シャープが出した「有機ELではなく液晶」の答え、8Kで描く成長戦略(前編)

シャープが出した「有機ELではなく液晶」の答え、8Kで描く成長戦略(前編)

2017.07.19

シャープは7月13日、大阪府堺市のシャープ本社で報道関係者を対象に8Kセミナーを開催した。ここで同社が強調したのは「シャープの液晶ディスプレイ事業は、8Kを中心に成長戦略を描く」という点だった。

シャープ 取締役兼執行役員 8Kエコシステム戦略推進室長の西山 博一氏は「シャープは、業界に先駆けて、8Kのディスプレイと受信機を開発してきた。これからも8K分野でのリーディングカンパニーであることは変わらない」と語る。

時代を切り開いてきたシャープ

シャープ 取締役兼執行役員 8Kエコシステム戦略推進室長 西山 博一氏

シャープが5月に発表した「2017~2019年度 中期経営計画」では、成長戦略の中軸に「人に寄り添うIoT」と「8Kエコシステム」を掲げている。これにあわせ、AIやIoT分野における横断的組織となる「AIoT戦略推進室」と、8K事業の拡大を牽引する「8Kエコシステム戦略推進室」を6月1日付けで新設している。

前述の西山氏はNHK出身であり、放送技術の専門家。これまでNHKの立場で8Kを推進してきた人物を、シャープの8K戦略に中心人物に据えたというわけだ。7月7日には「8K戦略ステアリング委員会」を発足し、「8Kエコシステム戦略推進室とシャープの各部署を横串でつなげる組織であり、8Kに関する知恵とアイデアを出してもらい、新たな価値を生み出し続けたい」(西山氏)とする。

西山氏は、放送メディアの変遷を振り返りながら次のように切り出した。

「最初の放送は、1925年のラジオ放送。その時に使われた最初の鉱石ラジオがシャープ製だった。また、1953年にモノクロ放送が開始されたときにも、使われたテレビはシャープ製だった」(西山氏)

カラーテレビは各社が林立しておりシャープ製が第1号機とはいえないようだが、液晶テレビの第1号機はやはりシャープだった。続けて、「日本では、1995年にスーパーハイビジョン(8K)の研究が開始された。そして、2016年8月から、8Kの試験放送が開始され、2018年12月1日から、実用放送が開始される。私の資料には、すでに、2018年12月に、シャープは世界初となる8K実用放送に対応した受信機を発売すると書いてある」とジョークを交えながら、今後の製品展開を示す。

これまでのテレビの歩み
シャープは事業者向けにモニターなどをすでに販売、本放送に合わせて家庭用にも販売する

シャープは2011年5月に、世界初となる8Kディスプレイを開発。2014年にはCEATEC JAPANで、フルスペック準拠の8Kモニターを出展。そして2015年10月には、世界初となる85型業務用8Kモニター「LV-85001」を発売した経緯がある。

さらに、2016年5月には、世界初となる高度広帯域衛星デジタル放送受信機を開発。同年8月にはNHKが全国の放送局でパブリックビューイングを開始した。現在NHKは全国の放送局など、55カ所で8K試験放送のパブリックビューイングを実施しているが、ここで使用している機器はすべてシャープ製だ。

またシャープは、2017年6月には70型業務用8Kモニター「LV-70002」を発売し、従来製品の約半額とした。ただ、半額と言っても価格は約800万円であり、高度広帯域衛星デジタル放送受信機「TU-SH1050」の価格が約700万円、あわせて1500万円の価格になる。

70型業務用8Kモニター「LV-70002」
高度広帯域衛星デジタル放送受信機「TU-SH1050」

まだまだ民生用にするには価格の乖離があるが、今回の説明会では、2018年12月1日から8K実用放送が開始されることにあわせて、2018年度から家庭用途へと展開することを強調。2019年度以降は、8K/4Kチューナー内蔵商品のラインアップをさらに拡充する考えを改めて示した。

総務省のロードマップにあわせ、8Kを展開

シャープ デジタル情報家電事業本部 副本部長の喜多村 和洋氏は、「実用放送の開始にあわせて製品を投入するのはメーカーとしての責務。2018年末に発売する製品は、民生用テレビとして耐えうる価格で発売したい。また中国をはじめ、8K放送が行われていない海外市場にも、積極的に展開していきたい」とした。

さらにチューナーを内蔵した8Kテレビや4Kテレビのほか、8Kチューナーや4Kチューナーを搭載したセットトップボックス、4Kチューナー内蔵レコーダーの発売を見込んでいる。「8K液晶テレビでは、60型、70型、80型とサイズ別にラインアップを揃える」と意気込む。

また、8Kカメラについては具体的な言及こそ避けたものの、エコシステムを含めて製品化への取り組みを進めることになりそうだ。そして、ここでは「One SHARP」のビジネスとして、事業を展開する姿勢も示した。

「シャープの8Kは、液晶パネルの開発だけでなく、高画質LSIの開発、製品設計、テレビの製造、サービスまで、すべて自社で対応する。これによって、高性能と高品質を実現することになる」(喜多村氏)

シャープ デジタル情報家電事業本部 副本部長 喜多村 和洋氏
これまでも一気通貫で提供してきたテレビ製品を8Kでも同様に提供する

続けて、喜多村氏は、「シャープの映像商品は、顧客への感動を与えられる映像は何かを追求するものであり、感動は真のリアリティ、本物感によって実現される。これを実現できるのが8Kの高精細技術であり、8Kは本物感を目指す究極のディスプレイになる」としたほか、「現時点では、8Kによる高精細テレビを、いち早く実現できる唯一の技術が液晶であり、液晶パネルを採用した8K高精細テレビを製品化する。そして、いち早く8Kおよび4K放送の受信機関連機器をラインアップしていく」と語る。

4Kテレビでは完全に出遅れたシャープだが、8Kテレビではその反省を生かして、スタートダッシュをかけることになる。

シャープが、8Kに力を注ぐもうひとつの理由が、8Kエコシステムを活用した新たな提案が可能になるという点だ。ここでは、コンシューマ領域のビジネスチャンスだけでなく、ビジネス領域での広がりも期待している。

シャープ 研究開発事業本部 本部長 種谷 元隆氏

シャープ 研究開発事業本部 本部長の種谷 元隆氏は、高臨場映像配信システムとしての活用などによる映像配信や、8Kビッグデータを活用した解析サービス、高速検査システムや高精度3D計測機器などによる業務革新、多人数同時認識監視カメラなどを活用したセキュリティソリューション、8K映像を応用した手術装置などによる医療分野での活用などを例にあげながら、「臨場感、実物感、見えなかったものが見えるのが8Kの特徴」だと位置づける。

「8Kになって、初めて、人間の視覚能力の限界を超えた解像度を実現できる。4Kまでの時代は、人間が教師となり、視覚というものを機械に教え込んで、性能を高めてきた時代であった。だが、8K時代の到来は、人間の目では見えないものを捕らえ、記録し、分析し、見える化する時代に入ってくる。ディープラーニングやAI技術を採用した映像の認識、解析、生成がおこなれ、人が気がつかない変化や特徴を抽出し、現実の感覚を超越した体感が可能になる」(種谷氏)

例えばスポーツスタジアムや運動会の会場では、8Kカメラで全体を撮影しておき、あとからAIを活用して、好きな選手やボールの行方などを自動追尾して、4K画質で切り出して編集することも可能だ。

エンターテインメントにおける活用例

また、セキュリティカメラの映像を8K化することで鮮明さが増して顔認識の精度が一気に高まるほか、医療分野では手術において、肉眼では見えないような映像を映し出すことが可能になるという。「2Kではカメラと患部の距離が5cmまで近づかなくてはならなかったが、8Kであれば15cm程度まで引くことができる。手術が楽になるといった効果もある」(種谷氏)。

医療分野でも8Kが重要視される
後編は20日に掲載します
自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。