スマホが販売減の見通し、変わる携帯電話会社の主戦場

スマホが販売減の見通し、変わる携帯電話会社の主戦場

2016.05.25

大手携帯電話会社の2016年度におけるスマートフォン販売台数が減少しそうだ。ソフトバンクは数値を公表していないが、NTTドコモ、KDDIは2015年度比での販売台数の減少を予測。大手携帯電話各社は、加入者増を目指したビジネスモデルからの転換に迫られている。

2016年度のスマートフォン販売台数の見通しは?

2016年度において、ドコモとKDDIのスマホ販売台数は減る見通しだ。ドコモは2016年度のスマホ販売台数が2015年度比142万台減の1402万台と予測。KDDIは2015年度比10万台減少の730万台になるとしている。

販売減と見込まれる直接的な原因は、総務省が行ってきた一連の施策にある。昨年、総務省のタスクフォースで、携帯料金の値下げについて議論され、それを踏まえて、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」が策定、多額のキャッシュバックをつけて実質ゼロ円もしくはそれ以下でスマホを販売する手法が禁じ手となってしまったからだ。

スマホの販売減は業績にも影響するのだろうか。ソフトバンクグループの孫正義代表は、先日の決算会見において、現段階で受ける影響についてコメントを出すのは時期尚早としているが、「そもそも携帯キャリアは、端末の販売で利益を上げようと考えていない」「端末を買い換える回転率の話に過ぎず、その回転率が上がっても、利益は増えない。重要なのは、ユーザーの総数である」などと補足した。

ただし、重要とするユーザーの総数については、今後はあまり大きな変動が望めそうにない。これまでキャリアはスマホ購入においてキャッシュバックを手厚くし、新規ユーザーの獲得を行ってきたが、それが今では禁じ手になっている。そして、総務省は利用者の公平性の観点から、携帯電話会社に対して、長期利用者の優遇を求めており、この施策が進めば、携帯電話会社間のユーザーの移動も少なくなってしまう。

大手携帯電話会社はスマホの販売をもとに収益を稼ぐモデルから軸を別エリアに移している。写真はドコモの2016夏モデルとなる「Galaxy S7 edge SC-02H」

さらに、総務省ではMVNOを後押しする施策を講じており、大手携帯電話会社としては、従来の通信事業から上がる収益を少しでも維持しながらも、新たなエリアで稼ぎ出したい考えだ。携帯各社の主戦場は、スマホの端末販売を軸にユーザー総数の拡大を目指すところから、別エリアに移っているのだ。

ドコモが狙うスマートライフ領域

では、各社はどういった戦略で収益を稼ごうとしているのだろうか。これまで3社横並びと評されることもあった大手携帯電話会社の戦略だが、現時点では各社にばらつきが出ている状況だ。

NTTドコモは、「スマートライフ領域」を新たな収益の柱にしたい考えだ。この領域には、dマーケットが該当するコンテンツサービス、dポイントやクレジットカードの金融・決済サービス、テレビ通販のオークローンマーケティングなどの子会社群の活用などが挙げられる。ほかには、ドコモのアセットと外部企業の連携して新サービスを生み出す「+d」の取り組みなども含まれる。

衣食住の分野までカバーするコンテンツサービスのdマーケット

このうち、特筆すべきは、コンテンツサービスのdマーケットだ。dマーケットは、映画、音楽、アニメ、雑誌が月額定額で楽しめるdTV、dヒッツ、dアニメストア、dマガジンなどのデジタルコンテンツをはじめとして、ファッションやデリバリーなどの物販(衣食)にも広がっており、dリビングといったサービスで住の分野にも踏み込んでいく。

そして、これらのサービスはドコモユーザーに限らず、KDDIやソフトバンクユーザーでも利用可能なキャリアフリー戦略をとっており、足元では、MVNOとの連携も進んでいる。他社やMVNOに顧客が流れても、コンテンツサービスで穴埋めを行う、そんな戦略が可能となっているのだ。こうしたコンテンツサービスのほかに、ポイントプログラムのdポイントを合わせ技で加えることで、利用者の利用データを活用し、新たな施策に結びつけることも可能だ。

KDDIは「au経済圏の最大化」

KDDIが目指すのは「au経済圏の最大化」だ。これはauの顧客基盤(au ID)とサービスを結び付けて収益を上げようとする取り組みだ。サービスには、ビデオパス、ブックパスといったデジタルコンテンツがあり、食品、日用品といった物販、生命保険、損害保険、住宅ローンといった金融商品も取扱う。auショップ、スマホ経由のいずれにも対応し、生命保険や住宅ローンなどはスマホとのセットで特典を受けられるなど、利用者メリットを提供していく考えだ。

KDDIは食品、日用品、保険、ローンと幅広い商材を取扱い、auユーザーにサービス提供していきたい考えだ

ただし、auショップの活用を考えた場合、スマホの販売減も響いてきそうだ。保険や住宅ローンなどは、商品比較、特徴の把握に時間がかかり、対面での説得がもろに効きそうなサービスだ。それであれば、auショップ店頭での勧誘がもっとも効果的となるが、スマホの販売が減るなら、商品と触れる接点も少なくなってしまう。店舗に足を向けさせる、そのあたりの戦略も必要になるだろう。

さらに、KDDIの場合、デジタルコンテンツのキャリアフリー戦略はとっておらず、またMVNOについても、KDDIのネットワークを利用した事業者自体が限られている。その点を踏まえてKDDIの田中社長は、MVNOの活用については今後の課題としている。

見えぬソフトバンクの戦略

最後にソフトバンクだが、現時点で同社の戦略は見えづらい。ドコモやKDDIのように「スマートライフ領域」「au経済圏の最大化」といったキーワードがないからだ。

直近の決算会見では、ソフトバンク光を"成長のドライバー"として活用するとアナウンスされたが、光回線と携帯電話回線のセット売りはドコモ、KDDIも実施しており、戦略上の目新しさは感じられない。ただし、孫氏自身も今後について「日々の生活においてユーザーがスマホを使うという度合いを深めていくことが必要。通信以外のサービス収入をいかにあげるかが大切」とコメントしており、今後、ソフトバンクがどのような戦略に出るのか注目されるところだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu