人工知能、VR、Chrome OS、開発者会議で示したGoogleの方向性

人工知能、VR、Chrome OS、開発者会議で示したGoogleの方向性

2016.05.30

Googleは、本社キャンパスがある米国カリフォルニア州マウンテンビューの屋外劇場、シュアライン・アンフィシアターで、5月18日からの3日間、開発者向けイベント「Google I/O 2016」を開催した。同イベントで注目すべきは、VR、人工知能、Androidの3つ。これらは将来的に、Googleの可能性を大きく広げるものとなりそうだ。

「Google I/O 2016」で注目すべき3つのポイント

今回は、会社組織がアルファベット傘下へと変更されて初めての開発者会議であり、これまでと異なる郊外、しかも屋外での開催とあって、Googleの変化を感じ取るには十分のイベントだったと振り返ることができる。

筆者は今回のイベントを取材して、3つのポイントに注目した。それは以下の通りだ。

  • 人工知能を生かした「Googleアシスタント」の登場と、その活用方法の提示

  • VRプラットホーム「Daydream」の発表

  • ChromebookのAndroidアプリ対応

このほか、情報表示やコミュニケーション、スタンドアロンでの動作を強化した「Android Wear 2.0」や、モジュール組み立て式のスマートフォン「Ara」の2017年市場投入などが披露された。

今回のイベントでは、よりVRが強調されるか、と見られていたが、それ以上に注目を集めたのは、Googleが力を入れて取り組んでいる機械学習による人工知能だった。筆者が注目した3つのテーマは、Googleが今後、コンピュータやインターネットと我々の生活をどのように変化させ、またデザインして行こうと考えているのかを知るヒントを与えてくれた。

Googleアシスタントの使い道

Googleアシスタントは、これまで様々なサービスで用いられてきた検索とユーザー情報を活用した「今、必要な情報の提示」を、対話型のインタフェースで利用できるようにしたものだ。音声アシスタントについては、Googleの競合となるプラットホームを持つAppleのiOSにも「Siri」が備わっている。しかし、Googleアシスタントは、Siriをはるかに超えた存在だ。

Googleアシスタントは、Googleが取り組んでいる機械学習、知識グラフを生かして、我々の質問を理解し、答えを返してくれる仕組みを備えている。我々は、Siriに対する時とは違い、その音声アシスタントがどんな質問や操作に対応しているかを意識せず、質問や指示を出すことができる。アシスタントへの「尋ね方」を気にすることはないのだ。

その上で、Googleは、アシスタントの用途について、音声で利用する据え置き型デバイス「Google Home」と、スマートフォンから利用するチャットアプリ「Allo」という、2つの方法を提案した点も、賢い選択だった、と振り返ることができる。

Goolgeアシスタントは機械学習や知識グラフを生かした音声アシスタント機能。写真は同機能を搭載したデバイスの「Google Home」

Google Homeは、簡単な動作状況を示す有機EL表示部を備えた、音声で操作するデバイスだ。「OK Google」と話しかけて、複雑な検索や、自分のスケジュールなどの確認、スマートホームの機器の操作、レストラン予約などのウェブサービスとの連携、家の中のワイヤレスオーディオの操作を行うことができる。

またAlloは、新しいチャットアプリにGoogleアシスタントを導入しており、Alloアプリを離れずに、チャットコミュニケーションに必要な画像検索やレストラン検索、その予約などを行うことができる。友人からチャットで画像を送られてくれば、その画像の中身を解析し、「おいしそうなアサリだね」「かわいい犬だね」と返信内容を自動的に候補に挙げてくれる。パスタの具や麺の種類、犬種までもが、画像への返信として候補に挙がるほど、スマートリプライ機能は利用価値が高い。

Googleアシスタントを搭載したチャットアプリの「Allo」。画像認識を行い即座に返信可能なスマートリプライ機能を備える

まったく新しい使い方となる音声だけでのコンピュータやインターネットの利用を提案するGoogle Homeと、既存の文字でのコミュニケーションを通じた人工知能の活用例を示すAllo。これらのアプリは、Googleアシスタントをどのように生活に生かすかを、より具体的に、素早く人々に伝える役割を担うだろう。

Googleアシスタントは、視覚に頼らないコンピュータ活用の可能性を示しており、こうした世界が訪れた際、Googleが大きなアドバンテージを取ることを、示してくれる。

GoogleがVRに力を入れる理由

Google I/Oで2つ目に注目したのが、GoogleによるVRへの取り組みだ。筆者は、世間が考えているほどVRが革新を起こすとは思っていないが、Googleがモバイルプラットホームとして、VRへの取り組みを強めることは、興味深いと考えている。

Googleが基調講演で発表したのは。AndroidプラットホームにおけるVR環境を規定する「Daydream」だ。Daydreamは、VRアプリやVRコンテンツを楽しむための、Androidスマートフォンに関する必要な性能の規定、VRゴーグルや、VR使用時のリモコンの仕様といった、追加ハードウェアに関するプロトタイプを示した。これにより、AndroidによるVR体験を、より具体的に開発していくための環境が整ってきた、と考えることができる。

Googleはこれまで、スマートフォンでVRを楽しむため、ダンボールでできたゴーグルの製作に取り組んできた。両目の視野一杯にスマートフォンのディスプレイの表示が行き渡り、ピントが合うようにするためのレンズを内蔵し、自分のスマートフォンをダンボールに挟み込んで、VR体験を手軽に行えるようにする仕組みだ。

加えて、Samsungは、Facebook傘下となったOculusと組んで、「GALAXY Sシリーズ」のスマートフォンを装着するタイプの、もう少ししっかりとしたゴーグル「Gear VR」をすでに発売しており、スマートフォンを活用したVR体験の最も安定した環境になっている。

Googleは、こうした環境を一歩進めるため、DaydreamによってAndroid NにVRモードを導入し、自社コンテンツについても、VR対応を行うことで、初期の体験が退屈なものにならないようにしようとしている。

例えば、Googleストリートビューは、その場所に立って見渡せる360度写真を楽しめる。またYouTubeアプリをアップデートし、VRビデオの配信環境としての役割を強めた。その他にも、Google PlayビデオやGoogleフォトも、Daydreamで楽しめるサービスとした。アプリ開発企業では、Wall Street JournalやCNNなどのニュース、NetflixやHuluなどのビデオストリーミングサービス、IMAX、MLB.com、そしてEAなどのゲーム会社がパートナーに名を連ねている。

YouTube、GoogleフォトなどGoogleのサービスもVRへ対応

Googleは、Daydreamを、2016年秋に立ち上げる考えだ。気になるのは、Google自身が、自社で、VRに関するハードウェアを用意するかどうかだ。スライドでは、ゴーグルとリモコンのスケッチが示されたが、最近ハードウェアに力を入れているGoogleからすれば、VR向けのデバイスを発売することに、違和感は感じないだろう。

GoogleはVRゴーグルを用意するか

Googleにとって、VRをモバイルプラットホームに深く採用することは、モバイル環境における表現力を飛躍的に高め、また新たな表現方法に移行しても、広告のビジネスモデルを導入できるようにする「準備」をしているように感じる。

YouTubeがGoogleに買収されてから現在に至るまでを振り返ると、データとして非常に扱いにくかったビデオの配信プラットホームとして世界一の座を獲得し、広告ビジネスによる収益化を行ってきた。VRに対しても、同じことを起こすと考えれば、VR視聴環境の整備を率先して行うことは、Googleにとって、むしろ自然な流れだと言える。

AndroidアプリのChrome OS対応は大きなインパクトに

筆者が3つ目に注目するのは、Googleの「Chrome OS」が動作するコンピュータで、Androidアプリが動作するようになる、という点だ。

Chrome OSとは、モバイルデバイスよりも高性能なコンピュータ向けのOSだ。特に11インチから14インチ程度のディスプレイを持つノートブック型のコンピュータ、Chromebookでの活用が中心だが、より小さなタブレットから、60インチのテレビに至るまでをカバーする。

Windows搭載のネットブックは300ドル程度だが、LinuxとGoogle Chromeが核となるChrome OSを備えたChromebookは、これよりもさらに安い100ドル台で、十分な体験を実現できるデバイスが手に入る。

そのChromebookだが、米国市場において、販売シェアでMacを上回るようになった。調査会社IDGによると、直近の2016年第1四半期、Macの販売は176万台だったが、Chromebookは200万台を販売したという。AppleはiPad ProをWindowsの代替にしようとしているが、GoogleのChromebookは既に、PCの代替としての成果を上げている。

そんなChrome OSで、Androidアプリが動作するようになる。Google I/O 2016での発表は、開発者にとっても、Chromebookを導入したい家庭や学校、企業にとっても、非常にメリットの大きな発表だと考えている。

Chrome OSでAndroidアプリが利用可能に

例えばソーシャル系のモバイルアプリを、大きな画面のブラウザに表示したウェブ解析の画面とともに開いて使用する、といった業務の中での活用も考えられるし、スマートフォンを持っていない生徒が、Chromebookから、Androidの膨大なリソースを活用した学習を行うこともできるだろう。

Microsoftは、Windows 10で、モバイルとデスクトップのアプリケーションを統合した。Appleは、MacとiPhone・iPadのOSの統合はない、と度々発言している。こうした中でのChrome OSのAndroidアプリ対応は、モバイルデバイスとパソコンをうまく統合し、パソコン側に新たな価値を持たせる「成功事例」を作り出すことになると考えている。特にMicrosoftにとっては、Chrome OS搭載のコンピュータがより大きな脅威となるだろう。

今回のGoogle I/Oは開発者向けということもあり、Android NやAndroid Wear 2.0、Googleアシスタント、Daydream、ChromeOSといった発表内容をすぐに体験できるようになるわけではない。また開発者がこれらの新しいプラットホームに対応したアプリを作ることで、我々の体験が新たなものへと進化することになる。Googleが示した世界最大のモバイルOSの方向性と、これを受けたアプリの進化に、引き続き注目していくべきだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。