岐路を迎えた携帯ショップ、生き残り策は「カフェ」

岐路を迎えた携帯ショップ、生き残り策は「カフェ」

2017.07.10

7月7日に総務省が公表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、スマートフォン利用率は全年代で71.3%に達し、20代は96.8%、30代も92.1%、40代でも79.9%と生産年齢の中心層にはほぼスマートフォンが行き届いたと言っていい環境だ。

イノベーター理論における、いわゆるレイトマジョリティの後半に差し掛かり、これ以上劇的なスマートフォン販売の伸長は望めない。また、携帯販売代理店の頭を悩ませるのはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど主要3キャリアの端末販売台数の減少だろう。MM総研の調べでは、3社向け出荷台数は2676万台で前年比3%の減少、一方で"格安スマホ"と呼ばれるMVNOなどで利用しやすいSIMフリースマートフォンは266.1万台で前年比88.5%増と好調だ。

空白地帯を狙う出店戦略

販売台数の減少は、代理店にとっても販売手数料の減少につながるため、携帯ショップを運営する"旨み"がなくなる。そうなれば、いざという時にユーザーが駆け込むサポート受付となるショップを閉鎖せざるを得ず、長年に渡り作り上げてきたネットワークを失ってしまうことになる。

しかし実際にキャリアショップが撤退した"空白地帯"へ、敢えて新規ショップを出店した代理店がある。それがテレニシホールディングスだ。同社はソフトバンク系専業の代理店としてショップ事業を行っており、昨年より「モーテ」と呼ぶ新業態店をスタートした。

モーテとは「Mobile Hyblid Terrace(MOHTE)」の略称で、ソフトバンクショップとワイモバイルショップ、そしてここがキモとなるがカフェを併設した複合施設を展開している。昨年11月に1号店を高知県の桂浜に開設後、宮崎県の日南、沖縄県の南風原、そして今回取材した福井県坂井市の丸岡にオープンした。なお、2017年度中にほか数店舗をオーブンする予定だという。

モーテ丸岡

カフェ併設の意図とは?

テレニシホールディングス傘下のナビックスで移動体事業部 本部長を務める島田 和彦氏は、「この地域(丸岡)は2013年にソフトバンクショップが閉店して空白地帯だった。そういう意味では商機があったし、ランドマークとして集客できる勝算があった」と話す。

モーテの出店戦略は、こうした空白商圏の穴埋めを狙いつつ、単なるショップでは立ち寄ってもらえないデメリットを、カフェで補うものだ。

「キャリアショップは機種変更とサポートを必要とする時にしか来ないため、集客は苦しみがちです。そこでカフェを併設することで、常にショップが近くにある環境を作り出すことが大切です。また、こうした空白商圏は基本的に車社会。東京は言わずもがな、大阪・梅田で同じ規模のショップを持とうとすれば坪単価は5倍を下らない。広い施設を持って土地と駐車場を構えて、となると集客装置を含めた施設設計が必要です」(島田氏)

また、ソフトバンクの専業代理店としてやってきた強みが活きるのがワイモバイルショップの併設だと島田氏は話す。

2階にカフェを据え、必ずSB、YMショップを通る造りにしている

ワイモバイルは都心でこそ、それなりの知名度があるものの「地方ではまだまだ認知が少ない」(島田氏)。ソフトバンクユーザーの解約受付や、料金を確認して契約を渋るユーザーに対して、いわゆるLCC(Low Cost Career)としてのワイモバイルショップへと案内することで、結果として最低限の契約を勝ち取る設計にしている。

「ワイモバイルがあるのがソフトバンクグループ最大の強み。基本軸は当然単価の高いソフトバンクですが、軽自動車的にワイモバイルもありますよ、とおすすめできるところが良い。かねてからソフトバンクショップ、ワイモバイルショップとしてのノウハウを蓄積しているため、お客さまへの提案、熱意などは他代理店よりも高いと思います」(島田氏)

格安スマホにはない強みを守るために

細かい仕掛けでは、2階に店を構えるカフェも同社の直営。フランチャイジーではなく直営にすることで、営業収入はもちろん、カフェのメニューにショップへ送客するためのチラシを挟むといった"相乗効果"も狙っているという。

「もともと、カフェやレストランのフランチャイズ事業のノウハウがありますから、自社でカフェを運営する力を持っています。何より、一度カフェがあると認識してもらって常連になれば、それだけショップの露出機会は増えますし、商店街やショッピングモールと違って離脱の可能性も少ない。年配の方なんかは、もし下のショップでスマートフォンを買って使い方がわからなければ、カフェついでにショップで質問もできる。利用満足度を上げて"地域密着"を追求できればと考えています」(島田氏)

システム化や無駄を削ぎ落としたコスト設計でMVNOが台頭している。ただ、2017年4月に国民生活センターが公開した"格安スマホ"に関する相談件数は、2011年度が20件であったのに対し、2016年度には1045件(2015年度は380件)と急増している。安易なMVNOへの移行によって「繋がらない」「使い方がわからない」「料金が高い」といった問題が浮き彫りになった格好だ。

格安スマホに関する相談件数の推移(国民生活センターWebサイトより)

もちろん、総コストが下がりつつも通信サービスを利用できるメリットは大きい。ただ、これまで主要3キャリアのサービスに慣れたユーザーが安易に乗り換えることで、思いもよらぬトラブルに遭う可能性があることも忘れてはならない。生き残りをかける携帯ショップの多角化戦略は、サポートを担う"インフラ"を守る戦いでもあるのだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。