アマゾンがプライムデーを開催するワケ

アマゾンがプライムデーを開催するワケ

2017.07.11

アマゾンがプライム会員向けに、年に1度の特価セールを行う「プライムデー」が今年も行われている。今年は7月10日18時から11日23時59分までと開催時間を6時間延長(計30時間)したが、アマゾンはなぜプライムデーを開催するのだろうか?

2015年から大幅に会員サービスを拡充したAmazonプライム会員

プライムデーは、2015年にスタートした「Amazonプライム会員」向けの限定セールだ。今年は中国やインド、メキシコでも初めて開催し、13カ国、10数万点のアイテムが数十%オフのセールとなる。

プライム会員は年額3900円、月額400円でさまざまな特典を受けられることが特徴で、日本では2007年6月にスタートした。当初は「お急ぎ便」と呼ばれる宅配便の前倒し配送特典のみの提供だったが、2009年10月には「当日お急ぎ便」、Kindleユーザーなどに向けた「Kindleオーナーライブラリ」を2013年8月より提供している。さらにこの2年のサービス拡充はめざましく、矢継ぎ早に下記サービスが追加された。

4月よりスタートしたAmazon Fresh
  • 2015年9月

食品や日用品などまとめ買いしか出来なかった商品を1点からまとめ購入できる「Amazonパントリー」がスタート。また、動画配信サービス「Prime Video」も開始。

  • 2015年11月

首都圏の一部、関西圏の一部で1時間ないし2時間以内に特定商品を配送する「Prime Now」がスタート。また、音楽ストリーミングサービス「Prime Music」も開始。

  • 2016年1月

画像データであればファイル容量の制限なく、無劣化でデータを無制限に保存できる「Prime Photo」をスタート。

  • 2016年12月

ボタンを押すだけで商品が届く「Amazon Dash Button」がスタート。

  • 2017年4月

生鮮食品が届く「Amazon Fresh」がスタート。

ビデオサービスは独自コンテンツを拡充

特に競合サービスにとって脅威となるのがデジタルサービスのVideoとMusic、Photoだろう。競合他社は、サービス単体で月額500円代後半から1000円程度の料金が発生するのに対し、Amazonはあくまで"付加価値"として提供する。アマゾンジャパン 社長のジャスパー・チャン氏が「お客さまが感じていただける価値、『Primeがないなんて考えられない』という価値を提供したい」と話すように、大盤振る舞いの高付加価値が目に留まる。

アマゾンジャパン 社長 ジャスパー・チャン氏
剛力彩芽さん(左から2人目)や千原ジュニアさん(右から2人目)がオリジナル番組に登場する

実際に筆者が利用していても、例えばVideoなどはハリウッド大作映画が多くラインナップされ、ボリュームこそNetflixやHulu、dビデオなどの競合サービスに劣るものの、「007」などの独占配信もあり、確かに「価値」がそこに存在する。また、この日は剛力彩芽さんが主演するオリジナルドラマ「フェイス - サイバー犯罪特捜班 -」や、千原ジュニアさんのオリジナルバラエティ番組「千原◯ニアの◯◯-1GP」の制作発表も行われた。

近年は配信サービスを手がける各社が独自番組制作にも注力しており、テレビCMなどでも盛んに独自コンテンツをアピールしている。例えばNetflixが2016年に手掛けた又吉直樹さんの初小説「火花」のドラマ化は大きな話題を呼んだ。

広告モデルに頼らない独自収益があるがゆえに、スポンサーの意向などを汲むことなく番組制作に注力できる上、会見で千原ジュニアさんが「(地上波放送ではないから)規制とかなく面白いことをやれる」と語ったように、クリエイターが自由な映像制作に注力できる環境が整っているため、今後もこの勢いは増すものとみられる。

2016年の売上高は1兆円超、これを原資に投資は続くか

ただ、前述のようにプライム会員の年間課金額は3900円、月額でも400円の合計4800円と、単独サービスとして見てもかなりの低課金額だ。Amazonは詳細な収益構造を公表しておらず、例えば今回のプライムデーの売上目標について記者から問われても「Amazonのお客さまにショッピングを楽しんでもらえるような目標が大切だと考えている」(チャン氏)と回答をはぐらかす。

米Amazonが公開した2016年のAnnual Reportによると、日本法人の売上高は107億9700万ドルで、2016年年末の為替レート(115円)で計算すればおよそ1兆2400億円となる。収益面に不安はなく、今後もしばらくはPrimeサービスへの投資や、会員獲得を目指した動きが続くものとみられる。

特に、このプライムデーは大規模セールで注目を集めつつ、無料お試し期間を提供し大幅な会員増加を狙う。実際に、2015年から2016年のプライムデー売上高は、「全世界で50%~60%程度の伸びを見せた」(チャン氏)とのことで、今回も同等の売上増を見込んでいるとみられる。

1台限りの販売を行うメルセデス・ベンツ

この日の記者会見は、東京・六本木にあるメルセデス・ベンツの車を売らないショールーム「ベンツ・コネクション」で開催し、同時にポップアップストアをプライムデーの期間限定でオープンした。目玉商品の一つとして「Mercedes-AMG E 63 S 4MATIC+」をプライムデーで1台販売し、同ショールームには店員を呼び出す特製Amazon Dash Buttonを設置している。

プレミアムサービスと高級志向な商品の相乗効果を狙うのは、先日発表された米Amazonによる高級スーパー「Whole Foods Market」の買収とまったくの無関係ではないだろう。日本では小売店舗の動きを見せていないが、プライムデーの開催に合わせたポップアップストアの開設を新たな動きと捉えるのは早計だろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。