ますます“家族化”がすすむペットに健康を! 前タニタ会長が見そめた新ビジネス

ますます“家族化”がすすむペットに健康を! 前タニタ会長が見そめた新ビジネス

2017.07.20

ICTやAI、ロボットが各産業に採り入れられ、ビジネスの在り方が急速に変化しようとしている。数十年後には姿を消す職業が取りざたされるなど、各市場の危機感は強い。そんななか、堅調に推移しているのがペットビジネスだ。

矢野経済研究所の調べによると、2015年度のペット関連の総市場規模は1兆4,720億円で、前年度比101.5%だったという。2016年度予測も1兆4,889億円と推計され、前年度比101.1%になるとの見込みだ。約1%ずつとはいえ、毎年、着実に市場規模を伸ばしている。ちなみに出版の市場規模が約1兆6,000~7,000億円。このままいけば、斜陽産業の出版市場をペットビジネス市場が追い抜くのは、そう遠くないかもしれない。

高まるペットの健康志向

そんなペットビジネスだが、ここ数年、ある傾向が強まっている。それは「ペットの健康志向」だ。

ひとくちにペットとはいっても、イヌやネコ、鳥類、齧歯類、は虫類などさまざまだが、ここでは、もっともポピュラーなイヌでみてみよう。

イヌの場合、数十年前に人気だった中型・大型犬の飼い主は減り、小型犬にシフトしている。中型・大型犬を飼うには“庭”が必要となるので、都市部の住宅事情を考えれば、室内で飼える小型犬に人気が集まるのは自然な流れだ。だが、室内で飼うとなると、どうしても屋外にペットを連れて行く意識が薄まってしまう。結果、ペットの肥満といった問題につながっていく。

ファニマル 代表取締役会長 谷田大輔氏

そうしたペットの健康について、ビジネス的に“勝機アリ”と捉えているのがFanimal(以下、ファニマル)という企業だ。

このファニマルを率いているのが、代表取締役会長 谷田大輔氏。名前をみてピンとくる方もいらっしゃるだろうが、体重計や体脂肪計のトップ企業、タニタを長年にわたり牽引してきた人物だ。

その谷田氏がペットの健康について考える企業の会長に就任した。“人間の健康”に長年取り組んできた経験を、今度はペットの健康に生かすというワケだ。

同社は獣医師やトレーナーなどの動物の専門家による記事や、飼い主のリアルな体験記事を配信するメディア運営、“厳選したペットフード”をECで飼い主に提供するというのがおもなビジネスモデルだ。だが、単にECによるペットフード販売というだけではない。

その表れともいえるのが、「ペットの体重カレンダー~Fanimalアプリ」の提供だ。ペットの体重管理は忘れがちになるが、アプリをスマホにインストールしていれば意識しやすくなる。さらに、ペットの体型を5段階で数値化したBCS(ボディコンディションスコア)も記録することで、ペットの状態を確認できる。また、散歩した距離なども計測できるなど、ペットの健康への意識を高める工夫が盛り込まれている。つまり、わかりにくいペットの健康を“可視化”するというワケだ。

ペットの体重カレンダー~Fanimalアプリでは、散歩距離やBCSを記録できる。提携するMAMORIOのクラウドトラッキングプラットフォームを利用すれば、迷子時の捜索も可能だ
ファニマル 代表取締役 漆原秀一氏

「散歩の距離が計測できることは、ペットだけではなく飼い主の健康にも役立つと思います」と、ファニマル 代表取締役 漆原秀一氏は話す。また、ペットといることで心が安らぎ、心的ストレスによる飼い主の健康不安からも遠ざけられるともいう。

ペットの健康を調査・研究するシンクタンク設立

このほか、「Fanimal総研」を運営していることも特徴だ。これは、ペットの健康にまつわる調査・研究機関として、ファニマルが設立したもの。ペットの健康を前面に押し出しているが、飼い主のライフスタイルにもスポットライトを当てているのが興味深い。

たとえば「犬を飼いはじめてから、生活リズムにどのような変化がありましたか?」といった設問を用意し、飼い主に答えてもらう。この設問では「早寝早起きになった」と答えた飼い主が多く、「あてはまる」25%、「ややあてはまる」34.3%という結果になった。さらに、「スマホでゲームやSNSを利用する時間が減った」「犬を飼い始めてから、自炊の頻度が増えた」という傾向がみられた。ファニマルによると、散歩やペットとふれあう時間を増やすこと、外食ではなくペットと一緒にご飯を食べたいという意識の表れだという。 このほかにも「犬を通して新しい友達ができた」「初対面の人と気軽に話せるようになった」といった、飼い主のコミュニケーションについても調査している。つまり、単にペットの健康だけではなく、飼い主も含めたライフスタイル全体の調査機関として、機能しているといってよい。

谷田会長は、「Fanimalは、『Animal』に『Family』『Fun』『Food』『Fitness』といった単語の『F』を掛け合わせたものです」と話す。これらのキーワードをみると、単にペットの健康を推進するのではなく、飼い主も含めた“身体の健康”、そして“心の健康”をサポートするのがねらいだということが伝わってくる。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。