MINIにもPHVが登場! BMWが電動化に積極的な理由と日本特有の事情

MINIにもPHVが登場! BMWが電動化に積極的な理由と日本特有の事情

2017.07.31

BMWの日本法人が「MINI」(ミニ)ブランドにプラグインハイブリッド車(PHV)を追加した。ミニから電動車両が登場したことに意外な感じを抱く人もいるかもしれないが、BMWは電動化を積極的に進めており、ミニにも車種を拡充した形だ。日本には電動車両の普及を遅らせかねない特有の事情もあるが、ミニは新たな選択肢として受け入れられるのだろうか。

ミニのPHV「MINI Cooper S E Crossover ALL4」

BMWブランドで充実するPHV

BMWの日本法人であるビー・エム・ダブリューが、ミニのPHV「MINI Cooper S E Crossover ALL4」を7月に発売したことは、すでに報告済みである(詳しくはこちら)。ミニとしてPHVは史上初の登場ではあるが、BMWブランドではすでに、「X5 xDrive40e」を皮切りに「330e」「225xe Active Tourer」「740e」「530e」と目白押しの品ぞろえで、そこにミニも加わったことになる。

BMW「740e iPerformance」

一方、日本車では三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」に次いで、昨年ようやくトヨタ自動車から「プリウスPHV」が発売されたにとどまる。なぜ、BMWはそこまでPHV導入に積極的であるのか。また、その魅力や販売動向はどのようになっているのだろうか。

ポルシェすら電動化する時代に

欧州では、2021年からメーカー各社平均での新車の二酸化炭素(CO2)排出量を、1キロメートルあたり95グラム以下としなければならない規制が始まる。これは、欧州の燃費計測モードで1リッターあたり約30キロという燃費を全ての新車で達成しなければならないほど厳しい内容だ。

なかでも、プレミアムブランドと称し、高級車や高性能車を主力に販売するメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェといったメーカーは、車体が大きいことから車両重量が重かったり、高性能エンジンを搭載するため燃費がよくなかったりして、現状のままで規制に対応するのは難しい状況だ。ガソリンより燃費がいいとされるディーゼルエンジン車でも達成し切れない規制値なのである。

そこで、排ガスを出さないクルマ、つまりは電動車両に取り組むことが不可欠になる。ポルシェでさえ、「パナメーラ」や「カイエン」にはPHVをすでに導入しているのである。

高性能エンジンにこだわってきたBMWだが…

BMWは「駆けぬける歓び」を企業メッセージに、運転する喜びを追求してきたドイツメーカーだ。なかでも、BMWの直列6気筒エンジンと言えば、性能の高さと心地よい加速が評判で、クルマ愛好家も垂涎のガソリンエンジンである。時代と共に衝突安全性能の向上が求められたことから、メルセデス・ベンツは同じ6気筒でも全長を短くできるV型に変更したが、BMWはあくまで直列6気筒にこだわり、そのうえで安全性能を達成する努力を払ってきた。

あるいは、メルセデス・ベンツをはじめ、GM、フォード、トヨタ、日産自動車、ホンダが、水素を使う燃料電池車(FCV)を開発した際にも、BMWはエンジンで水素を燃焼させて走る技術開発にこだわった。

エンジンが第一の魅力であったBMWが、電動化へどう取り組むか。そこには戦略的な工夫が必要であったはずだ。

ミニはBMW電気自動車の原点

BMWは従来の開発とは別に、電動車両専門の開発チームを発足させ、「メガシティ・ビークル(Megacity Vehicle)」と称して小型の電気自動車(EV)をミニで試作し、世界中を試験走行する地道な取り組みから開発を始めた。そして、着実な開発から生まれたのがEVの「i3」である。また、PHVではスポーツカーの「i8」を誕生させた。

EVの「i3」(左)とPHVスポーツカーの「i8」

BMWといえば直列6気筒エンジンという印象が強いのを承知しているからこそ、BMWではなく「i」ブランドで、まずは電動化を立ち上げた。その上で、満を持してBMWのPHVの導入を開始した。これにミニも続いたわけである。いまやBMWは、電動車両の先駆的メーカーの1つと言えるようになった。

もちろん、ドイツの自動車メーカー各社も、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、アウディ「A3」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」および「Sクラス」にPHVを導入しているし、スウェーデンのボルボも「XC90」にPHVを車種追加して、それぞれ日本でも販売している。

日本では、三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」が世界に先駆けてEV市場に参入し、三菱は前述の通りアウトランダーPHEVを手掛けている。

だが、いざ販売を開始してみると思わぬ障壁が立ちはだかったのである。

電動車両の普及を遅らせかねない日本特有の事情

日本は、都市部への人口集中が永年にわたり続いており、所得の多少を問わず集合住宅に住む人が多い。その集合住宅では、管理組合が建物、敷地、付属施設など、住民の共用部分の管理を行っている。そして、住民代表の管理組合を構成する人々の合議で、物事が進められる。

EVやPHVの購入を望む住民が、駐車場に充電用のコンセントを設置したい場合にも、この管理組合に諮る必要がある。ここで、反対意見があると充電コンセントの設置ができなくなり、EVやPHVの購入を諦めなければならなくなってしまうのである。

集合住宅の場合、自宅に充電設備を用意するのにハードルがあるというのが日本特有の事情だ

反対の理由は、必ずしも合理的であったり論理的であったりするとは限らず、感情的な場合もあるようだ。例えば、「自分はクルマに乗らないから」という意見もあれば、理由もなく「とにかく反対」と、自説を曲げない人もあると聞く。こうなると水掛け論だ。

結果、例えば日産リーフの場合、販売のおよそ9割は戸建て住宅に住む人に限られている。しかし、先にも述べたように、日本では所得の多少にかかわらず集合住宅に住む人が多いため、EVとPHVに商品性の高い新車が出てきたとしても、販売台数は見込めないのだ。

この課題には、三菱や日産に続いて、トヨタも直面している。プリウスPHVの販売台数にも影響していそうなのだ。充電の必要のないハイブリッド車(HV)のプリウスは、発売から平均でおよそ毎月1万5000台以上が売れているのに対し、プリウスPHVは4分の1近い4000台平均しか売れていない。もちろん、価格差もあるだろう。だが、EVと同じように家庭で充電できなければ、なにもPHVを買う必要はなく、HVのままで十分と言えるのである。

そんな中、BMWは日本市場でもPHVの品揃えを拡充し、またEVのi3でも販売に力を入れている。PHVの普及に向けては戦略的な取り組みも進めているようだ。

PHV普及に向けた戦略的な価格設定

PHVは内燃機関と電気の双方で走行できるのが特徴だが、2つのシステムを搭載するので価格はどうしても上がってしまう。そこでビー・エム・ダブリューは、PHVの販売価格をエンジン車に近い戦略的な設定とし、購入しやすくすることで、PHVの魅力を多くのユーザーに体感してもらおうとしている。

例えば「3シリーズ」というBMWの中核車種の場合、ガソリンエンジンの「320i」とディーゼルエンジン車の「320d」が532万円(税抜き)であるのに対し、PHVの「330e」は579万円(税抜き)である。これに、20万円ほどの補助金の優遇を加えると、価格差はより詰まることになる。

BMW「330e」

この価格設定がどれほど戦略的であるかは、3シリーズの競合となるメルセデス・ベンツ「Cクラス」の場合をみると分かってくる。ガソリンエンジンの「C200アバンギャルド」が530万円(税込み)からであるのに対し、PHVの「350eアバンギャルド」は726万円(税込み)からという設定で、200万円近い価格差となっているのだ。

過去3シリーズにも、「アクティブハイブリッド3 Mスポーツ」というHVがあったが、それは838万円もして、フラッグシップモデル的な扱いであった。それでは販売台数は見込めず、省エネルギー効果は限定的だ。そこから大きく転換を図ったのが、現在のBMWの電動化への取り組みなのである。

そして、まずは輸入車における電動化の様子を体験してほしいと、ビー・エム・ダブリューは語るのである。

電気自動車ならではの加速

実際に、今回はミニのPHV「MINI Cooper S E Crossover ALL4」を試乗してみた。このPHVシステムは、2シリーズの「225xe Active Tourer」と同様で、前輪は直列3気筒ガソリンエンジンで駆動し、後輪をモーター駆動する。基本的な走行モードでは、バッテリーに充電されていれば発進からモーターのみで走行を行い、バッテリー電力が不足したり、急加速をしたりした場合にはエンジンが始動する。

ミニのPHVに試乗

試乗の日は、バッテリー満充電で出発した。まずは基本設定のモーター走行を味わう。軽くアクセルペダルを踏み込むだけで、スッと発進し、すぅ~と速度を上げていく様子は、まさにモーター駆動ならではのEV走行を味わえる。もちろんエンジン音がしないので、室内は静粛であり、同乗者との会話も声を張り上げる必要はない。聞こえてくるのは、タイヤが発する騒音だけと言っていい。

フル充電であればモーターだけで最高時速125キロ、最大走行距離約40キロの走行が可能だ

しばらく走るとエンジンが時々走行に関わってくるが、ハイブリッド走行なのでアクセルペダルを戻すと回生が働き、バッテリーに充電される。なので、メーター内の充電計は走行中に減ったり増えたりする。

ちなみに、充電が残り1%になったときも運転したが、少しアイドリングしていれば2%になり、また、たとえ0%表示であっても発進は必ずモーターで行う設定になっているので、最も燃費が悪化する発進の場面で燃料を使わずに済むのも特徴だ。

燃費が悪くなる発進時に燃料を使わずに済む設計となっている

HVが限られる輸入車市場、PHVを選ぶのもアリかも

戸建て住宅であれば、10万円ほどで200V電源の充電用コンセントが設置できる。集合住宅における充電設備設置の問題はあるが、ビー・エム・ダブリューでは、クルマを購入してから1年の間、公共充電設備を無料で利用できるキャンペーンを展開。これは、PHVを充電して乗る感覚を、少しでも多くのユーザーに味わってもらおうという施策だ。

また、公共のショッピングモールなどの駐車場で充電器を利用する場合、店舗の入り口に近い場所に駐車できる場合が多いのも利点だとビー・エム・ダブリュー広報は話していた。

MINI Cooper S E Crossover ALL4は、日常の利用に手ごろな車体寸法であり、ミニの中でも人気車種の1つだ。日常をほぼモーター走行だけで済ませ、遊びに出かける遠出の際にはモーター走行とハイブリッド走行を併用しながら、充電を気にせず、未舗装路へも入り込んで行けるのがクロスオーバーとしての魅力でもある。

街中にも遠出にも対応できるのがクロスオーバーの魅力だ

自宅や勤務先に充電施設が整うのは先の話になったとしても、時代が電動化へ動いているのは間違いない。これまでHVの車種構成が限られてきた輸入車において、手ごろな価格で購入できるPHVは、1つの選択肢としてあり得るのではないだろうか。

ことにビー・エム・ダブリューの場合、東京の江東区青海にBMWグループトウキョウベイ(BMW GROUP TOKYO BAY)があり、BMWジーニアスと呼ばれる営業とは別のスタッフが、試乗やクルマの案内をしてくれる。買うか買わないかを気にせず、まずは1度、PHVに乗ってみてほしいというのがビー・エム・ダブリューの思いだ。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。