充実の共用スペースで宿泊スタイルを変える新感覚カプセルホテル

充実の共用スペースで宿泊スタイルを変える新感覚カプセルホテル

2017.07.22

カプセルホテルにどういうイメージをお持ちだろうか? 多くの方が「低価格で済む」「寝るためだけに利用する」「ほかが満室のときの急場しのぎ」といった印象を持っているのではないか。そして「オジサンくさい」というイメージもつきまとう。

グローバルエージェンツ 代表取締役社長 山崎剛氏

そんなイメージとは無縁ともいえるカプセルホテルが、京都府・河原町三条に開業した。「The Millennials」(ザ・ミレニアルズ)と名づけられたこのホテルの特徴は、共用スペースを広くとっていること。ホテルを企画・運営するグローバルエージェンツ 代表取締役社長 山崎剛氏によると、ホテル施設の約20%が共用スペースだという。一般的なカプセルホテルは宿泊客数を増やすため、ロビーなどは最小限のスペースになっていることが多い。それとは真逆のコンセプトだといえる。

では、なぜ共用スペースを広くとったのか。山崎氏は「旅行のスタイルが変化していることが前提にある」と前置きした。どういうことかというと、これまでは旅行代理店が主導して、旅行客にホテルなどの宿泊施設を紹介するのが一般的だった。つまり、“旅行代理店”が好むつくりに宿泊施設は開発されてきた。

名称のとおりミレニアル世代がターゲット

だが近年は、ネットによる予約はもちろん、SNSなどで個人が情報を入手できる。いい換えると、旅行客一人ひとりが、宿泊施設にリーチでき、逆に宿泊施設側も旅行客に直接訴求できる。山崎氏は「こうした旅行スタイルが普及したことで、特徴的な宿泊施設が生まれやすい土壌になっている」と指摘する。「FIT(Foreign Independent Tourist/外国個人旅行者)をいかに取り込めるかがカギ」(山崎氏)という。

ザ・ミレニアルズというホテルの名称からも、その意味合いが伝わってくる。「ミレニアル」とは、1980~1990年代に生まれ、2000年以降に20歳になる世代のことで、“世紀”を表す「ミレニアム」にかかっている。米国ではミレニアル世代が多く、今後の消費の中心になるといわれている。当然、こうした世代はスマホなどのIT機器操作に長け、旅行先の情報入手にこれらを活用する。

前置きが長くなったが、ホテルの施設をチェックしてみよう。共用スペースについてはあとにするとして、まずは気になる寝室から。

寝室をひと目みて、「これまでのカプセルホテルとはだいぶんに異なるな」というのが正直な感想だった。一般的なカプセルホテルは、その名のとおりカプセルが並び、しかもカプセルが2階建てになっていることが多く、天井が低いので立つことはできない。

だが、ザ・ミレニアルズでは各寝室が壁で仕切られている仕様で1階建て。天井高2.3mと、十分に立って着替えられる高さを確保している。これはもはやカプセルとは別物で、グローバルエージェンツによると「スマートポッド」と呼称しているそうだ。

ベッドも幅120cmのセミダブル仕様で、同社によると米国シェア1位のSerta(サータ)製ポケットコイルマットレスを採用したという。実はこのベッドには仕掛けがある。電動で背もたれがチルトアップ・ダウンするのでベッドとしてもソファとしても利用可能。室内で立てると先述したが、ソファ型にしたときにそのスペースが生じる仕組みだ。ユニークなのは、このベッドのリクライニングを使ったアラーム機能を有していること。設定した時間になるとソファ型に変形するので、いわば“強制的アラーム”といえる存在だ。マクラも硬さが異なる2種類が用意され、好みのものを使用できる。

セミダブルサイズのリクライニング式ベッド。マクラが2つあるが一人用。ベッドの下はトランクケースが入るキャビネットになっている(写真右)

ターゲットを意識した寝室のディテール

寝室にはミレニアル世代を意識した点がいくつか見受けられた。まず、コンセントだが、ベッドの横に4口、上部のラック横に2口、計6口も用意されている。デジタルデバイスを複数活用するユーザーにはありがたい仕様だろう。

また、チェックイン時にフロントからわたされるスマホもこの世代を意識したものといえる。このスマホのアプリにより、前出のベッドのリクライニングや照明コントロール、アラームの設定が行える。ビジネスホテルなどでは、こうした操作はベッドに組み込まれたコントロールパネルで行うことが多いが、手元のスマホで済むという寸法だ。

ベッドの横に4口、ラック横に2口のコンセントを用意。チェックイン時にわたされるスマホでリクライニング調整やアラームが設定できる

スマートポッドでは、引き下げ式のカーテンを閉めることでプライベートな空間を生み出すが、ここにも工夫がある。一部の寝室の天井にはプロジェクターがつり下げられており、このカーテンに80インチクラスの映像を投影できる。全室テレビは用意されていないが、ネット動画を楽しみたいというユーザーニーズに応える。テレビではなくネット動画というところに、ミレニアル世代を意識した感がうかがえる。

天井につり下げられたプロジェクター。ベッド正面のカーテンに映像を映せる。音声は個人で用意したヘッドホンを使うのが原則

共用スペースをチェックしてみよう。ビル最上階の9Fすべてが共用スペースになっており、ここを宿泊者が利用できる。フロアには数脚のソファが設置され、ユーザーがくつろげるようになっている。窓側にはダイニングテーブルが置かれ、食事を摂ることが可能。その横にはIHコンロ式のキッチンや電子レンジ、冷蔵庫、コーヒーメーカーを用意、調理をすることもOKだ。

ゆったりとくつろげるソファ(左上)。キッチンはIHコンロが両端にある(右上)。ダイニングスペースのテーブルの一部(左下)。共用スペースの照明にもこだわりがみられる(右下)

山崎氏は「15~16時くらいにチェックインしてもらい、この共用スペースでゆっくり過ごしてもらいたい。そして寝る時間になったら各室で休んでもらうというのがコンセプト」と話す。一般的なカプセルホテルの場合、チェックインまでは外出しているのが普通。そしてチェックインしたら、真っ先に寝てしまうというユーザーが多いだろう。ところが、同ホテルでは、共用スペースでゆったり時間を過ごせ、ほかの宿泊客とのコミュニケーションも可能だ。

ホテルとコワーキングスペースのコラボ

と、ここまでは共用スペースが広い単なるホテルということになる。特徴的なのは、この共用スペースに“シーズ”段階のベンチャーに最適な「コワーキングスペース」が併設されていることだ。周囲を気にせず通話ができる個室があったり、契約者に届いた郵便物を受け取るポストがあったりと、オフィスとして活用できる。

山崎氏は「ホテルのロビーで仕事をしている人をよく見かけるが、実はこうした光景がホテルのイメージを損ねることはない」と、オフィスデスクを共用スペースに設置したきっかけを語る。

コワーキングスペースを併設しており、オフィスとして活用できる。右は通話スペース

また、「コワーキングスペース併設のホテルは世界初ではないか。ホテルとオフィス機能のハイブリッドによる価値を創造したい」(山崎氏)とした。

たとえばその価値とは、「ワーク→昼寝→ワーク→休憩→ワーク→ビール」といったスタイルだ。「なぜ最後にビール!?」と思ったが、実はこの共用スペースには、特定の時間に無料で利用できるビールサーバーが設置されている。筆者も“ザ・ミレニアルズ取材”というひと仕事を終え、この無料ビールをグィッとあおったことは、いうまでもない。

特定の時間に無料で飲めるビール。右は1階のエントランスで、カウンターのライティングは色変更が可能だ
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu