楽天の社員食堂に驚き、本当にすごいのは

楽天の社員食堂に驚き、本当にすごいのは"三食無料"だけじゃない

2017.07.24

社員食堂と聞いてどういったイメージがあるだろうか。筆者の場合、何年も変わらぬメニューがあり、安定の味を楽しめるが、変化は乏しいというイメージだ。しかし、今回取材させていただいた楽天の社員食堂"楽天カフェテリア"は、そうしたイメージとは異なる驚きがあった。

楽天カフェテリア入り口

3食無料の太っ腹な楽天カフェテリア

楽天カフェテリアでまず驚くのは、基本無料であるということだ。一部メニューにはお金がかかるものもあるが、その場合でも100円~250円程度の出費に過ぎない。しかも、昼食だけではなく、朝・昼・晩の3食すべてが基本的に無料なのだ。朝は軽食だが、昼、晩はちゃんとした食事が無料で食べられる。さすがに土日は営業していないというが、羨ましい。

メニューも豊富だ。メイン料理をひとつ選び、ご飯、汁物、副菜、デザートを手にとっていく仕組みになっており、それぞれに複数の選択肢がある。

メニューは豊富。価格表記のないものは無料だ

たとえば、ご飯は白米もしくは健康米のいずれかを選ぶ。汁物は味噌汁もしくは洋風・中華スープのいずれかから。副菜はカウンターに用意された野菜類を好みに応じた量を皿に盛り付ける(時間のない人向けに取り分けて用意されているものもある)。デザートもフルーツ、ゼリーなどが選べる。

サラダ類は各自盛り付けていく
なぜか納豆も。3人に1人は取っていくといい楽天社員は納豆が好きなようだ

選択肢が一番多いのは、メイン料理で、日替わりとなるメインA、B、Cの3種のほか、ラーメン、うどん・そば、パスタなどの麺類があり、丼物も用意されている。取材当日訪れたメインA、B、Cは、肉詰めピーマンのフライ揚げ、タルタルソースのサーモン、ポトフとなっており、様々な組み合わせから、毎日通っても飽きそうにないほどの充実っぷりだ。

メニューCのポトフ
カンパチ丼。こちらは有料だが250円

無料で選択肢も多い。毎日通っても飽きない。しかも、外食メインだと不足しがちな野菜もふんだんにとることができる。だからだろうか。楽天カフェテリアは賑わっていた。

昼食時間となる午前11時、楽天本社9階にある食堂を訪れると、楽天社員がどっと食堂に流れ込んくる。正午に近づくにつれ、750席ある楽天カフェテリアはどんどん埋まっていく。楽天本社には22階にも同様に750席の食堂がある(計1500席を用意)が、12時を回ると空席を探すのが大変なほどに込み合っていた。

22階12時50分頃

アテンドしていただいたコーポレートコミュニケーション部企業広報グループの戸梶優希さんによると「1フロアで平均4000食出ています」と話す。つまり、計8000食、8000人のスタッフが1日で利用していることになるのだ。

9階を案内してもらうと、コーヒーやパンを販売する「RAKUTEN CAFE」(こちらは有料)があったり、コンビニが、理髪店やフィットネスクラブ、マッサージルームなどもあり、1日を9階で過ごせそうなほど様々なものがそろっていた。さらに22階には、「Crimson Club」というものがあり、楽天カフェテリアとは違い有料になるが、ホテルで腕を磨いたシェフの本格的な料理を食べることもできる。

楽天カフェ
楽天カフェのパン
楽天カフェテリア脇にあるコンビニ
コンビニのパン。楽天カフェとは別の業者が手作りしているという

充実した社員食堂の背後に努力あり

こう記すと"楽天のスタッフって羨ましいね"で終わってしまうが、楽天カフェテリアに関して言えば、そこには不断の努力があることをお伝えしたい。だからこそ羨ましく映るのだ。

楽天には委員会というものがある。委員会とは、福利厚生は社員がコスト・運営管理をしていくべき、という考えをもとにした集まりである。

楽天カフェテリアの無料制度も、社内コミュニケーションの活性化と社員の健康管理を目的にした福利厚生の一環に該当し、カフェテリア委員会が運営管理を行っている。そのメンバーは有志の社員5名からなり、前述の戸梶さんもカフェテリア委員の1人だ。

その活動は精力的だ。毎週のメニュー表、カフェテリアニュースと呼ばれるものを社内メディアに掲載・更新していく。掲示物や予実管理なども行う。このあたりまでなら、業務の一環として他社でも行っていそうだが、楽天の場合はさらに踏み込む。それがミーティングだ。

ミーティングは、給食業者、フードアドバイザー、楽天の3者ミーティングを月1回、フードアドバイザーと楽天の2者ミーティングを月1回、カフェテリア委員会でのミーティングは隔週ごとに行う。このミーティングでは、様々なことが話し合われているようだ。

それこそ、給食業者を交えたものでは、「スープが少し濃すぎるのでは……」などと味について指摘したり、フードアドバイザーとのミーティングでは、食堂の導線(時間帯別の社員の流れ)について議論を交わしたりしている。

ちなみに、カフェテリア委員会には、相当に食材や栄養などについて詳しい人がいるようで、「××という生産者が作っている食材を使って新メニューができないか」、といった提案も行われているようだ。社食となれば、他社の担当者と意見交換もする。社食となれば、社員の意見にも耳を傾け、動く。とにかく精力的なのだ。

こうした活動を通じて、ハラル料理の提供も実現した。ハラル料理はイスラムの戒律で許された料理のこと。楽天は国際色豊かな企業であり、社員の国籍は70カ国におよび、1000人以上の外国籍社員が存在する。そのなかにはイスラム教徒も多数いる。そうした社員から、考慮された食事がしたいという声があがり、ハラル料理の提供が実現したのだ。

ハラル料理
インド人向けの弁当

楽天にはインド人も多い。インド人からは日本のカレーが食べられない、という意見を聞き、かつては教えてもらったレシピをもとにカレーを作ってみたが、彼らの望む味にはならなかった。そこで近場のインド料理店に依頼して、弁当を宅配してもらい、それを昼食時に配ることにした。

ほかにもある。楽天カフェテリアではイベントチックな振る舞いが行われることがある。かつては社食スペースでマグロの解体ショーを行い、マグロ丼をふるまったり、東北楽天ゴールデンイーグルスの試合がある日には験担ぎでトンカツがメニューとして提供されたり、バレンタインデーにはチョコレートフォンデュのタワーが出現したこともあるという。

発案は給食業者が行うものも多いとするが、カフェテリア委員会からも提案する。いずれにしても、給食業者との密な連携が生み出したものとも言えそうだ。戸梶さんが話す。「担当者の意気込み次第で、うまくコミュニケーションが取れれば、充実したカフェテリアになると思う」。

賑わう楽天カフェテリア。3食無料は目を引くが、それだけで賑わいが生まれているわけではない。カフェテリア委員が社員の要望を聞き、時には料理の味にも踏み込む。社員が集まりやすい環境づくりに取り組んでこそ密なコミュニケーションが生まれる。それが仕事にも生きていく。楽天の元気の源は、楽天カフェテリアにあるといっていいのかもしれない。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

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最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu