海外市場やIoT家電に再チャレンジ! 東芝ライフスタイル石渡社長 単独インタビュー(後編)

海外市場やIoT家電に再チャレンジ! 東芝ライフスタイル石渡社長 単独インタビュー(後編)

2017.07.25

新生東芝ライフスタイルがスタートして、ちょうど1年経過した。東芝本体が迷走するなか、東芝ライフスタイルは、2016年度下期は黒字化。だが、東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長の自己採点は50点と自らに手厳しい。そして、さらなる国内シェアの回復、グローバル展開の加速など、今後の事業成長にも意欲をみせる。前編に引き続き、東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長に話を聞いた。(前編はこちら)

東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長

黒字転換…自己採点は50点

--東芝ライフスタイルは、2016年度下期(2016年7~12月)で、早くも黒字に転換しました。この理由はなんですか。

石渡: ひとつは、東芝グループ時代の構造改革により、固定費削減などの効果を刈り取れたという点です。これは苦しい思いをしましたが、いまにつながっている大きな要素のひとつです。2つめには、新製品をきちんと投入できたという点です。冷蔵庫、洗濯機、クリーナーも、投入すべきタイミングで、投入することがでました。そして、3つめが、広告投資ができるようになったという点です。思い切ったテレビCM投資を行いましたし、多くの人に、満島ひかりさんのCMを見たといっていただきました。マーケティング投資がしっかりできたことも、販売増につながっています。そして、トランプ米大統領就任前の円高傾向もプラスに働きました。

--2016年度下期の黒字化は想定内だったのですか。

石渡: 最初の想定では黒字化は難しいと思っていました。思ったよりもうまく行ったなというのが正直なところです。そして、今年度が真価を問われるのは間違いありません。

--この1年間を自己採点するとどうなりますか。

石渡: 1年間でいろいろチャレンジをして、社内を変えてきましたが、マイディアグループの方洪波(Paul Fang)CEOからは、「私だったら3カ月でできた」と言われましたよ(笑)。そうした観点からみると、50点ぐらいでしょうか(笑)。

国内シェアを回復させる

--2017年度(2017年1~12月)も黒字化が前提ですか。

石渡: 2017年度の黒字化は、マイディアからの至上命令です。そして、権限の委譲と責任の追及が強い会社なので、成長投資をしたのならば、着実に利益を出さなくてはなりません。これは、経営に対する責任だと考えています。

--2017年度の黒字化に向けて、どんなことに取り組みますか。

石渡: ひとつは、魅力的な製品を開発し、それを市場に届けるということです。我々はメーカーですから、これは基本中の基本として大切なことです。5月30日に、ウルトラファインバブル技術を搭載した洗濯機を発売しました。ここでは、家でワイシャツを洗っても、ちゃんと皮脂汚れが落ちるという特徴を訴求しています。この商品を見てもわかるように、きちんと技術開発をし、商品を出すということは、日本のマーケットに対するコミットメントであり、日本のユーザーがどんな商品が欲しいのかということを知り、それを提供していく姿勢はこれまでとは変わりません。

2017年5月30日、ウルトラファインバブル技術を搭載した洗濯機の発表会

それと2つめは継続的なマーケティング投資です。テレビCMも継続的に行い、訴求を続けていきます。今年の夏商戦においても、6月22日からテレビCMを大量に打ちました。前年同期には、広告投資はほとんどなかったわけですから、その点も大きな違いがあります。振り返れば、2015年の夏商戦も、東芝の不正会計問題があり、自粛した経緯がありますから、実に3年ぶりに、夏商戦向けの広告投資を行ったということになります。もちろん、年末商戦に向けても、積極的な広告投資を行いたいと考えています。こうした取り組みを通じて、売上高を高め、日本におけるシェアを戻すことに取り組みます。

--現在、東芝の白物家電のシェアはどうなっていますか。

石渡: 東芝の白物家電のシェアは、ピーク時には15%程度ありましたが、いまは、10%程度へと、約5%下がっています。2018年度には、ピーク時の水準にまで戻したいと考えています。電子レンジなどでは30%近いシェアを持っていますが、エアコンのシェアは、10%から5%程度へと半減しましたから、ここを優先的に回復させなくてはいけないですね。とくに、マイディアはエアコンの製造、販売では世界一の会社ですから、日本だけシェアが低いというわけにはいきません(笑)。商品力に加えて、これまで絞り込んでいたマーケティング投資、販売店支援などを強化することで、エアコンのシェア拡大に取り組みます。構造改革によって、かなり絞った筋肉質な体質になっていると思いますので、売上げが拡大すれば、自ずと利益がついてくるという構造になっています。

その先の戦略…インド、中国再参入

--東芝ライフスタイルの2017年の黒字化を前提に、次の成長ステップはどう描きますか?

石渡: 2018年度を初年度とする3カ年の中期経営計画を現在策定しているところです。成長戦略とともに、積極的な投資も進める考えであり、これをマイディアグループのなかで承認してもらい、実行に移したいと考えています。今年は、この中期経営計画の立案が重要な取り組みのひとつになります。具体的な数値はいえませんが、描いている姿のひとつが、3カ年計画が終わった時に、これまで以上に、グローバルで展開する企業を目指すという点です。米国や欧州という東芝の白物家電事業にとっては未開拓の市場に入っていくこと、インド、中国という一度撤退した市場にも再参入したいですね。2020年度には、東芝の白物家電がグローバルブランドとして、世界中で事業を展開する企業になりたい。そうした企業に変身したいと考えています。

私は、東芝で、最初の20年間はテレビやビデオなどの映像事業を担当し、次の10年間はPC事業をやり、直近の10年間で家電事業を担当してきました。東芝は、かつて映像事業やPC事業で、世界ナンバーワンを取った経験があります。TOSHIBAブランドの白物家電でも、グローバルでビジネスをやり遂げたい。それをやるために、東芝グループでやるよりは、マイディアグループでやる方が、将来が開けると考えています。

マイディアグループにとっても、グローバル化は大きな方向性のひとつであり、優れた商品を開発し、効率的な経営を行い、それによって、グローバルで戦う姿勢を持っています。マイディアグループが、世界展開を強化する上では、世界に通用するTOSHIBAブランドが必要だといえます。東芝ライフスタイルにおける現在の海外売上比率は約3割ですが、2020年には、50%を超えることになるでしょう。

ただ、日本でも、アジアでも、もっとシェアを伸ばしたいと考えています。日本では、シェアを回復して、トップ3の一角を入りたいと思っています。そのためには、現在、10%のシェアを20%近くまで高める必要があります。

「PINT」に込められた約100年続く東芝白物家電のDNA

--ところで、東芝ライフスタイルでは、コミュニケーションスローガンとして「PINT!(ピント)」を掲げていますね。ここに込めた意味はなんでしょうか。

石渡: 実は、先日のマイナビニュースの記事で、日本で最初に発売した東芝の洗濯機を取り上げていました。その際に、当時の新聞広告も掲載していたのですが、そこに、書かれていた内容は、洗濯機を使うことで、主婦が自分の時間を作ることができ、読書の時間に当てることができるという提案でした。

日本で最初に発売した東芝の洗濯機と当時の新聞広告。約100年前から、モノを通じて、日本人の生活を豊かにしてきたんですね

これは、東芝の白物家電事業が、いま、まさにやらなくてはならないことだと思っています。つまり、「モノ+コト」が大切なのです。洗濯機はなにができるか。当然、洗濯ができます。だが、それをモノとして売っているのではなく、モノを通じて、ライフスタイルを変えることを、97年前の東芝の先輩たちは提案してきたのです。これは、消費者目線で役に立つものを作り、消費者のライフスタイルを安全で、快適なものにしたいという姿勢の表れであり、ここに東芝の白物家電のDNAがあります。それを支えるTOSHIBAブランドとしての品質や使い勝手の追求は脈々と続いています。

石渡: これを、いま風に言い替えたのが、PINT!です。PINT!は、「Plus Idea Next Technology」の頭文字で、新たなアイデアという「コト」を、次世代の技術という「モノ」で起こす、あるいは、「モノ」を通じて、「コト」を生み出すという意味を込めています。モノからコトは、東芝時代に使っていた言葉でしたし、新たなイメージを出すためには、言い替えたらどんな言葉がいいだろうかと考え、行き着いたのがこの言葉でした。ピンと来るという言葉とも連動させています。

--いまの東芝ライフスタイルの商品を見て、PINT!の達成率はどの程度ですか(笑)

石渡: これは永遠の課題だといえます。ただ、お客様に使っていただくなかで、ピンと思ってもらえるシーンが増えればいいと思っています。この夏に放映したテレビCMのなかで、「今日一日、あなたを、何回、ピンとさせることができただろうか」というメッセージが入っているのです。たとえば、電子レンジでピザを焼くということで、友達を招待してみたいと、ピンと思ってしまうというような、実生活のなかで、コトが起きることを支援するモノでありたいと考えています。PINT!は、東芝の白物家電事業の姿勢を示したものであり、少なくとも、2020年まではこの言葉は使い続けたいと思っています。

IoT家電に再びアプローチ

--PINT!を達成する上で重要な要素はなんですか。

石渡: これからはスマート家電の世界が本格的に訪れます。つまり、IoTが重要になり、これがコトづくりに直結することになります。マイディアでは、中国で、スマート冷蔵庫をすでに発売しており、100万台の出荷を目標にしています。それだけの冷蔵庫がコネクテッドすることになり、そこから出てきたデータを活用した新たなビジネスやサービスを提供できるようになります。すでに、冷蔵庫の稼働状況をもとにした故障予知のサービスを開始しており、壊れる前に修理するといったことを可能にしています。

実は、東芝時代には、スマート冷蔵庫を発売した経緯があり、ネットにつなげた利用ができます。しかし、ネットにつなげるときの手続きが複雑でした。これは、東芝グループという観点から、HEMSにつなげるという発想で商品を開発していますから、お客様自身もホームゲートウェイへの投資が必要になり、家のなかを工事しなくてはなりませんし、そこで数万円の費用が発生し、さらに月500円程度の使用料負担が必要になります。これではスマート家電を使ってみようと気にはなりません。

しかし、マイディアグループは、家電メーカーとしての発想でモノづくりをしますから、まずは、家のなかにあるWi-Fiにつなげばサービスが利用でき、スマホからも簡単に操作できるようにします。さらに、お客様には費用負担なしでサービスを利用してもらう環境も作ります。つまり、これまでのように、スマート冷蔵庫なので、余計にお金をくださいという発想はありません。収益は別のところから得るという仕組みになります。言い替えれば、東芝のスマート家電のビジネスは、新たな東芝ライフスタイルのなかで、一度リセットすることになります。第1世代のスマート家電が普及しなかったのは大いに反省すべきことではありますが、IoTがこれまで以上の速度で広がるなかで、スピード感をもって、走りながら考え、アプローチしていくつもりです。マイディアグループは、まずは、100万台の冷蔵庫がつながるという世界を作り上げ、そこから新たなビジネスを生んでいくという発想で取り組んでいます。日本においても、同じような発想で進めたいと考えています。

TOSHIBAブランドの新たなスマート家電は、2018年度には、日本市場に投入したいと考えています。これをTOSHIBAブランドのスマート家電の第2世代と位置づけて取り組んでいくことになります。ぜひ楽しみにしていてください。

関連記事
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu