2020年には当たり前に? 無人タクシーでZMPと日の丸交通がタッグ

2020年には当たり前に? 無人タクシーでZMPと日の丸交通がタッグ

2017.07.11

2020年の東京で自動走行タクシーを走らせる―。そんな目標を掲げ、ロボットカーのZMPとタクシー会社の日の丸交通が研究会を立ち上げた。他のタクシー会社を巻き込み、政府にも働きかけて実現を目指すというが、その可能性は。

研究会発足を発表した日の丸交通の富田和孝社長(左)とZMPの谷口恒社長

エリア限定で無人タクシーを運用

ZMPと日の丸交通は2017年6月、自動走行タクシーの配車を見据えた配車アプリの開発で協業を開始した。研究会発足は両者の協業が進展した形だ。

研究会発足の発表会に登壇したZMPの谷口社長によると、2020年にはエリア限定で自動走行タクシーの走行を実現するという。エリア外に移動したいと望む利用者には、無人タクシーから有人タクシーへと乗り換える仕組みをアプリを通じて提供する方針だ。

ZMPは配車サービスと車両を提供し、タクシーの走行データを受け取る

自動運転技術とタクシー業界の共存共栄は可能?

自動運転の技術は、ドライバーから雇用を奪う存在としてタクシー業界とは相容れない関係なのかと思いきや、谷口社長は「タクシー会社とZMPは共存共栄」と言い切る。自動走行タクシーは有人タクシーと相互補完の関係にあり、ドライバーが不足していたり、ドライバーの収益性が低かったり、深夜や早朝など、ドライバーの労働環境として厳しい時間帯であったりする部分を、自動走行タクシーで補うことができると谷口社長は語った。

タクシー会社の日の丸交通が自動走行タクシーに期待する背景には、やはりドライバー不足の問題がある。富田社長によれば、タクシー稼働率は下落していく一方であり、ドライバーの高齢化も進んでいるのが現状。こうした変化に手を打つのは今しかないとの考えから、ZMPとの共同プロジェクトに参画したのだという。

タクシー稼働率は下がり続けている

富田社長としては、何も手を打たないままでいて、そのうちライドシェア勢による“白タク”が既成事実化してしまう前に、ドライバーの有無に関わらず、タクシーはタクシー会社で運営するという方向に持っていきたいという考えがあるのだろう。

ある程度の台数を走らせるのが目標

2020年に東京でエリア限定の自動走行タクシーを走らせるとの目標だが、それはシンボリックに2~3台の車両を走行させるつもりなのか、あるいは、急増が見込まれる外国人観光客の役にも立つような、ある程度の規模の運用を行うつもりなのか。気になったのでZMPの谷口社長に聞いてみると、前者の考えは明確に否定された。台数こそ明かしてもらえなかったが、少なくとも、自動走行タクシーを滅多に見かけない存在にするつもりはないようだった。

自動走行タクシーを東京で見かける日も近い?

ある程度の台数を運用するとすれば、車両の価格も問題になってきそうだ。もちろん自動走行タクシーの価格は不明だが、参考までにZMPが扱うミニバンタイプのロボカーの価格を確認してみると、1800万円(税別)という設定となっていた。自動走行車の価格が、タクシー会社が一定数を用意できるレベルに下がるかどうかも問題になってきそうだ。ちなみに谷口社長は、自動車メーカーに生産を委託し、車両を量産するというアイディアも検討中だという。

技術開発は追いつくか

自動走行タクシーが実際に2020年の東京を走るかどうか。そして、それは何台くらいの規模になりそうか。その辺りを想像する以前に、実際に技術開発が間に合うのかどうかも気になるところだ。

谷口社長の構想は実現するのだろうか

ちなみに、研究開発費に年間1兆円以上を投じるトヨタ自動車の取り組みを見てみると、自動運転技術の開発方針としては、2020年ごろを目標に高速道路で「料金所から料金所まで」の自動走行を実現し、2020年代前半~半ば頃に一般道向け自動運転技術「アーバン・チームメイト」を商品化する意向らしい。

ZMPはタクシードライバーが持つ運転に関する知見なども収集しつつ、自動運転技術の開発を進めていくというが、2020年までに一般道で運用するとなると、クリアすべき課題も多そうだ。

ZMPの谷口社長が自動走行タクシーの構想を抱いたのは、路線バスが廃線となったり、タクシー会社が廃業したりして、クルマなしでは生活できない環境にある地方の状況を目の当たりにしたからだそうだ。いわゆる“交通弱者”に手軽な交通手段を提供するという意味でも、自動走行タクシーの実現には期待したいところ。技術開発、車両の価格、法規制など、乗り越えるべきハードルは多そうだが、まずは2020年の東京で、実際の車両が走行するかどうかに注目したい。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

Appleで何が起きているのか、クックCEOの手紙に波紋 - iPhone SE2の可能性も

Appleで何が起きているのか、クックCEOの手紙に波紋 - iPhone SE2の可能性も

2019.01.23

Tim Cook氏の投資家向けレターが波紋を呼ぶ

大きな誤算だった新型iPhoneの販売状況

中国勢に翻弄されるApple、噂の「iPhone SE2」は?

AppleのTim Cook(ティム・クック) CEO

1月29日に発表される米Appleの2019年度第1四半期(2018年10-12月期)決算に合わせ、投資家らに宛てた同社CEO Tim Cook氏のメッセージレターが波紋を呼んでいる。

1月2日に発信されたこのメッセージには、当初890-930億ドルとしていた同四半期の売上が840億ドル程度と最大1割程度減少することが記されており、その理由として世界情勢の悪化やそれにともなうiPhone売上減少が挙げられている。この報告を受けて同社株価は1割程度も急落し、iPhoneに部品を提供するサプライチェーンにも影響が拡大している。現在Appleに何が起きており、今後同社はどこに向かうのか。

Tim Cook氏が投資家向けメッセージで語ったこと

Appleが決算発表前のガイダンスを下方修正することは過去にも何度かあったが、iPhone発売以降の現行体制に移行してからは過去最大のインパクトとなった。熱心なAppleウォッチャーとして知られるDaring FireballのJohn Gruber氏はこの件について「2002年6月以来」と述べており、ドットコムバブルがはじけた直後の新製品リリースに苦戦していたAppleの苦境に近い状況を想定しているのだろう。

さて、今回の下方修正最大の要因は中国市場にある。下記はTim Cook氏が投資家らへのメッセージで語った内容だが、中国では2018年後半に経済減速が始まっており、iPhone、Mac、iPadのすべてのカテゴリで売上減少が発生しているという。

> While we anticipated some challenges in key emerging markets, we did not foresee the magnitude of the economic deceleration, particularly in Greater China. In fact, most of our revenue shortfall to our guidance, and over 100 percent of our year-over-year worldwide revenue decline, occurred in Greater China across iPhone, Mac and iPad.

> China’s economy began to slow in the second half of 2018. The government-reported GDP growth during the September quarter was the second lowest in the last 25 years. We believe the economic environment in China has been further impacted by rising trade tensions with the United States. As the climate of mounting uncertainty weighed on financial markets, the effects appeared to reach consumers as well, with traffic to our retail stores and our channel partners in China declining as the quarter progressed. And market data has shown that the contraction in Greater China’s smartphone market has been particularly sharp.

もちろん経済減速を意識して中国の人々の間で旺盛な消費意欲が減退して、高価なApple製品を買えなくなったという話もあるだろう。一方で、特に中国ではiPhoneの競争力がなくなりつつあるという指摘もある。例えばWall Street Journalが1月3日(米国時間)に公開した記事では、本来は中国市場などをメインターゲットに「安価で大画面」をうたって登場したはずの「iPhone XR」が10万円近い値付けで非常に高く、Huaweiなどの競合製品と比較しても機能面で見劣りして魅力的ではないと説明されている。

実際、カメラ機能でいえばより安価な価格帯でHuaweiのP20 ProやMate 20 Proといった製品が提供されており、背面が単眼カメラで値付け面でもiPhone XRは不利だ。価格競争力という点ではXiaomiというライバルもおり、中国市場におけるiPhoneは「iPhone」というブランド価値でしか勝負できていない。

現行のiPhone XR

もともとサプライチェーンの最適化で世界最高レベルの手腕を持つTim Cook氏が中国に築いたiPhoneの製造エコシステムは、Appleを大きく成長させる一方、中国で強力なライバルを育て競合を激化させた。いまや世界で最もスマートフォン激戦区となっている市場において、中国に育てられたAppleが、中国で生まれた競合らによって弾かれつつある。

Appleの誤算と将来

Apple不調の話はいまこのタイミングで出てきたわけではなく、一昨年2017年にiPhone Xをリリースした直後にはささやかれはじめ、昨年2018年にiPhone XS、XS Max、XRをリリースしたことで確信に変わったという流れだ。

特にAppleからオーダーを受注するサプライヤ各社は、生産量の動向を事前に把握しており、昨秋に何段階かにわたってiPhone XRの製造量が当初見込みの半減以下になったことを受けて、このトレンドが確かなものだと認識しただろう。もともとiPhone XRの製造台数は全iPhoneのうち3-4割程度を見込んでいたが、現状では1割強の水準にとどまる。

iPhone XSとXS Maxもすでに販売が頭打ちのため、iPhone Xの製造ラインを復活させて(オーダー済み)在庫部品を消化したり、iPhone 7や8といった旧モデルの流通数量を増やして全体の販売台数を調整したりと、新モデル不調を旧モデル復活で穴埋めする状態が続く。

さらに、すでに製造済みの流通在庫や部品消化のためiPhone XRを大量に販売しなければいけない状況であり、Appleが携帯キャリアにバックリベートを渡す形で値下げを進めたり、トレードインプログラムを介して旧機種の下取りを条件にiPhone XRのみを比較的安価に販売したりと、さまざまな施策が続いている。

米カリフォルニア州サンフランシスコにあるApple San Francisco店舗の入り口に掲げられたiPhone XRの宣伝文句
店内ではトレードインプログラムによるiPhone XRの割引販売告知が掲げられている

iPhone XRの製造数は専用部品である液晶パネルの数量から想定できるが、もともと製造量の少なかったLG Displayはともかく、フォアキャストの大幅減少を受けて最大のサプライヤであったJDIは非常に大きな影響を受けているといわれ、新型iPhoneに関わりの深かったサプライヤほど少なからぬダメージを受けている。結果として、昨年2018年第4四半期(10-12月期)時点ですでに一部サプライヤが大幅な業績の下方修正を行っている。筆者の推測だが、後述のAppleの製造計画を見る限り、今後もしばらくはサプライヤの苦難の時代が続くだろう。

Appleの製造計画に詳しい複数の関係者の話によれば、同社は2019年秋に新しい3モデルのリリースを計画しており、それぞれ「6.5インチのOLED」「5.8インチのOLED」「6.1インチのLCD」という現状のモデル構成をそのまま維持する。機能面での大きな違いは「カメラ性能」で、最上位モデル(6.5インチ)は「3眼カメラ」を採用し、残りはすべて「2眼カメラ」となる。

「3眼カメラ」については競合のHuawei製品とは異なり、望遠や広角ではなく「深度計測」に特化したセンサーになるようだ。主にポートレート撮影を想定したもので、「強力なコンデジ」を突き詰めた競合製品との違いとなっている。また現行モデルではiPhone XRとしてリリースされた普及モデルでも2眼カメラであり、「カメラ性能で競合と比べて不利」という状況を覆す狙いがあると考える。

一方で、2018年モデルでLCD搭載製品の需要があまり見込めないと判断したAppleは、2020年モデルで「OLED搭載モデルのみ」に絞ってリリースする可能性がある。現状聞こえてくるのは「大画面」と「中画面」の2モデル構成で、それぞれの需要をカバーする。また同年代のモデルでより大サイズのカメラセンサーを搭載するという話も出ており、ライバル対抗を隠さない方針のようだ。

次期モデルは高値傾向がより問題に

反面、部品原価は高くなる一方で、この場合カメラモジュールのコストが一気に跳ね上がり全体のBOM (Bill Of Materials)を圧迫する。BOEなど中国系メーカーへのOLEDパネル製造の打診もあるようだが、LG DisplayでOLEDパネル製造が上手くいっていない現状を見る限り、今後も少なくとも1-2年はSamsung Displayによるほぼ独占供給状況が続き、パネル価格も高止まりを続けることになるだろう。つまり2020年も引き続きiPhoneの高値傾向は続き、場合によってはさらなる値上げという可能性も出てくる。

現行ラインアップで最上位機種の「iPhone XS Max」(右)と、その小型版の「iPhone XS」(左)

高価格が敬遠されるなか、iPhone XS、XS Max、XRの世代ではForce Touchの機能を省いてコスト削減までしておきながら、さらに値上げ要素を維持する狙いは何なのか。

これを筆者はイノベーションのジレンマのようなものだと考えている。iPhoneの機能としてはほぼiPhone 6の世代で完成しており、以後は大きなイノベーションなく製品の更新が続いている。一方で、大きな競争にさらされた競合メーカーらは最新機能やアイデアを惜しみなく投入し、「世界初」的なアピールを続けている。

ユーザーの目からすれば「そんなのは微々たる差でスマホの機能自体はたいして変わらない」と思うかもしれない。だがAppleの目にはそう映っておらず、焦りのようなものがあったのかもしれない。その結果、Tim Cook氏の号令で大きく舵を切って登場したのがOLED全面採用モデルである「iPhone X」や、そこに据えられた「Face ID」のような仕組みというわけだ。

おそらく、Appleが一番意識しているのは中国メーカー各社と中国市場で、昨今の大画面化や搭載機能の強化傾向(カメラなど)を見る限り、これはほぼ確信に近いと考える。もしAppleの最近の動きがおかしいと感じる方がいるのなら、それは「中国のライバルに翻弄されているから」と考えていいのかもしれない。

「iPhone SE2」の可能性はあるのか

最後に、昨今話題になりつつある「iPhone SE2」の可能性に触れて締めたい。

つい先日、iPhone SEが再販されて一瞬で売り切れたことが話題になったが、このオリジナル「iPhonse SE」が登場したのは2016年春。ちょうどiPhone 6SとiPhone 7が登場する合間のタイミングのことだ。

色々いわれているが、iPhone SEのもともとの登場経緯は、iPhone 6の不調で部品が消化しきれず、iPhone 5の筐体にiPhone 6Sの部品などを組み合わせ、「小型画面で最新機能」という形で売り出された。価格が最新のフラッグシップモデルよりも安価に設定されていたこともありユーザーからの反応もよかったが、iPhone全体のASP(平均販売価格)を引き下げる要因となった。Appleとしてはあまり積極的に販売したくないモデルでもあり、最大の販売チャネルである携帯キャリアにはあまり商品を流さず、製造も絞っていたという話を聞いている。ある意味苦肉の策で登場した製品といえる。

今回、特にiPhone XRの流通在庫が余る傾向にあり、iPhone SE2が登場する条件が整いつつあるという見方もある。だが、ある関係者の話によれば「iPhone XRは専用部品が多く使い回しが難しい」という理由もあり、高コストな製品をあえて値下げした状態で売るほどApple側にも余裕がないとう状況のようだ。少なくとも、最新機能を搭載した製品を安価に入手するルートとしての「iPhone SE2」は出てくる確率が低いだろう。

クックCEOはこれまで以上に難しい舵取りを迫られる

一方、LG DisplayなどにLCDパネルの発注を行い、今春にも安価なiPhoneの登場を示唆する声も聞く。その関係者の話によれば、実際にこうしたLCDパネル受注が増えているのは事実だとしているが、この情報だけからiPhone SE2のような新しい製品か、あるいは単に旧モデルの製造数を増やしているのかを推測するのは困難だ。

iPhone SE2のような製品を発売して既存の上位モデルの売上をカニバライズするよりも、iPhone 7や8のラインの製造を増やしてローエンド需要を満たすほうが現実的かもしれない。実際、iPhone XS MaxやXSの不調に比して旧製品の大画面モデルは販売数が伸びており、実際にこの予測を補強する。ライバルとの競合に加え、自身の製品の市場バランスを崩さないという両方に気を遣わなければいけないというのも、Appleのつらいところだろう。