シャープが出した「有機ELではなく液晶」の答え、8Kで描く成長戦略(後編)

シャープが出した「有機ELではなく液晶」の答え、8Kで描く成長戦略(後編)

2017.07.20

シャープは7月13日、大阪府堺市のシャープ本社で報道関係者を対象に8Kセミナーを開催した。ここで同社が強調したのは「シャープの液晶ディスプレイ事業は、8Kを中心に成長戦略を描く」という点だった。(前編はこちら)

前編で説明したように、8Kをエコシステム化することで他社に先んじるシャープだが、8Kにここまで注力して勝算はあるのだろうか。

実際、現時点で8K戦略を明確に打ち出しているのはシャープだけであり、競合各社のテレビ事業は4Kを主軸に据えている。また、2018年12月には多くの4K実用放送が開始されるものの、8K実用放送を行うのはNHKの1局だけという現実もある。さらに言えば、その後に8K放送を各局が追随するのかどうかは見えていない。

また、光回線を用いた8K品質の動画配信については容量が大きすぎるため、より効率的な圧縮技術の開発が求められる。「8Kならでは」と呼べるコンテンツを視聴するにはハードルがまだまだ高いといえるのも確かだ。

しかしシャープは、その点でも自信をみせる。

シャープ デジタル情報家電事業本部 副本部長 喜多村 和洋氏

シャープの喜多村和洋 副本部長は「4Kテレビの立ち上がりを見ると、わずか4年でテレビの販売金額の7割を4Kが占めるにいたった。しかしその間、4Kの実用放送は行われていない。これと同じことが8Kでも起こる。4Kが7割を占めるまでに4年かかったが、8Kが7割を占めるようになるまでに、1年かからないかもしれない」と大胆な予測をする。

そして、喜多村氏は「8Kテレビの高画質は、液晶とプラズマとの比較、あるいは液晶と有機ELとの比較よりも、わかりやすい訴求ができるはず」と考えている点も見逃せない。

「4Kテレビでハイビジョン放送を視聴すると、2Kテレビで視聴するよりもいい画質で見られるように、8Kテレビで見ると、4K放送もよりきれいに見える。8Kの実用放送がなくても、画質の良さを訴えることができる」(喜多村氏)

8Kテレビの価格問題については、先行している優位性を生かし、当初こそ高止まりするものの、鴻海グループのバリューチェーンを生かし、4Kテレビに対しても競争力を持った価格設定が可能になるかもしれない。こうしたパワーを持つ点も、これまでのシャープとは置かれた立場とは異なる。その点で、シャープの8Kテレビに対する仕掛けには注視しておく必要がある。

総務省による4K推進のロードマップ

もうひとつは、液晶テレビ 対 有機ELテレビという戦いの中でも8Kを活用するという狙いがある点にも注目しておきたい。

有機ELテレビは、LG電子のほか、国内メーカーでも、すでに東芝、ソニー、パナソニックが商品化している。シャープは自社で有機ELパネルを開発していることは明らかにしているものの、有機ELテレビの商品化については明らかにしていない。むしろ、液晶テレビの優位性を強調している段階にある。

今回のセミナーでも液晶テレビと有機ELテレビの比較に時間を割き、それぞれの特性を示してみせた。

喜多村氏は、液晶テレビが輝度、色域(色再現性)、解像度(精細感)、消費電力、信頼性という観点で優位であることを示す一方、コントラスト、視野角、応答速度(動画応答性)では有機ELテレビが優位であることを示す。

「液晶テレビは、色再現性や輝度に優れているため、明るいシーンが多いテレビ放送の画像視聴に向いている。消費電力が低く、パネル寿命における実績もある。それに対して、有機ELテレビは、自発光素子のため、応答速度や視野角、コントラストに優れ、映画などの比較的暗い映像の視聴に向いている」(喜多村氏)

有機ELと液晶のスペック比較

たとえば、輝度に関しては、「有機ELテレビは、システムの消費電力や信頼性の観点から輝度レベルを抑えているが」と前置きしながらも、「APL(Average Picture Level)全域に渡って、液晶テレビの方が輝度が高い」とする。

さらに、有機ELテレビでは、400時間動作すると約80%にまで輝度が低下し、600時間では75%にまで低下するという同社の調査結果を示しながら、「液晶テレビには、輝度には変化がない。有機ELテレビの輝度低下は、たとえば、赤ばかりを表示していると、赤の輝度だけが落ちて、緑や青の輝度が残り、変色したままで表示されたり、固定パターンを長時間表示すると、焼き付きが発生する場合がある。現在の有機ELテレビには、輝度低下の特性変化をモニタリングし、自動補正することで、焼き付きや変色などの画面表示への影響を抑制する仕組みを備えている。今後は、この部分の技術開発に注目しておく必要がある」と指摘する。

輝度に長所を持つ液晶

消費電力については、有機ELテレビは、輝度が電流に比例するため、テレビのように入力信号が明るい場合には消費電力が増加するが、これに対して液晶テレビは、バックライトが占める消費電力が多いため、バックライトが非点灯となる真黒の状態を除くと、消費電力はほぼ一定となり、結果として、消費電力でも優位性があるとする。同社の調べによると、一般的なテレビ視聴などの場合、55型有機ELテレビよりも、画面サイズが大きい60型液晶テレビの方が、消費電力が3割程度少なくて済むという。

消費電力は意外にも、液晶にアドバンテージがある

一方で、視野角に関しては、有機ELテレビの優位性を認める。「液晶は液晶画素に電圧をかけて画像を作り出しており、その特性上、自発光素子の有機ELに比べて、見る角度により色が変化する度合いが大きいという課題がある」とする。

視野角は有機ELにアドバンテージがある

8K戦略がゆえの「液晶」

ユニークな考察は、デザイン性についてだ。

デザイン性を左右する要素として「狭額縁」と「薄さ」がポイントとなるが、現行モデルの比較では液晶テレビの方が有機ELテレビに比べて額縁寸法が小さく、狭額縁化が図れているという。一方で、有機ELテレビは、バックライトが不要であるため、表示部の最薄部で有機ELテレビに軍配があがる。

額縁や厚みはそれぞれ一長一短があるとシャープは説明する

だがシャープでは、「テレビとして製品化した場合には、信号処理回路や電源、スピーカーなどを搭載する必要があるため、最厚部の厚さはほぼ一緒になること、表示モジュールの数としては、バックライトが不要な分、構成するモュールの数は少ないが、双方ともに、剛性確保のためのハウジングが必要なこと、有機ELは素子構造が複雑であるため、素子を構成する層数が多く、製造工程も多く複雑である」などと指摘し、「そのため、デザイン性においては、トータル評価として差がない」と結論づけた。

モジュール構成が複雑になり、有機ELは製造面で課題を抱えるという

比較のなかで、シャープがとくに強調したのが、有機ELでは、現時点で8Kが実現できていない点、また、8K化を進めるには、技術的な課題がある点だ。

「有機EL素子の駆動には液晶よりも大きな電流が必要になるため、TFT部のサイズが大きくなる。さらに、有機EL素子の特性変化や、駆動用TFTの特性変化を検知するためのTFTも必要になる。8Kに高精細化すると画素部(発光部)の面積が小さくなるため、明るさを確保しにくくなり、8K化へのハードルがあがる。それに対して液晶は、発光部を大きく取れるため高精細化しやすい。8Kへの展開を捉えた場合、液晶の方が明らかに優位である」(喜多村氏)

最大の理由は解像度。輝度を保てず8K化に課題を抱える

つまり有機ELテレビは技術改良を待たなくてはならず、それまでの間に画素数が4Kに留まることを考えれば、競争の土壌は「4K有機ELテレビ」と「8K液晶テレビ」になるというのがシャープの考え方だ。そこに、シャープが8Kを押す理由があるわけだ。

では、8Kは、業績にどの程度、貢献するのだろうか。

シャープは、現在、業務用の8Kディスプレイを商品化しているが、ユーザーは限定的だ。民生分野に向けては、2018年12月の8K実用放送にあわせた製品投入になるため、それまでは業績への貢献がほんどないといっていい。

同社は2018年度に年間1000万台の液晶テレビを全世界に出荷する計画を打ち出しているが、出荷時期を照らし合わせれば8Kテレビの貢献度は微々たるものになる。むしろ、出荷台数の拡大を支えるのが海外向けの中小型テレビだとすれば、1000万台出荷の原動力となるのは、8Kテレビでも、4Kテレビでもなく、依然として、2Kテレビという可能性の方が高い。

一方で、2019年度を最終年度となる「2017~2019年度 中期経営計画」においても、8Kテレビが業績を牽引するとは考えにくい。

2018年12月の実用放送開始以降、どれほどの勢いで8Kテレビの市場が立ち上がるかを予測するのは難しい。ただ、販売台数比率では2Kテレビや4Kテレビよりも、圧倒的に低い水準に留まるのは確かだろう。問題は販売金額ベースで、どれほどの勢いが見込めるのかという点だ。

シャープは「2017~2019年度 中期経営計画」の成長戦略のひとつに「8Kエコシステム」を掲げた。この狙いは、8Kエコシステムによる売上げ確保というよりも「8Kエコシステムの地盤づくり」を行い、次の中期経営計画で飛躍させるための準備を整える期間だと見ることができよう。

シャープの次期中期経営計画が初年度を迎える2020年は「東京オリンピック/パラリンピック」が開催される年。総務省の4K・8K推進のためのロードマップでは、2020年に4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4Kおよび8K番組を楽しんでいる世界を描いている。

その世界が訪れるタイミングで、シャープは果たしてロケットスタートを切ることができるのか。今はそれに向けた助走を、しっかり始めている段階であることを感じた。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。