ソフトバンクが進める情報革命時代のサービス

ソフトバンクが進める情報革命時代のサービス

2017.07.24

ソフトバンクグループは7月21日、前日に引き続いて「ソフトバンクワールド 2017」を開催。2日目となる21日はソフトバンクの宮内謙社長兼CEOらが登壇し、ソフトバンクグループが持つテクノロジーや情報革命におけるなどについて語った。

新技術が時代の変革をリードする

ソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、およびソフトバンク コマース&サービスの代表取締役会長である宮内謙氏

基調講演の前半は、「ビジネスの勝敗を分けるテクノロジー戦略」と題してソフトバンクの宮内謙氏が登壇。宮内氏はまず、2007年にiPhoneが登場して現代的なスマートフォンが誕生し、10年の間にあらゆるサービスや社会インフラがスマートフォンを中心に動くようになったことを指摘。iPhone発表の際にスティーブ・ジョブズ氏が「時として革命的な商品が誕生し、あらゆるものを変える」と発言したことを紹介しつつ、実際にスマートフォンが十分に世界的に普及しだした2012~2013年ごろを境目に、あらゆるジャンルで大きな変革があったことをグラフで示していく。

たとえば、小売業ではAmazonが急激に発展を遂げてそれまでのトップだった米ウォルマートを、あるいは自動車業界においても、生産台数でははるかに少ないTeslaがGMやフォードといったビッグネームを、それぞれ時価総額で追い抜いたことを紹介。そのほかにもNetflixや、ディープラーニングが話題になり出してからのNVIDIA、Airbnb、Uberといったスマートフォンやネット、AIといった最新テクノロジーに根ざした企業が、軒並みそれまでの業界の順列を塗り替えている。

あらゆる業種において時価総額や売り上げのトップ企業が入れ替わる状況が発生している

こうした現象を宮内氏は以前「Disruption」(破壊)という言葉で紹介しているが、実際に各業界では破壊的な変革が起きている。そして現在はテクノロジーが勝敗を左右する時代であり、構造改革のキーになるのが新技術(New Technology)であると指摘した。

ソフトバンクでもこうした時代に対応するべく、社内では40のAI関連のプロジェクトが、そして300のRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)プロジェクトが動いているとする。にも関わらず、国内ではAI導入率がわずか1.8%、RPAの導入率も4.9%どまりであることを示し、AIやRPAはこれからが有望な市場であることを示唆した。

続いてソフトバンク内でのAI/RPAプロジェクトとして、3つのプロジェクトを紹介。1つ目のネットワーク保守関連ではWatsonの自然言語分類(NLC)を使って、システム異常の警告が表示されてから対応までの時間を23分から2.5分へと、約10分の1に短縮。AIを採用するメリットとして、人間とは違って常に冷静な判断が下せることや柔軟性の高さを挙げ、今後は対応手順の提示までを実現したいとした。

以前Watson関連のイベントでも紹介されていた事例。24時間365日対応できるのもAIやロボットの強みだ

2つ目の人事関連プロジェクトでは、大量に送られる新卒学生からのエントリーシート(ES)の評価判定をWatsonのNLCを使って行い、これまですべて人が判定して680時間かかっていたものが、AIの活用で170時間へと、75%もの削減に成功した事例を紹介。このプロジェクトでは、学習時に一度にすべてのデータを入力しても思い通りの結果が得られず、読み込ませるデータを分解したり結合するなどしてトライ&エラーを繰り返し、ようやく希望の結果が得られたことを紹介。まずは使ってみて課題を発見し、トライ&エラーを繰り返して検証することの重要性と、AIといえど完全ではないため、人間が運用面でカバーすることの重要性を指摘していた。

人工知能が学習するための過去のESデータについては、単純に読ませるだけではなく分割したり合成するといった試行錯誤が必要なようだ

3つ目はソフトバンク コマース&サービスでの事例で、見積り依頼メールへの返事を作成する際にAIがメールを読み取って見積書を自動作成するシステムを作成した事例を紹介。このプロジェクトではAIの開発経験がない3人が開発に携わり、平均して15分程度かかっていた見積り書の送信が、わずか3秒程度へと短縮。会社全体では46200時間が150時間へと、実に99%もの時間を削減できたとした。

RPAを活用することで営業が使う時間を格段に短縮できる

このようにAIやRPA活用のポイントとしては、現場での試行錯誤が成功を生み出すとし、その業務に精通しており、ロジカルな思考ができる人材がいれば、現場でのコラボレーションでアイデアを形にできることをアピールしていた。

そしてAI/RPA導入の初期コストを下げるため、8月1日からWatson on IBM Cloudの販売をスタートすることを紹介。すでに利用できる6APIが150へと大幅に拡張され、導入コストも初期費用と開発費用で数十万円ずつと、低コストに抑えられるとした。

また、ソフトバンクの成長戦略のキーも新技術であると紹介。ソフトバンク自体のコア事業はモバイル通信であるが、それだけに頼るわけではなく、AI、IoT、ロボットなどさまざまなジャンルに投資していることをアピール。そしてIoTとRPA、AIの組み合わせでデータを活用するべく、ソフトバンクでも各分野に対応したIoTプラットフォームを提供することを発表した。

WeWorkなどとの提携で働き方改革を推進

続いて働き方改革のため、コワーキングスペースを提供するWeWorkと提携したことを紹介。WeWorkはシェアオフィスで急速に成長中の企業であり、世界15カ国・49都市に156の拠点を持っている。そして13万人の利用者すべてがスマートフォンひとつで、世界中のどの拠点でも利用の手続きを済ませることができる。言ってみればただの賃貸オフィス企業であるにもかかわらず、マイクロソフトなどの大企業がパートナーシップを組み、今やその企業価値は2兆円とも言われるほどだ。

WeWorkを設立したミゲル・マケルヴィCCO。フリーランスなどを相手に超おしゃれな空間とコミュニティを提供するという新しい賃貸オフィスのスタイルを提案している

WeWorkの共同設立者でありCCOでもあるミゲル・マケルヴィ氏が登壇し、WeWorkでは各人がやりたいことに集中できる、創造性を高める新しい形のオフィススペースを提供するとし、2018年初頭にも、ソフトバンクと共同で東京に新しいオフィススペースをオープンすることを宣言した。

続いて宮内氏は、テクノロジーを活用する時代には、同様にテクノロジーを悪用する輩も存在することを指摘。そうした忍び寄る脅威に備えるため、ソフトバンクはセキュリティにも力を入れているとし、特に今年5月に世界中で流行した「WannaCry」のようなランサムウェアを例に挙げ、AIを活用したサイバー攻撃対策プラットフォーム「Cybereason」と開発元であるCybereasonのリオ・ディヴCEOを紹介。ディヴCEOは同社のランサムウェア対策アプリ「RansomFree日本語版」の無償配布を発表した。

RansomFreeは7月18日より配布が開始されている。Windows版のみ

また、今後はスマートデバイスやIoTを相手にした攻撃が今後増えることを予測し、スマートデバイス向けのセキュリティアプリを開発するZimperium社のズック・アブラハム氏を紹介。同社の個人向けアプリがすでに提供されているが、企業向けに最新の「Z9」攻撃検出エンジンを搭載し、機械学習で未知の脅威からもリアルタイムに端末を防御するソリューションを提供するとした。

個人用セキュリティアプリ「セキュリティチェッカー」はすでにソフトバンクのiPhone基本パックに含まれる形で提供済みだ

ソフトバンクではこのほかにもクラウド向けセキュリティの「Dome9」やネットワークセキュリティの「SmartVPN」などを提供しており、セキュリティオペレーションセンター(SOC)を設立して、最新技術でセキュリティを守っていることをアピールした。

ここで宮内氏はふたたび「テクノロジーが事業を再定義」するという情報革命の状況を提示し、テクノロジーでビジネスの勝者になろう、という言葉で前半を締めくくった。

AI、IoT、そしてネットワーク

続いて壇上には米マイクロソフト社のビジネスAI担当企業副社長であるガーディープ・シン・ポール氏が姿を現し、「ディープラーニングの時代」と題して講演。ディープラーニングによりAIの性能は大幅に向上しており、画像認識や音声認識、ゲーム「パックマン」などで人間を上回る性能を発揮していることを紹介。産業革命から直線的に進歩してきた科学技術は、AIの登場とビッグデータなどの要素により、今後指数関数的に進歩の速度を上げていくと予測した。

マイクロソフトでAIを担当するガーディープ・ポール副社長

そしてマイクロソフトが提供するAIサービスを紹介し、その実例としてPowerPointとスマホ用のMicrosoft Translatorアプリを組み合わせてスライドや説明の同時翻訳&字幕化機能、ビデオの会話をテキスト化し、自動でインデックス化するサービス「Video Indexer」、女子高生AI Bot「りんな」などを披露して講演をまとめた。

続いてソフトバンクの宮川潤一専務取締役兼CTOが登壇し、「新たな価値を共創するビジネス基盤 ソフトバンクIoTプラットフォーム」と題した講演を行った。ここではIoTにより様々なデータを取得して活用するためにはIoTプラットフォームの存在が不可欠であるとし、ソフトバンクがこれを提供することを明らかにした。

ソフトバンクが用意するIoTプラットフォーム。昨日登壇したOSIソフトなどの技術もこうしたプラットフォームの強化に貢献するはずだ

ソフトバンクのIoTプラットフォームでは、各産業用に特化したAPIはもちろん、用途に合わせた機能セットや、ネットワーク機能も提供できる点が強みであることをアピール。顧客が取得するデータと、これまでにソフトバンクが蓄積してきた多彩なデータを合わせることで新たな価値を共創することがIoTの本質であると指摘した。

特にネットワーク機能では広域・低消費電力通信であるLTE Cat.NB1こと「NB-IoT」(Narrow Band IoT)について触れ、下り28kbps、上り63kbpsと超低速ながら、全国をエリアとして一斉にスタートできるため、スマートメーターなどのIoT用回線として本命であること、また5Gでは最初から人だけでなくモノの通信が考慮されており、自動車など高速通信を必要とするIoT向けに最適であると指摘。さらには2020年に開始されるOneWebなどを経て、機器間の低速通信から5G、世界規模での衛星通信網までさまざまなスケールでのネットワーク機能を提供できることをアピールした。

ソフトバンクのNB-IoTは最初から日本全域をエリアとしてカバーしている

そしてIoTによる新しい価値の創造にいて、ソフトバンクIoTプラットフォームはAPIやプラットフォームによりデータやサービスの質的最大化を、そしてネットワークインフラの高度化により、モノやデータの量的最大化が図れるとし、これを一元的に提供できるのはソフトバンクだけであるとした。

最後にはソフトバンクの代表取締役副社長である今井康之氏が登壇。進化論を興したダーウィンの「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」という言葉を紹介。現代のビジネスにおいてもテクノロジーの進化は止まらず、重要なのは変化への適応であると指摘した。

マーケティング部門での経験を糧にテクノロジー戦略を語る今井副社長

そして現在取るべきテクノロジー戦略として「DARWIN」を提示。これは「Digitalization」「AI」「Robot/RPA」「Wireless」「IoT」」「Next Innovation」の頭文字をとったもので、講演ではこの中から「Digitalization」と「Robot/RPA」にフォーカスを当てた。

「Digitalization」ではデジタルマーケティング、特にウェブ広告の効果分析において同社の顧客行動可視化ツール「Cinarra」が効果的であること、Robot/RPAについてはソフトバンクショップにおいて、PepperとRPAの組み合わせで店頭の在庫確認とウェブショップへの誘導が可能になり、販売機会のロスを回避できるようになった事例を紹介。企業向けRPAとして、RPAホールディングズと業務提携し、国内導入実績No.1のRPAツール「BizRobo」を提供することを発表した。このほかにも企業の課題解決に向けた「DARWIN Workshop」を開催するなどして、変化に適応できるICT環境の普及に努めるとまとめた。

地に足のついた発表は自信の表れか

前日に開催された孫社長による基調講演は、ソフトバンクグループが進む方向性が中心に示され、また壇上に登場した企業も5年後、10年後に成果を期待するような、いわば将来の夢、ビジョンに的を絞ったものだった。二日目の基調講演は、それと比べるとずっと地に足が着いた、現在のビジネスに焦点を当てたものとなっていた。もちろんそのうちのいくつかは近い将来の内容も含んではいるが、基本的には技術的にもめどの立ったものばかりだ。

そして何より、ソフトバンクが今、力を入れているものがはっきりとわかるものだった。それは公演中にも何度も繰り返されていたとおり、IoT、AI、そしてロボット/RPAだ。ソフトバンクのコア事業はモバイル通信だが、モバイル通信網を所有しているという強みを生かし、IoTからのデータ収集から分析、利用までをワンセットで提供できる点は大きい。これから2020年にかけてIoTの本格的な普及が始まるが、ソフトバンクとしても十分に準備ができているという自信があるのだろう、そのトレンドに関わる部分をしっかりアピールしていた。

もうひとつ興味深かったのは、ソフトバンクワールド開催の直前に締結され、基調講演にも登壇した、WeWorkとの提携だ。WeWorkは海外で非常に高い評価を得ているレンタルオフィス企業だが、その他壇上に上がったセキュリティ関係の2社と異なり、不動産事業は、これまでソフトバンクが手がけてきた事業とは大きく離れた分野だ。普通に考えれば、いかに勢いのあるスタートアップといえど、提携するメリットは少ないように思える。これだけが異質だったのだ。

しかしWeWorkが評価される本質は不動産そのものではなく、これまでの枠にとらわれない新しい働き方の提案と、そこに集まる人々のコミュニティーであったり、それがもたらすクリエイティブへのきっかけ・出会いなどだ。ソフトバンクとしてはWeWorkと共同でスタートアップ企業やフリーランスに対し、こうしたコミュニティーに加わる場所を提供することで、新時代にふさわしい新しい才能の誕生に寄与しようとしているのではないだろうか。それはソフトバンク自身にとっても新たな投資先・提携先となるかもしれないし、大きな目で見れば孫社長が掲げる「人類に最も貢献する企業」を生み出すことに繋がるかもしれない。来年オープンするという東京のオフィスがどのようなものになるのか、非常に楽しみだ。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

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「社会人デビューは30歳からでいい」 転職相談のプロが想う“令和時代のキャリア論”

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2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

「20代の転職相談所」運営会社の社長に直撃!

「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
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