経産省が公開、1分46秒でFinTechがわかる動画が面白い

経産省が公開、1分46秒でFinTechがわかる動画が面白い

2017.08.22

「FinTech(フィンテック)」という言葉がさまざまな場面で聞かれる一方で、その実態を知らない人が多いのが実情だろう。富士通総研がWebサイトで公開している言葉をそのまま引用すれば、「ICTを駆使した革新的、あるいは破壊的な金融商品・サービスの潮流」のことを指す。

FinTechの「Finance」は金融を表す言葉だが、監督官庁も当然金融庁。同庁が先陣を切ってベンチャーなどのフィンテックに関する動きを支援するFinTechサポートデスクの設置や、諸外国の動き、フィンテックの現状把握などを行っている(同庁のレポートはこちら※PDF)。

一方で、経済活動の発展・支援を行う経済産業省も、5月に「FinTechビジョン」を取りまとめるなど、国を挙げて金融インフラの刷新、先進的なサービスの立脚を目指す様子が伺える。ただ、一般消費者からすれば、フィンテックと言われても、最終的にその具体的な利用イメージが湧かないのも実情だろう。

経産省がYouTubeで公開した「フィンテック入門」

そんな「わかりにくいフィンテック」をわかってもらうために、経済産業省がある動画をYouTubeにアップした。それが、上記のFinTechビジョンのプレスリリースに掲載されている「フィンテックがある1日 ~お金が変わる。社会が変わる~」だ。ある人物の1日の生活をベースに、今は不便と感じていることが、さまざまなフィンテックサービスによって便利になると解説している。

テレマティクス保険

事例の一つ目は、朝、通勤で車を利用している男性。男性は、安全運転しているにもかかわらず、自動車保険料が高止まりのまま。しかし、スマホと連動するOBD2機器などが車の走行データを収集することで、運転者が安全運転しているか判断でき、保険料が下がる。

このフィンテックは、テレマティクス保険などとも呼ばれ、ソニー損保の「やさしい運転 キャッシュバック型」や、あいおいニッセイ同和損保の「つながる自動車保険」、損保ジャパン日本興亜の「スマイリングロード」などがある。来たる自動運転時代にはこのフィンテックが無用となる可能性はあるが……。

ロボアドバイザー

二つ目は株式投資のフィンテック。仕事中は株などの投資資産の値動きを確認できず、不安になる男性。そこで、いわゆるロボアドバイザーという人工知能ロボットが、値動きを監視しながら自動取引することで、金融資産の最適なポートフォリオを構築してくれる。

ロボアドバイザーは、主な投資銀行や証券会社などがさまざまなサービスを提供しており、手数料も一般的な投資信託よりも割安と言われている。また、AI分野の知見を持つベンチャー企業も参入しており、ウェルスナビお金のデザインのTHEOなどが注目を集めている。

QRコード決済

三つ目は、ランチタイムの話。クレジットカードやFeliCaを始めとする電子マネー決済を導入する店舗は増加しているが、それはあくまで都市圏の一部で、まだまだ多くの店が現金のみという環境にある。そこで、一層の電子決済を促す方策として期待されているのがQRコード決済だ。

QRコード決済は、中国が先進事例として盛んに報道されており、その急先鋒が「Alipay」だ。中国を始めとする新興国では紙の現金に信用がなく、それが電子マネー普及の後押しになったとも言われているが、企業側の導入コストが紙の印刷のみで済むという手軽さも、QRコード決済のメリットと言えるだろう。国内のプレイヤーでは、LINEのLINE Payや、OrigamiのOrigami Pay、また、NTTドコモもQRコード決済への参入を検討しているとされている。

クラウド会計ソフト

四つ目は、会社の経費精算。領収書の入力作業にかかる手間をクラウド会計ソフトがすべて代行してくれるというメリットの解説だ。このプレイヤーには、従来より会計ソフトを提供している弥生のほか、マネーフォワードのMFクラウド会計freeeなどがいる。

割り勘アプリ

五つ目は飲み会の割り勘。FeliCaの電子マネーでは、Suicaなどのカードにお金がチャージされるためお金を他人に対して渡すことができず、銀行振込では口座番号のやり取りが面倒だ。そこで最近登場したのが「割り勘アプリ」。厳密な定義で言えば異なるが、個人間で送金できるようにするアプリの登場で、飲み会の場でのお金の徴収が円滑になる。

このプレイヤーでは、前述のLINE Payのほか、わりかんアプリ「paymo」、かんたん送金アプリ「Kyash」、ヤフーの「さっと割り勘 すぐ送金 from Yahoo!ウォレット」などがいる。paymoについては前述のQRコード決済にも対応しており、神奈川県逗子市 逗子海岸の海の家全店で試験導入といった取り組みも行っている。

家計簿アプリ

動画の最後は、それらの決済履歴をまとめる家計簿アプリ。すべての決済を可視化することで、ユーザー自身がお金の流れを再認識し、日々の資産管理に役立てるメリットがある。このプレイヤーでは、前述のマネーフォワードのほか、Zaimや、Dr.WalletMoneytreeなどがいる。

フィンテックとは何かを改めて知るきっかけに

といった形で、現在のフィンテックの概況を知ることが出来る動画に仕上がっているのだが、6月13日の動画公開から執筆時点(8月21日18時)で6130再生とあまり認知が広がっていないようだ。

ただ、これまで紹介してきた会社を含め、メガバンクや地銀、証券会社、保険など、さまざまなプレイヤーが金融のITサービス化を進めている。主にベンチャー企業のサービスを記事では紹介したが、これらが絶対的に優れているわけではなく、従来のプレイヤーが高いレベルのサービスを提供してきたからこそ、それを享受するユーザーが変化を望まなかったという指摘も一部である。

動画で解説している改善は、それぞれがわずかな手間を省くだけのことのように見える。しかし、QRコードや電子マネーの決済データを自動的に家計簿アプリに取り込んで科目付けを省き、そのデータで改善した家計収支を元手にロボアドバイザーによる投資にあてるといったシナリオが「フィンテック」で完結するわけだ。そうした裏のストーリーまで想像する意味でも、この動画はぜひご覧いただきたい仕上がりになっている。

日立があえて行った、縦型洗濯機の「控えめ」なリデザイン(前編)

モノのデザイン 第48回

日立があえて行った、縦型洗濯機の「控えめ」なリデザイン(前編)

2018.12.19

日立の縦型洗濯乾燥機「ビートウォッシュ」が進化

AI搭載、洗剤自動投入など機能面が充実

製品の外観は「控えめ」な変更に見えるが、実は…?

日立アプライアンスから11月に発売された、縦型洗濯乾燥機の「ビートウォッシュ BW-DX120C」。独自のパルセーターと大流量のシャワーで、節水性を担保しながら繊維の奥に潜む頑固な汚れまで洗い上げる、"ナイアガラ ビート洗浄"による洗浄力の高さで定評のあるシリーズだ。

2018年の新モデルでは、今年の洗濯機市場全体におけるトレンドにもなった、人工知能(AI)機能を搭載。最適な洗い方や時間をAIが自動で判断するという最先端の機能に加えて、洗剤や柔軟剤を自動で計量して投入してくれる機能を搭載するなど、大幅な進化を遂げた。

11月発売の日立アプライアンスの縦型洗濯乾燥機「ビートウォッシュ BW-DX120C」。機能はもちろんのこと、外観上も大幅な進化を遂げた。これまでのデザインの流れを継承し、パッと見ではわからないかもしれないが、機能美を積み上げた

そして、外観もパッと見はシリーズの意匠をしっかりと継承しつつ、実は大きく変化し、2018年の「グッドデザイン賞」に選ばれている。今回はビートウォッシュの新モデルのデザイン、および設計・機構に携わった2名の関係者に、新製品の開発経緯をはじめ、デザイン・設計上のこだわりのポイントや、製品化までの道のりとその過程における知られざる裏話やエピソードについて語っていただいた。

外観、それにつながるおよび機構・設計部分を担当した、日立製作所研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ プロダクトデザイン部のデザイナー・二宮正人氏(左)と、設計・機構を担当した、日立アプライアンス 家電・環境機器事業統括本部 多賀家電本部第一設計部技師の宗野義徳氏(右)

使い勝手向上のため、設計上の課題を解決

新しくなったビートウォッシュのデザインは、過去のモデルに比べて、よりシンプルかつスッキリとした印象だ。例えばその1つとして具体的に挙げられるのが操作部。従来製品では、操作部は本体の最も手前部分にあり、その後ろに衣類を出し入れする投入口が配置されていたのに対して、新製品では天面のフタの部分にあたるガラスパネル上に移動している。

コース名や残り時間など表示部分は、LEDでガラスパネル上に必要なもののみ現れる仕組みで、もちろんそれを直接触れて操作が行える。これまでの洗濯機では操作ボタンが並んでいたはずの手前部分にはスタートボタン程度しかなく、かなり思い切った仕様の変更とも言えるが、その理由には、実は前述の"洗剤・柔軟剤の自動投入"機能を実現したことによる、必然的な流れでもあったそうだ。

最もわかりやすいところで変化したのは、天面のガラスパネルに搭載された操作部。従来は、本体側の手前部分にあった

というのも、自動洗剤投入機能が追加されたことにより、まずは洗剤や柔軟剤をセットしておくタンクが増設されることになった。これをどの位置に配置するかを考えた際に、ユーザーの操作動線から言っても、最も手前側にあるのが理想的だ。しかし、設計・機構の面から考えると、ベストなのは本体下部、あるいは後方だったという。日立アプライアンス 家電・環境機器事業統括本部 多賀家電本部第一設計部技師の宗野義徳氏は次のように話す。

「給水経路を上から下へ通す関係で、設計側としては、本当はタンクは本体の下側か背面側に設置するのが一番です。それを手前側にすることで、経路をわざわざ後ろから手前側に伸ばさなければならなくなり、決まった外形寸法内にそれらを収めなけばならず、一筋縄ではいきません。タンクを下に配置したほうが省スペースになって設計上は容易なのですが、お客様の使い勝手を考えると、必然的に一番上の手前側がベストだということで、使い勝手と構造上の課題解決の両立に挑戦しました」

従来は操作部が配置されていた場所に、洗剤用のタンクを備えたことで、次に検討しなければならないのが操作部の位置だ。全体を考慮した結果、操作部は天面のフタ部分に配置する以外の方法がなかったわけだが、宗野氏によると実はこの仕様は以前から検討はしていたものの、ある理由から見合わせていたのだという。

「実は以前から、もう少し大きな操作パネルにしてほしいという要望もありました。ただ、天面のフタに操作部を配置する場合には、操作は一度フタを閉めなければできません。そして、その後に洗濯物の量が操作パネルに表示されてから改めてフタを開けて既定の量の洗剤を投入するわけですが、操作動線としては一行程が増えてしまうため、採用を躊躇していたんです。それが、今回のように自動投入ができるのであれば、洗濯物を中に入れた後は1度スタートボタンを押すだけ。そういう意味では、天面のフタに操作部を設けることができたのは、自動投入機能が追加されたからこそ実現できた仕様でもあるのです」と宗野氏。

右側が従来モデル。左の新製品と並べると、一見すると同じように見えるが、手前の操作部が大きく異なる

仕様変更がもたらした「改善」と「挑戦」

操作部が手前側でなくなったことで、衣類の投入口の位置や大きさの改善につながった。新製品では、衣類投入口が従来よりも手前側に移動し、高さもより低い位置となり、出し入れがしやすくなった。さらに、物理的な変更だけでなく、デザイン上もその機能を際立たせる工夫が凝らされている。日立製作所研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ プロダクトデザイン部でデザイナーを務める二宮正人氏は、「入れやすそうなデザインというのをかなり意識しました。投入口の段差も一切なくしてなだらかな形状にし、衣類が滑るように中に入るようなイメージです」と語る。

操作部が手前側からなくなったことで、衣類の投入口が手前側へ移動し、高さも低い位置となった。デザイン上も、衣類を出し入れやすいよう、上方向になだらかに広がっていく形状が意識されたという
上側の部分は、横から見ると斜めにカットしたような形状で、衣類の投入口が前方に寄ったことで中を見やすく出し入れがしやすい高さにもなったことがわかる
3D CADで検討された、本体や衣類投入部などのデザイン案の一例

一方、操作部が天面のガラスパネルに移動したことで、新たな課題にも直面した。中でも最も大きかったのは"視認性"。二宮氏が"想定外"と語ったのは次のような点だ。

「ガラスパネルの透過性を高くするために、ベースの白色をちょっと暗くしたり、メタリックの粒子を弱めたりとかなり調整をしています。やるならとことんやろうということで、実は前のモデルと比べてさらに白く、メタリックの量も多くすることで、より美しいガラスの質感を演出しました。しかし、それでいてLEDの視認性はよくする必要があります。ある程度までは実現できたものの、今度はLEDが強すぎて、文字のインクがぼやけて見づらくなってしまうというジレンマに陥ってしまいました」

そこで取られた方策は、印刷の工程を複数の層に分け、それぞれを薄くして、透け感を調整していったとのこと。「2日間で全部で45種類ぐらいのサンプルを作りました。試行錯誤を繰り返してとことんやりましたが、だんだん感覚が麻痺してきてしまって、見極めるのも大変でした」と、宗野氏は笑いながら振り返った。

"自動洗剤投入機能"という新機能。前編となる今回は、それがもたらした、思わぬ偶然とも必然とも言えるデザインへの影響について語っていただいた。後編の次回は、洗濯機に限らず、日立が家電製品全体において意識するデザインのコンセプトや、それを目指す上で今回の新製品が特にこだわったポイントを中心に、掘り下げてみたい。

バイク市場は退潮していなかった? 日本で存在感を高めるトライアンフに聞く

バイク市場は退潮していなかった? 日本で存在感を高めるトライアンフに聞く

2018.12.19

スタンダードモデルとして登場した2台の2019年モデル

トライアンフを躍進に導く3つの成長戦略

野田社長を直撃! 日本でシェアを拡大できる理由とは

国内4大メーカーが圧倒的なシェアを握る日本の二輪車市場。海外メーカーはいわば“オマケ”的な存在で、一部の根強い愛好家の乗り物とか、ファッションでいうところのハイブランドといったようなイメージが一般的なのではないだろうか。そんな中、日本で勢力を伸ばしているのがトライアンフだ。

トライアンフは1902年にイギリスで誕生したブランドで、現存する世界最古の二輪メーカーに数えられる。同社が日本で成長を続けられる理由について、新製品発表会に登場したトライアンフモーターサイクルズジャパンの野田一夫代表取締役社長に聞いてきた。

トライアンフの「ボンネビル」シリーズで最もモダンな「Street Twin」の新型モデルが登場

エンジン性能が大型アップデートされた2019年の新モデル

トライアンフモーターサイクルズジャパンは、12月15日に2台の2019年モデルを発売した。同社で最も成功を収めたモダンクラシックバイクであり、販売戦略上も重要なモデルという位置付けの「New Street Twin」と、先代モデルに比べオフロード性能が向上した「New Street Scrambler」だ。

右側高めを取り回す2本のエキゾーストパイプが印象的な「New Street Scrambler」

大幅な改良を経て登場した新型モデルだが、中でも両車に共通するエンジンの進化には目を見張るものがある。搭載するのは900ccの高トルク「Bonnevileエンジン」で、最高出力は先代モデルの55PSから65PSへと大幅に向上。特に3,500~5,500回転での出力が高まっているため、その違いは乗った瞬間に感じられるという。さらに、回転数は従来型に比べプラス500回転の7,500rpmに増加している。

先代モデルと比べて18%の出力アップを実現した水冷SOHC並列2気筒8バルブ270°クランクエンジン

同様のアップデートが施された両車だが、吸排気システムの違いからそれぞれ異なる特徴が表れているのも面白い。「New Street Twin」はトライアンフ伝統のブリティッシュパラレルツインのフィーリングが向上。回せば回すほどに、フレキシブルで伸びのある爽快な走りが楽しめる。一方の「New Street Scrambler」は、大音量のスクランブラーサウンドが体に響きわたるような迫力ある走りが特徴だそうだ。

エンジンの出力強化に伴い各パーツも見直した。フロントブレーキには新たにブレンボ製の4ポットキャリパーを採用。フロントフォークはカートリッジ式フロントフォークに変更するなど足回りを強化してある

価格は「NEW Street Twin」が105万600円(税込)からで、「New Street Scrambler」が128万100円(税込)からとなっている。価格の上昇が最低限に抑えられているのは、同社がこの2モデルをエントリーモデルと位置付けているため。トライアンフ入門車として幅広いユーザーに訴求し、いずれは1,200ccなどの他モデルに移行する足がかりとしてもらう戦略だ。

トライアンフの躍進を支える3本の柱

グローバルで見たトライアンフの販売台数は、2007年から2017年までの10年間で160%も伸びている。日本での登録実績は2017年に初めて1,800台を超え、最終的には1,876台を達成した。近年最も成長したブランドの1つといえる。

リーマンショックなどの世界的な大不況の中でもトライアンフの販売台数は堅調に推移してきた

新製品発表会に登壇したトライアンフモーターサイクルズジャパンの野田社長は、同社が日本で成功している秘訣について「ブランドの浸透」「販売店舗の改変」「新商品攻勢」という3つのポイントをあげた。

まず、ブランドの浸透に大きく関係したのがハリウッド映画への登場だ。トライアンフのバイクといえば、古くはスティーブ・マックイーンの代表作の1つ『大脱走』のイメージが強いが、近年も『アントマン』『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』『オーシャンズ8』といった作品で活躍している。いずれも話題作であったため、知らないうちにその姿を目にしていた人も多いはずだ。

販売店舗の改変については、「せっかく良いものを買っても、店舗が汚ければ満足度は決して高くはならない」との信念に基づき、かなり力を入れて推し進めているという。2017年に東京都・吉祥寺にオープンした「トライアンフ東京」を例に取れば、1階は黒と白を基調にしたお洒落なデザインで、240㎡を超えるゆったりとした店内にバイクが展示してある。2階は木のぬくもりを感じながらリラックスできるスペースとなっている。

最後に、野田社長が最も強調していたのが新商品攻勢だ。トライアンフは2016年にスタートした「第1弾商品大攻勢」で27モデルを市場に投入。大幅に商品を増やした背景としては、競合ブランドに比べ同社のモデル数が少なかったという事実も指摘できるが、闇雲にリリースしたわけでもないことは、その商品構成を見れば分かる。

以前は長距離走行に適したツアラーなども展開していたトライアンフだが、自社のキャラクターには合わないと判断し、第1弾新商品攻勢では強みとするクラシックモデル路線へと大きく舵を切った。当初は900ccだけだったラインアップも、現在は1,200ccを生産するなど選択肢の幅を広げている。

また、野田氏は今回の2モデルを皮切りに、2019年にかけて「第2弾商品大攻勢」をかけることを発表した。月間1台以上という他メーカーには真似できないペースで新モデルを投入し、さらなる躍進を期する考えだ。

2019年6月頃には“一目見てすごい”と思わせる隠し玉を用意しているとのこと。今後の動向から目が離せない

支払われた対価に対して最大限のリターンを提供

現在、日本の二輪業界では、若者のバイク離れによりユーザーが減少していて、バイク乗りの高齢化も進んでいる。それに伴い、国内販売数も全体的に右肩下がりという厳しい状況だ。こうした現状をどう捉えているか野田社長に聞いてみると、その認識は「ある意味で正しく、ある意味では間違っている」との答えが返ってきた。

「全体でいえば確かに減少傾向にありますが、そのメインはスクーターなどの実用の部分なんです。趣味性の高い大型バイク自体はそんなに販売台数が減っていなくて、年によっては増加しています。トライアンフは『移動体』という部分よりも、趣味性に特化しているというところが、まず1つの大きな成功要因ですね」

発表会場には同社がインスピレーションパッケージと呼ぶカスタム心をくすぐるイメージを展示。こちらはトライアンフのデザイナーによるセレクトだ

確かに、ほぼ日本専用のガラパゴスアイテムといえる50ccバイク(原付一種)は、風前の灯とも思えるほど厳しい状況にある。2020年から始まる次期排ガス規制に対応するためのコスト増や、世界基準の最低排気量125cc以下(原付二種)への移行、軽四輪や電動アシスト自転車へのシフトなどが背景だ。

それに対し、250ccを超える趣味性の高いバイクの需要については、ある程度維持できているというのが野田社長の考えだ。とはいえ、こうした傾向はすべての二輪メーカーに対していえること。その中で、特にトライアンフが成長を続けている理由はどのあたりにあるのだろうか。

「トライアンフが販売台数を伸ばしている理由は、一貫性があって良いものを作り続けているからだと思います。これはオーナー企業だからできることですが、“バカ真面目”というか、ちゃんと良いものをしっかりと作ろうという思いが大きい。時には、ちょっとやりすぎなんじゃないかと思うこともあるほどです」

“For the RIDE”をブランドテーマに掲げるトライアンフのバイク開発は、細かな部分に至るまで一切の妥協がない。そんな同社が月1台以上のペースで新モデルを投入することについて、野田社長は「他メーカーにはできない」と胸を張った

ホンダ、カサワキ、ヤマハ、スズキという世界の4大バイクメーカーを有する日本には、カタログスペックで優れた多くのバイクが乗り継がれてきた歴史があり、日本人のバイクに対する目も肥えている。そんな日本で、厚めに設計したハンドル径や手塗りしたピンストライプの塗装など、細部にまで凝ったトライアンフのバイクづくりが“本物を求める欲求”にマッチした。これが、同社が日本で成功している要因なのではないだろうか。

趣味性の高い大型バイクであるがゆえに、ユーザーは出した対価に対して相応の意味や価値を見出したいと考える。それらを最大化していくことこそ、トライアンフの差別化戦略なのだろう。