iPadを活用した授業でも“等身大”の学びを実践する品川女子学院

iPadを活用した授業でも“等身大”の学びを実践する品川女子学院

2017.07.05

文部科学省は、教育にICT技術を採り入れるよう各機関に呼びかけている。たとえば、ICT端末を一人一台に所持させるようにしたり、小学校からプログラミング教育を促したりするようにだ。この文科省の意向はどのように教育現場に届いているのか。

ある機会を得て、東京・品川女子学院の授業を見学させていただいた。過去にも何校か、ICT機器を活用した授業を拝見させていただいたことはある。それぞれ、学校の工夫や先生の熱意が伝わってくる授業内容だった。だが、品川女子学院といえば、早くからiPadを授業に取り込むなど、しばしばメディアに紹介される学校法人だ。どれだけ“サイバー”な教育環境なのか、興味深く授業見学におもむいた。

昔ながらの教室でデジタルデバイスを活用

教室に案内され、足を踏み入れてみると、意外というかホッとするというか、普通の教室だった。正面には昭和さながらの黒板が立てつけられ、その右上には白い文字盤に黒い短針・長針・秒針を備えた昔ながらの丸い時計が掛けられていた。極端なハナシ、数十年前の昭和時代に学生だった筆者の教室環境と大差ない。ひとつ違うのは、教室の左隅に40~50インチクラスのディスプレイが備えられていること。この大きさのディスプレイは、当時、視聴覚室にしかなかった。

教室の様子。一見、普通の教室だが、生徒たちの机にはiPadが置かれていた

だが、授業が始まってみると、昭和さながらのクラスルームの風景は、平成のソレへと変わった。雰囲気を一変させたのはiPadの存在だ。各生徒の机の上には、教科書、ノート、筆記用具のほか、iPadが用意されている。

しかも、各自のiPadが画一的ではなく、個性的なのに気づいた。それは、iPadかiPad Proかといった機種の違いのほか、カバーやスタンドがまちまちなこと。ピンクだったり水色だったり、オレンジだったりと、各生徒が好みのオプションを取り付けている。学生時代、筆箱は好きなモノを持ち込めたことを思い出した。品川女子学院の彼女たちにとって、iPadはすでに、筆箱と変わらない“文房具”の一種になっているのかもしれない。

そして、見逃せないのが数十台のiPadが同時に活用されていること。これは、複数のデバイスが接続できる無線通信環境が整っていることを表している。

生徒たちの答案が教室のディスプレイに表示される

さて、授業風景をレポートしよう。見学させていただいたのは、4年生の数学の授業だ。4年生とはいっても小学校ではなく、中高一貫の女子校であるため、一般的には「高一」と呼ばれる世代だ。

指導するのは学年主任の白石賢佑教諭で、授業の開始と同時に「iPadの授業用ノート2ページ目を開いてください」と指示すると、各自が指示されたページを開く。この際、先生のiPadには、MetaMojiの「ClassRoom」というアプリにより、各自のページを確認でき、勉強の進捗状況をチェックできる。仮に、紙のノートで同じことをするとなると、生徒たちからノートを集め、先生が当該カ所を調べる必要がある。下手をすれば、これだけで授業時間の大半を消費してしまう。

中山遥子教諭と白石賢佑教諭

ただ、印象的だったのは、iPadを使うのは授業の一部分だけで、基本的には黒板に先生が図や式を書き、それを生徒たちが写し書くというスタイルを取っていたこと。「自らの手で書くことが勉強には大切」と白石先生は話す。とはいえ、デジタル機器の利便性も、授業に活用している。

デジタルデバイスはあくまで補助機器

たとえば、黒板に書いた図を「1分で書き取りなさい」と指示した際、どうしてもその時間内に書き取れない生徒も出てきてしまう。その場合、iPadのデジカメで撮影することを許すという。「黒板を撮影するのは、あくまで許可したときだけです。基本的にはノートにペンで書くということにしています」(白石先生)。これは、インタビューに同席してくださった中山遥子教諭も同意見で、許可したとき以外に写真撮影はさせないという。デジタルばかりではなく、アナログの勉強法を重要視した授業といえよう。

グループワークの様子

さて、白石先生の授業風景に戻ろう。数学といえば、先生が黒板に図や式を書き、それを生徒たちがノートに書き写す“スクール形式”の授業をイメージする。ところが、白石先生は授業の後半、生徒たちをグループ分けして出題をした。各グループ内で生徒たちが協力しあって問題を解くという寸法だ。文科省は“思考力”“判断力”“表現力”を育てるような授業を推進しているが、“協働性”についても重要視している。

このグループワークは、数学の授業とは思えないほど、生徒たちが生き生きしていた。それぞれiPadの画面を見せ合ったり、ClassRoomで画面を送受信したりしているのか、課題を共有した“学び”を楽しんでいた。印象的だったのは、終業のチャイムが鳴ったとき。すでに課題を解いていたグループは談笑していたが、“解”にたどりついていないグループは、なんとか解こうとがんばっていた。だが、無情にもチャイムは鳴る。

「えぇー!」「ウソ!?」といった声が、各グループからあがった。これこそ、授業に集中していた、いや、授業を楽しんでいた証拠といえよう。近年、アクティブ・ラーニングの重要性が高まっているが、“能動的に学ぶ”というのが基本。まさに、その現場をみた気がした。

AI英会話アプリの試験導入も検討

さて、この品川女子学院に新しい動きがあった。それは、トークノートとジョイズが共催した「ICT教育の最前線事例に関する記者発表会」においてだ。これは、品川女子学院や聖徳学園、島根県・松江市、DeNAといった学校法人、自治体、企業などが、教育についての取り組みを紹介するというもの。

この席で品川女子学院は、AI英会話アプリ「TerraTalk」を試験導入するとリリースした。導入は夏休みに予定されているので実際の環境を拝見することはできなかったが、ICT教育に関して同校が積極的なのがわかる。ただ、TerraTalkの試験導入と、それまで取り組んできたiPadの導入は、若干性格が異なるかなと感じた。

前者は、英語を学ぶという目的が明確で、学力の純粋な向上を目指したものといえる。一方、後者は社会に出たときに、デジタルデバイスを柔軟に扱えるような素養を身につけさせるのが主目的なのかなと感じた。いずれにせよ、ICT教育に対する同校の積極さが、伝わってきたことは確かだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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