異色のテーマ設定も新エリアが好調! よみうりランドにみる遊園地進化論

異色のテーマ設定も新エリアが好調! よみうりランドにみる遊園地進化論

2016.05.25

このところ値上げが相次ぐテーマパーク・遊園地業界だが、なかでも大胆な価格設定を行ったのがよみうりランドだ。約100億円を投じて新エリア「グッジョバ!!」を整備し、ワンデーパスの料金を従来の4,000円から5,400円に引き上げた。イベントなどのソフト面を強化し、来園者数を急激に伸ばしてきたよみうりランドが、「モノづくり」という異色のテーマ設定で新エリアを整備した狙いとは。

東京都心から程近いよみうりランド。キャラクターの「ランドドッグ」(写真)が出迎えてくれる

チケットの高価格化が進むテーマパーク業界

テーマパーク・遊園地業界ではチケットの高価格化が進んでいる。東京ディズニーランド(TDL)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、互いの価格設定を牽制するかのように小刻みな値上げを繰り返してきており、現在は両者ともワンデーパスを7,400円に設定している。USJ開業当時、両社のワンデーパスは5,500円で並んでいた。

よみうりランドが大幅な料金改定を行ったのは実に20数年ぶりのこと。この間、消費増税に伴いワンデーパスを3,900円から4,000円に値上げしたことはあったが、基本的には料金据え置き路線を守ってきた。他の施設がハードへの投資とチケットの値上げを進めるなか、よみうりランドが注力してきたのはソフト面の強化。イベントを通年にわたって仕掛けることで、来園者数の急増を達成した経緯がある。

冬の時代をイベント攻勢で脱出

よみうりランドが施設の拡張を考え始めた7年前は、年間来園者数が60~70万人のレベルで横ばいを続ける冬の時代だった。ハードへの大型投資を検討するにあたり、重要だったのは遊園地としての地盤固め。リピーターを含めた多くの来園者を獲得しておかなければ、大型投資と料金改定の影響で来園者数が減少に転じるというシナリオも考えられる状況だったわけだ。

5月中旬によみうりランドを訪問。平日の午後にもかかわらず、家族連れを中心とする来園者で賑わっていたのが印象的だった

そこでよみうりランドが注力したのが、通年にわたるイベントの充実だ。代表的なところでは、冬のイルミネーションイベント「ジュエルミネーション」やゴールデンウィークに開催する「全国ご当地大グルメ祭」などが人気を集める。

夏には、放水キャノンやダンスショーなどのイベントを詰め込んだプール営業が恒例化している。よみうりランドのスタッフが中心となって実施するシンクロショーは、今やファンが付くほどの人気コンテンツに成長。プール営業の最終日、プール自体の営業終了後に行うシーズン最後の公演には、別れを惜しむ多くの観客が集まるという。人気イベントはリピーターを獲得し、年間来園者数を押し上げた。

ここ数年で来園者は急増。2016年度目標は203万人だ

発想の転換で生まれた人気イベント

人気イベントには、よみうりランドのスタッフが発想を転換したことで誕生したものもある。その代表例がジュエルミネーションだ。そもそも冬の夜というのは、遊園地にとって来園者数が見込めない時間帯にあたる。寒くて暗い冬の夜に、屋外型アトラクションを楽しもうという人が減るのは当然で、よみうりランドも以前は、冬になると16時半に営業を終了していた。

ジュエルミネーションは遊園地にとって魔の時間帯ともいうべき冬の夜の効果的な活用事例となった。スタッフの発案で生まれた同イベントは、スタッフ自らが電飾を整備した第1回(2010年冬)で10万人の集客を達成。翌年からは照明デザイナーの石井幹子氏にプロデュースを依頼し、イベントの内容を充実させた。2015年冬の集客は57万人を超えたという。

2015-2016シーズンに実施したジュエルミネーションの様子(提供:よみうりランド)

使っていない時間、使っていない場所を有効活用するという方向性は、プール営業にも共通する特徴だ。プールでは1日に何度か水中点検の時間がある。その間、プールに入れない来園者にしてみれば、水中点検は手持ち無沙汰な時間になりがち。よみうりランドはこの時間をイベントで埋めることで、プールサイドでも楽しく過ごせる新たなプール営業の在り方を追求している。

ソフト充実、料金据え置き路線で他施設との差別化は容易だった

イベントが充実し始めた2008年度の年間来園者数が64万人だったのに対し、2015年度は173万人と過去最高の数字を叩き出した。注目すべきは増加率で、よみうりランドは7年間で来園者数を2.7倍に増やしたことになる。

他の施設がハードの拡充と値上げを続ける一方で、よみうりランドは料金を据え置きつつ、ソフト面を充実させることで来園者数の大幅な増加を成し遂げた。値上げが続く業界において、よみうりランドは料金据え置き路線を堅持するだけで他施設との差別化を図れるポジションにあったといえる。その道を選ばず、あくまでグッジョバ!!の新設計画を推し進めたよみうりランドには、どのような狙いがあったのだろうか。

よみうりランドに「テーマ」をもたらしたグッジョバ!!

グッジョバ!!は企業とのコラボレーションで生まれた新エリア。楽しみながらモノづくりを学べる数々のアトラクションが売り物だ。立ち上げ当初からグッジョバ!!の新設計画に携わってきた遊園地事業本部 副本部長の曽原俊雄氏によると、施設拡張が決まった背景には、よみうりランドに「テーマ」を持たせたいという想いがあったという。

総面積約2.4万平方メートルのエリアに自動車、食品、ファッション、文具の4業種からなる「factory」を備えるグッジョバ!!。企業のノウハウを活用し、様々なアトラクションを整備した。身近な業種を選んだのがポイントだという

昔と今で来園者のマインドに変化はあるかと聞いてみると、曽原氏はあくまで私見と断ったうえで、近年の来園者、特に子供連れのファミリー客からは、楽しみ以外のプラスアルファを期待しているような感じを受けるとの印象を語ってくれた。ファミリー層が遊園地に求めているのは、「楽しさ」に加え、子供の「成長」を促すような要素ではないかと同氏は分析する。このように来園者のマインドが変化しているとすれば、遊園地は楽しいだけの場所から、何らかの付加価値を持つ場所へと変わる必要がでてくる。よみうりランドがテーマの獲得を目指した理由も、この辺りにあるのかもしれない。

3世代がターゲットのテーマ設定

よみうりランドが新エリアのテーマを模索していたとき、来園者の中で目立つようになっていたのがシニア層だ。施設拡張の検討が始まった7年前は、団塊の世代が定年退職の年齢を迎えていたこともあり、孫を連れて訪れる60代以上の来園者が増えていたのだ。この客層を踏まえ、3世代をターゲットに据えて設定したのが「モノづくり」というテーマだった。

モノづくりというテーマであれば、子供と祖父母が共有しやすいうえ、親世代も巻き込むことができるというのがよみうりランドの見立てだ。共有しやすいテーマがあれば、家族・友人間の会話が増えるという効果も期待できる。モノづくりと並ぶグッジョバ!!のテーマは、「家族・友人同士の絆」だと曽原氏は語る。

日産自動車がサポート企業を務める「CAR factory」(写真左)は、車の製造工程を“体感”できる計4機種のアトラクションを備える。日清食品と組む「FOOD factory」(写真右)では、パッケージや具材を選んでマイU.F.O.を作るワークショップが大人気だという
「FASHION factory」(写真左)のパートナー企業はワールドと島精機製作所。遊園地のアトラクションといえば原色で塗装されているイメージだが、同ファクトリーの屋内型コースター「スピンランウェイ」にはニット柄の装飾が施されている。コクヨと組んだ「BUNGU factory」(写真右)で人気を集めるのは、オリジナルのキャンパスノートを作れるワークショップ。早いときには開園後15分で1日分の整理券が捌けることもある

あくまで遊園地、教える雰囲気は排除

新エリアを整備するうえで、曽原氏らが気をつけたのは「教える」という雰囲気を出しすぎないことだった。よみうりランドの立ち位置は「あくまで遊園地」(同氏)であるため、楽しみながら自然にモノづくりについて学べる施設作りを心掛けたという。

実際のところ、15種類のアトラクションを備えるグッジョバ!!は「遊園地」の延長線上にある新エリアだ。グッジョバ!!開業により、よみうりランドの総アトラクション数は従来の28種類から43種類へと1.5倍に拡大。グッジョバ!!を別料金にして、既存遊園地エリアの料金は据え置くという方法もあったわけだが、乗り物の数が大幅に増えたことを考えれば、グッジョバ!!開業によるよみうりランド全体の値上げも納得できない話ではない。

このような背景で誕生した新エリアだが、気になるのは開業後の客入りだ。

グッジョバ!!開業効果で来園者数は前年比3割増

新エリア開業前は値上げの影響を考えて「ドキドキした」と語る曽原氏だが、グッジョバ!!開業後の客入りについては上々の手応えを得ているようだ。2016年3月18日の開業以来、来園者数は前年比3割増で推移。よみうりランドは17%増を見込んでいたというから、出足は好調とみてよいだろう。ゴールデンウィークの客入りについては、年によって平日の数が違うので単純な比較は難しいが、4月29日から5月8日までの10日間を切り出して比べると、今年の来園者数は前年比で46%の増加になったという。

新エリア開業の効果をみる場合、グッジョバ!!が屋内型の施設であることも見逃せないポイントだ。屋外型アトラクションが中心だったよみうりランドでは、繁忙期に雨が降ると「ゼロの数が2つ違う」(曽原氏)こともあるほど、天候が来園者数に与える影響が大きかった。グッジョバ!!を目当てとする来園者が増えれば、悪天候時の客入りが改善するという効果も期待できるのだ。

気になるのは今後の展開だが、よみうりランドは今回のグッジョバ!!を「第1期計画」と位置づけ、第2期以降の拡張にも取り組みたいと意欲をみせる。具体的な拡張計画はまだ検討段階のようだが、方向性としてはグッジョバ!!の業種を増やしていくのがメインになる模様。拡張用地については周辺の土地や、既存遊園地エリア内の組み換えで対応することになるようだ。

異業種コラボの場にもなりうるグッジョバ!!

日産自動車と日清食品。似た響きの社名を持つ両社は、今年のエイプリルフール企画として「日産焼そばU.S.O.」を製造し、CAR factoryで配布した。よみうりランドを舞台とする異業種コラボの一例だ

大幅な値上げを伴ったにも関わらず、新エリアの開業効果は順調な集客につながっている様子。モノづくりという遊園地としては異色のテーマ設定だが、グッジョバ!!開業後の客入りをみると、この方向性は現時点で来園者に受け入れられているようだ。投資回収のためにも、肝心なのは新エリアを含めて更なるリピーターを獲得し、好調な客入りを継続していくことだろう。

グッジョバ!!は、よみうりランドが民間企業と組んで様々なイベントを仕掛けられる場所でもある。よみうりランドのイベント企画に関する知見が、企業との連携でどのような取り組みに結びつくかにも注目したいところだ。グッジョバ!!を舞台に、企業間での異業種コラボレーションが進展する可能性もある。

異色のテーマ設定を可能とした「物語」不在の自由度

考えてみると、ハード面への大型投資に際してテーマ設定を行い、そのテーマを表現する施設を構築するというのは遊園地ならではのチャレンジだ。示唆に富む「物語」と、その物語に登場する有名なキャラクターを施設に落とし込めるテーマパークであれば、ある物語をコンセプトとする新エリアを整備する際、テーマを強力に打ち出す必要はない。テーマやメッセージは物語が語ってくれるからだ。物語を持たない遊園地がテーマを獲得するには、全てをゼロから作り上げる必要がある。

物語はテーマパークが持つ決定的な優位性だが、一方で発想の自由度を縛る側面もあるように感じる。物語には濃密な世界観が付いて回るため、施設に落とし込む場合には世界観を崩さないよう注意する必要があるからだ。よみうりランドによる異色のテーマ設定は、物語に縛られない遊園地ならではの決断だったのかもしれない。この挑戦が、よみうりランドの“成長物語”として結実するかどうか、今後の動向に注目したい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。