Appleは市場に懐疑的? Amazonが圧倒する「スマートスピーカー」の現状とは

Appleは市場に懐疑的? Amazonが圧倒する「スマートスピーカー」の現状とは

2017.07.09

米Amazonが2016年末、同社のホリデーシーズン商戦でスピーカー型スマートデバイス「Amazon Echo」関連ビジネスの好調を伝えてから早半年以上が経過し、IT業界各社からは次々と競合デバイスの市場投入が発表されている。

Amazon Echo

雨後の筍のように続々と登場する「スマートスピーカー」だが、どのような製品があり、実際にどういったユーザー層や用途を狙っているのだろうか。最新の事情をまとめてみた。

Amazon Echo+Alexaのブームが起きるまで

スピーカーを通じて「Alexa (アレクサ)」というAIアシスタントに話かけることで、音楽を演奏したり、家の電灯のオン/オフを行ったり、あるいは最新のニュースや天気予報を教えてもらったり……。手による操作を必要とせず、音声インタフェースを使ってさまざまな機能を利用できるのが、「スマートスピーカー」と呼ばれる製品の特徴だ。

Amazon Echo Dot

Amazonの「Echo」が一般販売開始となったのは2015年6月で意外と古く、すでに2年以上の稼働実績がある。ただ、このAlexa+Echoのような仕組みが注目され始めたのは比較的最近の話だ。おそらく2016年3月に廉価版の「Echo Dot」の提供が開始されて以降、ユーザーの利用が進んだだけでなく、同年末のホリデーシーズン商戦に機能を強化しつつも値下げが行われたバージョンが投入されたことで、トレンドになったのだとみている。

Alexaには、利用可能な機能を追加する「Skill」という仕組みがあり、これをサードパーティの開発者にSDKの提供・開放している。Amazonが用意したSkillのオンラインストアで公開が可能で、Business Insiderの報道によれば2016年第1四半期にわずか135個だったSkillは、翌第2四半期に1000個を突破。第3四半期に3000個、第4四半期に5000個、2017年第1四半期にはついに1万個の大台に乗っている。Skillの拡張が一気に進んだのは2016年夏以降で、スマートスピーカー分野への最終的な製品投入を各社が決定したのもこの時期だと予想される。

だが、Echoが提供されていない米国以外の多くの国でも、Alexa+Echoの組み合わせが大きな注目を集めるようになったきっかけがある。前述の通り、Amazonは2016年ホリデーシーズン商戦における結果を高らかに発表したが、これに加えて家電展示会「CES 2017」で家電各社と数々の提携を発表した。

Amazonによると同時期だけでEchoの売上が前年比9倍の伸びを示し、Alexa関連デバイスの販売も数百万台規模にのぼったという。また、CES 2017ではLGがAlexa対応冷蔵庫を発表するなど、家電各社がAlexa搭載を行った自社製品のデモストレーションを披露し、その勢いを印象づける結果となった。

さらに2017年5月には7インチ液晶ディスプレイ付きのAlexa対応スマートスピーカー「Amazon Echo Show」も発表され、「単なるスピーカー形状にこだわらない」というメッセージをAmazonは出している。

Amazon Echo Show

「IT企業各社がAmazon Echo+Alexa対抗デバイスの準備を進めている」という噂は、2016年前半にはすでに存在していたと認識している。当時名前が挙がっていたのはGoogleとAppleで、前者は2016年5月に開催された開発者会議「Google I/O」において、実際にGoogle Assistantに対応したスマートスピーカーが「Google Home」の名称で発表された。

今年のGoogle I/Oで日本市場への投入が明言されたGoogle Home

同時期にAppleも対抗製品を開発しているという報道が行われたものの、結局同年6月に開催された開発者会議「WWDC16」でこれが発表されることはなかった。最終的にAppleは翌年6月のWWDC17においてSiri対応スマートスピーカーの「HomePod」という製品を発表している。

AppleのHome Pod

米Microsoftは2016年末に中国の深センで開催されたWinHECにおいて、同社のAIアシスタント「Cortana」を搭載したスマートスピーカーを開発するためのガイドラインを発表した。OSにはWindows 10 IoTを利用することで通常のPC向けWindowsと比較しても軽いフットプリントで動作し、さらにディスプレイの有無によって2種類の要求スペックが定義されている。

同時期に、スピーカー製品で知られるメーカーのHarman Kardon (現在はSamsung Electronics傘下)との提携でCortana対応スマートスピーカーを間もなく提供開始するとティザー広告を展開し、これは後の2017年5月に「Invoke」の名称で正式に発表が行われている。

Harman KardonのInvoke

米系以外のメーカーとしては、中国のオンライン通販大手Alibabaが2017年7月に「Tmall Genie」という製品を発表して話題となった。「AliGenie」というAlibaba独自のAIアシスタントを採用しており、Alexa+Echoで実現されるSkillセットの多くが標準で利用可能になっているという。このほか、SamsungがやはりEcho対抗のスマートスピーカーを準備中という報道が出ている。Samsungはスマートフォン「Galaxy S8」発表に合わせてAIアシスタント「Bixby」の投入を発表しており、この開発中のスマートスピーカーはBixby対応になるという。

Tmall Genie

原稿執筆時点でBixbyの英語対応が遅れていることが伝えられているが、米国での競合らがすでに製品提供が行われている既存のAIアシスタントを自社のスマートスピーカー製品に搭載して市場投入している以上、SamsungもまたBixbyをセールスポイントとして売り込むために開発を急ピッチで進めている段階にある。

日本国内ではコミュニケーションサービスを提供するLINEが、AIアシスタント「Clova」を搭載したスマートスピーカー「WAVE」を発表し、一部機能が省略された廉価版デバイスを今夏に先行投入する計画だ。無骨なデザインのスピーカーだけでなく、キャラクターを模したユニークなデザインのスピーカー製品「CHAMP」も提供を予定している。

キャラクター商品として投入されるLINEの「CHAMP」。ほかに他社製品同様のシンプルなスマートスピーカー「WAVE」も投入する

現時点で競合はすべて米国や中国など自社の本拠地のみをターゲットに製品を投入しており、まだ日本への市場展開を行っていない。Amazon Echoは2017年内の国内投入が噂されており、GoogleはGoogle Homeの国内販売を明言しているが、LINEは日本を地場とする強みを活かしてClove+WAVEを先行投入する計画だ。

これらハードウェア製品に関して、Appleが事実上自社製品のみで閉じたエコシステムを形成しているのを除けば、基本的にはAIアシスタントの仕様を公開して外部のメーカーに搭載製品を開発してもらうケースが多い。Amazonが典型的だが、すでにLGをはじめとするメーカーからAlexa搭載デバイスが市場投入されている。

Googleも「Google Assistant built-in」の名称でサードパーティでの採用を推奨している。もともとソフトウェアのOEM供給を主眼とするMicrosoftでは、自社がスマートスピーカー製品を出すことはなく、あくまで基本仕様を定めて前述Invokeのようなサードパーティ製品の開発を促している。Amazonは「Development Kits for AVS (Alexa Voice Service)」で音声認識ハードウェア開発に必要なキットも用意しており、可能な限りエコシステムを拡大していこうという意図がうかがえる。

このように盛り上がるスマートスピーカー市場だが、ビジネスモデルがわからないという方も多いだろう。何より「何に使うの?」と疑問に思っているかもしれない。実際のところ、先行するAmazonの事例を見る限り、利用されている機能の多くは「音楽演奏や機器制御などのハンズフリー操作」の部分にある。例えば、スマートフォンを操作することなくお気に入りのプレイリストなどを演奏させたり、就寝時に消灯や目覚ましのセットを行ったりと、非常にシンプルなものだ。

Amazonの狙いはGoogle、Microsoftも目指す道

Amazon EchoとAlexaに関して、「Amazon Prime」に紐付いたサービスだと指摘されることが多い。音楽演奏や普段の購買行動など、Primeのサービスを快適に利用する仕組みが音声のみで簡単に利用できるからだ。また、Amazonは1家に1台とはいわず、複数台のEcho (Echo Dot)導入を推奨しているように見える。

同社はEcho同士で内線通話できる機能の提供を開始しており、各部屋にEchoを設置しておけば家のどこにいてもAlexaに話しかけるだけでサービスが利用できるからだ。おそらくAmazonが目指すビジネスモデルとは、さまざまな場所にEchoを張り巡らせることでAlexaの利用できる環境を整備し、同社サービスへより多くの人々を誘導することにある。あわよくば同社の大きな収益源であるPrimeの加入が増えてくれれば御の字だろう。

Googleもそれに近いビジネスモデルを描いていると思われる。Google Assistantの利用が広がれば、それだけ各種のデータが蓄積されてユーザーのGoogleサービスでの滞留時間が長くなり、結果として同社のビジネスを広げる機会にもなる。Microsoftは現在Azureというクラウドサービスの提供拡大に邁進しており、やはりCortanaを通してAzureの利用を推進することが将来的なビジネスの拡大へとつながる。その意味では、AlibabaやLINEも同種のビジネスモデルを描いていると予想する。

ポートフォリオに合致しないApple

逆に、ビジネスモデルが見えにくいのがAppleだ。100~150ドル以下でデバイスを大量にばら蒔いてエコシステム拡大に努める競合らに対し、AppleのHomePodは349ドルと高価だ。同社はHomePodを高級スピーカーと位置付けており、さらに前述のようにApple自体がクローズドなエコシステムでサードパーティの介入する余地をあまり残していない。

想像ではあるが、Appleはこのスマートスピーカーの市場にいまだ懐疑的で、少なくとも最低限の利益を確保できるレベルで製品を投入し、あまりリスクを負わない方向性を目指しているように見える。投入時期が2017年末と遅く、さらに市場が米国限定というあたりにその方向性がうかがえる。

製品としては、Amazon Echoが音楽利用中心になっていることを勘案して、高級スピーカーとしての性格を強くしたようにも思える。いずれにせよ、ハードウェアをビジネスの主軸に据えるAppleと、これを撒き餌にビジネスを拡大する方向性を見出している競合とは目指すものが異なるようだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。