笑)」と、中川氏は本気なのか冗談なのかわからない表現をした。

都市部と地方の仕事格差を是正

ただ、女性が多いというのもうなずける。セクハラやマタハラ、パワハラを受け会社を辞めざるをえなかった、結婚や妊娠を機に退職したという方々のなかには、まだまだ働きたいという方も多いだろう。そもそもリモートワークならハラスメントは受けないし、出産したばかりで子どもから目が離せなくても自宅で仕事ができる。

さらに、都心と地方との職の格差も埋められる。地方は給与水準が低かったり、そもそも転職先が少なかったり、求職者には厳しい場合が多い。中川氏は、スタッフの3割が関東地方、7割がそのほかの地方在住だという。リモートワークにより、都心と地方の格差を削減したといえよう。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

2018.11.14

VAIOが独自機構の新型モバイルPC「A12」を発表

パソコン事業の成長は数年続き、海外展開も拡充

パソコンのVAIOから、ITブランドのVAIOを目指す

VAIOが業績が好調だ。2017年度は売上、利益ともに2ケタ成長となる増収増益を達成した。PC事業が順調なことに加え、EMS事業も進展したことが奏功したという。11月22日にはオールラウンダーPCというコンセプトを打ち出した新型モバイルパソコン「VAIO A12」を発売する。国内PC事業は合従連衡や海外への売却が続くが、数少ない「純国産」のPCメーカーであるVAIOの今後の戦略とは。

VAIO A12

働き方改革を追い風に地固め、今後は拡大を目指す

VAIOは、ソニーから独立後、法人向けビジネスを中心に据えたことで、早くから黒字化を実現しており、今期も順調な決算となった。売上高は前年同期比10.8%増となる214億8,800万円、営業利益は同13.9%増となる6億4,800万円で、過去最高益を達成した。

PCの法人需要が旺盛で好調な決算となった

法人向けモバイルPCの伸びが前年比30%増と順調だった点が特徴で、その背景にあるのが昨今のトレンドとなっている「働き方改革」だ。テレワークやフリーアドレスなど、それまでの決まったデスクに座ってデスクトップPCを操作するという環境から、ノートPCを持ち歩いて仕事をするという環境に移っていくなかで、VAIOの製品構成がこれに上手くはまった。

VAIO株式会社 代表取締役 吉田秀俊氏

VAIOでは、2017年から11~15インチのモバイルPCでラインアップを構築しており、今年はその後継機種を投入していた。パフォーマンスに特化したVAIO True PerformanceやVAIO Premium Editionといったバリエーションモデルも提供してはいるが、一方でVAIO ZやVAIO Z Canvasといった過去のハイエンドモデルに相当する製品はなく、あくまで「メインターゲットは法人ユーザー」を想定していることが伺える。

同社の吉田秀俊代表取締役は、今後も数年はPC事業が伸長を続けると想定している。働き方改革の拡大を受けて法人需要がさらに伸びることに備え、ラインアップをさらに拡充することで売り上げを伸ばしたい考えだ。

構想3年、開発2年の「VAIO A12」

これを目指して今月発売する新ラインアップが、12.5インチサイズのデタッチャブルWindows PC「VAIO A12」だ。市場にある課題とその解決を徹底的に図ったという製品で、求められているPCはクラムシェルか2in1か、タブレットタイプかコンバーチブルかデタッチャブルか、そういったゼロからの検討を行った結果、「構想3年、開発2年」を費やして仕上げたモバイルPCだという。

VAIO A12は、既存のカテゴライズでは、タブレットとキーボードの着脱機構を備えたいわゆる2in1モバイルPCだ
「膝上で使える」問題の解決や、まともなキーボードの搭載など、クラムシェルPCの使い勝手を求めた

前提とした課題がすべて解決しない限り製品化を見送るという強い意識で開発されたのがA12であり、それには新たな技術的ブレークスルーが必要となった。それが「Stabilizer Flap」と呼ばれる新たなデタッチャブルの機構だ。

「Stabilizer Flap」と呼ばれる独特のデタッチャブル機構が最大の特徴

きっかけは書籍の背の動きだったそうだが、軽量なPCを実現しながら、クラムシェル型と同等の使い勝手を実現した。キーボード部にはVGAやLAN端子を含む多くの端子類を装備して、周辺機器との接続性を求める日本の法人ユーザーのニーズに対応させた。実際、すでにA12導入に向けて動いている法人の中には、「VGAがあるのが選択の決め手」というところもあるそうだ。

機能はとにかくニーズの実現を徹底し、端子が豊富という今では貴重な仕様。手持ちのモバイルバッテリで本体を充電できる5V充電機能もいざというときに役立つ

コンシューマ向けで考えると、端子を減らしてスッキリとしてさらに薄型化、軽量化、低価格化も期待したいところだが、豊富な端子に対する法人ニーズは根強く、その点はVAIOとして譲れない線ということだろう。ただ、薄型軽量であることにはこだわり、タブレットとしては重さ607グラムで薄さ7.4ミリ、キーボードユニットを装着しても重さは1,099グラムまで抑え込んだ。

ソニー時代から同社が得意とする高密度実装技術を活かし、薄型軽量化にもこだわった

海外市場に再挑戦、PCラインアップも早々に増やす

PC事業では、一度は撤退した海外市場に向けて再挑戦にも乗り出している。販売エリアを順次拡大しており、今年は12カ国まで拡大した。今後は北米、中国、欧州での展開を計画している。特に欧州へは「検討中というわけではなく、決めている。来年早々にも展開する」(吉田氏)という。

PC事業の勝算はあるのか。吉田氏は、会社としてのVAIOが240人体制になり、「(ソニー時代に比べ)限られたリソースの中でどう成長戦略を描けるか」が課題であったと振り返る。この1年は「足りているもの、足りていないものを見極める」ことに集中し、独立後1~3年という「短期決戦を乗り切った」と話す。

引き続き、「VAIOはPC事業だけで将来生き残れるのか、という(市場の)問いに答えなければならない」としており、その答えとしては、「ビジネスユーザーにPCは必要なので、PCが大きな核としてVAIOを支えるのは間違いない」とするが、それだけではPC事業としての生き残りには不十分というのが吉田氏の認識だ。

そのため、技術革新や世の中の進化に伴って、ユーザーの生産性をいかに高められるかという観点で新しいPCを打ち出し、生き残りを図っていく考え。その一つの回答が「VAIO A12」となるが、来年以降の新製品でもそうした点を踏まえた新製品を投入していく。「来年度はもう少し違った形で生産性を高める製品を提供していく」という意向を示しており、年明け早々には今までとは異なるタイプの製品を企図しているようだ。

現行のラインアップ。最上部にあるのがVAIO A12で、来年さらなる新ラインアップを展開する

PCはVAIOのコアだが、VAIOはPCブランド脱却目指す

吉田氏は「貪欲な姿をもちながら、VAIOのブランドを伸ばす」と話すが、ここで大きな戦略の柱となるのは、「PCブランド」としての「VAIO」ブランドからの脱却だという。PC事業は順調とは言え、ライバルも多い。MicrosoftのSurfaceだけでなく、レノボとその傘下のNEC、富士通、鴻海傘下のシャープ、東芝、そしてデル、HPといった米国勢もあり、働き方改革の影響で伸びた市場をどこまで獲得できるかは未知数だ。

吉田氏は「次世代ITブランドとしてのVAIOを目指す」としており、単にPC単体を売るのではなく、セキュリティやキッティングといった付加価値サービスも盛り込むことで、トータルソリューションとしてのPC事業を展開する。

これに、EMS事業でのシナジーも追加していきたい考えだ。あわせてPCの周辺機器などを扱うことで、PC事業の強化にも繋げていき、市場全体の活性化も狙える。ハード、ソフトの両面から事業領域を拡大していく。

PC事業は、周辺機器やセキュリティソリューションなどでさらなる拡大を目指す

EMSやパートナーの強化、IoTなどの新規事業など、ビジネス領域の拡大で企業としてのVAIO自体の強化を目指すが、今後も屋台骨となるPC事業で好調を維持できるか。ここまでの短期決戦を乗り切り、ここから一過性の盛り上がりではなく継続した強い事業構造への転換を図る、吉田氏が「フェーズ2」と呼ぶVAIOの新たな成長戦略がはじまったばかりだ。