iPadの売上低迷に歯止め、復活は本物か

iPadの売上低迷に歯止め、復活は本物か

2017.08.04

アップルは米国時間8月1日に2017年第3四半期決算を発表した。アナリストの予想を上回る好決算の中で、特にメインのビジネスとなっているiPhoneの販売台数が予測を上振れし、アップル株は決算発表後の時間外取引で一時8%の上昇となった。また米国だけでなく日本や中国などの株式市場で「iPhone銘柄」と言われる関連企業の株も幅広く買われた。

iPhoneに注目が集まる中で、今回の決算でiPadの下げ止まりも、ハイライトの1つとなった。iPadは2014年第1四半期を境に、長い前年同期割れの下落トレンドを演じてきた。今回の決算では1142万4000万台の販売台数を報告し、前年同期比15%増と、大幅な伸びを記録した。iPadの販売低迷に歯止めをかけ、復活させることができるのだろうか。

新型iPad Proが販売台数の下落歯止めに?

iPad販売台数、下げ止まりの理由とは?

iPadはiPhoneと同じiOSが動作するタブレット型デバイスだ。2010年に発売し、その後7.9インチのiPad mini、12.9インチのiPad Proを追加し、2017年のWWDCでは9.7インチに変わる新しいサイズ、10.5インチのディスプレイを備えるiPad Proを発表した。

新型iPad Pro発売直後の決算であることから、今回の販売台数下落のトレンドに歯止めをかけたのは、この新デバイスのおかげ、とは言えない。今回の決算の四半期が始まる直前に投入した新製品となる、9.7インチの第5世代iPadが、iPad販売台数浮上の役割を担った。

第5世代iPadは、生産終了となったiPad Air 2を引き継ぐ、ProシリーズではないiPadとなる。iPad Air 3とならなかったのは、iPad Air 2よりも厚く、iPad Airと同じ筐体デザインを採用していたことが原因だろう。

プロセッサにはアップルが「デスクトップクラス」とうたう64ビットのA9を採用し、iOS 11で導入される拡張現実フレームワーク、ARKitをサポートするアプリも動作させることができる。また端末の厚みが戻ったことで、iPad Air 2よりも32.4Whと容量が増加したバッテリーを搭載しており、カタログの上では同じ10時間という持続時間だが、実際にはそれ以上の持続時間を発揮することになるだろう。

このデバイスの魅力は価格だ。329ドルと、9.7インチのiPadの新製品としては最も安い価格から購入することができるようにした。

iPadの販売台数上昇にこの第5世代iPadが寄与したとみる理由は、15%の販売台数増加に対して、iPadの売上高は前年同期比2%増の49億6900万ドルだった点。平均販売価格が下がったことを読み取ることができ、第5世代iPadを中心として販売されたと推測できる理由でもある。

市場のニーズに応えたアップル

第5世代iPadの投入によるビジネスメリットは、低価格化し十分高性能なタブレットを用意し、教育機関や企業などへ、まとまった台数の導入のハードルを下げた点であると指摘できる。同時に、2017年3月には、iPadのラインアップの整理も実施している。

第5世代iPadを投入する代わりに、iPad Air 2と、128GBモデル以外のiPad mini 4を廃止し、ラインアップを非常にシンプルにしたことが、販売台数上昇にとって大きく貢献したと考えられる。

これまで、iPad Proシリーズ2機種、iPad Air 2、iPad mini 4、iPad mini 2と、非常に多くのラインアップを揃えていたが、そのためニーズが高かった9.7インチのiPad Air 2の生産が追いつかず、2017年に入ってからは納期が10週になるなど、品薄状態が続いていた。そこでラインアップを整理し、ニーズが高い9.7インチのiPadの生産体制を整えたことで、需要に応えられるようになった。

iPadは教育機関や企業で人気のあるタブレットだ。デバイス自体の価格で比較すると、ChromebookやWindowsタブレットの方がまだ価格が安いモデルも存在している。しかし、iPadはデバイスの壊れにくさやメンテナンスコストの低さ、ワープロや表計算などのアプリが無料で利用でき、OSのアップデートも無償化されているという、ソフトウェア面での追加コストの低さ、そしてトレーニングコストの低さを加味した、トータルのランニングコストでは分があり、選ばれる理由となっている。

こうした大量導入では人気がある9.7インチiPadを、きちんと台数が揃えられる体制を築いたことが、iPadの販売台数浮上にとって大きな要因となった、と考えられる。言い換えれば、機会損失を防いで、iPadの下落トレンドを食い止めた、というわけだ。

次のiPadの変革とは?

低価格のiPadによって販売台数の上昇へこぎ着けたアップルだが、これで「iPadが復活した」と結論づけるのは尚早だ。

アップルは2016年3月にiPad Pro 9.7インチモデルを投入する際、このモデルの役割は「5年以上古くなったPCのリプレイス需要」を狙うことだとした。特に、9.7インチから10.5インチにサイズを拡大させたiPad Proの役割は、日常やビジネスなどの一般的なコンピューティング全般を、iPad Proが担う世界へと移行することだ。

その武器としてWWDC 2017で披露したのが、今秋に公開予定のiOS 11だ。「iPad向けiOS最大のリリース」とうたう新しいソフトウェアには、PCやMacに対してiPadにかけていた、「一般的なコンピューティング」を担うための補強と、より新しいユーザー体験が盛りこまれていた。

これまでiPadはファイル管理という概念を避け、アプリ内にそのアプリで扱う文書を保存し、これをiCloudと同期してきた。確かに合理的でシンプルなアイデアだが、前述の一般的なコンピューティングにおける「慣習」としてのファイルのやりとりがなくなるわけではない。

iOS 11には「ファイル」というアプリが追加され、iPad本体、iCloudに加えて、Box、Dropbox、OneDriveといったサードパーティのクラウドストレージのファイルも扱うことができる。WWDC 2017のハンズオンで触れてみると、MacのFinderよりも優秀なファイル管理アプリであると感じた。

また、2つのアプリによる画面分割を複数保存し切り替えながら作業に取り組める仕組みは、アプリを組み合わせてワークフローを構築するiPadらしい働き方や効率性を示してくれる。

MacのDockやSpacesを取り入れ、より簡単に使用頻度の高いアプリの起動も可能に

これまでのiPadのメンテナンスとトレーニングのコストの低さをベースとして、主たるコンピュータとしての競争力を高めることで、iPadの本格的な普及を作り出すことができるかがカギだ。新型iPad Proの販売が全ての期間に含まれるようになる2017年第4四半期、iOS 11が配信されて移行となる2018年第1四半期の各決算で、iPadの販売と売上高を見ていくことで、iPadの変質と復活が見られることになる。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。