フィンテックという言葉は

フィンテックという言葉は"古くなる" - 富士通が目指す「金融×◯◯」

2017.07.29

金融×◯◯といった、新たな◯◯テックが誕生する。クロスインダストリーがあるべき姿になる――。そう語るのは富士通の金融・社会基盤営業グループ 金融イノベーションビジネス統括部 ビジネス企画部長 佐藤 和英氏だ。同社は8月6日いっぱいまで「FUJITSU Cross Industry API Contest Supported by Finplex」の参加受付を行う。

同コンテストでは、金融ソリューションを体系化した同社の「Finplex」で提供しているAPIを活用し、異業種とコラボレーションしたビジネスアイデアを広く募ったものだ。佐藤氏は、「生活は金融だけでは成り立たず、フィンテック以外にもヘルスケアや教育など、さまざまな業種とのコラボレーションが必要になる」と語る。

富士通 金融・社会基盤営業グループ 金融イノベーションビジネス統括部 ビジネス企画部長 佐藤 和英氏

コンテストで130のAPIを提供

今回、テストに合わせて公開されるAPIはおよそ130個。通常は公開していないAPIも存在しており、金融以外もヘルスケアや車、保険、教育といった多業種のものを用意した。

「私たちの顧客は多くがエンタープライズ。顧客基盤はあるし、これまでのSIでつちかった知見やプラットフォームはある。イノベーションのために、サードパーティからアイデアを募ることで、より良いものを作りたい」(佐藤氏)

予選で20社程度まで絞り、本選には10社程度を選出。メガバンクと大手損保も最終審査員として加わる予定で「医療系や教育分野なども、聴講者として参加を検討している」(佐藤氏)。当日は、富士通と金融機関、フィンテック企業らのコンソーシアム「Financial Innovation For Japan」のイベントが同時開催される予定で、業種・業態の垣根を超えたマッチングも目指す構えだ。

現時点の問い合わせは数十社で、FIFJ会員が多いという。ISIDらが運営するフィンテック拠点「FINOLAB」でも募集を行い、ベンチャー企業からの問い合わせもあるとしている。

なぜフィンテックが古いのか

コンテストでは、APIのエコシステムをフルに活用してもらい、大手企業とのコラボレーションを目指すだけでなく、「実験的にアプリを作ってサービスインまで持っていく」(佐藤氏)。例えば、残高照会APIなどは単体で提供しても、すでにメガバンクもAPIを公開していることから富士通との接続でメリットは見いだせない。

富士通が介在する理由は、生体認証システムとの連携や、前述のヘルスケアAPI、教育関連APIなど、より複合的なシステムの構築を簡素に構築できる点にある。APIはあくまでコンテスト内での公開のものもあるが、「フィンテックで言えばオープンAPIとして定義して良いものとダメなものがある。誰でも見ていいわけではないものは線を引く」(佐藤氏)。

金融事業の中心にいながらも、佐藤氏は「誤解を招くかもしれないが、フィンテックという言葉はバズワードの時期を過ぎて古いものになる」と現状を指摘する。例として挙げるのは「ATM」。ATM自体が金融とテクノロジーを融合したフィンテックの一つであり、かねてより存在する。

「フィンテックは金融側から見た表現であって、一般消費者からすれば金融は"意識しないもの"。入り口が別の業態から入り、金融へと繋がることは想像に難くないし、これからの時代はそうしたクロスインダストリーが当たり前になる」(佐藤氏)

AIを活用した業務効率の改善や、IoTにおけるモノのデータ集積・分析といったさまざまなテクノロジーを加味すれば、それは消費者目線ではフィンテックではなく新しいソリューションであり、「フィンテック」というジャンルではなくなる、そういう考えだ。

「交通費精算を、ブロックチェーンなどと組み合わせて即日決済する」「残高照会で単なる家計簿連携だけでなく、医療請求情報などと組み合わせ、精算と医療の安心を担保する」。もちろん、法制度などの壁はあるものの、こうしたコラボレーションの可能性を広く見出したいのがこのコンテストの道筋だ。

「コンテスト自体は数回やるかもしれないが、一つの狙いはAPIを利用してもらうことでどのAPIにニーズがあるのか。ニーズの高いAPIの組み合わせがあれば、それを単一のAPIとしてまとめることで、それが新たな素材になり、イノベーションへと繋がる。『1年後に新たなサービスを』と言うよりも、常にテストできる環境を用意し、アイデアをどんどんブラッシュアップさせて新たなエコシステム構築へと繋げたい」(佐藤氏)

銀行にはAPI公開の努力義務も

5月に可決、成立した改正銀行法によって、銀行にAPI公開の努力義務が課せられた。メガバンクはすでにオープン化に向けた取り組みを進めており、三菱UFJフィナンシャル・グループなどは3月にAPI開放を"宣言"している。地銀についても北國銀行など、ICT化に積極的な姿勢を見せる銀行はあるものの、今年に入ってメガバンクに遅れて再編の波が訪れており、システム統合に加えてのAPI開放は、IT部門に課せられた使命として、あまりにも重い。

ただ、手をこまねくだけでは未来がない。いち早く多業種とのコラボレーションによって商機を見い出せば、生き残りの道筋も見えてくるはずだ。例えば前述の北國銀行はクラウド会計ソフトのfreeeと協業し、中小企業のバックオフィスの自動化支援を行っている。会計業務こそ金融の一つだが、例えば農機具メーカーとコラボレーションして穀物の生産高を自動把握し、時価データと連動させることで会計処理を簡素化できるといったことも可能になるはずだ。

富士通が期待するコラボレーションが出てくるかどうか、9月6日の本選でその答えがわかる。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。