まだ4店目!? なぜシェイクシャックは日本出店を急がないのか

まだ4店目!? なぜシェイクシャックは日本出店を急がないのか

2017.07.08

日本4号店を新宿サザンテラス内にオープンしたニューヨーク発のハンバーガーレストラン「シェイクシャック」。日本上陸当初は大行列ができた人気店で集客力は依然として高いのだが、日本のハンバーガー業界に乗り込んだ“黒船”にしては、出店ペースが遅い印象だ。

シェイクシャック新宿サザンテラス店

既存店とは様相を異にする立地

まず新宿と聞いて、今までの3店舗とは少し趣の違う立地だと感じた。既存3店は地元密着という意味も含めローカル志向だったが、新宿サザンテラス店では、多種多様な個性を持ち合わせた人々が集う場所でありたいという願いを込め、「connect(コネクト)」をコンセプトに掲げる。

新宿は単なる街ではなく、多くの人が行き交う拠点だ。単なる通過点ではなく、多くの人がシェイクシャックを通じてつながりを持つ。コネクトにはそんな意味を持たせたという。

新宿サザンテラス店をビルの中から見た外観

なぜ新宿なのか

実際、有楽町にある東京国際フォーラム店も多くの人が集う場所の1つに立地しているが、集まる動機が異なる。交通の要衝、いわゆるターミナルという位置ではない。トレンドや情報を発信する街である銀座に近いという利点、これが国際フォーラム店の1番のベネフィットだ。

第1号店舗である外苑いちょう並木店は、本場マディソン・スクエア・ガーデンの雰囲気に近い店舗立地を選択。アトレ恵比寿店もしかり、それぞれが異なる街並みでの店舗立地である。立地によって、どのような客層が集まるのか。異なる立地、客層に関して得られるデータは決して少なくない。

シェイクシャックは残念ながら、まだ全国区の存在ではない。今後どのように店舗を拡大し、知名度を上げるかを考えていることだろう。その場合、ブランドイメージの向上がカギとなる。店舗拡大に際しては、シャイクシャックを見たことがある、または食べたことがあるという顧客を増やす必要がある。そのため、多くの人が行き交い、目に触れる機会の多い新宿という立地に新店舗を設定したのではないだろうか。

他店に先駆けて夏季限定メニューを展開

6月30日のオープンを前に、新宿サザンテラス店の内覧会に足を運んでみた。店内はシェイクシャックらしく木目調でしゃれた雰囲気だったが、全長5メートルというペインティングが強烈なアクセントとなっていた。

店内の様子。ペインティングが目を引く

サザンテラス店では夏季限定商品を他店に先駆けて展開。チリあるいはホット、または激辛という表現で人気を博している辛味をテーマに、日本市場に新商品を登場させた。「ピクルドハラペーニョバーガー」が、シェイクシャックの提供する夏場の新商品だ。

ハラペーニョは実際、そのままでも十分な辛さを持つ存在として日本人の多くに認知されている。しかしながら、その辛さは他の食材の良さを減退させてしまう可能性も秘めている。シェイクシャックの新作バーガーは、そこまで辛さを前面に出さず、夏場に最適な彩りや、ほんのりとした辛味という役割をハラペーニョに与える。ハラペーニョをピクルスにして、細切りして揚げたものをトッピングしているのだ。

「ピクルドハラペーニョバーガー」は880円。新宿以外の3店舗では7月8日に発売した。販売期間は8月31日までだ。飲み物はシェイクシャック版シャンディガフの「シャックシャンディ」

ピクルスにしたハラペーニョの輪切り、これだけを口に入れると、やはり辛味が先に舌先を刺激する。驚きの食感は、完成品をしっかりと頬張ると実感できる。輪切りのハラペーニョのフライとサクサク感満点のエシャロットのフライ。その2つのサクサク感に加え、とろけたチーズを身にまとった、うまみ満点のビーフパティが味を支えている。口の中で咀嚼していると、徐々にサクサク感は薄まり、ほどよい辛味とビーフの濃い味わいがまとまってくる感覚だ。

確かにハラペーニョバーガーは、同じく夏季限定メニューとなるシャックシャンディに合うかもしれない。このドリンクはグラスだけでなく、ピッチャーでも提供される。数人のグループなどで味わうにはピッタリかもしれない。

新宿店でだけ提供する通年の限定メニューとしては、「レインボーコネクション」(左)と「ソルテッドキャラメルバナナクランチ」がある

テラスの設定も強み、モノとコトの価値を合わせて提供

サザンテラス店でも感じたことだが、シェイクシャックの強みの1つとなっているのはテラス席の設定だ。新宿のテラス席であれば、夕陽の落ちる風景を見つつ、高層ビル街を駆け抜ける涼風に身を任せながら、うまいバーガーとビールを味わうことができる。そんなシーンの演出も、シェイクシャックの仕掛けなのかもしれない。食べ物だけを売るのではなく、その場所における経験や体験を付加価値として提供するのがシェイクシャック流だ。

質の高いメニューと店舗での体験を合わせたトータルの価値を提供するシェイクシャック。そのビジネスモデルは「ファインカジュアル」だ。

創業者は高級レストランを経営

シェイクシャックはあくまでも高級レストランではなく、またファストフードでもない業態だ。商品戦略としては、中上位の価格帯を狙っている。

同店の創業者はニューヨークで一流レストランを展開するオーナーだ。2001年にマディソン・スクエア・ガーデンの再生を目的としたアートイベントが開催された際、このオーナーが小さなホットドッグカートを出店したことが、シェイクシャックの原点となっている。つまり創業者は、高級路線でも支持される価格帯の店舗を展開していた人物なのだ。これがシェイクシャックがファストフードにならなかった理由と言える。

シェイクシャックが中上位の価格帯を狙ったファインカジュアルを目指していることは、セットメニューが存在しないことや、コーヒーを提供していないことからもうかがえる。ハンバーガーとシェイク、そしてソーダが、発祥であるニューヨークオリジナルのシェイクシャックスタイルだ。実際、東京国際フォーラム店を訪れた時、コーヒーをオーダーした客に対し、スタッフが近隣のコーヒー店を教える場面を目撃したこともある。

シェイクシャックの看板メニュー「シャックバーガー」

ファストフードとは全く違うビジネスモデル

まだ日本では4店舗のシェイクシャック。このビジネスモデルが一般化するには時間が必要だ。それ故に、今はオリジナルのスタイルを定着させることが優先されているのだろう。

商品自体の単価が安価であるため、セットメニューを客に勧めて単価を上げる必要があるファストフードとシェイクシャックは全く違う存在だ。実際、国際フォーラム店でカウンターをしばらく観察した経験から言うと、1000円以下の購買客はほとんど見られず、1人でも1000円台、2人であれば2000円から時には3000円を上まわるというのが、シェイクシャックの価格帯だった。

単価の高さを支えるのは品質やサービスだ。その1つは作り置きをしない姿勢だろう。例えばシャックバーガーであれば、アツアツのハンバーグにトッピングのチーズが熱で溶けて、しっかりと肉を包み込む。オーダー時に渡される呼び出し装置も面白い試みだ。注文後に座席を確保し、呼び出しに応じて商品を取りに行く。比較的スマートな流れであり、国際フォーラム店で見たところ、来店客も違和感を感じているようには見受けなかった。

数よりも質の担保を重視

海外から日本へ上陸した黒船ハンバーガーチェーンの中には、10年で100店舗の出店を目指す勢力も存在する。そんな中、シェイクシャックの目標として聞こえてくるのは「2020年までに10店舗」という数字だ。

この点について、シェイクシャックと日本展開で独占契約を結ぶサザビーリーグの西林遥氏は、「質を担保できない立地には、あえて出店はしない」と出店戦略を語ってくれた。ギラギラした商売っ気を感じさせない答えだが、ビジネスモデルの始まりが商売ありきではなく、地域復興のためのボランティアであったことを踏まえると、シェイクシャックは常に初心を忘れない存在だとも思える。

ビジネスである以上、数を追っていないわけではない。ただし、数だけを追ってもビジネスモデルは確立しない。そんな考えが透けて見えるシェイクシャックの店舗展開は、今までの黒船たちとはどこか違うという印象を強く受けた。

手軽とは言いにくいが、商品のクオリティーと価格が妥当と感じられる商品に、シェイクシャックで久しぶりに出会った。新宿というターミナルへの出店により、シェイクシャックの知名度も、シェイクシャック経験者の数も既存店とは比較にならない勢いで増える可能性がある。そうなったときに、シェイクシャックの出店スピードに変化が現れるかどうかも注意して見ていきたい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu