ダイムラーが欧州でディーゼル車300万台超をリコール、日本に影響は

ダイムラーが欧州でディーゼル車300万台超をリコール、日本に影響は

2017.07.21

独ダイムラーが欧州でディーゼル車300万台超の大量リコールに踏み切った。違法な排ガス操作の疑いは否定した上での自主的な動きだが、今後の展開を注視すべき状況だ。メルセデス・ベンツが好調な日本市場にも影響はあるだろうか。

ダイムラーのディーゼル車リコール問題は、日本にどのような影響を及ぼすのか

不正は否定、リコールの内容はプログラムの書き換え

独ダイムラーは18日、欧州でディーゼルエンジン(DE)車300万台以上を無償で修理(リコール)すると発表した。ダイムラーが販売したメルセデス・ベンツDE車のうち、欧州の排ガス規制である「ユーロ6」と、それ以前の「ユーロ5」に対応したものが対象となる。

ダイムラーについては、5月頃からDE車で違法な排ガス操作をした疑いが表面化していた。ダイムラーは不正を否定しているものの、無償修理の内容についてはソフトウェアの更新でプログラムを書き換えるものとしている。リコール費用は2億2000万ユーロ(約280億円)だ。

それにしても、欧州のベンツDE車で300万台以上というリコール台数は、ダイムラーの世界販売台数(2016年実績)に匹敵する規模だ。ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長は、「世の中のDE車を巡る議論が不安にさせているDE車のドライバーを安心させる措置」との声明を発表している。

DE車の排ガスの有害物質である窒素酸化物(NOx)を減らせるよう、排ガス制御装置などのプログラムを書き換える自主的な措置を進めるとダイムラーは言うが、この背景には欧州で進む厳しい排ガス規制がある。欧州の排ガス規制はユーロ6のステージ2に入っており、2020年までにさらに強化される。特にDE車のNOxについては、ユーロ5の1キロあたり排出量0.18グラム以下から0.08グラム以下へと大幅な規制強化となり、欧州メーカーから「厳しすぎる」との声が上がっていたのも事実だ。

欧州でDE車の排ガス不正疑惑が再燃

フォルクスワーゲン(VW)の米国におけるDE車排ガス規制検査不正が表面化したのが2015年9月。VWは不正を認めて米国で2兆円超の制裁金を課され、DE車不正は世界で1100万台規模に広がった。

欧州では、VWだけでなく仏ルノーなどにも疑惑の目が向けられたが、その後は沈静化していた。ところが、ここへきてDE車排ガス不正疑惑が再燃したのだ。オランダ検察当局がスズキのDE車の調査に入ったが、これはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のDE供給搭載車だ。

ルノーなどにも疑惑の目が向けられたが、事態は沈静化していた

ダイムラーと言えば、世界で初めてディーゼルエンジンを乗用車に搭載したメーカーである。今回の大量リコールは、不正はなく自主的なソフトウェアの更新だとしているものの、排ガス規制を逃れるため、違法ソフトウェアを搭載していたとの疑いは晴れていない。

欧州では伝統的に人気だったディーゼル車

そもそもDE車は、ガソリン車に比べパワフルで加速がよいという特性を持つ。また、燃料の軽油はガソリンより安く、燃費も2~3割方よく、CO2排出量も少ない。しかし、NOxとPM(粒子状物質)という大気汚染物質を排出する問題点がある。かつて日本でも、東京都知事時代の石原慎太郎氏がすすの入ったペットボトルを掲げ、DE車の排気問題が話題になったこともあった。

それでも、欧州ではDE車は伝統的に人気があり、欧州の乗用車市場でDE車は50%以上のシェアを持つ。これは、欧州では長距離移動が多く、燃料価格が高いことに加えて、MT(マニュアル・ミッション)車が主体であるため、ガソリン車よりDE車にメリットがあることが背景となっている。

しかし、VWのDE車排ガス規制不正問題が2015年に発覚し、結果的にVWがこれを認め、VWの排ガス不正DE車が1100万台に拡大したことを契機とし、欧州でのDE車人気も停滞気味となった。これに今回のダイムラーやFCAの疑惑も連鎖して、一気にDE車市場が縮小することにもなりそうだ。

VWの排ガス不正は欧州のDE車人気を停滞させた

欧州各国政府がEVシフトへの旗幟を鮮明に

さらに追い打ちをかけるのが、欧州各国政府の動向だ。フランス政府は先頃、2040年までに国内のガソリン車とDE車の販売を禁止とする方針を発表。欧州でのDE車離れは避けられそうにない。

一方で、欧州メーカーの間では電気自動車(EV)開発が加速している。VWはDE車排ガス不正問題を受けて、EV転換を急ぐ方針を掲げている。ルノーやプジョー・シトロエン・グループ(PSA)も、フランス政府の方針に沿ってEV化を進める。

スウェーデンのボルボ・カーは2019年以降、ガソリン車とDE車の内燃機関から、ハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、EVに車種を切り替えていくという思い切った発表もしている。

これまでDE車人気が高かった欧州乗用車市場が、今回のDE車排ガス問題で大転換を果たすことにもなりそうだ。

気になる日本への影響

VWのDE車排ガス不正が、ダイムラーやフィアットなどの欧州メーカーに疑惑の連鎖を起こす中、気になるのは日本への影響だ。

日本の輸入車市場で見ると、VWは排ガス不正の影響で2015年~2016年の販売が1~2割減少した。それまで輸入車市場のトップを走っていたVWだが、首位をベンツに譲って陥落した。VWは日本でDE車を輸入していない。日本のユーザー心理に対し、排ガス不正によるブランド失墜の影響は大きいと言えよう。

一方、日本の輸入車市場でVWに代わってトップを走るダイムラーのベンツだが、今回のリコールの影響として、不正が事実ならば好調な販売にブレーキがかかる恐れがある。

日本で好調なメルセデス・ベンツに影響は出るのだろうか(画像は今年4月にマイナーチェンジを受けたコンパクトSUVの「GLA」)

またFCAも、フィアットのDE排ガス不正疑惑により、日本での「ジープ」ブランドのSUVで同様の懸念がある。特にFCAは、米クライスラー車の日本における販売が低迷しており、ジープが唯一の売れ筋であるだけに気がかりなところだ。

マツダのクリーンディーゼルに対する評価は上昇中

日本車サイドでは、スズキがフィアットからDEの供給を受け、ハンガリー拠点で生産し、欧州市場で販売してきた。これまで、スズキ車は欧州でも好評に受け止められてきただけに、今回のオランダ当局によるスズキ車のDE排ガス疑惑には当惑している。

スズキはVWと資本提携していたが、“離婚”の原因はフィアットからのDE供給契約だった。VWのDEをスズキ車に搭載していなかったことで、結果的に助かった形になったことから、VWとの提携解消を「運が良かった」(鈴木修会長)としていたスズキだが、フィアットの排ガス不正疑惑に飛び火したことは青天の霹靂だったようだ。

一方で、欧州メーカーのDE排ガス不正疑惑の連鎖に対して、クリーンディーゼルとしての評価を高めているのがマツダである。マツダの「スカイアクティブ技術(SKYACTIV TECHNOLOGY)」によるクリーンディーゼルは、日米欧の厳しい排ガス規制をしっかりとクリアしており、日本でもマツダ車販売の4~5割を占めてきている。

マツダのクリーンディーゼルは評価が高まっている(画像は2017年2月に発売となった新型「CX-5」)

ダイムラーDE車の欧州における300万台超のリコールは、まだ真相が明らかになっておらず、不正疑惑の中での自主措置とされる。それだけに、真相究明と今後の対応次第で、日本を含め世界に波及していくことにもなる。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。