ソフトバンクが進める情報革命時代のサービス

ソフトバンクが進める情報革命時代のサービス

2017.07.24

ソフトバンクグループは7月21日、前日に引き続いて「ソフトバンクワールド 2017」を開催。2日目となる21日はソフトバンクの宮内謙社長兼CEOらが登壇し、ソフトバンクグループが持つテクノロジーや情報革命におけるなどについて語った。

新技術が時代の変革をリードする

ソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、およびソフトバンク コマース&サービスの代表取締役会長である宮内謙氏

基調講演の前半は、「ビジネスの勝敗を分けるテクノロジー戦略」と題してソフトバンクの宮内謙氏が登壇。宮内氏はまず、2007年にiPhoneが登場して現代的なスマートフォンが誕生し、10年の間にあらゆるサービスや社会インフラがスマートフォンを中心に動くようになったことを指摘。iPhone発表の際にスティーブ・ジョブズ氏が「時として革命的な商品が誕生し、あらゆるものを変える」と発言したことを紹介しつつ、実際にスマートフォンが十分に世界的に普及しだした2012~2013年ごろを境目に、あらゆるジャンルで大きな変革があったことをグラフで示していく。

たとえば、小売業ではAmazonが急激に発展を遂げてそれまでのトップだった米ウォルマートを、あるいは自動車業界においても、生産台数でははるかに少ないTeslaがGMやフォードといったビッグネームを、それぞれ時価総額で追い抜いたことを紹介。そのほかにもNetflixや、ディープラーニングが話題になり出してからのNVIDIA、Airbnb、Uberといったスマートフォンやネット、AIといった最新テクノロジーに根ざした企業が、軒並みそれまでの業界の順列を塗り替えている。

あらゆる業種において時価総額や売り上げのトップ企業が入れ替わる状況が発生している

こうした現象を宮内氏は以前「Disruption」(破壊)という言葉で紹介しているが、実際に各業界では破壊的な変革が起きている。そして現在はテクノロジーが勝敗を左右する時代であり、構造改革のキーになるのが新技術(New Technology)であると指摘した。

ソフトバンクでもこうした時代に対応するべく、社内では40のAI関連のプロジェクトが、そして300のRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)プロジェクトが動いているとする。にも関わらず、国内ではAI導入率がわずか1.8%、RPAの導入率も4.9%どまりであることを示し、AIやRPAはこれからが有望な市場であることを示唆した。

続いてソフトバンク内でのAI/RPAプロジェクトとして、3つのプロジェクトを紹介。1つ目のネットワーク保守関連ではWatsonの自然言語分類(NLC)を使って、システム異常の警告が表示されてから対応までの時間を23分から2.5分へと、約10分の1に短縮。AIを採用するメリットとして、人間とは違って常に冷静な判断が下せることや柔軟性の高さを挙げ、今後は対応手順の提示までを実現したいとした。

以前Watson関連のイベントでも紹介されていた事例。24時間365日対応できるのもAIやロボットの強みだ

2つ目の人事関連プロジェクトでは、大量に送られる新卒学生からのエントリーシート(ES)の評価判定をWatsonのNLCを使って行い、これまですべて人が判定して680時間かかっていたものが、AIの活用で170時間へと、75%もの削減に成功した事例を紹介。このプロジェクトでは、学習時に一度にすべてのデータを入力しても思い通りの結果が得られず、読み込ませるデータを分解したり結合するなどしてトライ&エラーを繰り返し、ようやく希望の結果が得られたことを紹介。まずは使ってみて課題を発見し、トライ&エラーを繰り返して検証することの重要性と、AIといえど完全ではないため、人間が運用面でカバーすることの重要性を指摘していた。

人工知能が学習するための過去のESデータについては、単純に読ませるだけではなく分割したり合成するといった試行錯誤が必要なようだ

3つ目はソフトバンク コマース&サービスでの事例で、見積り依頼メールへの返事を作成する際にAIがメールを読み取って見積書を自動作成するシステムを作成した事例を紹介。このプロジェクトではAIの開発経験がない3人が開発に携わり、平均して15分程度かかっていた見積り書の送信が、わずか3秒程度へと短縮。会社全体では46200時間が150時間へと、実に99%もの時間を削減できたとした。

RPAを活用することで営業が使う時間を格段に短縮できる

このようにAIやRPA活用のポイントとしては、現場での試行錯誤が成功を生み出すとし、その業務に精通しており、ロジカルな思考ができる人材がいれば、現場でのコラボレーションでアイデアを形にできることをアピールしていた。

そしてAI/RPA導入の初期コストを下げるため、8月1日からWatson on IBM Cloudの販売をスタートすることを紹介。すでに利用できる6APIが150へと大幅に拡張され、導入コストも初期費用と開発費用で数十万円ずつと、低コストに抑えられるとした。

また、ソフトバンクの成長戦略のキーも新技術であると紹介。ソフトバンク自体のコア事業はモバイル通信であるが、それだけに頼るわけではなく、AI、IoT、ロボットなどさまざまなジャンルに投資していることをアピール。そしてIoTとRPA、AIの組み合わせでデータを活用するべく、ソフトバンクでも各分野に対応したIoTプラットフォームを提供することを発表した。

WeWorkなどとの提携で働き方改革を推進

続いて働き方改革のため、コワーキングスペースを提供するWeWorkと提携したことを紹介。WeWorkはシェアオフィスで急速に成長中の企業であり、世界15カ国・49都市に156の拠点を持っている。そして13万人の利用者すべてがスマートフォンひとつで、世界中のどの拠点でも利用の手続きを済ませることができる。言ってみればただの賃貸オフィス企業であるにもかかわらず、マイクロソフトなどの大企業がパートナーシップを組み、今やその企業価値は2兆円とも言われるほどだ。

WeWorkを設立したミゲル・マケルヴィCCO。フリーランスなどを相手に超おしゃれな空間とコミュニティを提供するという新しい賃貸オフィスのスタイルを提案している

WeWorkの共同設立者でありCCOでもあるミゲル・マケルヴィ氏が登壇し、WeWorkでは各人がやりたいことに集中できる、創造性を高める新しい形のオフィススペースを提供するとし、2018年初頭にも、ソフトバンクと共同で東京に新しいオフィススペースをオープンすることを宣言した。

続いて宮内氏は、テクノロジーを活用する時代には、同様にテクノロジーを悪用する輩も存在することを指摘。そうした忍び寄る脅威に備えるため、ソフトバンクはセキュリティにも力を入れているとし、特に今年5月に世界中で流行した「WannaCry」のようなランサムウェアを例に挙げ、AIを活用したサイバー攻撃対策プラットフォーム「Cybereason」と開発元であるCybereasonのリオ・ディヴCEOを紹介。ディヴCEOは同社のランサムウェア対策アプリ「RansomFree日本語版」の無償配布を発表した。

RansomFreeは7月18日より配布が開始されている。Windows版のみ

また、今後はスマートデバイスやIoTを相手にした攻撃が今後増えることを予測し、スマートデバイス向けのセキュリティアプリを開発するZimperium社のズック・アブラハム氏を紹介。同社の個人向けアプリがすでに提供されているが、企業向けに最新の「Z9」攻撃検出エンジンを搭載し、機械学習で未知の脅威からもリアルタイムに端末を防御するソリューションを提供するとした。

個人用セキュリティアプリ「セキュリティチェッカー」はすでにソフトバンクのiPhone基本パックに含まれる形で提供済みだ

ソフトバンクではこのほかにもクラウド向けセキュリティの「Dome9」やネットワークセキュリティの「SmartVPN」などを提供しており、セキュリティオペレーションセンター(SOC)を設立して、最新技術でセキュリティを守っていることをアピールした。

ここで宮内氏はふたたび「テクノロジーが事業を再定義」するという情報革命の状況を提示し、テクノロジーでビジネスの勝者になろう、という言葉で前半を締めくくった。

AI、IoT、そしてネットワーク

続いて壇上には米マイクロソフト社のビジネスAI担当企業副社長であるガーディープ・シン・ポール氏が姿を現し、「ディープラーニングの時代」と題して講演。ディープラーニングによりAIの性能は大幅に向上しており、画像認識や音声認識、ゲーム「パックマン」などで人間を上回る性能を発揮していることを紹介。産業革命から直線的に進歩してきた科学技術は、AIの登場とビッグデータなどの要素により、今後指数関数的に進歩の速度を上げていくと予測した。

マイクロソフトでAIを担当するガーディープ・ポール副社長

そしてマイクロソフトが提供するAIサービスを紹介し、その実例としてPowerPointとスマホ用のMicrosoft Translatorアプリを組み合わせてスライドや説明の同時翻訳&字幕化機能、ビデオの会話をテキスト化し、自動でインデックス化するサービス「Video Indexer」、女子高生AI Bot「りんな」などを披露して講演をまとめた。

続いてソフトバンクの宮川潤一専務取締役兼CTOが登壇し、「新たな価値を共創するビジネス基盤 ソフトバンクIoTプラットフォーム」と題した講演を行った。ここではIoTにより様々なデータを取得して活用するためにはIoTプラットフォームの存在が不可欠であるとし、ソフトバンクがこれを提供することを明らかにした。

ソフトバンクが用意するIoTプラットフォーム。昨日登壇したOSIソフトなどの技術もこうしたプラットフォームの強化に貢献するはずだ

ソフトバンクのIoTプラットフォームでは、各産業用に特化したAPIはもちろん、用途に合わせた機能セットや、ネットワーク機能も提供できる点が強みであることをアピール。顧客が取得するデータと、これまでにソフトバンクが蓄積してきた多彩なデータを合わせることで新たな価値を共創することがIoTの本質であると指摘した。

特にネットワーク機能では広域・低消費電力通信であるLTE Cat.NB1こと「NB-IoT」(Narrow Band IoT)について触れ、下り28kbps、上り63kbpsと超低速ながら、全国をエリアとして一斉にスタートできるため、スマートメーターなどのIoT用回線として本命であること、また5Gでは最初から人だけでなくモノの通信が考慮されており、自動車など高速通信を必要とするIoT向けに最適であると指摘。さらには2020年に開始されるOneWebなどを経て、機器間の低速通信から5G、世界規模での衛星通信網までさまざまなスケールでのネットワーク機能を提供できることをアピールした。

ソフトバンクのNB-IoTは最初から日本全域をエリアとしてカバーしている

そしてIoTによる新しい価値の創造にいて、ソフトバンクIoTプラットフォームはAPIやプラットフォームによりデータやサービスの質的最大化を、そしてネットワークインフラの高度化により、モノやデータの量的最大化が図れるとし、これを一元的に提供できるのはソフトバンクだけであるとした。

最後にはソフトバンクの代表取締役副社長である今井康之氏が登壇。進化論を興したダーウィンの「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」という言葉を紹介。現代のビジネスにおいてもテクノロジーの進化は止まらず、重要なのは変化への適応であると指摘した。

マーケティング部門での経験を糧にテクノロジー戦略を語る今井副社長

そして現在取るべきテクノロジー戦略として「DARWIN」を提示。これは「Digitalization」「AI」「Robot/RPA」「Wireless」「IoT」」「Next Innovation」の頭文字をとったもので、講演ではこの中から「Digitalization」と「Robot/RPA」にフォーカスを当てた。

「Digitalization」ではデジタルマーケティング、特にウェブ広告の効果分析において同社の顧客行動可視化ツール「Cinarra」が効果的であること、Robot/RPAについてはソフトバンクショップにおいて、PepperとRPAの組み合わせで店頭の在庫確認とウェブショップへの誘導が可能になり、販売機会のロスを回避できるようになった事例を紹介。企業向けRPAとして、RPAホールディングズと業務提携し、国内導入実績No.1のRPAツール「BizRobo」を提供することを発表した。このほかにも企業の課題解決に向けた「DARWIN Workshop」を開催するなどして、変化に適応できるICT環境の普及に努めるとまとめた。

地に足のついた発表は自信の表れか

前日に開催された孫社長による基調講演は、ソフトバンクグループが進む方向性が中心に示され、また壇上に登場した企業も5年後、10年後に成果を期待するような、いわば将来の夢、ビジョンに的を絞ったものだった。二日目の基調講演は、それと比べるとずっと地に足が着いた、現在のビジネスに焦点を当てたものとなっていた。もちろんそのうちのいくつかは近い将来の内容も含んではいるが、基本的には技術的にもめどの立ったものばかりだ。

そして何より、ソフトバンクが今、力を入れているものがはっきりとわかるものだった。それは公演中にも何度も繰り返されていたとおり、IoT、AI、そしてロボット/RPAだ。ソフトバンクのコア事業はモバイル通信だが、モバイル通信網を所有しているという強みを生かし、IoTからのデータ収集から分析、利用までをワンセットで提供できる点は大きい。これから2020年にかけてIoTの本格的な普及が始まるが、ソフトバンクとしても十分に準備ができているという自信があるのだろう、そのトレンドに関わる部分をしっかりアピールしていた。

もうひとつ興味深かったのは、ソフトバンクワールド開催の直前に締結され、基調講演にも登壇した、WeWorkとの提携だ。WeWorkは海外で非常に高い評価を得ているレンタルオフィス企業だが、その他壇上に上がったセキュリティ関係の2社と異なり、不動産事業は、これまでソフトバンクが手がけてきた事業とは大きく離れた分野だ。普通に考えれば、いかに勢いのあるスタートアップといえど、提携するメリットは少ないように思える。これだけが異質だったのだ。

しかしWeWorkが評価される本質は不動産そのものではなく、これまでの枠にとらわれない新しい働き方の提案と、そこに集まる人々のコミュニティーであったり、それがもたらすクリエイティブへのきっかけ・出会いなどだ。ソフトバンクとしてはWeWorkと共同でスタートアップ企業やフリーランスに対し、こうしたコミュニティーに加わる場所を提供することで、新時代にふさわしい新しい才能の誕生に寄与しようとしているのではないだろうか。それはソフトバンク自身にとっても新たな投資先・提携先となるかもしれないし、大きな目で見れば孫社長が掲げる「人類に最も貢献する企業」を生み出すことに繋がるかもしれない。来年オープンするという東京のオフィスがどのようなものになるのか、非常に楽しみだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。