異なるアプローチから生じたプログラミング教育2つの事例

異なるアプローチから生じたプログラミング教育2つの事例

2017.07.10

東京・六本木にあるトークノートの会議室において、「『ICT教育最前線事例』に関する記者発表会」が開催された。学校法人や自治体、IT企業など、計4種類の事例が紹介された。それぞれの団体・企業に異なるアプローチがあり、興味深かった。

記者発表会に参加した団体・企業は以下のとおり。品川女子学院、聖徳学園、島根県・松江市、DeNAだ。

このうち品川女子学院の取り組みについては既報してあるので、そちらで確認してほしい。一方、聖徳学園については現場の見学にお誘いをいただいているので、後日、詳しくお伝えしたい。なので、本稿においては、この2校は割愛させていただき、松江市とDeNAの事例について触れてみよう。

まつえ産業センターの本田智和氏(右)と佐藤文昭氏

まず松江市だが、プレゼンを行ったのは、まつえ産業センターの本田智和氏と佐藤文昭氏。 プレゼンの冒頭、本田氏は「島根県の場所がわかりますか?」と取材陣に問いかけた。余談だが、島根県の方は、しばしばその知名度の低さを自虐的に話す。だが、松江市といえば日本で5番目に国宝指定された天守閣、松江城があるし、テニスの錦織圭選手の出身地だ。「そんなに自虐的にならずとも……」と正直思った。とはいえ、“場所がわからない県”というある調査で、10%もの票を得て“堂々の1位”になったというのだから、自虐的にもなろうというものか……。

プログラミング教育で地域ブランド創生

ハナシを戻そう。松江市が取り組んでいるICT教育を推進しているのは「Ruby City MATSUE プロジェクト」である。これは、「OSS」(Open-source software)と「Ruby」(ルビー)を活用し、地域ブランドの創生を目指すというもの。このRubyとは、プログラム言語のことで、松江市に在住している松本行弘氏によって開発された。ちなみに松本氏は政府主導のIT総合戦略本部の本部員を務め、松江市の名誉市民でもある。

ではなぜ、このRubyがICT教育に活用されるようになったのか。

そのきっかけは、2005年にさかのぼる。この年に行われた国勢調査で、松江市の人口が減少に転じたことが明らかになった。人口減少の一因には、産業の反活性化が挙げられる。産業を活性化させ雇用を創出するためには、企業誘致が必要。ところが、地方都市である松江市には、企業誘致にさける大規模な補助金はない。そこで目をつけたのが“人材”。そして人材を育成するために着目したのがRubyだ。

設置した拠点で中学生に教える

まず、市内の島根大学、松江高専の両学で開催される「Rubyプログラミング講座」に助成。これは、就職を控えた人材から育成していこうという考えだ。次に松江駅前に設置した「松江オープンソースラボ」を拠点に、「中学生Ruby教室」「Ruby Jr.」を開催した。人材の裾野を広げるほか、IT分野に興味を持つ中学生を早期に発掘する試みもある。

小学生向けプログラミング教室で利用される「スモウルビー」

やがて2012年になると学習指導要領が改訂され、中学校技術・家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修化された。これをきっかけに実証授業を繰り返し、2016年には私立中学校全校でRubyによる授業を開始。なお、中学生が利用するのは「スモウルビー」という、アイコンボタンを並べ替えてプログラムできる機能を備えたプログラミングツールだ。

そして2017年3月には小学校でのプログラミング必修化が決まった。これを受けメンター(指導者・助言者)の育成、子どもたちの理解につながる教材作成に取り組んでいる。

なお、松江市とは関係ないが、島根県のある場所で行われた民間企業によるスモウルビーを使ったプログラミング教室を見学したことがある。対象は小学生だったが、スモウルビーに興味津々のようで、歓声を上げながらプログラミングを楽しんでいた。

一方、DeNAのICT教育は何か。こちらもプログラミング教育に注力している。DeNAといえばIT企業だ。プログラミング教育に注力しているのは、“将来のIT人材の確保”がねらいだろうと、短絡的に考えてしまう。ところがプレゼンを行った同社 渉外統括本部 末廣章介氏によれば、それは異なり、CSRだという。

DeNA 渉外統括本部 末廣章介氏

そもそものきっかけは、創業者の南場智子氏が、政府関係者から「なぜ日本にはイノベーションを起こす人材が育たないのか」と、問いかけられたことだった。ところが日本では大企業志向が強く、起業への意識が薄い。ある調査によると「起業したいか」との問いに「Yes」と答えた数は、調査国70カ国中最下位だったという。

しかも、将来は47%の仕事がAIやIoTに奪われるといわれている。こうした時代を乗り切るための人材を育てる教育は何か。DeNAは新しいタイプの“デジタルデバイド”に着目した。

新しいデジタルデバイドからプログラミング教育を発想

「以前のデジタルデバイドは、IT機器が『使えるか』『使えないか』という構図でした。ですが、今やIT機器をほとんどの人が使えます。これからは『つくれるか』『使えるか』になります」(末廣氏)。これはIT機器を単に使えるだけでなく、“何かをつくれる”ほうが優位に立つということだ。“つくれる”というキーワードを考えれば、プログラミングにたどりつくのは自然な流れだ。

そこでDeNAは、佐賀県・武雄市に着目する。この自治体はタブレット一人一台体制となっており、プログラミング教育を導入するのに好都合だったからだ。ところが当時の武雄市のタブレットは非力で、一般的に出回っているプログラミングツールがスムーズに動かない。そこでDeNAは自社でオリジナルアプリを開発するが、このアプリを小学校低学年向けとした。

対象は小学校1~3年。自分の描いた絵が動かせるという内容で、これなら低学年でも興味を持ちやすい。2014年から始まった同社の取り組みは、現在、武雄市と神奈川県・横浜市で行われている。

さて、松江市は人口減少がきっかけとなり、企業誘致に有利になるような人材を育てるためにプログラミング教育にいたった。DeNAは、“日本の将来を憂える”というような考え方から、プログラミング教育を開始した。同じプログラミング教育でも、スタートの背景は異なるのだなぁと、ユニークに感じた。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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